日記その十三 フェレンツェの志


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  「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
  冒頭からオッサンの悲鳴で申し訳ない…
  あの騒がしかった事件(?)から数日、とりあえず俺とアルティのわだかまりについてはひと段落着いた………と思いきや…
  世界は俺にしばしの安息を与えることを忘れているような気がする
  ホント最近は何故こんなにも問題が次から次へと出て来るかな…
  嘆いていても仕方がないのでとりあえず本題に入ろうか

  俺たちは今、フェレンツェ博士の書斎にいる
  おっと、そういや研究所がどこにあるか言ってなかったかな?
  場所は都内にある鳳条院グループ本社ビルの22階、そこが博士の研究所なんだが正式名称『武装神姫日常生活部門研究部』となっている
  つまりは技術会社である鳳条院グループの神姫関連の研究部という位置づけになっているんだが、こうなっている事についてはちゃんと理由がある

  何度も言うようだが人型神姫インターフェイスは超極秘間での研究なんだけどフェレンツェ博士は有名人、それも国際的重要人物のお偉いさんなわけであるからして世界中から注目されてちゃ極秘も何もあったもんじゃない
  というわけでジジイの会社、鳳条院グループの技術開発指導員としての企業契約を来日理由としたんだとさ
  それにあわせて博士の研究場所は秘密漏洩対策として鳳条院グループの研究部に組み込んでいるのさ
  技術会社なので研究設備、施設共に充実しているここなら博士としても文句はないだろう
  ………………が

  「い、痛いじゃないかユ~ナぁ~;」
  そんな博士も娘同然の神姫にいきなりドロップキックを喰らったら文句の一つも言いたくなるらしい
  それにしても頑丈だな、このオヤジ…
  「自業自得だ!! 知ってたくせにアタシ達に黙ってやがって!!」
  ユーナが言ってるのは-フィドヘル-が博士の娘であるエリー・カークランドだったと言うことと、-マハ-であるアルティに力を貸していたことを黙っていたことについてである
  ちなみにユーナはインターフェイスですよ
  博士ふっ飛びましたよ五メートルほど…
  「仕方ないだろ? 私が喋ってしまっては無粋というものだよ。それに彼女の気持ちには協力してあげたくなってしまったし…」
  博士はそういうとアルティの方に視線を向けた
  「…ユーナ、それぐらいにしてもらえないか? 博士には私達が口止めしていたんだ。あまり責めないであげてほしい」
  「…………しゃぁねぇな」
  ユーナはブスッとしたまま頭を掻きながら俺の横に戻ってくる
  「…ありがとう」
  と、アルティは静かに言った
  「ご苦労様、ユーナ」
  「スッキリしたよ~」
  と、ウチの残りの娘二人はユーナの頭を撫でる
  「あぁ~!! やめい! うっとおしい!!」
  ちなみにノアとミコもインターフェイス
  三人ともさっきまで別室でメンテナンスをやっていたのだ
  「いやいや、助かったよアルティ君~」
  「いえ、私達がご迷惑を掛けたばかりに…」
  「いやいや、研究も手伝ってもらってるし。助かってるよ」
  「アルも何か手伝ってるのか?」
  「…ああ、データ処理や雑用だけどな」
  「それでも助かってるんだよ?今は何かと忙しくてねぇ…」
  確かに博士のディスクの上には資料が山積みになっている
  「どうかしたんですか?」
  「いや…この研究についての問題点をまとめていたんだ……」
  「問題点…ですか?」
  「うん…あ、インターフェイスの可動自体には問題は無いんだけどね…」
  可動以外の…問題点………
  「どういうことか聞かせてもらえますか?」
  「うん………明人君には言っておくべきかな…すまないが皆は席を…」
  「はい、わかりました」
  「OK~。ご主人様、後でね~♪」
  「あぁ」
  そう言って部屋を出て行くノア、ミコ、ユーナ、それにアルティ


  「ノア、ミコ、ユーナ…ちょっといいか?」
  「なーに? アルさん」
  「おまえたちに話しておきたいことがある…」


  部屋のドアが閉じられ、博士の書斎は俺と博士の二人きりになる
  「……あいつらがいちゃマズイ話しなんですか?」
  「うん…まぁね。それに彼女らは彼女らで話しがあるだろうし…ね」
  「???」
  どういうことだ?
  「さてと、問題点なんだけど……単刀直入に言うと『インターフェイスが今の社会に及ぼす影響』なんだ…」
  「インターフェイスが社会に及ぼす影響?」
  「ああ、この際初めから順を追って話そう。少し長くなるからそこに…」
  そういってソファー(この前ノアがぶん投げたヤツ)に座ることを薦められた俺は博士とテーブルを挟んで向かい合うように腰を下ろした

