なんかハリーたちがワタワタしている。
彼らと別れて単独行動しているが、遠目に見ても丸分かりだった。
……そりゃ、ドラコ君が首突っ込むわけだわ。
ま、私も首を突っ込むのですけど。
ドラコ君にはお灸が必要だしね。
で、私は相変わらず。
「Ms.蔡塔!ブラボー!!」
と、先生方の高評価を受けて着実に得点を稼ぎまくっている。
そりゃもう、マイナス点をもらっても構わないほどに。
はははっ!
ゲームで絶対損にならないようにお金をため、レベルを上げたうえで敵に挑んでたりしてますからね。
経済的に無敵状態だから回復し放題。
レベル上げまくってるから、ボスだろうがサクッと倒してたから!
かなりの時間数掛かってのクリアだったがな!
用意周到と呼びたまえ!!
「それで、いつまで単独行動をつづける気だ?」
自室に戻って薬を調合していると、セブルスが入ってきてそう聞いてきた。
『うーん。今学期末までですかねぇ。そうしないとこの件は終わるに終われないでしょうから』
「……やはり試験あたりで何かあるのか……」
ため息をつくセブルス。
ああ、うん。
テスト作りながら、賢者の石とハリーの心配って大変だね。
どの世界でも、先生っていう職業は大変なんだよなぁ。
やっぱ、私は軍人と先生とその他公務員にはならんでおこう。
『ま、セブルス。そう心配しないでください。私いるんで楽できるはずですから』
「何処が、楽をできるというのだ。お前も心配の種なのだぞ?」
『へ?……んまぁ、なんとかなんでしょ。これでも、セブルスとは違った手法で欺けることは出来ますからねぇ。えっと、今は名前を言わない方がいいんでしたね。例の人って』
「っ!どうやってだ!!」
『事が終わり次第お教えします』
「今すぐ言え!」
『すみませんが、現時点での回答は致しかねます』
なんとかセブルスを巻いて、夜の学校を散歩する。
『ステルスモード、様さまですねぇ』
たとえセブルスの背後にいたとしても見つかんない。
それをいいことに悠々とおバカなドラコの後をついて行っている。
ふふっー、ふ~ん。
ドラコくーんなぜ気づかぬぅ~♪
君の背後には誰かいるぞ?
ほら、気づきなさいな。
いるのは私♪
”七つの子”のリズムで脳内で口ずさむ。
某名探偵アニメの裏組織のボスのメルアドだけど、そんなノリじゃない~(笑)
はい、ふざけてすみません。
「マクゴナガル教授、こんな夜更けにすみません。どうしてもご報告したいことがあり――」
「Mr.マルフォイ!まったくです!こんな時間に!!それでなんだというのです?!」
意外と素直にミネルバの元まで行って言うドラコ。
……あれ、意外と抜けてる?
ルシウスと似ても似つかないほど素直だよ。
ヤベ、こいつ結構ひねくれてる思考のはずなのに素直だよ。
あれじゃね?
ルシウスマジでただの女タラシだったんじゃ……
んで、家ではナルシッサさんが上っていう恐妻家なんじゃ……?……
帝王、マジで消滅してくれ。
ドラコの性格叩き直しちゃるから!!
あ、でもとにかく今年を乗り切ろう。
単独行動を始めてからだいたい二週間は経ってるし、まぁなんとかなるだろう。
「実は、夕食の席でハリー・ポッターが他の二人の仲間と共に真夜中に塔の上に行くと言っておりましたので、それを言いに」
「そうですか。では、セブルスと共にそれが本当かどうか見にゆきましょう」
ミネルバはそのまま部屋を出て――あ、さすがにガウンを取って――いった。
「さて、Mr.マルフォイ。貴方はこのままこの部屋にいなさい」
「ええ、わかりました」
スリザリン独特の笑みを浮かべて頷くドラコ。
必然と私とドラコだけになったが、ドラコはミネルバの足音が消えると同時にドアに手をかけた。
って、やっぱかぁああああ!!
