『策謀家』再び


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 「橘さん」
 午前の部、八試合を終えての昼休憩
 後ろから呼ばれた声に俺は振り返る
 「お昼…ご一緒しませんか?」
 笑顔で昼食を誘ってくれたのは俺と同じ解説者役をしていた綾川さん
 彼女の肩にはいつもの通り、パートナー冥夜の姿が
 「昼…ですか」
 俺の方はいつもと違って左肩から冷ややかな目でこちらを見ているノア一人だけ
 これから香憐ねぇ達と合流するつもりだったのだが…
 「ええ、できればお話したいこともありますし……二人で」
 話したいことというのがなんとなく気になった
 「…ご迷惑でなければ」
 というか……これはチャンスかもしれない
 いや、けして彼女と二人っきりになれるとかそういうやましい事ではないので首の皮引っ張るのは勘弁してくださいよノアールさん
 痛みをこらえ、少し引きつった笑みで綾川さんのお誘いに乗る俺
 「そうですか。ではこっちにいいお店があるんです」
 そんなことは気にしない様子で綾川さんは振り返り、俺の前を歩き出した

 「ご主人様……どういうつもりですか?」
 「いててててっ!」
 俺に耳打ちするノアは引っ張る力にひねりを加えてきやがった
 段々、拷問じみてきたぞオイ
 「ミコとユーナが待ってるんですよ?それに…葉月さんを慰めてあげなくてもいいんですか?」
 「……ミコとユーナには今しばらく我慢していてもらう。香憐ねぇにメールしておくさ。葉月は…昴がいるから大丈夫だろ」
 俺とノアの前を行く綾川さんには聞こえないようにノアだけに聞こえるぐらい声で話す
 「…この際ミコたちはいいとして…葉月さんとレイアは誰のために頑張っていたと思ってるんですか貴方は…」
 「誰のためって……誰?」
 「はぁ、もういいです」
 あからさまなため息だな
 「お前だって気になるだろ?彼女が何者なのか」
 「それは確かにそうですが…しかし」

 「お二人で内緒話ですか?」
 「あ、いえ……」
 いつの間にか俺の横を歩いていた綾川さんに少し驚く
 「ふふ、仲が宜しいですね」
 「いや、まぁ…」
 「ですが…今は私もいるんですよ?」
 そういいながら俺の右腕に自分の両腕を絡める綾川さん
 えと、胸当たってるんですけど……このひと前からこんなに大胆だったっけ?
 ギリギリと抓る力を増すノアの圧力に耐えながらそう思った俺なのである



 「えっと、チキンサンド二つとカツサンドをそれぞれセットで。あとはコブサラダ」
 「了解! ちょっと待ってなさいよー!」
 注文を取りに来たウェイトレスの女の子はものすごい勢いでカウンターへと帰っていった
 さっきの子…確か午前の最後の試合に出てた子だよなぁ…ここでバイトしてるのか
 綾川さんが俺とノアを案内してきたのは喫茶店LEN
 俺達は昨日もここで昼食を取ったんだが…考えようによっては都合がいいんだよな
 昨日の今日だ、アルティ達が再びここで昼食を取るということは考えにくい
 つまり、約束をすっぽかした上に女性と二人でいるところをアルティなんかに見つかってしまういう考えただけでもおっそろしいオチだけは回避できそうだと言うことだな、うん
 「橘さんは…ここのお店を知ってたんですか?」
 「え? あ、えぇ…」
 「そうなんですか。私はここのコーヒーが好きで本店の方にも何度か行ったことがあるんですよ」
 「そうなんですか……」
 「えぇ…」
 「…………」
 「…………」

 む、むむむむむむむ…いかん
 話の間が…会話が続かん!
 いつもの感覚だったら世間話ぐらいわけないんだが
 如何せん俺はことを警戒してしまっている
 う~ん、なんとかそこら辺を上手く聞き出せないものか…

