メインの教師三人が救出に来てから、私は校長室へと連れて行かされた。
ハリー達三人も一緒だ。
ちなみにポンフリーの所に居るのは、ネビルのみ。
重症のクィレルは、奥の寝椅子に寝かされている。
「して、禪。いったいどういった状況だったのじゃ?」(アルバス)
アルバスじいちゃんが聞いてくる。
『うーん。なんて言ったらいいのか……』
「順番に言えばよい」(アルバス)
『え、という事は新学期最初っから??』
「……そこまで遡(さかのぼ)らずとも」(アルバス)
『では、今回のとこからあたりで』
「……ま、いいじゃろ」(アルバス)
?
不満??
後でこの三人の先生には話しておこうかな?
『えっと……』
私は、大まかなあらすじを言ってゆく。
話が終盤に差し掛かる辺りで、セブルスが青ざめた。
ミネルバはため息をつき、アルバスじいちゃんは目を瞑る。
え?
ダメだった??
無謀は承知だけど、見視して後悔するよりかはマシじゃない?
『んで、あっちがハリーを金縛りしたので、そこで天井から登場。逆に相手を金縛りにして、身体から追い出した』
ま、こんなとこだろう。
『で、そっから防御あるのみという事で、ハリーと自分の周りに結界魔法張って、相手をはじいて、相手が捨て台詞吐いてどっかに消えてきました』
こう締めくくった。
「……禪。わしを心配させないでくれ」(アルバス)
『あー、ごめん。アルバスじいちゃん。一分一秒争うくらいに急いでたから……』
「でさ、あの……禪?」(ハリー)
『ん?』
「どうしてあいつがヴォルデモートだって知ってたの??」(ハリー)
『ああ、一度わざと接触しましたからね。ただし、その時は相手を眠らせたうえで接触したのですよ。この時に魔法のレベルにおいて相手を上回っていることが判明したので、その時期からいろいろと工作しておいたのです』
「そう……だったんだ」(ロン)
『ま、その後の罰則の時に狙ってきましたからねぇ。あれにはビックリしましたよ』
「ビックリどころじゃないじゃない!!」(ハーマイオニー)
『そうなんですよねーって、ハーマイオニー叫ばずとも……』
「いっ……!」(ロン)
『大丈夫ですか、ロン。君は本来ポンフリーのところ行きなんですよ?持ち前の薬があったから応急処置で来たけど……』
「ロン、痛みが酷いようなら君は行かないといけないよ?」(ハリー)
「そうですよ!Mr.ウィーズリー!!失神した貴方を連れて行こうとしたら、目を開け、嫌だと駄々をこねたのですからね!!」(ミネルバ)
『って、マクゴナガル教授も仰ってますよ?大筋の説明はしましたし、ポンフリーのところに行ってきなさい。んで、明日の朝と言わず、二日間くらい寝て過ごしたら?その方が、身体にはいいでしょう。回復薬はあくまで体力を注ぐだけ。身体の回復には至りません』
「う……じゃ、その先に失礼してポンフリーのところに行くよ……」(ロン)
ソファから立ち上がるロン。
だが、その足元はふらふらして、おぼつかない。
「誰かついて行った方がよさそうね。ハリー!話は聞いておいて!私がロンについていくから」(ハーマイオニー)
ハーマイオニーも立ち上がり、ロンの身体を支えるように横に立った。
彼女も結構面倒見がいい。
そのまま二人は校長室を去っていった。
『ハリー、あと何か聞きたいことあります?』
「……禪はどうして、いろいろ知ってるの?」(ハリー)
て、いきなり直球ですね。
素直な子も可愛いよ。
『答えは簡単。君より年上だからさ!』
「?どういう……」(ハリー)
『あー、見た方が早いかな。スネイプ教授、あれ外してもらえませんか?』
後で確認したけど、自分でも外せるんだよねー。
でもセブルスに外してもらった方が、嬉しいんだよ。
……我ながらドМな考えだ。
「……しかたないな」(セブルス)
という事で、セブルスにネックレスを外してもらう。
「!!」(ハリー)
『お!いい反応ですね。まぁ、こういう事です』
二十代後半の姿に戻った私を見てびっくりするハリー。
「禪。そのように面白がるなど……」(セブルス)
『ああ、ごめん。悪戯心が……って、アルバスじいちゃん。時期早すぎた?』
「そんな事は無いよ。どの道知られてしまう事じゃ」(アルバス)
「ですが、禪。友に知られてもいいですが、その人にはこのことを秘密にしてもらわねばなりません。決してあちら側に漏れぬように」(ミネルバ)
『了解です、お二方』
「じゃあ、禪。このことは、僕らの胸にとどめ置けばいい?」(ハリー)
『是非そうしてください。そうしなければ、私は君たちと学んでなどいられない』
「そんなに年上なのに、なんで僕らと同じ年齢になって勉強しているの?」(ハリー)
『私は、とある理由で突然魔法が使えるようなってしまったマグルなんですよ。使えはしても基礎知識がない。その使い方が正しいのかもわからない。そんな状況に陥ってしまいましてね。そんなところに、アルバスじいちゃんが来てくれて、孫として迎えられ、ここで学ぶことになったのですよ』
ハリーにそう説明したところで、セブルスがチラッとこちらを見てくる。
……?不満?なのかな??