私は素早く杖を振り、ドラコに失神呪文をかけて気絶させ、さらに縄を出してふん縛る。
「結局、手段選ばんのね」
ため息ひとつついて、部屋を出る。
ミネルバいなくなったら即逃げるとかそれアホだし。
あとで大勢の前でさらし者確定なんですけど……
こりゃ、セブルス手こずるわけだわ。
「んじゃ、行ってみましょーか」
かなり遅れてしまったが、私はハリーたちがいるであろう塔へと駆けて行った。
……なんとかミネルバに着いたけど、ハリーたちは既に捕まった後。
…………ああうん、後の祭りだね。
「Mr.ポッター!Mr.ウィズリー!」
ミネルバが二人を捕まえて、説教してこっちに来ている。
原作であれば、フィルチに捕まっている彼ら。
あれじゃね?
結構イージーモードになってるんじゃ……
ま、いいか。
さて、じゃ――ミネルバの部屋の真ん前で待ってよ、っかな。
もう一度ミネルバの部屋まで戻り、ステルスモードを解く。
はぁ、先回りするのって、けっこう疲れるね。
三分と経たないうちに、ミネルバがコツコツと足音を立たせてハリーとロン、そしてセブルスを引き連れてきた。
うっそん!
『あはは、死んだ。フラグ的に死んだ』
そう言えば、セブルス見回りしてたの忘れてた。
「さぁさぁ、二人とも部屋に――禪!いったい貴女までどうしたというのです!」
早口に言うミネルバ。
後ろにいる男子二人は目を丸くしていて、セブルスは難しい顔をしている。
『こんばんわ。マクゴナガル教授。スネイプ教授もこんばんわ』
「どうしているのだ」
セブルスが聞いてくる。
『えっと、今日は見回りではなかったのですが、不審な発言をしている人が何人かいましたので気になって……』
「おまえは心配しすぎだ。今回は大目に見ることは叶いませんぞ?」
「そうですよ、禪。今日は当番ではないのですから。貴女からも点を引くと言うことになりますので、あしからず」
『でしょうね。致し方ありません。ところで、教授方。先程、この部屋から脱走しようとしていた子がいたので、少しばかり、気絶させて逃げないように縛ってしまったのだけですけど……』
「……は?」
「逃げ出そうとしていたのですか。それを阻止してくれたことには感謝しますが、減点はそのままです」
セブルスはどうやら事態を上手く飲み込んでいないようだ。
ドラコ見たらどんなリアクションするだろうか……。
……ミネルバに”とにかくついてきなさい”って言われて、尚且つ掴まってるハリーの姿とドS心をくすぐられてついてきたってとこか。
『別にいいですよ。それで』
「ではとにかく部屋に入りましょう。夜ですから冷えてしまいますよ」
そうミネルバに促されて、私は他三人と共に部屋に入ったのだった。
ちなみに、縛られているドラコを見たミネルバは感心していた。
セブルスは苦いものを噛んだような顔になって、ハリーとロンは目を丸くしながらも内心で喜んでた。
『んで、ハリー、ロン。どうしたのよ?こんな時間に。』
教授方二人の説教から解放されて三人で寮へと歩いてゆく。
ちなみに、ドラコは私達の説教が終わった時に気が付いたので、入れ替わりで、現在説教中だ。
「――ちょっと、いろいろあって。ね、ロン」
「ああ、そうさ」
二人は顔を見合わせるとそう言った。
完全に警戒されてますね。
ま、今回は仕方ないか。
そのまま寮へと着き、夫人に通してもらう。
婦人は吃驚していたが、何となく察してくれたようだ。
『じゃ、お休み二人とも』
私はそう言って二人を談話室に残し、そそくさと女子寮へ上がっていった。
部屋に入れば、ハーマイオニーは熟睡しており、ロシアンブルーの庸は起きていた。
……やっぱ猫は、夜行性だよね。
私は庸を抱き上げ、静かにベッドに滑り込む。
『ありがとね、庸』
小声で、待っていてくれた猫に礼を言い、私は眠りの淵へと落ちていった。
こうしてあっさりと終ったノーバードの件。
って、いやいや、そんなことはない!
