『緑色のケルベロス』


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 「…………なぁ、ノア?」
 「…………なんですかご主人さま」
 「何故にどうして今こんな状況になっちまったんだ?」
 「………私に聞かないで下さいよ」
 今俺とノアが置かれている状況……それは…
 「さぁ、皆さん!それではただいまより真のファイナルバトル、特別マッチを行いたいと思います!!」
  …大歓声に囲まれた超大型V.B.B.S.筺体の真ん前
  んでもって超大型V.B.B.S.筺体を挟んだ向かい側、俺達と対峙する形で不敵に笑うのは
 「よもやこのような状況になるとはな…何にせよ運がいい」
 「……棚から…牡丹餅」
 ……いや、ほんとに訳がわからん
 とりあえずさかのぼって話をまとめていくべきか……



 俺とノアがミラ達と別れて実況席に戻ってみると試合はすでに終わっていた
 試合の内容はほとんど互角、どっちが勝ってもおかしくない状況で勝ち残ったのがミュリエルだったそうだ
 つまり、決勝はミュリエルVSルシフェルという形となった
 ここまではまぁさしてややこしくもない予想範囲内なんだが…
 話がややこしくなるのは決勝戦前のインターバルタイムからだった


 「鶴畑 興紀…ルシフェルが棄権!?」
 「ああ、理由は分かんないんだけど棄権するって本人から連絡があったんだってさ…」
 「なんでまたここまで来て棄権なんか…」
 とはいっても思い当たる節はひとつしかないんだが
 なんにせよ決勝が行われないとなると現状での危険は免れるわけで結果オーライ…
 「…ふむ、もうひと試合組むかのぅ」
 にはさせてくれない爺さまだった
 「このまま中途半端な結果で鳳凰杯を終わらせるわけにもいくまい…そうじゃな…新旧チャンピョン戦とでもいくかの。 幸いゲストとして千沙都ちゃんと冥夜の嬢ちゃんもおることじゃし」
 「私たちですか?おじ様」
 となると新チャンピョン「ミュリエル」VS旧チャンピョン「冥夜(白雷)」ということになるのか…
 「ちいと困った状況なんじゃ、お願いできるかの千沙都ちゃん?」
 「ほかでもないおじ様のお願いでしたら……と、言いたいところですが」
 「ありゃりゃ、引き受けてはくれんか?」
 「いえ、せっかくですから私たちが出るより面白くしなくては…」
 「……ほう、何か案があるようじゃな。聞かせてもらえんかね?」
 「ではおじ様…少しこちらへ…」
 そのまま二人は放送席を降りてどこかへ行ってしまった

 五分後
 「鶴畑 興紀が棄権したとは本当なのか?」
 ジジイたちが帰ってくる前に実況席にやってきたのはアル、昴、葉月の三人と各々の神姫たちだった
 香憐ねぇは招集がかかったらしく、ミコとユーナを連れて本部へ向かったらしい
 「私たちはこんな形で優勝しても嬉しくはない!それに明確な理由もなしに納得しろと言うつもりか?」
 「んなこと言ったって俺だってわかんねぇんだからしょうがないだろ」
 昴と葉月の手前、アルカナの名を出すわけにもいかんからな…
 「なら私が直接聞いてきてやる…答えろ明人、鶴畑はどこに…」

 『あ~、オホン、会場の皆様にお知らせします』

 アルが俺に詰め寄ってきたところで会場アナウンスからジジイの声が聞こえてきた

 『本日、この次に行われる予定じゃった決勝戦、『ミュリエルVSルシフェル』戦なのじゃが…鶴畑 興紀方の神姫、ルシフェルに問題が発生したため鶴畑 興紀選手本人より棄権との知らせがあった』
 会場がアナウンスに対してどよめき始める
 『よって今大会、鳳凰杯2037<春の陣>の優勝者はアルティ=フォレスト選手&ミュリエル…ということになるのじゃが……』

 「おいおい、こんな形で終わってもいいのか?」
 「盛り上がりに欠けた終わり方になってしまいますね…」
 「おい、明人!私はこんな終わり方は認めないぞ!」
 「だから俺に言うなってば! それに大丈夫だっての、ジジイたちはもう一戦組むって言ってたし」
 「…本当だろうな?…相手は?」
 「ああ、それは心配ない。相手はかなりの実力者だ。なんてったって前回の優しょ……」

