翌日

 

 目が覚めると、セブルスの顔が真ん前にあった。

 

 うん、これは……って、腰痛い。

 夢じゃなかったよ。

 マジで冷静になるとあれだね。

 死にたいほど恥ずかしい!!

 

 ……どっちも裸だし……。

 まぁ、うん。

 ちゃんとネックレス外してからだったから、良かったけどさぁ……。

 あああ、マジで死にたい……私ごときがこんなポジションにいていい訳がない。

 もっとこう、お嬢様系姫女子がここにはぴったりだろうに。

 

「……大丈夫か?」

 

 ふぎゃん!

 セブルス起きてた!!

 

『は、はい。あのセブルス……その』

「けっこう、可愛らしかったな」

 

 ふぁああ!

 褒められた!

 というかそのセリフは、セ、セブルスがセブルスじゃない!

 

『ふぁ、う、あう』

「おい、正気に戻れ」

 

 はぁ、とため息をつきながら、セブルスはベッドを下りて着替えを済ませた。

 

「……もう五時だ着替えろ」

 

 素直じゃないなぁと思いながら、ベッドを下りて着替えを済ませた。

 って、昨日のまんまかぁ……。

 下着だけでも変えておこう。

 

『ちょいセブルス、隣行ってきます』

 

 一言断ってから、ステルスモードを発動させて、隣の私室へと戻る。

 イチイチ魔法の解除と発動が面倒だが、プライバシーと貴重品が守れるのなら仕方ない。

 さっさと下着を変えて、またセブルスの部屋へと戻った。

 

 戻ると、セブルスはソファに座って、紅茶を飲んでいる。

 

 うわぁ、くつろいでいらっしゃる。

 

 ステルスモードを解除すると、セブルスが隣を叩いて呼んだ。

 

 ……そこに座れと?

 ま、いいか。

 

 ソファに歩み寄り、隣に腰かける。

 セブルスはその間に杖を振り、扉を施錠した。

 

『それで、どうしたの?』

「良いから、飲んでおけ」

 

 そう言って紅茶を押し付けるセブルス。

 

 あ、ツンデレか?ツンデレなのか??

 

 大人しく、もらった紅茶を飲みながら、そんなことを考える。

 紅茶を飲み終えると、ひょいと抱えられ、膝に乗せられた。

 

 って、まだネックレス付けてないから、かなり重いと思うんですけど!

 

「……」

 

 無言のまま、抱きしめられた。

 

 うう、慣れない……。

 

「……心配させるな」

 

 あー、セブルがセブルスたるゆえんの、心配性が……。

 

『大丈夫ですよ。今のところ』

 

 こうしてあやしてあげなければ、セブルスってどんどん落ち込むんだろうなぁ。

 

『助ける手段は、話したでしょう?というより、話すしか選択肢くれなかったじゃないですか』

「当然だ。しかし、あのような手段だとはな。そのレベルの魔法は、もう上級生以上だろう」

『そこは、慧のおかげですよ。まぁ、私自身の杖なし魔法の特性でもあるんですけどねぇ』

「はぁ」

『そんなに心配?』

「……当り前だろう。もう失いたくないのだ」

 

 あー、セブルスにそこまで言われるとは、かなり幸せだなぁ。

 

『まぁ、何とかなりますよ。一年目で気を張っていたら、最後まで走り抜ける事かないませんて』

「はぁ……まだ数年あるのか」

『って、セブルスには言いましたよね?確かここに来た時に、そんな事』

「……覚えておらんな」

『でしょうね。事が何年後に終わるとか、正確には言ってませんから。えっと、日数とか細かいところは知らないので、とにかく、ハリーたちが卒業するまでですねぇ』

「はぁ……」

『あー、うん。頑張ろうねセブルス。私もかなり頑張るから』

「…………仕方ないな」

 

 ため息をつき続けるセブルス。

 

 ああ、もう!

 マジでヴォル様を瞬殺か、暗殺してぇ!!

 セブルス泣かしたの誰じゃぁ!!って叫んで!!