 「クスッ」
 「へ?」
 何がおかしいのか俺の向かいに座っている綾川さんは口元を上品に隠しながら笑っていた
 「あ、あの…」
 「あ…ごめんなさい。橘さんがあまりにも困ってらっしゃるのでつい…」
 そう言っている彼女はどんな男でも魅了するようなほほえみである
 「…そろそろ意地悪するのもお仕舞いにしておきましょうか。私が何者なのか…気になっているのでしょう?」
 「いきなりですね…」
 「あら、もっと焦らした方が良かったですか?」
 今度はちょっとイタズラな笑顔
 小悪魔というよりも大人の女性にからかわれている様な感じだ
 目を細め、挑発するような彼女は猫の様だ
 猫といってもミコみたいなゴロゴロと甘える猫ではない
 気まぐれで少し妖しく、だけどけして上品な印象を失わない…って、あれ?
 俺はこの感覚をどこかで……
 「それではヒントを差し上げます。私は…」
  …………なんかわかった気がする
 「おまえ…ゴレか?」
 俺の一言で彼女は固まった
 目だけは俺をまっすぐ見つめていて瞬きさえもしない
 口元も喋りかけたままで止まっている
 やがて、仕切りなおしとばかりに一回咳きをしてから彼女は一言

 「……なんで当ててしまうのですか、スケイス様」

 なんかめっちゃがっかりしたような口調でそう言った
 ていうか当たりなのかよ…
 「ほ…ほんとにゴレさんなんですか?」
 テーブルの上に座っているノアは驚きからかちょっと面白い顔をしているぞ
 「ええ、そうですよノアールさん……私が元八相の-策謀家-『ゴレ』です…」
 ジト目になって俺を見るな
 そりゃたしかに微妙な驚きしか残らなかったのは残念な結果かもしれないけどけして俺のせいだけじゃないだろうが
 「ご主人様…どうしてわかったんですか?」
 心底不思議そうな顔をしているノア
 こいつ最近、なんだか表情豊かになってきている気がするな…などと考えながらも
 「……なんとなくだ」
 と答えてやる
 「は?」
 呆れたようなノアの声
 「なんとなくだよ、なんとなく。確かに声はネットの時と多少変えてあるし、口調だって違うが…俺とコイツもなかなかの腐れ縁だ。それに一時期コイツ…『ゴレ』を名乗るハッカーも増えたことがあって…それ以来、本人かどうかの大体の判別が着く様になったんだ」  それ以外にも確信がいくつかあった
  ミュリエルとレイアの対戦でアルティが用いた戦術をすぐさま見抜いた事やその戦術を『増殖』と表現した事…
  彼女がゴレ本人なら辻褄は合うんだよ
 「でも今まではわからなかったじゃないですか」
 「んなもん当たり前だろうが。いちいちコイツがそうか? なんて考えてられるかよ…」
 「まぁ…確かにそうですが…」
 ノアの質問はとりあえずここでおいといて俺はゴレの方に視線を戻す
 「なんか聞きたいことというか…ツッコミどころ満載なんだが…とりあえず、何の用だ」
 「あら、始めの質問がそんなことで宜しいんですか?」
 「というかご主人様、ゴレさんだとわかったとたんに態度変わりすぎですよ…」
 「ホント、あいかわらずつれない方ですね」
 まぁそこが良いのですが…と付け足しながらクスクスと笑うゴレ
 「うっせ、はやく答えやがれ」
 「ではお答えしますが…用という事は何もないですよ?私はスケイス様のお母様、伊織社長からのお願いで今回の解説者役を引き受けただけですから」
 「…御袋はお前がゴレだってことを…」
 「いいえ、ご存じないと思います」
 …ジジイの差し金という線を頭の隅に浮かべていた俺を見透かして「兼房様も同様ですよ」と釘をさす
 「…んじゃ次だ。その名前は…綾川 千沙都ってのは本名か?」
 「ええ、本名です」
 「……一応聞いておくが、お前はレスティクラム世界大会で中国代表だったろ」
 「私、けっこう色んな国の国籍持ってるんですよ」
 ああ、やっぱり?
 おまえはそんなことで情報漏らすヤツじゃないもんな
 「わかった。これからはどう呼べばいいんだ?」
 「どう…とは…」
 少しキョトンとした表情のゴレ
 「今、俺と二人だけで話をしているということは他の奴らにはまだ知られたくないんだろう? ならゴレと呼ぶのはまずい」
 「それはそうですが…」
 「だからって今更お前を『綾川さん』なんて呼ぶのもどうかと思うしな」
 「そうですか。では……千沙都とお呼び下さい」
 「そんなんでいいのか? お前俺よりは年上だろ」
 「ご主人様、その言い方は女性に対して失礼ではありませんか?」
 「何を言うか。俺なりに目上の者に対する礼儀がなければならんと…」
 「クスッ、いいのですよノアールさん。スケイス様なりの気遣いは承知しています。確かに私はスケイス様より少しお姉さんですが…私達の仲ではありませんか。千沙都で結構ですよ」
 「…ならそれでいかせてもらう。ついでに言うが千沙都も俺の呼び方は変えて…」
 「わかってますよ明人さん」
 うわ、めっちゃニコニコしてるよ…
 つか…なんかそこまで嬉しそうに名前を呼ばれるとこっちとしてもなんか照れ…
 「おほん!」
 …る暇を与えないと言わんばかりのタイミングでノアが咳き込む
 「そう言えば白雷さんはどうしたんですか?」
 「え? ああ、あの子なら…」
 ノアの質問に答えようとした千沙都の肩に乗っていた冥夜がひょいとテーブルに飛び降りてノアの前に立つと…
 「私が『白雷』だ、ノアール殿」
 なんてことを言い出した
 「え…あ、冥夜さんが…白雷さん?」
 「うむ、ちなみに主の神姫は我のみだからな」
 確かにこの侍言葉は白雷のようだ
 …そういえば冥夜の声って今はじめて聞いた気がする
 「って待てよ冥夜。確かに白雷もアーンヴァルだけどお前とはカラーリングが真逆だろ」
 白雷はノーマルタイプのアーンヴァル
 冥夜は黒と赤のツートンで髪が白いポニーテールの限定版アーンヴァル、俗に言う『黒白子』なのだ
 「あら、私にかかればバーチャルであればこの子のカラーリングやネーム設定などどうとでもなりますよ?」
 さらりと言い切る千沙都
 無茶苦茶しますねアナタ……
 「ヘイお待ち!」
 と、さっきの元気のいいウェートレス女の子が注文した品をもってきたので話も一時中断
 しばしのランチタイムだ