「……そうだったんだ」(ハリー)
ハリーはふぅっと息をつき、ソファから立ち上がる。
「もう十分だよ。僕は、さっきの二人を追ってポンフリーのところ行ってくる」(ハリー)
『是非そうしなよ。あの二人だけじゃ、バランス取れないでしょうし』
「じゃあね」(ハリー)
『じゃ、またね』
ハリーも校長室を去った。
私は彼の気配が遠ざかると同時に、自らもソファから立ち上がる。
その時、私の目は真剣になっていた。
「禪」(セブルス)
『言わずともわかっているよ。これは、私のミス』
そう言って、アルバスじいちゃんに目配せする。
「いいんじゃな?」(アルバス)
『ええ。一刻を争う。もう、議論してる暇はない』
「……」(アルバス)
アルバスじいちゃんは無言で杖を振り、寝椅子に寝かされていたクィレルを、その寝椅子ごと運んできた。
クィレルに声をかけると、彼は薄く目を開く。
『クィレル先生。今からあなたの権利は私に移行することとなります。また、それにより、もろもろの罪を不問とし、私に仕えることとなります』
「ど……ういう……」(クィレル)
『拒否は受け付けません。ですが、貴方の生きたいという意思に応じての処置であり、これは罰であります』
クィレルの身体に、ネックレスを押し当てた形で触れる。
【我、炎と土に加護されしもの。
眼下に映せしこの者の傷を解析】
かたずをのんで、三人の先生方が見守る。
だが、次に続いた言葉に三人とも驚いた。
【続いて全ての身体構造を解析・分解。
カタチを固定後、再構成】
「「「!!!」」」(先生三人)
「禪!何を!」(セブルス)
【魂に沿って、我の前にその姿を顕現せよ!!】
クィレルが光に包まれ、姿かたちが人でなくなり、光がさらに強くなって……
その光が納まった時、白いウサギがいた。
いや、よく見ると薄青い。
日本の伝統色でいくとは白藍色(どの色かって?そこは*参照で見てみてください)。
「ブウブウ?」
え、ウサギの声って豚みたいって?
いやぁ、実際はこうなんだけどね。
『大丈夫かい?混乱してない??』
「ブウ」(クィレル)
『って、翻訳魔法してなかったぁあ!慧よろしく!』
【御意】
慧が応答して翻訳魔法発動。
『じゃ、改めて分かりますか?』
「ああ、大丈夫です。と、というか私はなぜ視線が低く……っと、わ!動きにくい!」(クィレル)
『えーっと……』
「……ふむ」(アルバス)
アルバスじいちゃんが冷静に杖を振り、鏡を出してくれた。
『あ、ありがとう。アルバスじいちゃん』
「ほほ、必要じゃろ。して、クィレルよ。確認するがよい」(アルバス)
アルバスじいちゃんが杖を振って、空中にぷかぷか浮いていた鏡を、クィレルの前へと移動させる。
「!!なにこれ?!」(クィレル)
クィレルにあるまじき、というかキャラを疑うような驚き方。
「ミ、Ms.蔡塔!いったいなぜ私がウサギに?!」(クィレル)
『禪でいいですよ。……うーむ。何かの動物になるか、小人みたいな姿になるかのどちらかだったんだけど、たぶん……』
【身体の損傷があまりにも進行していたためだろう】
『そうたぶん……って、慧いつの間に出てきてんですか』
【つい先ほどだ。主が困っておるのに、見過ごすのはいただけぬしな】
『……いつ見てもきらびやかな衣装ですね』
【そこは、我の地位ゆえだ。地味な服装では、矜持にかかわるのでな】
……ああ、うん。
なんかスリザリン的な意見だよね。
「ゆ、禪さん?そのお方はどちら様で……?」(クィレル)
『”さん”もいらないですよ。ああこの赤と黒の民族衣装に身を包んでいるのは、慧。私の杖に宿っている神様だよ』
「なっ!……神と!!」(クィレル)
何かと尊いものを見るような目になるクィレル。
【そう畏まるよう見なくてもよい】
『そうそう。私達は、例のあの人に一番似ていて、一番似ていないっていう矛盾した存在だしね』
「??」(クィレル)
『まぁ、分からないですよね。そこは、ここにいる先生方に聞いてください。さすがに何度も言うのは疲れますし……』
ほんと、何度も言うのは面倒なのである。
*ここから人数減るので、()無しです。
「もういいだろう」
ひょい。
