クディッチ


 
 結局、ご教授の件は断られた。
 セブルスいわく、“来年まで待ちたまえ”だそうだ。
 今学期は確かに、それでいいかもしれないので諦めたが……




 そして、その週末。




 
 うぉおおおおおお!!!



 



 競技場は歓声と生徒であふれていた。

 
 って、まだなんも始まってないのに!
 歓声早すぎ!!



 はぁ


 
 私は、本日何度目かのため息をついた。


 結局セブルスは、怪我をしなかったものの、ハリーとロンには、四階に向かう姿をばっちり見られていた。
 そして彼ら二人を中心に、例の物を盗もうとしたのがセブルスだと疑われている。
 セブルスとしては、見当違いの事に吃驚していたが、堂々と敵対できるなと少しだけ喜んでいた。


 やめろ、セブルス。
 そりゃ自虐だ。


 と今日の朝に私が止めても、彼はスリザリン贔屓(ひいき)主義を止めないので、ため息をつくしかない。


 腹いせと連絡も兼ねて、アメリカワシミミズクの皓に昼食で突っ込ませた。
 
 
 もちろん、セブルスは怒ってましたとも。
 スリザリン生は顔をしかめて、他の寮は内心喜んでましたとも。
 ハリーとロンはあからさまに笑いを殺し切れてなかったし。 


 昨日は、クディッチ今昔を中庭で読んでいたハリーにセブルスが突っかかった。
 本来ここでハリーが本を取り返しに行くが、魔法薬の材料のこともあったので、無理矢理に私が引き受けた。
 この魔法薬の材料というのは、いつも通りの仕分けの手伝いである。
 セブルスは、自室の扉を空けたのが私であったから、イラつきもせずすんなりと部屋に入れた。
 怪我もないので、イライラは頂点に達してなどおらず、機嫌はいつも通りであった。
 そして以下のような会話をしている

『ところで、セブルス』

「何かね?」

『明日、クディッチの試合ですが……セブルスも見に来ますか?』

「ふん、何が悲しくてポッターの奴を見に行かねばならんのだ」

『私が言うのも何ですが、敵情視察というやつで見に来られればよろしいのではないでしょうか?』

「本当だな、貴様が言うようなことではない。しかし、そのような事を禪が言うということは明日が“事”が起きる日なのか」

『相変わらず察しがいいですねぇ。まぁ、今月の初めから言ってたでしょう?』

「では、行くしかなないではないか……」

『お願いしますよ、私は補欠としてグラウンドの端で待機してますので』

「ふん、せいぜい巻き込まれないようにしろ」

『心配してくれてありがとうございます』

「……ふん」


 


まったく、セブルスは素直じゃない。

 


「いいか野郎ども」

「あら、女性もいるのよ」

「そして女性諸君」

回想から意識を引き戻せば、ウッドがチェイサーのアンジェリーナ・ジョンソンに言われて付け加えていたところだった。

「いよいよだ」

「大試合だぞ」

これはフレッドで。

「待ち望んでいた試合だ」

こっちがジョージだ。

何となくで見分けがついてきたが、まだまだ微妙である。

「オリバーのスピーチなら空で言えるよ。僕らは去年もチームにいたからね」

フレッドが新人である私とハリーに話しかけてきた。

“去年も”ということは、毎年、選手見直しなのだろうか。
最終学年は卒業という事もあり、そうなるのだろうが、双子は卒業までそのままの位置にいそうである。

「黙れよそこの三人」

ウッドがたしなめた。


って、私もハリーも何も言ってないんですけど……


「今年は、ここ何年振りかの最高のグリフィンドールチームだ。補欠もいる。この試合は間違いなくいただきだ」

ウッドが熱い視線を全員に注いだ。


……ウッド。
最初っから私を強調するように、言わんといてください。
それじゃ、逃げ道用意して士気が逆にゆるくなっちまうよ?

