商品番号601 企画会議ログ

ISO27001基準セキュリティ:秘
インビシブルサイレンサー担当チームのみ閲覧可




映像記録:601-A


会議室の一室にてスクリーンに文書が表示される


商品番号601 インビシブル・ドローン 価格:500000円
今巷で大流行中のハイテク機器・ドローン!
我が社ではこのドローンになんと!ステルス機能を取り付けているのです!
その名もインビシブル・ドローン!これを使えば誰にも気付かれずに空撮が出来る!
OLの着替えも覗き放題!ストーキングもバレる心配は有りません!
更にステルス機能はコントローラーに付いているON/OFFスイッチで簡単に切り替えが出来ますGPSも取り付けており
墜落してもすぐに発見出来ます!この夢が詰まったドローンがなんと!50万円!更に今なら送料無料!今すぐ御電話を!


「開発部の皆さんには頭が下がりますね、流石我が社の精鋭です
まさかドローンにステルス性を持たせるとは!!私の様な凡俗にはとても思いつける発想ではありません!!」

嫌味たらしい営業の神無月が開発チームに喜々として言葉を投げかける
開発チームは重く下を向いている

「それで試験的に販売してみたのですよね?ではありがたーいご意見をみてみましょう!!」


スクリーンに以下の文章が表示される

購入者10人中
高評価1人 低評価8人 未回答1人
低評価の例
★☆☆☆☆
欠陥商品(40代 男性)
ステルスをONにするとドローンの姿が見えなくなるから操作が出来ません、馬鹿何ですか?


「まぁ!!何という有様!!折角会社から多額の研究費用を貰っておいて出来たのはゴミ!!
馬鹿何ですか?ええそうでしょうとも馬鹿ですね!!」

「コンセプトは良かった筈ですよ!!」

開発の1人が立ち上がり声を上げる

「そうだ!!ステルスは完璧だった!!」
「商品を尤もらしい文句を付けて売るのが営業の仕事だろう!!」

次々と声が上がる

「皆さんのご意見御尤も!!しかし今回は我々営業もかなり骨を折りました!!
一万名以上の方に声をおかけして買って頂けたのはたった10名なのです!!
これには私神無月も驚きを隠せません!!」

神無月が再び声を上げる

「じゅ、10人?たったの?」

開発チームリーダーがおずおずと聞き返す

「そうなのです!!『犯罪目的のアイテムなのにやれる事は盗撮なのはチープだ』
『50万有ればもっとえげつない事が出来る』即ち企画段階から既にこのプロジェクトは頓挫していたのです!!」

顔面蒼白になりながらチームリーダーは顔を下に向ける

「この責任!!企画段階から独自に進めた貴方方開発チームは一体如何取るおつもりか!?」

会議室を沈黙が支配した、そしてノック音が響いた

「失礼します、インビシブル・ドローン開発チームの方居ますか?」
「木曜主任?何の御用ですか?」
「インビシブル・ドローンについてちょっと色々とね、君は帰って」
「分かりました、では皆さん、ごきげんよう」

神無月が会議室から去っていった

「すみませんね、皆さん、神無月君は人の粗探しが大好きでね」

木曜主任が開発チームに優しく声をかける

「いえ、売れない商品を作った私達が悪いんです、責任を取ってチームリーダーの私が辞表を書きます、それでどうか」
「売れない商品?いえいえインビシブル・ドローンは大ヒット商品になりますよ」
「でもさっき神無月さんが1万人に声をかけて10人しか買わなかったと」
「ええ、ですがバカ売れしますよ」
「・・・仰っている意味が分かりません」
「説明しましょう」

木曜主任が会議室のホワイトボードに文字を書く

インビシブル・ドローンの低評価に音が五月蠅いと言うのが有った

「それが・・・何か?」
「町中にインビシブル・ドローンが大量に飛び交えばどうなります?」
「町中が五月蠅くなりますね」
「インビシブル・ドローンが大量に有ると五月蠅い、逆に五月蠅い且つ音源が分からないとしたら如何でしょうか?」
「・・・見えない音源、つまりインビシブル・ドローンが飛んでいる?」
「その通り!!このインビシブル・ドローンはバカ売れしているから町中常に五月蠅くなります!!
しかしそんな事をすればたちまち我が社にクレームが殺到します!!」
「クレーム殺到ですか・・・ですが、売れないと先程通告されたのでそれは杞憂かと・・・」
「しかし我が社は責任を感じインビシブル・ドローンを回収する有料サービスを始めます!!」
「え?」
「この有料サービスは回収には費用として5000円頂く事になっています!!」
「・・・つまりインビシブル・ドローンを町中に飛ばして回収するマッチポンプをして集金をすると言う事ですか?」

研究チームの1人が怒りを抑えながら尋ねた
彼等にとってインビシブル・ドローンは自分達が心血を注いで作った品、マッチポンプに使われるなど許せなかった
木曜主任は困った様な顔で首を横に振った

「違いますよ、何を言っているのですか、そんな一々飛ばすなんて非効率的じゃないですか」


ホワイトボードに木曜主任がフローチャートを書く


インビシブル・ドローンは人気商品でバカ売れしている、と言う事にして町中にドローンの駆動音の音源を配置する
                ↓
町中が五月蠅くて仕方ない、我が社にクレームが殺到、我が社は対策としてドローン回収サービスを始める
                ↓
ドローン回収サービスを開始、と言う事にしてサービス契約者の回りの音源のスイッチを定期的にOFFにする
                ↓
我が社は見えないドローンを回収した、と言う事にして労せず金を得る


「とこういう図式が組みあがる、お分かり頂けますか?」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!じゃあ私達はこの茶番を成立させる為にインビシブル・ドローンを作ったのですか!?」
「茶番という言い方は気に入りませんね、良いですか、サービス契約者が二週間に一度ドローン回収すれば大体一年で24万円程
十人に一人契約すれば日本人口が大体1億2千万程だから、1200万×24万でほぼ3億近く、十分に凄いと思いませんか?」
「・・・だったら私達が開発する必要は無かった筈です」
「いえいえ、実物は必要ですよ、インビシブル・ドローンが欲しいと言う方に『売れません』では『バカ売れ商品なのに?』と不審がられますし
何より実物が無ければ実際に認知されないじゃないですか、今回の営業一万名もほぼ認知させる為の宣伝みたいな物です」

開発チームリーダーががっくりと肩を下す

「貴方方も大ヒットを飛ばし、貴方達の社内の地位も向上するでしょう、私も主任から出世出来ます
更にドローン回収用のマシーン開発者も貴方達と言う事にしましょう、これで貴方方の社会からのバッシング対策及び更に出世も期待出来ます
当然給料もアップします、これで良いですね?」

開発チームは沈黙した、かなり入念に計画された物だと分かる、主任よりもっと上の人物が絵図を書いているのは明らかだ
もしもこの話を断れば恐ろしい制裁が下されるのは想像に難くない

「あぁそうそう、今回の件は当然他言無用です、もし情報漏洩した場合は社則に沿って処分されます、では失礼します」


記録終了



記録601-Aを見て貰って分かる通りインビシブル・ドローンは殆ど市場に出回っていません
ですが回収には行かないといけませんのでインビシブルサイレンサー担当チームは日々定期的にインビシブル・ドローンを回収しているふりを
サービス契約者、或は契約者の近隣住民に見せて下さい-営業部部長木曜

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最終更新:2015年08月16日 00:02