『って、セブルス!摘ままないでください!』
「禪はいきなり居なくなるのでな。それに我輩に言うことがあろう?」
……
『……ま、まさか……あのメモですか?!』
「他にあるわけがなかろう」
難しい顔しているセブルスに、首根っこをつままれているこの状況。
やばい。
非常にやばい。
『えーっと――』
「拒否権はないぞ」
『――う、やっぱり』
「という事でいくぞ」
漆黒のクローゼットに向かうセブルス。
当然摘ままれている私は、ついていく事になって――
『アルバスじいちゃん!クィレル先生のことよろしくお願いします!というか、他の処理もお願いしても大丈夫?』
「大丈夫じゃよ。禪こそ、セブルスをよろしくな」
クローゼットに入る前にアルバスじいちゃんにそうお願いした。
校長室に残った三人……いや、二人と一匹。
「……大丈夫でしょうか」
「大丈夫じゃよ、ミネルバ。あれでもセブルスは心配性じゃ。……ま、今は禪限定じゃがな」
「きー」
「……何を言っているか分からんが、クィレルもそう心配する事は無い」
「きー……」
「でも、アルバス。結局どうしましょうか?」
聞くミネルバ。
「ん?」
「賢者の石のことです」
「ああ、友人と話して決めるよ。……結論は見えてるがのぅ」
そんな会話のやり取りがなされていたそうだ。
ああ、目の前には魔王が仁王立ちしている……。
いやぁ!!
身から出た錆として、仕方ないと思ってるけどさぁ……。
この状況恐い。
ハリーの気持ちが今、よく分かる……。
「……禪」
『はい……』
「我輩は、あのような事になるとは聞いていないのだが?」
『すみません。私もまさかウサギまで小さくなるなんて……』
「そうではない。身体を分解して再構成するなど我輩は聞いていない」
『……ごめんなさい。セブルスには半分の事実しか、話していなくて……』
「……はぁ、例の癖か?それとも……我輩は、信用ならぬか?」
『信用してるよ!?……癖、そうだねそれに近いかな。計画の半分だけ教えておいて、後で皆驚かすってことしてたし……』
「もう驚かさずとも良かろう」
『そう、なんだけどさ。なんだか、そうの方がいいみたいなんだ』
「どうしてだ?」
『ほら、私ってある程度のあらすじ知ってるじゃないですか。それで、分かってしまったことなんですけどね……』
「……?」
『スパイなんて、向こう側にもいるってことをですよ』
「?!なん、だ、と!!?」
『これも時が来たら明るみになる事です。ですが、癖を利用してでも、そのものから情報を隠しておいた方がいいと――』
「誰だ!そやつは!」
『セブルス。分かってるよね、私は言わないよ』
「くっ!」
『でもね、セブルス。私は、そいつが目の前に来たら、生かしておくつもりがないよ』
「……」
先程の真剣さとは違う、剣呑とした雰囲気をまとった雰囲気にセブルスが戸惑う。
「禪」
『大丈夫、大丈夫よセブルス。私は、まだ狂ってないから』
言う間に、セブルスが抱きついてくる。
『セブルス?』
「少し、こうしていろ」
『うん』
私の雰囲気が変わるまで、セブルスはそうしていてくれた。
ちなみに。
『そう言えば、一部私の力をクィレルの譲渡しているんですよねぇ』
「確かにそのようだな。見た目が少し変わっておる。ネックレスの石の個数も減っているだろう」
『あ、ほんとだ。という事は、先に歳を重ねた?』
「多分、違う気が……」
という事で、私のネックレスは一つ石をクィレルにあげたため、少しだけ短くなった。
*おまけ
「……さて、やっと採点ができるな」
『あ、そっか。テスト後でしたね』
「その間、大人しくしておれ」
『はーい』(図書室行こうかな……)
「ただし、この部屋でだ」
『へ?』
「他に行くというのなら、ベッドに手錠と鎖で繋(つな)げておいてもかまわんが」
『?!(まさかのセブルスの監禁発言?!)いえ、紅茶でも飲んで大人しくしてます(それしか言えないぃ!!)』
私は紅茶をゆっくりとマグル式で入れるくらい、暇を持て余した。
あ~、レディグレイおいしー。
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