「よーし。さぁ時間だ。全員、頑張れよ」

そのウッドの一言で、学年順に選手が更衣室から出て行く。
自然と私とハリーが最後尾だ。

『ハリー、緊張せずに頑張ろうね』

私は更衣室を出る前にハリーに声をかける。

「うん、ありがとう」

『終わったら、ハグリッドのとこ行きましょう。私もおいしいお菓子もって行きますので』

「……いつの間に作ったんだい?」

『昨日ですよ。あ、もう会場ですね。私は此方の端で待機しています』

話している間にグラウンドの手前まで来てしまっていたので、そう言った。

「最初は並ぶんじゃない?」

ハリーが疑問符をつけて言う。

『あ、そっか。あんまりスポーツしたことなかったから、すっかりそういうこと忘れてました』

「君って、ほんと変わってるよね」

彼は呆れながらも、歩を進めてグラウンドの中央へと歩いてゆく。
私もそれに続いた。

グラウンドの周りは木造高台の観客席。
ついこの前までは私達がそこから練習鑑賞していたが、今は熱い熱のたまり場で、私もハリーも応援される側。
ハリーはまだ緊張しているようだ。

『ハリー、緊張したら深呼吸でもしてください』

「……わかった」

彼が返事したのを聞いて、一度目を瞑る。

そして見開いた。

本日の試合相手を確認する。

 

試合相手は――

 

――――スリザリンだった。

 

って、セブルス。
自分とこの寮も見ないつもりだったんかい!!
容赦ないな!
あれか、それだけ学生時代が、あのいじめっ子がトラウマだったか!!

 


寮は応援したいが、クディッチは見たくない。

何とも皮肉な話である。

 


応援席の頭上にはそれぞれ旗が立っており、グリフィンドールには“ポッターを大統領に”という文字が点滅していた。
その文字の上にはグリフィンドールの象徴である獅子が描かれており、その絵は刻々と色を変えて光っていた。


……確か、ハーマイオニーがかけたんだよね、あの魔法。
なんか、どっかのレインボーネオンみたいだよ。


旗に何となく違和感を覚えながら、耳を澄ませた。

「さあ、皆さん、正々堂々戦いましょう」


マダム・フーチが競技場の真ん中に箒を持って立ち、そう言う。

「よーい、箒に乗って」


って、ちょい待てえええぇ!
私は補欠だぁああ!!


戦線離脱とばかりに、中心から補欠用のベンチへと駆ける。


ベンチに着くと同時に、マダム・フーチが笛を高らかに吹いた。


まさに危機一髪。


マダム・フーチも含め、十五本の箒が舞い上がっていった。


ある程度の高度まで皆が上がりきると、審判であるマダム・フーチがクアッフルを垂直に上へと投げた。

 

試合開始である。

 


「さて、クアッフルはたちまちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが取りました――なんて素晴らしいチェイサーでしょう」

やはり、実況放送はリー・ジョーダンのようだ。

「その上かなり魅力的であります」

 

ジョーダン!


調子づいたジョーダンにミネルバが怒った。


……どうも、お調子者というところは変わらぬらしい。


クアッフルはいわば、サッカーボールのようなものだ。
サッカーのゴールは一つだが、クアッフルは三つ。
空中であるから、だろう。
しかし、そこに入れれば得点が入るというところは同じだ。


「パスで再びジョンソンにクアッフルが返る、そして――あ、ダメです。スリザリンがクアッフルを奪いました」


奪われ方もそう変わらない。
飛んでいるか、走っているか。
手か、足か。
それだけの違いであろう。


どうも、予測とかは同じようだな。
昔サッカーやった時は、大体次に来るボールの道筋とか予測がことごとく当ったが。
まさか、それがクディッチのクアッフルにも通用するとは思わなかった。
まぁ、腕力とかはないから、パスしても変な方向へそれるだろうなぁ……
サッカーでも力がなかったから、変な方向へ蹴っちゃったし……
あ、なんか言ってたら空しくなってきた。