  「つか一番気になってた事聞いてもいいか」
  俺の一言で会話は再開する
  「何でしょうか?」
  食後のコーヒーを味わっていた千沙都はカップを置いて受け答えをする
  「何で今更正体を明かすんだ? 今まで通りにしていれば俺は気がつかなかったぞ?」
  「ぷっ、く、くははははっ、わかっておらぬな明人殿。我が主とて女なのだぞ? 思いを寄せる男にかまって貰えず寂しいというのはいたし方あるまふぃ!」
  大爆笑しながらそこまで一気に喋っていた冥夜だが最後らへんで千沙都に両頬を摘ままれた
  「……冥夜? アナタはいきなり何を寝ぼけた事を言ってるのかしら?」
  黒い!
  父さん、僕にも黒いオーラが見えるよ!!(謎)
  「なふぃふぉふふふぁるふぃ! ふぇふぇふふぉふぉふぉふぃふぇふぁふぁいふぁ!!」
  えぇ~と冥夜、引っ張られたままで普通に喋ってるけど何言ってるかサッパリだぞ
  「『何をする主、照れずとも良いではないか』と言っていますね」
  は? ノア、お前何でわかるの!?
  冥夜は正解であることを示そうとこっちに向かって両手で○をつくってるし
  「当たりの様ですね」
  「見りゃわかる」
  俺とノアが話している間にも冥夜の頬は伸びたり縮んだりをくり返していた
  なんだか面白そうだな、今度ミコにでもやってみるか
  「何を言ってるんですか…少し怪しい情報を掴んだから忠告しに来たんでしょ?」
  「ふぉふぇふぁきふぇんふぉふゅふぉふぉふぁふぉ~?」
  「え~と、なんて言ってる?」
  「『それは詭弁と言うものだろう?』と言っていますね」
  またしても正解らしいが…変な通訳
  「何が詭弁ですか…明人さん」
  「え? あ、はい」
  急に真剣な顔に切り替える千沙都に思わず硬い返事を返してしまった
  「この大会………裏で何かが起こっているようですよ」
  「…………は?」







