(ハリー視点)
テストが終わり、僕とロン、ハーマイオニーはハグリッドのところにでも行こうかと、城の外へと向かっていた。
「案外簡単だったわね」(ハーマイオニー)
「ウソだろ?僕なんてギリギリだ・・・・・」(ロン)
「あら、そう?結構面白い引っかけとか、言い回しとかが面白かったわ」(ハーマイオニー)
「いいよなぁ。……ビリじゃなければいいか」(ロン)
二人が話している間、僕は考え事とをしていた。
可笑しい何か腑に落ちない。
こう……、しっくりとこない。
どうしてだ?
どうして……
脳裏に浮かぶキーワード。
ニコラス・フラメル
アルバス・ダンブルドア
禪・蔡塔
セブルス・スネイプ
ハグリッド
ノーバード
クィレル(あれ名前なんだったけ?)
賢者の石
三頭犬
脅されていたクィレル
脅していたスネイプ
なぜかスネイプをかばう禪
そして――痛む額の傷
僕の中でそれらのキーワードが繋がっていく。
「おかしい!」
「ほら、ハリーも君がそんな風に思うのはおかしいって……どうしたの?」(ロン)
「何を叫んで……」(ハーマイオニー)
何てことだ、僕は……!!
「見落としてたんだよ、ロン!辻褄が良すぎるんだ!ドラゴンを欲しがっていたハグリッドの前に、タイミングよくその卵を持った人が現れるなんて!!」
僕の足は、口調と共に早くなる。
早く……
早くハグリッドのところに行かなくちゃ……
後ろにいた二人もその可笑しさに気づいたらしく、歩くのをやめて走る。
普段走らない廊下を走り抜け、城壁などなかったかのようにハグリッドの小屋まで足を動かした。
(ハリーside end)
時は来た。
じゃなくて敵が来た。
面白いですけど、おろおろしてる人見るのは。
私の眼下で、ウロウロするクィレル先生の姿をしたモノ。
どうやら、部屋の中央に置かれた”みぞの鏡”を調べているようだ。
……ありゃ、意志ないねぇ。
乗っ取られたか。
そう判断するのは、手の位置が可笑しいからだ。
どう考えたってちゃんと見えてない。
ただ気配を探って手探りしているか、それとも魔法を駆使してちゃんと察知しているのか、何とか調べたいところを触っているようだ。
ケアレスミスでこうなるとは、嫌なものだ。
まぁ、すぐにでも片をつけたいが、それではハリーが試練を受けてここに来る意味がないし、こいつの油断が生まれない。
さぁて、主人公君はいつ来るかなぁ。
モリフクロウの結界は、私が倒れぬ限り切れる事は無い。
心配はない。
庸も皓もジッとしている。
偉いよこの子ら。
後で、撫でてやらなきゃなぁ。
私はそのまま天上で待った。
(ハリー視点)
「こうなったら僕らが行くしかない!」
ハグリッドにタマゴをくれた人の情報を聞き、その事を言いに行ったマクゴナガル教授にあしらわれて、僕は呆然としていたが意を決して言う。
もう夕暮れ時(正確には十八時頃)だ。
間に合うだろうか……。
「そうだね!行こう!」(ロン)
ロンが賛成してくれる。
「待って!私達だけじゃ無謀よ!」(ハーマイオニー)
止めるハーマイオニー。
「じゃあどうすればいいのさ!のんきに盗られるのを待つつもり?!」(ロン)
「そんなことないでしょ?助っ人なら心当たりあるじゃない!」(ハーマイオニー)
「?誰さ?」(ロン)
「禪よ」(ハーマイオニー)
「ええええ?!」(ロン)
「って、そんなにビックリすること?当然の人選だと私は思うわよ?」(ハーマイオニー)
「どうして禪なのさ?!彼女はスネイプの肩持ってんだぜ?」(ロン)
「そうだね、ロン。だけど、僕はそれ正解だと思うんだ。ただ、言い表せないんだけど……」
そう、僕は言い表せられない。
けれど、僕は禪をなんとなく信頼していた。
「ハリー、それは私が言うわ。ほら、彼女っていつも掴みどころないくせに、味方になるとすごく心強いじゃない!大体敵じゃないと思うわ!じゃなきゃ、テスト前のクディッチで負けてるはずよ?!あれでグリフィンドールが勝ったからこそ、スリザリンと同列一位とはいかなかったけど、二位になれたんだから!」(ハーマイオニー)
「って、ハーマイオニー。説明じゃないよ、それ。……でも、そうだよ。わざわざグリフィンドールに来て中から壊すなんて、まどろっこしいことしなくてもよかったんだ。本当にスネイプの味方をするなら、スリザリンに入って妨害すればよかったんだ。いや、彼女の場合入って普通にしてるだけで、どんどん点数を入れてくれたと思う」
「ハリーの言ってることを言いたかったのに!!」(ハーマイオニー)
「ご、ごめん」
「ああ、ハリーの事を怒ってるわけじゃないの。自分に悔いてるだけ……」(ハーマイオニー)
……それってどうなの?