「あ、あれは、グリフィンドールのチェイサー、ケイティ・ベルです。フリントの周りで素晴らしい急降下です。ゴールに向かって飛びます。――あいたっ!これは痛かった。ブラッジャーが後頭部にぶつかりました――クアッフルは、スリザリンに取られました」


ブラッジャーに当って、しかも当ったとこが後頭部とは、大丈夫であろうか……。


クアッフルと違い、ブラッジャーはマグル界においてドッヂボールのようなものだろう。
簡単に言えば、人に当てるか妨害に使うためにそうなっているのだと思う。
私もよく狙われた。
あんまりに当らない、つまり逃げることだけに専念していたものだから、敵側が面白がって私に当てることに集中しだすまでは、楽な競技であった。
最終的に一番初めに打ち取ってしまおうとされていたのだが……。
いやぁ、あれはかなり粘ったけど……結局当たっちゃったなぁ。


その後も試合を見ていれば、クアッフルとブラッジャーが交互に飛び交い、なかなか双方、点は入らなかった。
十数回のやり取りの末に、グリフィンドールが先取点を取る。

 


これが何度か続いたが、それでも決着はつかない。


否、つく筈がない。

スニッチがまだ現れていないからだ。

 

ハリーは空中で停止し、飛び交うブラッジャーや選手を何とか避けて、スニッチがどこにいるかを見ていた。


ほんと、頑張って取って。
私の出番など、無い様にしてください。

 

 

試合は結構接戦だ。
双方のチームともに連携がそれぞれあり、点が続けて入る事は無い。

 

まだ現れていないスニッチは、こういう事があるが為に創られたものなのだろう。
ピリオドを打つという重要な役目を負ったのも、あまりに決着がつかなかったのと、いちゃもんやらなんやらが絶えなかったためではなかろうか。

 

一度ブラッジャーがハリーを狙ってきたが、彼はこれをすんなりと躱した。

ハチドリのように素早いスニッチより、見つけるのも躱すのも簡単であろう。

 

スニッチは金色で、見つけ方は金品と一緒だ。

要するに空中でキラキラ光っていれば、それがスニッチというわけである。

応援席で見ている人が金属や宝石などを付けているので、あちらこちらで似たような光はある。
が、それらはなんも問題はない。

 

ハリーはどうか分からぬが、私には手に取るようにわかる。

それはこの世界に来てからついた能力ともいえた。
昔からそれらしきことを感じてはいたが、“勘”だけではそれが明確であるとは限らない。


“無”か“有”か。
生きているか、死んでいるか。
それらがこの世界に来て、明確にわかるようになってしまった。


スニッチやブラッジャーにはちゃんと生き物の気配があり、腕時計やらペンダントにはそれらがないのである。


トリップ特典とは考えたくないが、前まで持っていた能力が特化したと考えれば納得がいく。

 

どちらにしても、嫌な能力ですね……
生死がわかるなんて、私は人型の生死判定装置か。
嫌すぎる……


落ち込んでいれば、会場がざわついた。


スニッチが現れたのである。


ハリーがそれに気づき、急降下した。
スリザリンのシーカーもそれを追う。

スニッチの速さに追いつくため、二人ともかなりのスピードを出していた。
それでも地面に叩きつけられるようなことがないのは、スニッチが会場内を縦横無尽に飛び回るからであろう。

ハリーはスニッチと同じように複雑な軌跡を描いていた。
もちろん、スリザリンのシーカーも同じように軌跡を描いている。

下に、横に、斜めに上へ、時には螺旋を描きながら上下を移動していく。


私はそれを見ながらハラハラしていた。


お願いハリー。
安全運転だろうけど、無事にスニッチを取ってきて。


自分があれをするのかと思うと、祈りは切実である。

 