 でも、そんなことは無理なんで。

 というか、戦闘経験皆無ですし、極力危険な人には会いたくない。

 ええ、そりゃもう某マフィア漫画の主人公張りに「いやだ!」って叫びまくるわぁ!

 

『大体、あの案を出した時点で、私は直接介入することが決定してるんです。直接手を触れなければ発動しないので、結構危険といえば危険なんですよねぇ。ま、それをできるだけ安全に近づけるために、いろいろ試行錯誤してるんですけど』

「是非、安全にしてくれたまえ」

『了解です』

 

 セブルスの頭を撫でながら、私は苦笑した。

 

 あー、この頭を撫でるのも癖だなぁ。

 妹三人もいたから、おねぇさんという自覚というか、なんと言うか……

 

 


 

 

 変な自分の癖を再認識しながら、何とか授業に参加した。

 

 事の後って、結構身体が軋んで辛いんだよねぇ。

 

『さて、ハリーたちからの視線は少しだけ柔らかいか?……でも疑ってるっぽいねぇ』

 

 授業を受け終えて、地下牢の私室へと戻りながら、いろいろ考える。

 

 学年末テストまでは、あと一か月ほど。

 つまりは、現在五月ちょい前。

 しかも、なぜか目の前にクディッチが迫っていた。

 なんでだよぅ、っと思ったら原作ではなかったレイブンクロー戦

 ……あー、もうめんどい。

 しかし、あれだね。

 今回のテスト一年生のテストなだけあって、かなりイージーだよね。

 でも、フリットウィック先生のテストだけ知らない踊り方だったから、それだけ注意か。

 …………あと他に注意するものは……ないかな?

 セブルスのだってレベルが低い魔法薬だし。

 

「禪!」

『ん?』

 

 声がしたので、振り返ってみるとそこには、ネビルがいた。

 

『どうしたのです?』

「ち、ちょっと話がしたくて、さ。そ、その……」

 

 ネビルが来るとはこれいかに。

 一体何がどうなっているのか……。

 

『では、此処でもなんですし、私の私室へ来ませんか?』

「あ、うん。そうしよう」

 

 ネビルをともなって、私室へと戻る。

 

『座ってくつろいでください』

 

 ついこの前に取り寄せたふかふかソファを指差して、私は杖を振る。

 いつも通り、杖で引き寄せたティ-セット一式で紅茶を入れ始めた。

 

「い、いつ見ても凄いね」

『そう?まぁ、慣れてしまうと結構簡単ですよ。まぁ、茶葉はイングリッシュ・ブレックファーストっていうマイナーなのですが、どうぞ』

「ありがとう」

『熱いので、気を付けてください。そうだ』

 

 杖を再度振り、今度はマフィンを引き寄せる。

 

『はい、どうぞ』

「ありがとう。……何か入ってるね」

『ええ、プレーンだと物足りないので、ちょっとアレンジを。確か、クランベリーを入れたと思います』

「おいしいね」

『ありがとう』

 

 

 

 そうして二人で、一息ついた。

 

 

 

『で、どうしたのです?ネビルが一人でいるのはいつも通りなのでしょうけれど、確かこの時間はいつもスプラウト先生の所に居るのでは?』

「そ、そうなんだけど……禪。明後日のクディッチのこと知ってる?」

『そりゃぁ、一応補欠ですし……』

「じゃあ、ハリーのドタキャンも知ってたんだ……」

『へ?ハリーが?ドタキャン??』

 

 え、なにそれ?聞いてない。

 

「知らなかったの?今、グリフィンドールはその話で持ちっきりだよ?

