森を駆ける者

 

 森はうっそうと生い茂っている。

 

 その中では時間がゆっくりと進んでいるはずであった。

 

 

 

 一匹の犬が立ち入ってくるまでは。

 

 

 

 

 

『見っけ~。そこの黒色のワンちゃんと止まりなさぁー……』

 

 止まるわけないか。

 三年目に突入して、すぐに警戒したのがこの黒わんこの捜索と出現。

 ま、これが頼もしい味方になるべき人物なんだから仕方ないなぁ。

 一気に死んでもらっては困る。

 

『仕方ないよね?』

 

 一振りして、犬の動きを止めた。

 犬はびっくりして暴れるが、地面から持ち上げられ、地を蹴る事はかなわない。

 

『ちっ、やっぱ来たか』

 

 ゆっくりと侵食していく冷気に、私は結界を出来るだけ小さく張り、黒犬と共にゆっくりと城を目指した。

 

 目標を見失ったのか、空から降りてきた黒いフードの、人ならざる者たちは、そこでフヨフヨとしながらあたりに目を向けている。

 

 足音がなぜ漏れないかというと、私自身もほんの少し浮遊しながら動いているからだ。

 ああ、黒犬の鳴き声はマジで猿ぐつわ嚙ませた。

 

 だぁって、ここでいきなり吠えてもらったら迷惑だもの。

 この犬君にも悪いし。

 

 しかし、もうちょっと私の記憶が詳細であればこんなとこまで進んだ状態で保護をしなかったものを。

 大体、もう少し後だと思ったのに、脱獄のスピードが尋常じゃなかった。

 いきなりホグワーツに来るくらいの勢いで吸魂鬼(ディメンター)が迫ってきているなどという事態に、ホグワーツの教授方はもちろん魔法界は揺れていた。

 

 


 

 

「禪、大変だ」

『どうしました?』

 

 調合をし終えた時に、セブルスが入ってきた。

 その顔はいつも通りであまり内心はうかがえない。

 

「これを見ろ」

 

 差し出された新聞を受け取り、目を通す。

 

”シリウス・ブラック脱獄!”

 

『あれま。何を……って、私が色々見落としてんじゃんか!』

 

 何してんの私?!

 

「……どういうことだ?」

『あー、セブルス。ウィーズリー家が何か当選して旅行に行ってたよね?』

「ああ。行っていたな」

『あれをこの黒君は見て、色んな事がわかったんですよ』

「何をだ?脱獄するほどの衝動に駆られるくらいなのだ、小さな事ではあるまい」

 

 

 

『君が知りたがっていた裏切り者を見つけたのよ。彼らにしか分からぬ見抜き方で』

「っ!?」

『とりあえず、黒君は保護。軟禁しつつ回復をさせる方向で。で、今から指令を徹底させる為に、主だった教授方に密かに集まってもらって会議しましょう』

「対応はやいな。だが、本当に大丈夫なのか?」

『アズカバンの牢獄は精神的にきつい。ま、何かしらのヒーリングやらなんやら必要になるでしょう。そのための軟禁案』

「ああ、そういう事か」

 

 それからは二手に分かれて教授方に声を駆けに行く。

 

 

 最悪だ。

 また後手に回ってしまったではないか。

 となると、ハリーは今漏れ鍋にいるんじゃないか?

 全くほんと嫌だわぁ。

 あの大臣。

 絶対ハリーの場合正当防衛だよ。

 ま、リーマス・ルーピン教授が彼に接触してるだろうから、ひと安心だね。

 

 


 

「禪。一体どういう事じゃ」(アルバス)

 

 アルバスじいちゃんが集まった皆を代表してそう問いかける。

 

『説明した通りです。敵に既に裏をかかれていたという事。それを取り戻す、いや打撃を与えねば』

「信用できるというの?彼は」(ミネルバ)

『ミネルバ。彼は嵌められた側ですよ。……性格は猪突猛進的なところがあると聞いているので、その性格によるものと、監獄の影響を危惧して一時軟禁としようかと考えているのだけど』

「それは仕方ないな、奴は根っからのいたずらっ子だ」(ハグリッド)

『それもあるけど、少し論点がずれてるわ。ハグリッド。彼の所属していた寮は私と同じでグリフィンドール。その寮のポイントは勇猛果敢っていうフレーズ。でもその言葉は使い方を間違えれば、愚者ともなりうる方向性も持っているの』

「やっかいだな」(ハグリッド)

『それはどの寮でも同じ。というより人である限り、心のありように左右されるのは致し方ないわ』

「ふぅむ、それで、どう捕らえるのだい?」(フリットウィック)

「それに傷の具合がどうかもわかりません」(ポンフリー)

『捕らえるのは私が行くわ。私であれば吸魂鬼にも対処できる。怪我はその時にならないと分からないけど、身体の傷より、心の傷の方が深いでしょうね』

「その根拠は」(セブルス)

『結界を使えば、気配も音も消せる。一から魔法を作るのは難しいけど、発想力と想像力があるからまた別の魔法もできるみたいだし』

「……今度はどんな魔法を」(セブルス)

『あー、今やってみようか。スペースいらない魔法だし』

 

 簡易版の呪文を唱えた。

 

『歩空』

 

 地面からほんの少し浮いた状態で止まる。

 

「それが新しい魔法か」(アルバス)

『あー、簡易版の呪文使用したので、あんまり浮かんでませんけど……そうですね』

 

 前世からしたかった魔法だしね。

 ん?なんでしたかったかって?

 イジメられ人生だったんだもの。

 足音立てずに移動できるってサイコーだよね。

 ……泥棒はしないけど。

 

『アルバスじいちゃんはもう一度この学校の魔法を確認してくれますか。安全確保しておきたいので』

「そうしようかの。で、どこに軟禁するつもりじゃ?」(アルバス)

『それなんだけど、生徒の目に触れる場所はダメ。これは前提条件。この条件に当てはまる場所は二つ。一つは禁じられた森。もう一つは秘密の部屋』

「どちらも本来は無理な場所だな」(セブルス)

『ま、後者の責任者が今や私ですからね。本来敵の手にあるようなものが、こちらにある。使わない手はないから、そちらに。双子やハリー達のおかげで本来の形が取り戻されつつありますから』

「敵の知らない構造だからこそですね」(ミネルバ)

『ええ』

 

 会議はそこまでで、皆各自に行動をとり始めた。

 私はセブルスとともに森を駆け先ほどの冒頭へと戻り、アルバスじいちゃんが率いる教師軍団はホグワーツの結界を点検・補修しに行ったのだ。

 

 

 

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