一応退けたという形になった一行は、タズナさんを家に送り届けることとなった。
「せめてもの礼じゃ!飯を食っていけ」
そういう彼は、子供たちに囲まれ家へと案内していく。
威守瑠威とはたけカカシは、その少し後ろを歩いていた。
カカシのチャクラが極端に減り、身体に負荷がかかってしまい威守の肩を借りて寄りかかり歩いている。
『その眼も面倒なモノね。たとえコピー出来ようとも、まだ使いこなせていないからチャクラの消費が激しいでしょ』(威守)
「……やけに詳しいな。おい」(カカシ)
『まぁ、この任務が終わったら話してあげるわ』(威守)
「?あのじいさん送ったらおしまいでしょ。敵は倒したし」(カカシ)
『馬鹿ね。依頼内容に偽りがあったとしても、彼の言っていた護衛期間は”橋が完成するまで”。期間は伸びないわ。それに、そんな簡単に終わらないでしょうし』(威守)
「どういうことだ?」(カカシ)
『考えてみなさい。まず私がここにいるって事がどういうことなのか。そして、さっきの抜け忍追いの行動を』(威守)
「……」(カカシ)
『……』(威守)
「……!まさか」(カカシ)
『ようやく、わかったの?察しが悪いわねぇ』(威守)
「まだ敵は死んでいなかったのか!だとすると、敵が増えて……」(カカシ)
『そ、厄介なことにね。まぁ私がいるし、ある程度余裕は持ってていいけど』(威守)
「……護衛期間も考えると、そんな悠長なことはしていられませんよ」(カカシ)
『じゃ、どうする?』(威守)
カカシは、めんどくさそうな目を弟子たちに向けため息をつく。
「あれをやるか」(カカシ)
『ん、頑張ってね。レイスケはもうできるので大丈夫、護衛に回すわ』(威守)
「……」(カカシ)
『そんなに警戒しないでよ。私は味方ですって』(威守)
タズナさんの家に着くなり、カカシは布団の中。
皆が落ち着きを取り戻しているところ悪いが、真実は話さねばならない。
『えー、ナルト君。サクラさん、サスケ君。ルイ、レイスケ。ちょっとカカシ先生のとこに集まりなさい』(威守)
「はぁ~い」(サクラ)
「なんだ?」(サスケ)
「何だってば?」(ナルト)
『……』(ルイ)
「はい」(レイスケ)
意外と素直に集まる面々を、カカシはびっくり顔で見ている。
「俺が言うと文句多いのに……」(カカシ)
「カカシは変なこと言うからな」(サスケ)
「そうねぇ~。よく遅刻してくるし」(サクラ)
「先生って感じじゃないってばよ」(ナルト)
「ぐはぁ!」(カカシ)
ひどい言われようだな、変態忍者。
『さて、いい具合にカカシ君がダメージ受けたところで』(威守)
「確信犯め!」(カカシ)
『ああ、タズナさんも聞いておいてくださいね』(威守)
「なんじゃ?」(タズナ)
「……無視」(カカシ)
護衛対象とその家族も集まってきて、とりあえず用件を切り出す。
『爆弾発言ですが、先ほど倒した抜け忍の桃地再不斬くん。まだ生きてらっしゃいますよ~』(威守)
「「「「は、なにぃ?!!」」」」(一同)
『そう驚かずとも。ある意味、楽でいいかもしれませんよ~』(威守)
「そりゃ、威守だけでしょ。……さっき抜け忍追い、霧隠れの暗部が身体ごと持ってちゃったでしょ。本当はその場で死体は無くすのが普通なんだ。忍者の身体は多くの情報をものがたってしまうからな。俺の場合はこの眼とかだ」(カカシ)
『で、それをせずに持ち帰って、しかも使った武器が千本となれば……』(威守)
「!まさか」(サスケ)
「って、事はあのお面も敵か~」(レイスケ)
『瀕死状態にさせて、離脱したのね』(上居)
「あんたたち、よく冷静でいられるわね」(サクラ)
「嘘だってば―!!!まだ生きてんのかよぉ!?」(ナルト)
「嘘じゃろ、まだあんなやつに狙われるのか」(タズナ)
「しぶといわね」(ツナミ)
私自身とレイスケはまぁ、驚かないからね。
いつも似たような状況だし。