 『このまま終わるのも何じゃからの。特別バトルとして新チャンピョンと今回の解説者ゲスト』

 『「橘 明人&ノアール」の一戦を行いたいと思う!!』

 「…うしゃの綾川……………はあぁ!!??」
 なんか今、俺の名前が出てなかったか?
 「ほぅ……お前が相手をしてくれると?」
 「え?ちょ、ちょっと待て!今のはジジイが勝手に…」
 「ついに明人VSアルってか?面白そうじゃねぇかよ」
 「いや、だから…」
 「兄さん!あの…応援してるからね!!」
 「葉月まで…だからお前らな…」
 「まさか…ここで逃げたりは…しないよな?」
 「…………」



 ということで強制的に俺はこの場に立たされているのであった
 「ジジイめ…今バトルを行えばどういう危険性があるか分かってやってるからたちが悪い…」
 「ご主人さまなら何か起こったとしても対処できるから御爺様もこの試合を組まれたのでは?」
 「それだったら別に千沙都と冥夜でも問題ないだろ」
 「まぁ…それはそうですが…」
 「しかたねぇ…ここまできたらやるしかねぇな…」
 「それもそうですね。 武装はどうします? いつもどおりの『パターンγ』でいきますか?」
 「そうだな………ノア」
 「はい?」
 「たまにはお前も暴れてみるか?」
 「え……いいんですか?」
 「こんかいは特別な」
 「……では、お言葉に甘えて」
 「ということでパターンは『α』だ」



 『EXTRA BATTLE ノアールVSミュリエル、レディ…………』



 「初撃に気をつけろ…」
 「…ん、わかった…」
 いつもと違って柄にもなく緊張しているようだ
 まぁ無理もない相手が相手だ
 なにせ直接対峙していない私でさえ目の前に広がるバトルフィールドの向こう側からひしひしと伝わってくるプレッシャーを感じるのだから
 バトルフィールドは『王座の間』…おそらくこれが本来決勝戦に使われるはずだったのだろう
 障害物が極めて少ない…まさに決闘に相応しいと言わんばかりの場所ではあったが…こちらとしては少々不利ではある
 本来、接近戦やゲリラ戦を得意とする神姫の場合、障害物や地形などを利用して敵に接近するというのがセオリー上、どちらかといえば不利なのはガチガチな接近戦型のノアが不利なはずなんだが…
 やっかいなことにあの子にはほとんどくハンデにもならないだろう
 まぁなぜなのかということは後ほどわかるだろうが…
 問題は『ノアに接近を許してしまった場合』
 隠れるところも障害物もないんじゃ距離も取れない
 主導権はずっと向うのままに一方的な展開になりかねない
 「いかにノアを間合いに入れないか…だな」
 対接近戦の基本だがそれに尽きるだろう

 『ゴーーーーーーーーーーー!!!』

 「ミュリエル!!」
 「うん!」
 私の一声でミュリエルは両手にアルヴォPDW9をそれぞれ一丁ずつ構える
 「『レフトアイアン』!」
 「……機動」
 サブアーム“チーグル”左腕手首をパージ
 内蔵武装《レフトアイアン》を構える
 「ターゲット…」
 「……Lock」
 いうないなや三つの銃口から鉛の弾丸が一斉に打ち出される
 まさに弾幕の雨…普通の神姫ならとてもじゃない近づけやしないだろう
 ……彼女が普通の神姫なら…な
 案の定、彼女に銃弾がそうやすやすはあたりはしなかった
 その姿は一瞬で移動し、私の視界の片隅にかすかな残像を残す
 「左だ!」
 体の向きはそのままに三つの銃口だけを彼女に向けるミュリエル

 「遅いですよ」
 「!!」

 さらに彼女は加速
 距離はあるが完全にミュリエルの後ろを獲った

 「私が銃器を持っていたら危なかったですね」
 「……はやい」

 ミュリエルがこれほどまで簡単に後ろを獲られるとは思ってもみなかった
 「シャレにならないな…」
 「まぁこちらとしてもさっきのような一斉射撃をもらっちゃうとシャレになりませんので」
 やはり直線攻撃は容易くかわされてしまうようだ
 彼女は接近戦の専門家、対中距離、遠距離のバトルを幾度どなく経験している
 「だか、こっちにも策がないわけではない…」
 彼女に隙などないことなど百も承知
 「ミュリエル…《レフトアイアン》モードチェンジだ」
 「……捕縛型…?」
 「ふ、言わずもがな」
 ミュリエルは《レフトアイアン》のカートリッジを切り替える

