僕は、おねえちゃんに殺された。
二人に力およばずに、殺されちゃった。
でも……楽しかったからいいか。
【面白い童が落ちてきたか】
だぁれ?
もう僕は遊べないはずだよ?
あの世界はもう僕がいなくても廻ってるもの。
【そうか。それはお前の手からあの世界が逃れたというべきであろう。お前は死人を復活させたかったようだが、いくら神の位に就きそれを成しても、お前の望む”両親”でありはしなかったであろう】
うん、そうだね。
わかっていたよ。
わかっていたんだ、それくらい。
でもさ、もう少し、家族を味わいたかったんだ。
それに一度死んだら両親はかわると思っていたから……
【殺人鬼として選ばれたという運命の持ち主は純粋無垢の子供であったか。さて、選択肢をくれてやろう。代価としてお前の世界に生まれ変わる事が出来ぬが、まだ役に立てる世界へと渡るか。それともここでその意識ごと無くし、ワイの操り人形となるか】
きみ大阪人?
うー……ん、あやつり人形はごめんかな。
僕、人形好きだけど、あやつる方が好きで、それになるのは嫌。
今の言い方からすると僕は再生かのうなんだね?
きみが何かわからない。
でもほかの世界なんてあるんだね。
神さまの集会所に行けたことあるから、あんまおどろかないけど。
そこに行くよ。
【決断したか。思い切ったものだな】
僕は、再生しても記憶なくなるんだろうし……きみ力あるものだよね?
なら僕は、もうみいられた、遅いよね?
あの世界は僕には、ただのマボロシ。
だから、ほかの世界見たい。
ちゃんと世界を見たい。
【であるならば、行くとしようか。他の世界へ】
うん!
知らない鳥の声が響く。
『しらない』
【それはそうだ。あちらの世界にはない、此方の世界特有の鳥であろうからな】
となりに知らないお兄さんが立っていた。
でも、声がずっと語りかけていたものと同じ。
『お兄さんが僕をこの世界にみちびいたんだね』
【ああ、なかなか頭のいい童だ。さて、この世界に先発隊が行っておるワイらはそいつらと合流だ】
『せんぱつ隊?仲間ってこと?』
【そうだ。どうやらお前はあまり変わらなかったようだな。三歳児程度だ】
『あ、ほんとだ。手すこし小さくなったね。でももうちゃんと立てるし、言葉はすこしふあんていだけどけ、かなりしゃべれる』
【だが、体力は落ちたな。少し変化するから待っておれ】
お兄さんが白いトラにかわる。
『お兄さん、人じゃないんだね。きれい』
【驚かぬか。まあ良い、背に乗れ。身体がその年になってしまえば、ここから移動するのに時間がかかる】
『りょーかい!』
うんしょ、うんしょとその背によじ登り、しっかりとその身体につかまる。
それを確認して、お兄さんトラは走り出す。
ものすごくはやかったよ!
いくら移動してきたかわからないけど、お兄さんトラの足が止まる。
『どうしたの?』
【鍵がおる】
『?カギ』
お兄さんトラの視線をおっていけば、きれいな色の子どもがいた。
『彼が、カギ?』
【そうだ。だが、彼は忌み子と呼ばれている。この世界の中で、彼は独りぼっち】
『僕と同じ?でも、彼の持ってるなにかはもっと”重い”よね』
【?!……そうか、神候補に選ばれたことはある。一旦、合流は中止だ。お前は彼と遊んで来い】
『?僕が?』
【ただし、注意事項として、彼がマイナスな思考を持っている事を忘れるな。特別な力もな】
『うーん……。じゃ、掛け声は”あそぼ!僕もずっと一人なんだ!”でどうかな?』
【それでよい】
お兄さんトラの背から降りて僕は駆け出す。
まだ小さくなってから身体はふなれだけど、一生けん命彼のもとにたどり着いた。
『こんにちは!一緒にあそぼ!僕もずっと一人なんだ!』
「だれだってばよ?どうせ、おれは……」
『僕?れいすけ!だーれもあそんでくれないんだ!いっしょにあそぼ!』
「俺にかかわると、もっと一人になる」
『?もう一人ぼっちなれっこだよ?だから、あそぼ』
「……いいのか?」
『うん!』
最初はたどたどしくあそびにふなれな子供だったけど、彼はきれいな髪をかがやかせながら、一緒にあそびにねっちゅうしてくれた。
彼は僕みたいに堕ちないよ……。
大丈夫、普通の子どもの域を超えてない。
夕方になるまであそんでいたら、なんか真っ黒なかっこうの人たちが来ちゃった。
あれ?
ま、おにいさんトラもそこに来たみたいだし、いいか!
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