  「では社長、そのように進めておきます」
  「あ、はい。お願いね…」
  営業二課の渡辺との進行状況と今後の軽い打ち合わせをすませた私は控え室に戻るとパイプ椅子にへたりこんだ
  「……はぁ」
  口から洩れるため息は見逃して欲しいな…
  こんな見た目でも私はもう若くないんだから
  というか毎年の恒例行事となりつつある鳳凰杯だからいい加減慣れてはいるんだけど今年は桜が警備の指揮にかかりきりだから私一人で大会全体の指揮をしなくてはならなくなっていた
  「桜がいてくれたらなぁ……」
  思わずぼやいてしまう
  こんな時だから桜の大切さが身に沁みるのよね…
  有能で、美人で、優しくて、時には厳しいけど…それは私のことを考えていてくれるからで、3時になったら手作りのお菓子なんか作ってくれて…そういえば私、お昼もまだだよ…おなか減ったなぁ…じゃなくてぇ!ええい兎に角!!
  「さくらぁ…カムバーーーーーク!!」
  「なに喚いてんだよ……いい歳して」
  「へ?」
  控え室には私一人だと思っていたから思わず叫んでしまったが…
  「つ、燕!?」
  「よっす」
  部屋の中にはいつの間にか幼馴染の燕の姿があった
  「どうしたの? バトルカップはまだ午後もあるんでしょ?」
  「まだ休憩時間だっての。そんな事よりアンタの事だろうから…ホレ」
  燕は手に提げていたコンビニの袋を私に差し出した
  「差し入れ持ってきてやったんだ。今は現場指揮中、社長室とは勝手が違う上に大忙しで桜がいないんじゃアンタは本気で飢え死にしかねないからな」
  「…失礼しちゃうわね。桜がいなくったってお昼ぐらい……」
  燕から袋を受け取り、中からオニギリを取り出したところで私のおなかは『ぐ~』と鳴った
  「くくくくっ、アンタは嘘がつけないね。根っからの正直者だ」
  「わ、笑うことないじゃない……」
  「いやはや、コレが二十歳過ぎの子供を持つ母とは…さらには鳳条院の社長だもんな」
  「つ、燕だって花菱のお嬢様ってガラじゃないでしょ!」
  「お嬢って歳でもないけど…確かにそうだ。くくくくっ」
  私がオニギリを食べる姿が可笑しいのか、燕はまたしてもお腹を抱えて笑い出す
  「いや、相変わらず可愛いねぇアンタは…くくくっ、鳳条院のマスコットキャラにでもなるんじゃないか?」
  「またそう言う…これでも会社の人達には『社長、今日もお綺麗ですね』とか言われてるんだからね」
  「……見え透いた世辞だろうが。綺麗ってのは桜みたいな女を指すんだよ、アンタはそんながらじゃないだろ?」
  桜を比較対照に持ってこられると敵わない
  悔しいけど…燕にも…敵わない……
  「ううううううぅぅ……」
  「言い返せないからって唸るなよな…カワイイ、カワイイ社長サンw ホレ、もいっちょ食え~」
  悔し紛れにもう一つ食べようと燕がさしだしたオニギリに手を伸ばす
  しかし、オニギリを掴んだ瞬間“ガシッ”と私も背後から誰かに頭を掴まれた
  「きゃ!」
  私は驚いて背筋を跳ねてから固まった
  「お? 明坊じゃん。どうか…した…の…か…」