ハリーがスニッチを追いかける過程で、ずっと冷静に追いかけていられたわけではない。

幾度がブラッジャーや他の選手に邪魔をされ、心臓を何度も跳ね上げていた。


って、ここまでわかるか。
これじゃ、生命維持装置ともいえるなぁ……
まったく嬉しくない……


私は難しい顔をしながら、観客席に目を向けた。

グリフィンドールの席には、もちろんハーマイオニー達がいて、その横に教員席から移動してきたハグリッドもいた。

教員席にはアルバスじいちゃんはいないものの、何人かの教授がおり、その中にはセブルスがいる。
嬉しくない事にクィレルもいた。


事を起こらせないってのは、今回ばかりできそうにないからね。
阻止できず。
されどいくつかの手は打っておく。
それしかない。


教員席の味方と敵を見ていれば、双方が何かを唱えだした。
もちろん、数秒、敵の方が早く唱えだして、味方がそれを追いかける形だ。

 

え、もう!?


私は急いでハリーに視線を戻す。

すると彼は、上下左右に揺れる箒に何とかしがみついていた。


くそが!
どうする?!
今の今まで考えていたことを実行するには、本来観客としてこの試合を見ているべきだったのに。
今やどっこい、補欠として試合をする側にいなきゃならない。


それでもと私は目を瞑り、イメージした。

イメージする物は、ハリーとクィレルの間に透明な盾のようなものだ。
リフレクとかにしてやれば、それはそれで痛快ではあるが、後味が悪いのでやめておく。

 

そのイメージは発動した。

ハリーの箒が、空中で静止する。

 

薄いが、クィレルがかけているであろう呪文程度は防げるようだ。
薄いので、何人たりともそれの存在に気が付きはしなかったが、かけていたクィレルは驚きとともに唱えるのを中断し、セブルスも唱えるのをやめた。

 

が、ここでセブルスのマントが炎上し、教員席がパニックになった。

 

……ハーマイオニー、行動力ありすぎ。

 

その後、セブルスが何とか火を消したのを見届け、視線をハリーに戻す。


ハリーはちょうどスニッチを取る瞬間であった。


「やりました!

 ハリー・ポッターがスニッチを取りました!

 試合終了!

 グリフィンドールの勝利です!!」


どうやら私の出番はあらず、無事に試合は終わったようだ。

 


 


現在グリフィンドールは、談話室で大いに騒いでいた。

試合終了と同時に怒涛の歓声に包まれた会場のそれは、収束を見ぬままそれぞれの寮へと場所を変えていった。
もちろんスリザリンだけは深刻な顔で、“作戦を練り直すぞ!!”とマーカス・フリントが言っていたので、彼ら(選手たち)を中心に会議中である。

 

 


しかし、その場に私とハリーはいない。
ハーマイオニーやロン、ネビルも同様であった。

 


私達一行は試合前にハリーに言った通り、ハグリッドの小屋を訪ねていたのである。

私は持ってきたタルトを、ハグリッド達に振る舞う。

「スネイプだったんだよ」

ハグリッドに少しばかり濃い紅茶を入れてもらいながら、ロンが言った。

「ハーマイオニーも僕も見たんだ。ハリーの箒にブツブツ呪いをかけてた。ずっと君から目を離さずにね」

「バカな。なんでスネイプがそんなことをする必要があるんだ?」

ハグリッドが顔をしかめて、紅茶を入れる手を止めた。

『ですねー。彼は確かに何かを唱えてはいましたが、何かを呟いていた人物は幾人かいましたので、それが悪意あるものだったのか善意のものだったのか……』

「禪。お前さんはよう見ちょるな」

『目ざといとか言われますが、こういう事は得意なのですよ。ハリーがどの時点で箒にしがみつかざるを得なかったのかわかりませんが、確かにスネイプ教授を含め五人くらいがつぶやいていました』