これでもかなり手回しをしている。
だが、その手回しは今の状況までは回避するには至らない。
「まさか、あのハリー・ポッターが?」
「一晩でこんなに引かれるなんて……」
「あと少しで、スリザリンに追い越されちゃう!」
「校長の孫も何をしてるんだか、また稼げるからいいとか思ってるんじゃねぇだろうな?」
「今からじゃ間に合わないよ!」
「どうしてくれんのよ?!」
ひそひそと呟くグリフィンドール生。
……逆恨みも良い所だ。
マジで必死になって稼げばいいんですよ。
というか、君らずっと私が点を稼ぐことに頼りっきりだったでしょ?
結構プレッシャーかかったんだよ?
……まぁ、文句の大半が私に来てて、ハリーの方が軽く済んでいる事は幸いですねぇ。
ご本人結構ショックでハグリッドのところへと行ってしまいましたけど……
ちなみにロンも一緒。
ま、それが一番いい選択でしょうね。
「ちょっと!コソコソ話してんの誰よ!?いい加減にしたら?寮の点数を稼いだのは殆ど禪なのよ?!」
へ?
吃驚したことに背後でハーマイオニーがキレた。
「頼り切っているのに、逆切れしてるのはおかしいわ!それにコソコソ言うなんて、グリフィンドール生として恥じよ!堂々と言いなさい!」
彼女はそう言うと、私の手を引いてハグリッドの小屋の方へと歩き出す。
え?え、え?
なんでハーマイオニーが怒ってんの?
この子って、私のこと疑ってなかった??
なんで私を庇ってんの?
思考が定まらないまま、私はハーマイオ二―によって、ホグワーツの正門にある点数表ならぬ点数砂時計から遠ざかる。
私はそのままハグリッドの小屋まで引きずられていった。
一体この状態はなんなのだろう?
ハリーはまるで○ヴァの某指令のように手を組んで重々しい空気を醸し出しているし、ロンはため息ばかりついている。
ここの主であるハグリッドは、今にも泣きそうな顔をしていた。
連れてきたハーマイオニーはひたすら入れられたお茶を見つめている。
マジでこの状況何?
一種のホラーを感じるよ……
「……禪。きみはどうして、そんなにショックを受けてないの?」
ハリーが低い声で聴いてくる。
やめてハリーその声。
怖い。
『別に気にしなければいいことですから』
「気になるはずだよ!あれだけ言いたいこと言われちゃ!」
ロンが声を荒げる。
『わざわざ反応して、彼らの機嫌を良くしてしまったら、こちらの負けでしょう。というより、そんな傾向作ったらスリザリンと同じことですよ』
「「そりゃ、そうだけど……」」
ハリーとロンが声をそろえて、顔をしかめる。
『そう言えば、ハグリッド。処罰の内容は決まったの?』
「ああ、決まった」
『執行はいつ?』
「今夜だ」
『へぇ、夜中に罰か……。何やるのかしら?』
「その時のお楽しみだそうだ」
『……?その処罰内容を決めたのは、もしかしてフィルチさんとマクゴナガル教授ですか?』
「いんや、決めたのはマクゴナガル教授とスネイプ教授、フィルチに……あー、平たく言えば一年生にかかわっとる先生全員だ」
『へぇ、マグル並みに職員会議みたいなのがあるんですかね』
「……禪。その俺は――」
『ハグリッド。”また今度”で』
「ああ」
ハグリッドは泣きそうな顔をしながら、言い訳をしようとして私にさえぎられると、シュンと落ち込む。
はぁ、さていったんここから寮まで帰るか。
いやいや、寮は今気まずいよなぁ。
なら私室の方へ行くか。
『ハリー、私これ以上お話ないのならお暇するわね。今夜、罰則で会うのだから大丈夫でしょ?じゃね』
私は早口でまくし立てて、小屋を出る。
雰囲気重すぎ!
頑張れ主人公!
私の方がとばっちり受けてんだから、大丈夫!
私はストレス色々受けまくったから、それらの耐性は出来てるって!
足早に地下牢に向かいながら、心の中で思いっきり叫ぶ。
「やっと帰ってきおったか」
低い声がした。
え、デジャヴ?
声のした方向を見れば、セブルスが幽鬼のようにふらりとやってくる。
どこの怪談話!?
「お前というやつは分かっているな?」
セブルスは私の首根っこを摑まえて自室へと入る。
*下記から18禁っぽくなるので、勇気のある方はお進みください。
『う、あの…………』
「言い訳は聞かん」
ポイとなぜかベッドに投げられる。
ハイィィィッ!?