  目線を上に上げて私の後ろに声をかける燕
  「へ……あ、明人?」
  燕の言う明坊とは明人のことだ
  彼女は明人が小さい頃から自分の子供のように可愛がってくれていた
  私も同様に彼女の息子、昴君や桜の娘の香憐ちゃんを自分の子供のように思っている
  そういえば最近の香憐ちゃんはすっかり桜に似て綺麗になってきたわね…
  この際、香憐ちゃんを明人のお嫁にもらって…昴君は葉月の婿養子にすれば…私が全員総取りってことに……ゲフンゲフン!!
  ………熱くなりすぎて少し話がそれちゃった
  それよりも…燕が口をぽかんと開けたままで話さなくなってしまったのはどういうことかしら
  視線はそのままであることから明人のほうを見ているようだけど…
  不審に思い、そろそろと後ろをに向き直る…と
  母親である私を恐っそろしい微笑を浮かべながら見下ろしている愛しの息子の姿があった
  「は、はわわわわわわわわわわ……」
  お、怒ってる…
  滅茶苦茶怒ってるよぅ…
  私にはわかるの
  母としての勘が…母性本能がそう告げている!!
  「御袋、俺に隠してる事…あるだろ」
  予感的中!
  私ってばニュータイプ!!?
  しかし、声の凄みだけで震えがとまりません(泣
  「や、やだな~私が明人に隠し事なんてあるわけないじゃ…いたぁ! いたたたたたたぁぁぁ!!?」
  万力の如く威力を増すアイアンクローに私は涙目になっていた
  誤魔化す暇もあたえてくれないなんて殺生な…
  「ご、ご主人様、流石にそれはやり過ぎですよ!」
  ああ、ノアちゃんの仲裁が天の声に聞こえるわ…有り難う、ノアちゃん…
  私を庇う彼女の声で何とか手の力を緩める明人
  「あ、明坊…なんか随分ご立腹みたいだよ?」
  私の耳元で明人に聞こえないような声で話す燕
  「……貴女は助けてくれないのね」
  「無茶言うなよ、ホントに怒ってる明坊は苦手なんだって…」
  そんなの私だってそうよ…そこら辺は祖父の血を継いでるのかなぁ…
  あの普段はチャランポランにみえるお父さんもいざという時になれば人柄が別人の様に変わるんだもの
  「ちょっと良くない噂を耳にしたんだけどなぁ……」
  再び地の底を這うような低い声
  「う、う、噂?」
  噂………私が明人に内緒にしてる…良くない噂?
  「お袋が言わないんだったら桜さんに…って、桜さんもいないなぁ…どうしてかなぁ…」
  何故あたかも桜がいないことを知っていたかような口調なの!?
  ま、ま、まさかあの『脅迫状』…じゃなかった『予告状』の事!?
  あ、あれはマズイ…この子にバレたら今すぐ大会中止しろなんて言いかね…
  「『アルカナ』って…な・あ・に?」
  ば、ばれてるぅぅぅ!!?
  「あ、ある、あるかな? 何のことだか…いたたたたたあぁ!!!?」
  またしても私を襲うアイアンクロー
  「ご、ご主人様…」
  「いや明坊、ホントにヤバイって!!」
  なんだかだんだん意識が遠くなりそうなのを感じた私は素直に白状することにした
  ゴメンナサイ…ミラちゃ~ん