『いったい何がどうなって……』

「えっと、確か……ハリーが急に倒れたんだよ。高熱出したとかで」

『……それ、ただの病欠ですよね?というか、それ大丈夫なの??』

「今ポンフリーの所に居るよ」

『はぁ……ん?という事は、今ハリーってセブルスの薬飲まされてるんじゃあ……』

「だと思うよ」

『ご愁傷様、ハリー』

「で、なんだけど……。かわりのシーカーって禪だろ?」

 

 …………

 ………………

 

『はぁ、すっかり忘れてました。確か、今日は……あと一時間したら練習でしたね』

「大丈夫?シーカーって、いつも何か……トラブルになってたし…………

『そうなんですよね……』

 

 たいあたり、ずつき、かぜおこし……って、まるでポ○モン技みたいだけど、クディッチでは当たり前の様にアリだ。

 

『一番怖いのは、ブラッジャーが顔に当る事ですか』

「追いかけられるのも怖いよ?」

『だよねぇ……ちょい憂鬱になってきたよ』

 

 どうやら、テスト前に波乱万丈のようだ。

 


 

 

 わあああああああああああ!

 

 原作を変えたからか、テストより前に来たレイブンクロー戦。

 その会場は今、試合も始まっていないのに歓声が飛び交っている。

 

「禪。準備は?」

『大丈夫よ』

 

 問いかけてくるウッド先輩に、私は靴を履き直しながら答えた。

 

『ただ、来年とかでビックリさせれないのが悔しいわね。熱を出さなければ、ハリーの活躍だけで油断させられていたというのに』

「そこか。まぁ、確かにそうなんだよな」

『ま、やるしかないでしょうから、行きましょうか!』

「だな!皆行くぞ!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

 心機一転し、競技場の中心へと歩いてゆく。

 

 今日の審判は――なんとシニストラ先生。

 天文学の先生で、昼夜逆転生活バンザイ!っいう人のはずだ。

 

『って、シニストラ先生大丈夫なんですか?眠気』

「ああ、禪ですか。大丈夫ですよ。ふふふ、眠気覚ましの薬をスネイプ教授に調合してもらいました」

 

 声をかけると、なんか視線だけどこかに行ってしまっているシニストラ先生。

 

 ……本当にこのホグワーツって個性あふれる先生だけいるよね。

 フツーよりかはマシだけど……まさかのヤンデレキャラなんだよねぇ、シニストラ先生って。

 

「あー、ほら。皆位置について。じゃないと私はここでリストカットを……」

『「「「「「しないで!!」」」」」』

 

 まさか、先生の自殺を阻止するために、クディッチをすることになるとは思わなかったよ。

 

「あは!では、怪我したくない人は参加しないで良し!」

((((((おい))))))

「では、それ以外の人位置について――よーい、は・じ・め!」

 

 色々突っ込みどころがあるヤンデレシニストラ先生の合図で、クディッチのスタートが切られた。

 

 まずは、チェイサーたちが動き、クアッフルを奪い合う。

 奪ってはゴール手前で阻止され、奪われては、阻止する。

 ウッド先輩なんかは、ずっとキーパーで、それをハラハラしながら構えていた。

 そしてその横では、双子たちビーターがブラッジャーを打ち合っている。

 

 私はというと、それらの動きを把握しながら、上昇を続けていた。

 競技場の塔より少し高い位置で停止し、目を瞑る。

 

 まだよさそうだねぇ。

 というかスニッチ、影も形もありませんし。

 もう少し、クアッフルの方で点数に差が出てからでいいでしょう。

 

 頭の片隅でそんなことを思う。

 

 

 

 五分くらいして目を開けると、もう皆もみくちゃだった。

 

 

 

 ……空中で、傍観しててよかったよ。

 

 

 さすがにあの場には行きたくない。

 しばらくそれらを見ていたが、一回深呼吸をしてトリップ特典を行使する。

 あの反則技とも思える“無”か“有”か、生きているか、死んでいるかという判断能力だ。

 

 うーん、半径十メートルにはいないってことは…………スニッチはまだその気じゃないようだ。

 それに、見回しても、キラキラ光っているのは眼鏡と装飾品ばかりだし。

 

 

 

 ――それからさらに十分後。

 

 

 

 はい、きました!

 ちょうど私の頭上五メートルくらいにスニッチ発見!!

 えーっと……レイブンクローのシーカーは、っと――気づいておりませんね。

 じゃ、お先に―!!

 

 

 ということで、私は箒の柄を上に向けて急上昇!

 結構なスピードで突っ込んだにもかかわらず、躱された!!

 

 

 ああもう!