ハグリッドに同調しつつ、布石としての報告をする。

「……禪。ハグリッド」

それらを聞いたハリーが意を決したように話しかけてきた。

「実は……僕とロンはスネイプについて知っていることがあるんだ。あいつ、ハロウィンの日に四階に向かって言ったんだ。トロールがいる地下じゃなくて」

やはり見られていたらしい。
それを聞いたハグリッドが、動揺してティーポットを落とした。


まったく、しょうがないですね。


素早く杖を振って空中で静止させる。

「……禪。いつの間に無言呪文できるようになったの?!」

驚いたハーマイオニーが聞いてきた。


あ、やっちゃった。


『ついこの前からできるようになりましてね』

平然と嘘を言ってごまかした。

『それで、ハリー。スネイプ教授がそこに行ったから何なんです?』

「確か、禪、君はいなかったけど、僕ら一度そこまで行ってしまってるんだ。もちろん偶然にも迷い込んでだよ」

「そ、それで僕ら三頭犬見ちゃったんだ」

ハリーに続いてネビルが口を開く。

「大きな犬だったよ。三つの首があった」

彼は口早に言う。
ロンは頷いていたが、ハーマイオニーはただ黙っていた。

「……」

ハグリッドは無言ではあったが、動揺したままだった。
原作でならポロリと秘密をこぼしてしまうが、彼はそれを態度で示していた。


やはり、彼はこういう役どころなのか……
アルバスじいちゃんも酷な事を……


『首が三つという事は、いつか言ったケロベロスみたいですね』

フォローでハリーたちに言う。

 


「……魔法薬学で言ってたことね」

 

ハーマイオニーが乗ってくる。

 

『ええ、そうですよ。その時言った事とか覚えてます?』

「確か……トリカブトが、そのケルベロスのヨダレから生まれたものとか言ってたわね」

『大当たりー』

 

どうやら、少しは疑いの目をそらす事が出来そうである。

 

「……でも、そんなのがあの部屋にいるとなると、やっぱり何か守っているのね」

 

あ、無理だった。

 

ハーマイオニーが推理を始めてしまう。

「ああ、多分それをスネイプは奪いに行ったんだ」

ロンがそれを加速させた。
しかも悪い方向へ。

 

……難しいなこの誤解を解く方法。

 

元々セブルスは憎まれ役である。
そのため、良くは見られていない。
まぁ、本人の性格上のこともあるのだが……
そういった先入観があるため、ひとたび疑いがかかれば、それを解くのは難しい。


…………セブルス、諦めて。
日頃の行いが悪いんだよ…………

 

私は誤解の解き方的に難易度が高いので、諦めた。
庇い過ぎても、彼らの不信を買うだけである。
代わりに布石を打つことにした。


『まぁ、ロンはそうは言いますが、ハリーは落ちる前にコントロールが戻ったのでしょう?なら、少なくとも唱えている人は二人いたんですよ』

「二人って?」

ハリーが聞いてくる。

『ハーマイオニー。確か呪いをかけるやり方も、それを解くやり方も、実は同じではありませんでしたか?』

ハーマイオニーに話を振る。

「ええ、そうよ。たくさん本を読んだのだけど、どの呪いも対象物をじーつっと目をそらさずに見続けるの」

『ちなみに何か特徴とかあります?』

「うーん、しいて言うならずっと目で見てはいけないから、その間瞬きすらできないわ。その点では、スネイプ先生も瞬きをしていなかったわ」

「ほらな、やっぱり、スネイプだって」


ロンがこれで決まりさとばかりに、決めつけた。
ハリーとハーマイオニーは、ロンの言う事が正しいと信じ、賛同の意を頷くかたちで示した。

 

「お前さんたちは間違っとる!俺が断言する!」

『ロン。私は二人と言いました。少なくとも容疑者はもう一人いると思われます。それにお生憎ですが、私はスネイプ教授がハリーが嫌いだからと、直に叩き落とす方法は選ばない事を信じ、その説を否定しましょう』

ハグリッドと私は、ロンたちと反対の位置に着く。


ネビルはうーんと呻りながら、

「僕はよくわからないから中立で」

と、言った。


「禪。君、あれ以外に方法があるっていうのかい?」

『いくらでもあるでしょう』

ロンが顔をしかめて聞いてくる。

『確かスネイプ教授はスリザリン出身です。となれば、あの寮の性質上、自分の手を汚さずに手を下すことがモットーのはず。……この世界じゃ、いくらでもそういう類の手段は用意されておりますからね』