『ま~、あれだね。私とカカシの上忍二人がいるけど、護衛の人数的には不適切。で、君らまだ弱いでしょ?下忍だし。てことで今から修行しましょうか』(威守)
「ちなみにこの修行出来たら、結構お前ら伸びるよ」(カカシ)
「やるぅー!!」(ナルト)
「やる」(サスケ)
「もちろん、やるわ」(サクラ)
『やるに決まってるでしょ』(上居)
「もちやる!」(レイスケ)
ほぅ、やるきだね。
「やっても意味ないよ、んな修行」(イナリ)
横槍を入れるものが一人。
振り向けば、帽子をかぶった男の子がいた。
後ろ向き人間だったな。
「なんだとこらー!」(ナルト)
「子供相手に向きにならないの、ナルト!」(サクラ)
「「……」」(サスケ、カカシ)
なんともいえない雰囲気がその場に漂う。
レイスケと私だけ、雰囲気が違っていた。
「それは、流れに身を任せるってこと?」(レイスケ)
「どうせ、ガトーのやつには誰もかなわないんだ」(イナリ)
『へぇ、君はおろかだね』(上居)
「お前に何がわかるってんだよ!どうせみんな死んじゃうんだ!」(イナリ)
『そうね、あなたと私は別の人間、つまりは他人。人間だって生き物なんだから、いつかは死ぬでしょうし』(上居)
「ルイ……」(レイスケ)
「上居さん!あなたそこまで言わなくとも!」(サクラ)
『でもね、死ぬことが解ってるなら、一花咲かせましょ!散るならせめて派手にぶちかましたればいいの!ああ、ちなみに命を無駄にしろって事じゃないからね。それくらいすれば希望が見えるだろうし!しないって選択肢は無しの、勇気の一発!っていう選択肢のみしか受け付けないわ!日常なんて、生きるなら水を得た魚のごとくスイスイと泳いでいこうよ。悲観してても何も始まらないわ。立っているだけなら、そこらの石ころと同じよ~』(上居)
「花ってなんだよ?」(イナリ)
「ルイの言い方は分かりにくいって。えーっと一言でまとめると……”泣くな。前見て、足元をよく見ろ”かな?」(レイスケ)
「うう、俺ってば頭がこんがらがって……」(ナルト)
「分からねぇのか、ウスラトンカチ」(サスケ)
「話が難しいわねぇ。ま、ナルトじゃなんも分かんないでしょ」(サクラ)
「あ、あれだ!そんなにうつむくなってばよ!俺がヒーローになって助けてやるから!!」(ナルト)
「ナルト、お前ヒーローって言葉知ってたのね……」(カカシ)
「あー!カカシ先生。俺だってそれくらい知ってるってば」(ナルト)
「ヒーローになるって……再不斬倒すつもりか?お前ひとりで?」(サスケ)
「馬鹿ねぇナルト」(サクラ)
「俺だってやれば出来るんだってば!!そんくらい出来なきゃ、勇者とかヒーローじゃねぇだろうってば!!」(ナルト)
「はぁ……」(カカシ)
まさに”ああいえばこういう”ナルトとサスケ、サクラ、レイスケ、ルイのやり取りだ。
カカシはそれをまとめるのが精いっぱい。
いや、まとめてすらいないのだが……何度かブレーキ役に回っているようだ。
この騒がしいやり取りの間に、自己完結していたイナリは部屋へと行ってしまう。
『レイスケ、そこにいて』(上居)
「ううん、僕が行く。ナルト、一緒に様子見しに行こ?」(レイスケ)
「様子見ぃ?あいつガツンと言ってやらないと……」(ナルト)
ぶつぶつ言ってナルトが行ってしまい、それをレイスケが追いかける。
「何よ、二人して」(サクラ)
「さっきの難しい話ワザとか?」(サスケ)
『うん?どこも難しくはないはずだけど?』(上居)
「こりゃ天然だな」(カカシ)
失敬だな、カカシ君。
私は結構真剣なんだぞ?
『さーて、二人が帰ってきしだい。修行の内容説明するからね~』(威守)
サポートに徹しつつ、危険排除の暗部任務も済ませなくちゃな~と脳裏で今後のスケジュールを調整していた。
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