「……ロン」
「わかったよ。……確かに、言われてみればそうなんだよなぁ」(ロン)
「納得してくれてよかったよ。じゃあ、禪の自室に行こう」
三人して禪の自室に向かおうとする。
談話室から出たところで、僕らはとある人物に足止めされた。
「こんな時間にどこに行くつもり?」
いつもは大人しいネビルがそこにいた。
「また、点数を下げに行くの?」
ネビルはどうやら、会話の断片を聞いていたらしい。
彼は構えて、殴る体制になる。
「ネビル。これには訳があるんだ」
「君の為でもあるんだ!」(ロン)
「……」(ハーマイオニー)
説得する僕らとは違い、ハーマイオニーは黙っている。
「い、行かせないぞ!僕を倒してから行きなよ!」
「ね、ネビル?」
「……わかったわ」(ハーマイオニー)
驚く僕とは対照的に、ハーマイオニーは落ち着いた声で、ネビルに素早く杖を向け、呪文をかけた。
ネビルは固くなってその場に倒れる。
「なにをしたの!?ハーマイオニー!」
「ま、まさか……」(ロン)
「大丈夫よ、二人とも。生きてはいるわ。ただ、固まってもらっただけ」(ハーマイオニー)
……すごいけど、なんだか怖いよハーマイオニー。
その場はとにかくネビルに謝って、柱にもたれさせるようにしておいた。
そして僕らは禪の私室のある地下牢を目指す。
「ウソでしょ?!」(ハーマイオニー)
地下牢に着いた途端、禪の部屋の前に先に立ったハーマイオニー愕然とし声を上げた。
「どうしたのハーマイオニー?」
「ゆ、禪が……!!」(ハーマイオ二―)
その声があまりにも悲痛に聞こえたので、僕はハーマイオニーを押しのけて禪の部屋の前に立つ。
”しばらく留守にします。問い合わせはセブルス・スネイプ教授まで!”
というメモが扉に張ってあった。
「やばいじゃんか!」(ロン)
いつの間にか横に来ていたロンが驚いた声を出す。
「急ごう!禪ったらスネイプについて行っちゃったんだ!」
このメモの結論はそれしかない!
僕らは、再び疾走して今度こそ三階を目指した。
(ハリーside end)
しばらくすると、幽霊もどきはいじけるように床に座った。
……精神年齢いくつだよ。
五十歳ぐらいだろ?たしか。
もっと考えてごらんよ。
簡単に手に入る品物なんだぜ?
って、こいつの思考じゃ無理なんだけどね。
一般人で大丈夫っていう意味なんだから。
うん、こいつには無理だ。
けれど、もうちょいやることあるでしょ?
主人公が来る予感とか、予測はしてるんだし。
仕掛け作るとか、落とし穴掘るとか……あ、無理だなここ石づくりだ。
でも、足を引っ掛けるとかできるよなぁ。
拘束の罠もできそう。
あー、こういう時、蜘蛛ってすごいなぁって思うよ。
短時間で巣を作っちゃうんだから。
あれだ。
この時の敵って、ダメな敵だ。
部下でいくと使えない部下だ。
アホっしょ?
