学校とは名ばかりの施設から帰ってきて、目を閉じる。
【どうだ?アカデミーやらとは】
俺の心に直接響く空の声。
〈全く面白くない。基礎体力を上げるだけの教科ばかりだ〉
【そうか。たしか貴様は既にそれは出来ているであろうし、致し方ない状態だな】
〈どうするのだ?空の賭けのこともそうであったが、それでは不十分なのであろう?〉
【……仕方ない。貴様に師をつける。しかも、とびっきりの奴だ】
〈暗部までついているのだが、それはどうする?〉
【それも大丈夫だ。あと一週間ほど待てば収まる】
〈その期間耐えろと?〉
【ああ。……不満なら、チャクラの練り方をイメージしていろ】
〈チッ、面倒だ。が、そうだなそうしていよう。今の状態で動けば敵が増えて面倒になるのであろう?〉
【そうだ。今は待て】
〈わかった〉
会話を切り、目を開ける。
現実世界では五秒と時間はたっていない。
精神世界はかなりズレがあるのだ。
俺はそのまま冷蔵庫の中を確認して、今晩のご飯を考える。
『……野菜が足りねぇな』
鞄を買い物かごに入れ替え、俺は目当てのものを手に入れるために買い物に出かけたのだった。
それから一週間後。
本当に俺の回りにいた暗部が減った。
疑いが薄まったのか、それとも他に手を割いたのか……
その両方かもしれぬな。
【さて、行こうか】
『おい。いきなり出てくるな。まぁ、空のことだ。周りの奴らすべて幻術にかけているのであろう?』
【もちろんだ。養父の時もそうしてお前を守ってやったろう】
『ああ。あれは助かった。気配消していても、暗部は逃してくれなさそうだったからな』
二人で霧の中移動する。
この空の能力は霧と砂を操る事が出来るそうで、その応用の蜃気楼はお手の物だ。
幻術も得意だというのだから、敵には回したくない。
移動していくと何やら森に出た。
『ここは?』
【とある演習場を貸し切っている。ここはそれだ】
『そんな事を出来る奴が師という事か』
【そうだ。この里ではかなり地位がある、な。まぁ、裏でだが】
『……どの世界にもあるのだな、裏が。その裏の住人でもあったことがあるのだから、今更だが』
【来たぞ】
自嘲気味に言っていると、青色の着物っぽい服を着た女性が現れた。
「って、天空さん!マジですかこの人!まだ幼少とはいえ、我らが魔王様じゃないですか!!」
『?!俺を知っているのか……』
「もちろんよ!リアルで会えるなんて!」
『……』
女のテンションがやけに高い。
「そっか、次に来る人って私の世界からではなかったのねぇ……」
【ほう。六(ろく)には言われてなかったのか】
「ええ。貴方に会うのはついこの前だったし」
『おい。その話はまだ続くか』
「ああ、ごめんなさい。んで、たとえ魔王様だとしても暗躍してもらわなきゃいけないから。とりあえずチャクラのコントロールからして、そうだなぁ、性質変化まで行ければ十分かな?」
『チャクラはいつも練る練習をしていた。あと聞いてはいると思うが、あのアカデミーとやらで習得できるものは既に出来ている』
「ああ、天空……ここじゃ空か。彼から聞いたよ」
『そうか。それで俺は貴様を何と呼べばよいのだ?』
「自己紹介がまだだったね。私の本名は威守瑠威。ただ裏の方での作業中は翠(スイ)と呼んで」
俺は知らなかった。
この威守瑠威とやらの異様の特性を。
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