 「…どうします?ご主人さま」
 「接近戦は…ないだろうな。明らかにこちらに分があるし、その裏をかいてきたとしてもお前なら十分対応できる。そんな愚策を取っては来ないだろうし」
 「ではセオリー通りに遠距離戦で来ると?」
 「《ライトオリジン》を活かそうと思えばその線が強いが…それでこそこっちの思うツボだろ?戦いの最中、最も恐れるべき最悪の事態は?」
 「完全にこちらの思考が相手に把握されること……」
 「そだな。でもまぁそれを打ち破ることもできるんだが…あいつらはそこに行きつくか…」
 「…随分アルティさんの力を買っているんですね…」
 「ん?」
 「この試合、私は勝てばいいんですか?それとも負けましょうか?」
 「はぁ?おいおい、なに言ってるんだよいきなり…」
 「どちらにするのかで今後考えて動かなければなりませんから」
 「いや、負けろなんて命令…せっかくのパターン『α』なのに…」
 「ご主人さまがお望みとあらば」
 「…………なんかおまえ怒ってないか?」
 「怒ってません」
 「だって目が…」
 「怒ってません」
 「………………」
 「怒ってません」
 「………はぁ、わかったよ。そんじゃ…」


 「…カートリッジ交換完了」
 「タイミングを見誤るなよ?」
 「……もちの…ロン」
 言いながら左回りに旋回、と同時に《レフトアイアン》が火を噴く
 「!」
 無論、彼女に直撃などは望めない
 素早いステップで舞う様に右へ左へと体を動かす
 足もとに着弾するたびタイルを敷き詰めた地面が跳ねる
 狙いはそこなんだ
 「!?」
 彼女の動きがピタリと止まる
 「…足が…これは…」
 「!?ノア、どうした?」
 「両の足の裏が地面から離れません…恐らく…特殊弾」
 「そのとおりだ、対回避行動型用に用意していた特殊弾」
 「…中身は…アロンアルファ…だけどね…」
 「いや、アロンアルファって…」
 「こ、効果があれば何でもいいんだ!ミュリエル!!」
 「了解、《アポカリプス》展開…」
 《アポカリプス》の六枚のハッチが開き上方へと六発のミサイル弾が発射される
 そのまま動けないでいるノアの真上で全弾が炸裂、彼女の周りに大量の黒槍が降り注ぐ
 「これは…ミュリエ戦で使った捕獲用の黒槍拡散弾頭か!」
 「念には念を…というところか。休まず行くぞ!《ライトオリジン》フルパワー!!」
 「……展開」
 《ライトオリジン》の銃身からバチバチと放電現象が起こる
 こと、この一撃に耐えうる神姫などそうはいないだろう
 その上彼女の武装は超軽量型、当たれば…
 周囲にプラズマ現象を引き起こすほどのエネルギーが発射される
 間をおかずそのまま着弾
 辺りに爆風とともに煙が巻き起こる
 煙が晴れていき…次第に弾道上の黒槍が熱で溶けている光景が目に入るようになてくる
 そうして肝心の着弾点に彼女の姿は…
 「いない…」
 クレーター状になっているその場には彼女はいなかった
 「…!!ミュリエル警戒しろ!終了のコールもかかっていないんだ。そうなると…」
 「遅いです」
 「!!」
 咄嗟にしゃがむミュリエルの上を平行に《クロノスベル》の刃が空を切る
 その持ち主は傷一つ無くミュリエルの背後から現れた
 「む、無傷だと!?」
 「まだまだいきますよ?」
 左へ振り切った刃を止めることなく今度は大きく振りかざす
 「くっ!」
 右へ転がるように第二撃も何とかかわしきる
 そのまま3,4回転がり間合いを取ったところで片膝をつくような体制で止まるミュリエル
 「流石にかわしますか…」
 「…危なかったけどね……どうやって…あれを抜けた?」
 「それは……そうですね…『禁則事項です♡』ということで…」
 「…それ反則…」
 「どちらにしてもよくかわしてくれましたミュリエル…。これで私も、久々に思いっきり戦える」
                                  続く



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