「禪。おまえは手を出さぬのではなかったのではなかったか?」
セブルスがのしかかりそうな体制をして聞いてくる。
やばいやばいやばい!
『セ、セブルス、あの……』
「なぜ、首を突っ込む?我輩だけでは、何もならぬというのか?」
『ち、ちが……!……私は!』
「そろそろ、本音を聞かせろ」
『本音はいつも言って……』
「我輩を見くびらないでもらおうか。これでも、開心術も閉心術もでき、感もいい方だ」
『……』(目が泳いでいる)
「まぁ、お前に限っては慧とやらが時々邪魔をしてくるのだがな」
『……私は、信じられない?セブルス…………』
私はしゅんとなり、目を伏せた。
「信じてはおる」
バッとセブルスに目を向けた。
「でも、隠し事が多いだろう?」
『それは……相手の裏をかくためで……!』
「マイナス点をこんな風に取ってでもか?」
『……うん。どうしてでもやらなくちゃいけない……から』
何この雰囲気。
セブルスが、横に座った。
よかった!
のしかかられなかった!
そのままセブルスに頭を撫でられる。
「無理をするな」
セブルスが、優しいだと?!
ああ!ヴォイスレコーダーが欲しい!!!録音して何度も繰り返して聞きたい!!!!
そのまま抱きこまれた。
あ、もう我が人生に悔いなし……
昇天しそうになっている私。
って、やばいじゃんか!
『セ、セブルス?!』
「いいから、少しこうしてろ」
ああああ!絶対私いま顔真っ赤だ。
見られる前に冷静ならなきゃ……
えっと、スイヘーリーべーぼくのふねー(元素記号羅列中)……3.14159265359(円周率羅列中)……
「何を考えておる?」
その声で一気に考えていることが吹き飛んだ。
ぎゃあぁ!声が凶器だ!
ああ、うん。
どーしよ……
『えっと……』
こういう事にはセブルス以上に慣れてないんだよそういえば!
しかたないじゃないか!
結構私は引っ込み思案なんだよ。
ニキビとか、痣(あざ)とか、切り傷とか、服装とか、小物とか結構いろいろ……
女の子は気にするんだよ。
相手に不釣合いだからって、身を引いて……
「大人しく、抱かれろ」
セブルスはそう言って私のネックレスを外した。
すると私は元の姿へと戻る。
『せ、セブルス?!』
「大人しく――」
『待て!ちょい待て!!今夜の罰則に私がいなかったら、不審過ぎです!』
「どうとでもなる」
『なりません!!罰則には出させてください!』
「ちっ」
舌打ちして、セブルスの手が止まる。
はぁ~、よかった。
なんとかなった(?)
セブルスは少しむっとした雰囲気で、首筋に顔を埋めた。
どうやら襲うのはやめて、ただ抱き枕代わりにしようというようだ。
はぁ、いつも通りのセブルスに戻った?かな。
『セブルス。あの、本当にどうしたのよ?いきなり』
「……お前は自ら危険な場所へと行くようだからな……」
セブルスがぼそりと言う。
あー、うん。
何となく自覚はあるけどさぁ……
トロールとか、クディッチとか、クィレルとか、ノーバードとか……
『じゃぁ、セブルス。罰則終わったら、そのままこっちに来るよ。それでいい?』
というか、そうさせて下さい。
襲われても構わないほど、混乱しそうな気がする。
私の言葉にセブルスが抱きしめる力を強めた。
「いいのか?」
『それくらいの覚悟はしてたわよ』
「……」
『それに、これは私自身の為でもあるし……』(ぼそり)
「?禪?」
『っ!ああもう!!セブルスとにかく離して!』
思わず出た失言に私は顔を赤くしながらジタバタした。
あっさりとセブルス離してくれた。
少しばかり乱れた服を整えて、ベッドから降りる。
『セブルス。その、まだ罰則まで時間あるから、少し調合見てくれる?』
背を向けたまま問いかける。
「ああ」
セブルスは了承してくれた。
二人はそのまま、罰則の時間まで魔法薬を調合をしていた。
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