……今消滅させれたら楽なのにぃ。
分霊箱と取り巻きがいるから無理だけど。
…………しかたない。
四年生の時覚えてろよ。
ぜーったいに半殺し状態にしてやるから。
ちなみに怒ったりしてないのは、感情を何とかコントロールしてテンション下げているからです。
いやぁ、ステルスモード使っても、殺気とか飛ばしちゃったらやばいかもしんないからね。
いきなり下から攻撃来たら最悪ですからね。
兎にも角にも、ハリー早く来て~。
ガラララ……
遠くから物音がした。
その物音を聞いて、座っていた人物がゆっくりと立ち上がった。
「やっとか……」(クィレルもどき)
あーうん。
敵を待ちかねてましたか。
でも私は、この瞬間思うのは、モリフクロウが無事に飛びだったか否かなんだよなぁ。
あの子しだいで結構救出隊の駆けつけるスピードが違うからね。
程なくして、ハリーが乗り込んできた。
そーか、ハーマイオニーが残ってロンの治療と連絡役をするんだったね。
ま、彼女より早くアルバスじいちゃんに連絡しちゃうんだけどね。
「貴方が?! 」(ハリー)
クィレルを見て驚くハリー。
「私だ。ハリー・ポッター君にここで会えるかもしれないと思っていたよ」(クィレルもどき)
いやいや、待ってたんだろーが。
「でも、僕は……スネイプだとばかり……」(ハリー)
「セブルス・スネイプか?確かに彼はまさにそんなタイプに見える事だろう。彼が育ち過ぎたコウモリみたいに飛び回ってくれたのがとても役に立った。まぁ、常に彼の近くにいる女生徒は邪魔であったが、彼女も素材としてはダイヤモンドだ」(クィレルもどき)
あら、評価してるけどそれって標的にされちゃいましたね。
でも標的にされるなら、あの某マフィア漫画の一流ヒットマンにされたいなぁっと思ってるので、遠慮します。
「彼女をどうする気だ!」(ハリー)
「もちろん、役に立ってもらう。セブルス・スネイプは君に誤解されながらも守った、私から。ああ、あのクディッチの時に君が箒から落ちていれば、もっと苦しまずにいられただろうに」(クィレルもどき)
「なっ!」(ハリー)
良いリアクションをするねぇ主人公。
「おまえは邪魔なのだ」(クィレルもどき)
そう言って、クィレルもどきが杖を振り上げる。
ハリーが金縛りにあう。
「な、なにを!」(ハリー)
「私では、取り出せないようなのでな。さぁ、こちらまで来てもらおう」(クィレルもどき)
そう言って杖を振り、ハリーの身体を操って鏡の前へと来させようとしている。
ココ!!
『させないわ!!』
結界を解除し、二人の間に割り込んだ。
「なっ!どこから!!」(クィレルもどき)
「!!」(ハリー)
驚く二人。
『最初っからいたわよ?くすくす、そこのクィレルもどきが来る前からね』
そのクィレルもどきが降る前に、杖を振り、彼をこっちが縛る。
「く!!」(クィレルもどき)
『悔しい?でも、気づかなかった貴方の方に落ち度があるのよ?んで、そろそろクィレルの身体から出て行ってくれるかしら?知らない人??』
「どういうこと?!」(ハリー)
ハリー、君分かってなかったのね。
こんなに不自然な動きしてんのに。
「いつ気づいた」(クィレルもどき)
『んなもん、最初っからよ。あ、出て行きたくないっていうんだろうけど、強制的に出て行かせるから』
「禪!いったいどういう事!?全然わかんないよ!!」(ハリー)
『ハリー、後で説明しますから、少し黙っていてください』
私は目を細めて、ツカツカとクィレルの身体に歩み寄り、心臓部分に手を当てた。
解析魔法をかけ、動脈を確認し、固定して魔力をそこに流し込んでいく。
「うあがああああ!小娘ぇ!何をするぅ!!」(クィレルもどき)
「!!!」(ハリー)
『知らなくてもいいわ。ねぇ、ヴォルデモート。
とにかく――そっから出てけぇ!!』
ドン!!
魔力の出力量を増やし、ヴォルデモートを弾き出す!
クィレルの身体はその場にドサリと崩れ落ちる。
「おぉのれ!校長の孫!!この恨みは!この恨みはぁあ!!!」(ヴォルデモート)
『うるさいよ。って、私に行かずにハリーに突進かい!!』
ハリーと私、クィレルの周りに結界を張り、その突進を防いだ。
バチン!!!
「くそぉ!!」(ヴォルデモート)
『させるか!!とっとと、どこか行け!!むしろあの世行け!!』
叫ぶ私。
「くっ、だが私はまだ生き続ける!」
霧のようなヴォルデモートは、捨て台詞を言いながら、部屋から去っていった。
…………………
…………………………
『ふぅ、なんとかなった!』
その場に座り、息をつく。
すると、鏡の後ろから庸と皓が出てきた。
ああ、君らそこに隠れてたのね。
この数分後、アルバスじいちゃんとセブルスとミネルバの三人が乗り込んで来たのは言うまでもなかった。
いやぁ、やっぱり早いうちの連絡っていいよね。
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