  「なるほど。それで今はそのMBA捜査官にまかせてるワケか…」
  節々を省略しながらも私は今回の事件について明人とノアちゃんに説明した
  「…燕さんは知ってたんですか?」
  軽く燕を睨む明人
  「あ…ああ、バトル会場の司会進行を頼まれているからねぇ。いざと言うときのためにって話は聞いてるよ」
  「…だったらなんで俺には黙ってたんだよ御袋」
  「そりゃ…明坊に喋ったら無茶しかねないだろ? 伊織だって親として心配にもなるよ…」
  「御袋の場合は心配しすぎですって」
  「そりゃ…そうだけどさ…」
  明人の気迫に押されて口ごもる燕
  ああ、いつもこんな時には桜が何とかしてくれるのにぃ…
  さくらぁ……カムバーーーーーク!!
  「とりあえず、その爆弾探しってのには俺も協力…」
  「止めておけ」
  明人の声を遮ったのは桜…ではなくて
  「あ、アルティ?」
  明人の元彼女さんのアルティちゃんだった
  コレで私と桜の友情パワーを無意識にままに使っていて桜が駆けつけたのなら凄かったのに…ね!
  「お前、なんでここに…」
  「馬鹿者。皆でお前を探してたんだ」
  「いや、馬鹿っておまえ…メールしたろ?」
  「お前、その後携帯の電源切ってただろ?連絡がつかないんじゃ同じだ馬鹿」
  「うっ……」
  明人らしくないミスだ
  連絡が来たらマズイ状態だったのかな…
  「香憐はお前がこの事件に足を突っ込んでいるんだと思ったんだろ。今も血眼になって探し回っているぞ」
  香憐ちゃんには桜を通じて私から今回の事件において明人、はづちゃん、昴君の監視、及び護衛の特別指示を出しておいた
  しかし流石は香憐ちゃん
  明人の事はお見通し…大正解ね
  「盗み聞きのようですまないが…話は大方聞かせてもらった」
  ゆっくりと部屋に歩を進めながらアルちゃんは続ける
  「ミラ・ツクモ……彼女が来ているというのならば問題は無いだろう。一言でBMAと言っても彼女は神姫絡みの事件を担当する違法神姫捜査課の凄腕。餅は餅屋というやつさ…違うか?」
  そういえばアルちゃんの実家はミラちゃんが住んでいるカリフォルニア州だったわね…
  だけど…アルちゃんが言うとなんか違和感あるわ…その諺
  「お前…その『ミラ』って子を知っているのか?」
  「向こうにいた頃にちょっとあってな。黒衣を纏った『死刑執行人』だ」
  「『死刑執行人』…」
  そう言えば桜もそんな事言ってたかな…
  「彼女もお前と同じ『死の恐怖』。死神は二人もいらんだろ」
  なにかとてつもなく怖い話してると思うのは私の気のせいかしら?
  「……烈風…震雷…連山………強かった…」
  いつの間にか明人の頭の上にいたミュリエルちゃんは小さな声でアルちゃんを援護射撃
  「彼女らの実力はもしかすれば…いや、ノアより上の可能性も十分にある。こう言っては何だが…向こうのレベルは非常に高いんだ」
  二人の言葉に明人は難しい顔で考え込む
  「………お前らがそこまで言うなら、その執行人さんとやらに任せてみるかぁ」
  よ、よかったぁ……ため息混じりにそう言った明人はいつのも優しい明人に戻ってる
  その瞬間、部屋の中に充満していた重苦しい空気が抜けた気がして私は机にへたれこんでしまった。
  「よ、よし。明坊もアルティもそろそろ戻ろうや。午後の部が始まるぞ!」
  燕は急かしながら控え室から出て行く
  確かに時間は結構過ぎていた
  「そうですね…お騒がせしてすいませんでした、鳳条院社長」
  「あ、いいのよアルティちゃん。明人をよろしくね…」
  「はい。では私達も準々決勝がありますので…これで失礼します」
  一礼して出て行くアルティちゃん
  何とも頼もしいお嫁さん候補よねぇ…
  彼女に続く明人
  何も言わずに行くのかと思いきや、しかし流石は我が愛しの息子ね
  部屋を出る直前に背中を向けたまま
  「…気をつけろよ…御袋」
  なんて言ってくれた
  「あ…あきひとぉ~」
  貴方…それは反則よ?
  心配してくれたことが嬉しくて涙が出そうになるじゃない!!
  しかし泣いてはいられないわ…私には私の仕事があるんだもん
  私の親友も頑張っているんだから…
  頼むわよ…桜
  何としてもミラちゃんと一緒に……皆を護ってあげてね!!

  追記
  バトル会場に戻る途中、香憐ねぇに遭遇
  お説教モードになりかけたところを燕さんに助けられた
  香憐ねぇは会場中を走り回っていたらしく、ポケットに入っていたミコ、ユーナ、孫市は三人とも目を回していた
  後にユーナは語る
  「下手すりゃ死んでた…」
  と…


このページの訪問者: -
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。