「……禪。おまえさん、スネイプ教授を遠まわしに貶(けな)してないか?」

ハグリッドが咎めた。

『いえいえ、これで褒めてるつもりですよ』

「ならいいが。ハリー、おまえさんたちはあの犬の事は忘れるんだ。あの犬が何を護っているかもだ。あれはダンブルドア先生とニコラス・フラ――」

『ハグリッド、それ以上は言わない方が賢明ですよ』

うっかり過ぎるハグリッドを制した。

「あ!そのニコラス・フラなんとかっていう人が関係してるんだね?」

しかし遅かったようで、ハリー達にはヒントが与えられてしまったようだ。


……アルバスじいちゃん、ほんと酷だよ。
いつか、セブルスが胃潰瘍にでもなるぞ??
冗談抜きで。

 


私は、セブルスの健康状態が気になって仕方がなかった。

 


 


私は早めにそのお茶会を抜け、セブルスの自室へと来ていた。

『ということで、セブルスに疑いの目が向いてます』

部屋の主にそう報告すれば、彼は頭を抱えた。


「なぜにそうなるのだ」


『……セブルスの性格上ですよ。いわゆる日々の行いが悪いという――』


「我輩が悪いと!?」


『いや……セブルスより、あなたをそんな風にした輩が悪いと思いますよ』


「…………禪」


『はい?』


「な、なぜにそれを……!?」


『だから、私は“知っている”ものなんですって。セブルスの事情も語られている部分がありますから、そりゃぁ』


「……禪に隠し事は出来ぬか…………」


ハリーが似ている人物とのことは知ってると言えば、セブルスは今にも床に手をついて絶望しそうな雰囲気だった。


いや、だから……そこまで落ち込まなくとも…………


『それで、セブルス』

「…………ん?なんだ」

何とか立ち直ったセブルスが聞いてくる。

 

『呪いとやらは防げましたか?』

「ふん、どうせ分かっておったのだろう?」

 

いつも通りのテンポでセブルスが言う。


『もちろんです』

「はぁ、これだから禪は困るのだ」

『ん?』

「大体貴様、我輩のマントをどうしてくれるというのだ!!」


あ、そこか。


『すみません、補欠にならなければ防ぐつもりだったのですが……』

「補欠になったからこの有様か……」

『……はい。ですがっ!呪いは防ぎましたよ!!』

「…………おい、今なんと言った」

『あ、言っちゃった』

「やはり禪か!あやつの呪いがいきなり消えたかと思えば!!言え!どうやった!!!」


……なんか、警察で取り調べを受けてる気がする。しかも、かなりたちの悪い…………

 


『うーん、ぶっちゃけて言えば、薄い防御壁みたいなのをハリーと奴の直線上に配置して防ぎました。かなり薄く透明なものにしましたので、誰にも気が付けられていません』

 


「……………………」

 


その返答に、セブルスは、ぽかーんとしていた。

 


「……なんなのだ。その能力は……」


『慧いわく、想像力の賜物(たまもの)だそうです』


「…………(絶対違うだろ!!!)」


『頭の中でイメージしたものを、更に理論とかで固めて、持ち前の魔力で発動させています』


「…………禪。もう少しだけ待てなんとか頭の中を整理する」


セブルスがふらふらしながら、ソファに横になった。

 

あれ、そこまで難しい事言った??

 


「……ちなみにそれは、慧が居なければ出来ない事かね?」

徐々に回復し(横になり)ながらセブルスが言う。

『……それが、そうでもないみたいなんです』


「なんだと?」


『元々私が持っていた能力のようで、杖なしでも発動可能なのだそうです。実際、今日は杖を持っていませんでした』


「馬鹿な。まさか杖なしで魔法を行使するとは……」


こちらの世界での常識では、あり得ぬことなのだろう。


『言いたいことはわかりますが、事実です』

 


私はそれ以上言わなかった。
セブルス本人の許容量を既に超えているせいでもあるが、やはりまだ秘密にしておいた方がい事はいくらでもある。

 

 


敵を裏切るには、まず味方からって言いますしね。

 

 

はっきし言って、賭けに近いが……これくらいしなきゃ、馬鹿ども止めれんでしょ??

