富下氏の証言

17日前

安アパートの自宅で冷奴に削り節、醤油をかけてビールを飲む
我ながらケチくせぇ晩酌だな、畜生め・・・アイツは今頃何食ってんのかな・・・


俺は富下 醍醐、マイク・エンターテイメント・カンパニーで30年勤め開発部の研究チームの一つを任されている
とは言ってもチームの他の連中は屑や若手ばっか、全然使い物にならねぇ
俺みたいなロートルが引っ張ってやるべきだが俺は絶賛スランプ中
自信を持って考えた『絶対安全!!全自動高速回転椅子』や
『気分はまさにハンマー投げ選手!!ミラクル給食着入れ』が悉く没

営業のボケ神無月曰く『ダイエットプリンアラモードとどっこいどっこいですよ、ゴミ作らないで下さい』
あの毒入りプリンよりはマシだろうに、安全性第一の商品を作っているんだよ俺は
あの牛を作って何人死んだか・・・首にならずにいたのは奇跡だな、当時の営業部長は左遷され
あの牛の開発指揮を執っていた俺の上司もあの牛の犠牲に・・・
営業部長は馴れ馴れしい奴だったが今の薄気味悪い営業部長の・・・名前何だっけ
まぁいいやアイツと比べれば良い奴だったなぁ・・・

あの頃は良かったな
竹中と同じチームで良くみみっちく発泡酒と豆腐で飲み会やってたな
豆腐も今喰ってるスーパーのパックじゃなく竹中の実家のその日出来立ての良い奴だったしな・・・
竹中は今、大ヒット商品のインビシブル・ドローンとインビシブル・サイレンサーを出して
奴の開発チームの給料は大幅にアップ、発言力も向上
人様に迷惑かける商品作っておいて出世って何だよ!!あの野郎!!

あぁいかんいかん、ビールが零れる・・・畜生、俺とアイツの何が違うってんだよ



14日前

ペットボトルのお茶にコンビニ弁当、我ながら侘しい昼飯だな

「富下君」

那須部長・・・うわ嫌な予感しかしねぇ

「なんすか部長」
「君と竹中君って同期だよね?」
「ええ・・・まぁ・・・」
「ちょっと最近彼の様子が可笑しいんだけど心当たりは無い?」
「そういえば、最近アイツの顔見てない・・・出社して来てるんですか?」
「違うんだよ、富下君」
「はい?」
「竹中君のチーム、何故か帰ろうとしないんだよ、泊まり込みで何かしているんだよ」
「はぁ・・・俺は全然分からないですけど・・・」
「そう、食事の邪魔してすまなかったね、じゃあ」

あー・・・怖かった、アイツに何かされるかと思ったわ・・・
でも竹中が泊まり込み?デスマーチか?でも今のアイツなら納期が遅れても文句は言われないと思うが・・・
そもそも那須部長が聞きに来るって事は仕事じゃないのか?



9日前

竹中んとこの研究員が倒れたらしい、原因は過労
可笑しいな、アイツはそんな無茶な事するとは思えないが・・・

「富下さん、ちょっと良いですか、竹中さんのチームって今何やってるんですか?」

えーっと・・・あぁウチのチームの新入りか

「竹中さんのチームに恋人が居るんですが最近どうも連絡が取れなくて」
「知るか」
「竹中さんのチームは最近研究室から出てきてないんですよずっと泊まり込みで」
「知るか」
「あの、話聞いてます」
「うるっせぇな!!何で俺がアイツの事一々知ってなきゃならねぇんだよ!!」
「え、いやだって」
「黙ってろ餓鬼!!」



6日前

休憩室で安っぽい紙コップコーヒーに煙草、あー糞、イライラする

「富下さん、管理部の上尾です、お話よろしいでしょうか」
「うぉ!?脅かすなコーヒー零しただろうが!!」
「すみません、新しいの買いますよ」

上尾が休憩室に備え付けの自販機からコーヒーを二つ買い、俺の前に腰かけた

「どうぞ、砂糖は要りませんよね?」
「気味悪ぃな・・・」
「社員の管理なども我々の仕事の範疇です、実は貴方の同期の竹中さんが研究予算追加を申し込みまして・・・」
「はぁ?それが俺に何の関係が有るんだよ、第一今アイツ何してるんだ?」
「それが分からないのです・・・」
「・・・技術屋で自分の研究を秘密にする奴は多いからな、それで予算追加を受けたのか?」
「既に予算は他の研究チームの3倍程度アップされています、流石にこれ以上は無理です」
「羨ましいね、一体何を作っているやら・・・」

俺はコーヒーを一気に煽って席を立った

「これだけならまだしも、竹中さんは自分の持ち家を売り払ったりして私財を投じ始めたんですよ」
「はぁ!?馬鹿じゃねぇの!?一体何作ってんだアイツ!!」
「研究チームの方々も私財を投げ売り始めて・・・」

有り得ねぇ、一体何やってやがる竹中!!