 スニッチって無駄な回避能力あるよね?!

 

 

 ここで、レイブンクローのシーカーも私の行動に気づいてこちらへと突進してくる。

 

 

 ふぅー、ま、今さら来ても仕方ないよーん!

 

 

 私は微かに横に飛びのいただけのスニッチを、反射神経と意地で取った!!

 

 

 レイブンクローのシーカーを回避して、さっさと下へと降りてゆく!

 これ以上追いかけられるのは嫌ですぜ!

 

 取ったスニッチをちゃんと審判や中継に見えるように掲げた。

 

 

「試合終了!試合終了!!グリフィンドールの勝利!」

 

 

 試合終了宣言がなされ、どよめきが増す場内。

 

 あれだよね。

 早すぎるっていうんでしょ?

 そりゃ、ハリーよか速い気もしてたけどさぁ……。

 

 

 レイブンクローのシーカーは目を見開き、心底驚いた表情をしている。

 

 

 ふっ、瞬殺さ。

 って、一発で取れなかったから、瞬殺じゃないんだよなぁ。

 まぁ、かなり早めに切り上げた自覚はあるんだけど。

 

 

 この後群がる人々を回避してとっととベッドにもぐりこみたかったのだが、それは叶わず私は双子に両脇を抑えられるようにとびかかられ、ついでほかのチームメイトにも飛びかかられた。(ウッド先輩だけ、私の表情を見て拍手で祝ってくれました。)

 

 


 

 

 なんとかあの混乱から生還した私。

 

『セブルス~。ただいまぁ』

 

 セブルスの自室まで逃げてきた。

 やつれている私を見て驚くセブルス。

 

「どうしたのだ?」

『あははは、シーカーポジションで目立っちゃいました』

 

 ……

 …………

 

「どうして貴様は――」

『うん、ごめんなさい。ハリーより目立っちゃってごめんなさい』

 

 ため息をつくセブルスと、後悔する私。

 

「で、何があったか事細かに教えろ」

『はい……』

 

 迫るセブルスの顔に、私は事細かに話さざるを得なかった。

 

 やはり話してゆくたびにセブルスの顔は険しいものになっていった。

 

「なぜ、あやつは熱を出しているんだ……」

『あれ?セブルス薬作ったんじゃ?』

「作り置きの分を飲んでいるはずだ」

 

 さよか。

 確かに毎回毎回作ってるわけじゃないもんねぇ。

 

「それで、お前が出たというわけか……」

『そう』

「で、シーカーか」

『うん』

「試合は二十分程度で終了……」

『ええ……』

 

 試合時間の件で私は横を向く。

 

「はぁ。変な事はされてないだろうな?」

『されておりません』

「つけられたりは?」

『まきました。というか、ここには近づきもしない人ばかりですので、大丈夫です』

 

 だってねぇ。

 この地下牢ってみんな来ないのよねぇ。

 スリザリンであろうとも、セブルスと地下牢の気温は嫌がる。

 そういう事だから、逃げるならココなのだ。

 

 セブルスがソファから立ち上がり、私の目の前まで来たと思ったら――抱きしめられた。

 

 なんか、この頃抱きつかれるなぁ。

 

「……」

 

 無言。

 

『心配ですか?でも、大丈夫ですよ。あの人弱ってますし、いちいちイベントごとに手を出せるほど体力がありません』

「……はぁ」

 

 なんで、ため息つくん?

 ちゃんと引き際とか心得てるよ??

 

 疑問を頭に浮かべながら、抱き上げられてソファに移動させられネックレスを外される。

 

 って、盛(さか)るな!

 

 そのまんまギュッとさせられる。

 

 あー、あれか。

 ただ不安なんだ。

 えーっと……こういう時ってどうすればいいのかな?

 

 恋愛経験も皆無だから、あんまり分からない。

 

 なでなで。

 とにかく、頭を撫でることにしました。

 それくらいしか知らないんだよぅ。

 

 

 拙(つたな)いあやし方しかわからないけれど、兎にも角にも、セブルスが飽きるまでずっとその状態だった。

 

 

 

 

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