 


「……もうわけがわからん」

 

『まぁ、詳しいことは今度ちゃんとまとめてからお話ししますよ。そうですね……最低でも来年になったあたりでお話しできるでしょう』

 

「ほう、では期待するとしようか……」

 

『って、プレッシャーかけないでくださいよ。そういうのには少し弱いんです……』

 

「よく言う」

 


 

(ハリー視点)

ホグワーツに入って。
四つある寮の一つ、グリフィンドールに入って。


僕の世界は一変したと思った。

 

何しろそれまで、ダドリーのご機嫌伺いをしていたんだ。
ペチュニアおばさんは、夫と共に息子である彼にしか興味が向かなくて、僕には決して見向きしなかった。

 

それがここに来てから、ずっと一目置かれている。

 

最初は戸惑った。
でも、クディッチの選手になって、シーカーとしてスニッチを取り、自信が出てきて……


友達もできた。

ロンに、ハーマイオニーに、ネビルに、禪。

寮のみんなもいい人たちばかりだし、マクゴナガル教授は少し厳しいけれど、いい先生だった。

 

ロンは、この学校に来て最初に出来た友達で、寮でも部屋が一緒で、どこに行くのも一緒だった。

ハーマイオニーは、呪文が得意で、少し気が強かったりするけど、トロールから助けたことにより、とても親しくなった。

ネビルは、おっちょこちょいで色々と失敗してたけど、それでもいくばくかの勇気を振り絞っている子だ。

禪は、ダンブルドア校長の孫になった子で、とても色々な事を知っていた。時たまに、この先のことすら見通しているのではないか、と思う時があるほどだ。

 

実は、ネビルが失敗してもそれが酷いことにならないのは、禪がいるからではないかと思う。
禪は他の子と違って少し大人っぽかった。
先輩とかも大人っぽいけどいるけど、それとは違う大人びた子だった。


彼女は、敬語と私語を織り交ぜて語り、ハーマイオニーでも分からない単語を平気で使う。

 

そしてその彼女は、あのスネイプと意外にも仲良しだ。
彼女いわく、ここでの世話係がスネイプだったから、ある程度仲良しなんだそうだ。

 

クディッチで勝利を収めた後。
寮での宴には参加せず、僕らはハグリッドの小屋に行った。


そこで、クディッチで起きたことのネタばらしをしたんだ。


クディッチで僕は確かにスニッチを取った。


けれど、取る前に一度箒のコントロールが利かなくなったんだ。
何とかしがみついて、事なきを得た。
その後スニッチを無事に取り、試合は終わったが、ロンとハーマイオニーに聞いた話で、僕は狙われているのだと思った。


もちろん、スネイプに、だ。


スネイプはいつも僕を睨んでくるし、スリザリン以外は贔屓しない。
それにスネイプは、トロールが地下に入った時、一人四階へと向かって行った。


それらを考えてみれば、断然スネイプが怪しい。


その事をハグリッドに話したのだ。


しかし、その推理を彼は否定した。
驚くことに禪もだ。

ネビルもいたけど、彼はわからないからと中立になった。


彼女は否定すると同時に、何か説明していたけど、言い回しがわかりにくかった。

ロンが突っ込んだが、禪は“スネイプなら別のやり方をする”と言った。

 


なぜかわからない。
なぜ、スネイプなんかを二人とも信じるのだろう。
禪はその後いなくなってしまい、しかも行先はスネイプのとこらしい。
本当になんでなんだろう??

 

そう思いながら僕は、寮に戻って眠りについた。


                                                                        (ハリーside end)

 

                                                                         次ページ:鏡へ

 


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