3日前

トイレに来てみると竹中が洗面台に突っ伏していた

「お、おい何やってんだ竹中」
「・・・・・あ、富下・・・・・」

久々に見た同期はやつれて目にクマまで出来ている、大ヒットを2つ出した売れっ子の姿とは思えない

「・・・・・大丈夫かよ・・・一体如何した」
「心配するな・・・希望は見えた、後はバランスの取り方さえ何とかすれば問題無い」
「はぁ?・・・・・もしかしてお前が作っている奴の事か?一体何を・・・」
「富下、俺はやっぱり技術屋なんだよ、俺が作った物があんな扱いされてたら俺は許せねぇんだよ
だから俺は問題を解決する、そうすればアレも空を飛べるだろうさ、技術屋の意地にかけても」
「何言ってるか分かんねぇ、何かキメてんのか?」
「問題無い問題無い、後も少しだ・・・・・」

ふらふらしながらトイレからでる竹中、それが俺が見た竹中の最後の姿だった


1時間前

研究チーム内のくっそつまらない会議・・・あーだる

「富下さん、話聞いてます?」
「聞いてたが時間損したわ、つまんねー」
「・・・・・」

何睨んでんだこの餓鬼は・・・ったくこれだから

ジリリリリリリリリリッ!!

警報がけたたましく鳴り響く

『非常事態発生!!非常事態発生!!至急社内避難シェルターに避難して下さい!!
繰り返します、至急社内避難シェルターに避難して下さい!!』

久々に聞いたなこの警報

「うわっ!?な、何ですか!!」
「騒ぐな餓鬼、避難訓練通りにシェルターに避難しろ」

俺達が避難してから30分後に爆発が起きた
爆発が起きたのは竹中の研究チームの研究室だったらしい


今、現在俺は最後に竹中に会った者として取り調べを受けている
色々良く分からねぇ装置付けられて嘘を吐いていないか疑われながら

「それでは竹中さんと会ったのはそれで最後ですね?」
「あぁ、竹中が何をやってたかは分からねぇがバランスがどうのこうの言ってた」
「その他には?」
「技術屋の意地がどうたらとかも言ってたな、なぁ良いだろこれで俺は奴の同期だけど、最近はあまり会ってねぇんだ」
「そうですか・・・彼の研究に付いても何も知らない?」
「知らないね、竹中に直接聞けば良いだろ」
「竹中さんを始めとした研究チームは殆ど死亡しました」
「・・・死んだのか、アイツ」
「・・・余り気落ちしてない様ですね」
「研究中に事故で死亡なんて良く有る事だろ、この会社では」
「・・・・・そうですね」

後日聞いた話じゃ、研究チームの生き残りは何の研究か知らずに協力していたらしい
生き残った連中は纏めて解雇、竹中が研究していた物も闇の中だ

竹中の社内葬が行われこの件は終わった



とは言え俺も終わりそうだ、全然アイデアが出ねぇ・・・首も危ういか・・・

「富下さん!!この間の会議のアレ、開発にGOが出ましたよ!!」
「会議?・・・何だっけ?」
「この間竹中さんの爆発の時の」
「・・・・・何話してたっけ、あの時」
「僕考案の『コンニャクを糸コンにする機械』ですよ!!」
「・・・・・・・・・・」

何でGO出したんだよ上は


富下は自身のチームが開発したコンニャクを糸コンにする機械、名付けて『糸コントンネル』の完成品を
独自に改良しローコスト化に成功、ヒットとまでは言えない物の一定の販売台数を挙げる



富下さんって結構歳行ってるだけで大した事無いじゃないですか?-営業部神無月

アイデアとか碌な物出さないけど完成した物の部品数を減らして
ローコスト化とかにする事は結構上手いんですよ、ヒットは出しませんが損も出さない
性格に難アリですが積極的に人に関わる方じゃありませんし-営業部部長木曜