  「私の研究は人と神姫のコミュニケーション…平たく言えば彼女らと彼女らのマスターとなる人との間にある物理的な『壁』を取り除こうというものなんだ。神姫はただのロボットではない。彼女らには感情がある。そうするとマスターと日々を共にする神姫達にはある感情が芽生える可能性が……というか普通に考えると当たり前のように思うんだが…研究者は理屈に振り回されてしまって見落としがちになってしまうことがある…もはや職業病だな、これは…」

  博士は自嘲気味に軽くため息をついた
  「ある…感情…ですか?」
  「ああ、それはマスターに対する……愛、恋愛感情だ」
  「恋愛感情…」
  「そう」
  まぁ、そういう話はよく聞くから心当たりがないわけじゃない
  確かに神姫達も女の子、恋する気持ちがあってもおかしくないと思う

  「しかし、彼女らは自分の持つマスターへの思いを伝えられないことが多い。『自分は人ではない。マスターとは結ばれはしない』という現実があるから…彼女達は内に秘めた淡い思いに蓋を閉めるしかない…」

  現実…か

  「それ以外の理由でも人と同じ体を必要としている娘がいるかもしれない。私は開発時から彼女達、神姫と関わってきた中で…どうしてもそのことが頭の隅に引っかかっていたんだ。それがこの研究を始めたきっかけかな…」

  そういえば博士はMSS開発において日常生活の方面を担当していた開発者メンバーの一人でもあったな…

  「私は彼女らに人と変わらぬ体を与えようと考えた。しかし、それこそ神の領域。神を重んじる者から見ればなんとも罰当たりな事かもしれない。そんな哲学的な話を抜きにしても簡単な話ではないんだ…コレを見てくれ」

  博士がデスクの上から資料を一枚抜き取ると俺の前のテーブルに置いた
  その資料に記載されているのは次の通り、


  問題一、インターフェイス使用により人工兵器として扱われる可能性について

  問題二、生殖機能搭載における社会の風俗的見解について

  問題三、受胎機能搭載における子供への社会的偏見、差別について

  と書いてある…
  博士は自分のデスクの後ろに回り、大きなガラス越しに外の景色を眺めながら続きを語り始めた

  「そこにあるのは今の大きな課題、『インターフェイスが今の社会に及ぼす影響』の一部さ。これについて議論しているんだけど…なかなか思うようには進まないよ。第三者の意見も知りたい所なんだけど…どうにも極秘というのはまどろっこしいねぇ。まぁ、それだけの内容なんだけど…」

  たしかに…これは一夕一朝で解決する問題ではなさそうだ…

  「このような問題が山積みなのが現状さ。今の段階では私一人の主張。世の中、そんな奇麗事だけでは動かない事は理解しているつもりだ」

  その背中はいつものオチャラけた博士ではなく、天才科学者フェレンツェ・カークランドの背中だった

  「博士…」
  「インターフェイスは私のような者の指揮でも数年かければ今のように運用自体には問題なく進めることが出来た。技術的には可能となった時代なんだよ…昔、私もMSSの開発に関与していたが、なぜ神姫はあのサイズなんだと思う?」
  「確かに…あれほどのAIの搭載を可能としているならヒューマノイドの実現もありそうだけど…」
  「理由その一、大きくなればそれほど開発コストは掛かってしまう。今でさえ神姫はけしてお手頃とは言えないしね。私達はまず彼女らを世の中に普及させる事を考えていたからその事は大きな問題となったんだ。理由その二、『小さい自分だけのパートナー』というコンセプトが前提であった。まったくもってその通りだね! これは神姫の萌え要素として欠かせない…って、語り出すと3時間は要するので止めておこう…」

  一瞬、元の博士に戻りかけたな…

  「他にも理由はあるんだが…AI市販化の先駆けとしてお手ごろなサイズで誕生したのがMSS、武装神姫。私の言う『壁』を『あえて残した』ことは正解だっただろう。今はまだその時期ではないと当時の私もそのことに関しては異論はなかった。けれど私は彼女らの開発者の一人として…一児の父親として…愛する人と結ばれる幸せを彼女らにも与えてあげたい…」

  考えるべきことは考えている…というところ、流石だなこの人は…
  「大変ですね…」
  「いつの時代も神に挑むのが科学者さ。コレが私の愛の形だからね…」
  「……俺も何か手伝えますか?」
  「いや、明人君はノアール達といつものように生活してくれればいいよ。だけどこの事を少しだけ頭に入れておいてほしいんだ。あ、答えを出せというわけじゃないから気負わなくていいからね」
  「はぁ…」
  「そうそう、アキースはノアたちと今まで通りの甘々な生活を楽しめばいいんだよ」
  「いや、別に甘々というわけじゃ…って、おわぁ!!」
  何か普通に答えてしまうところだったが、博士とは違う高い声に俺は初めて自分の横にフィドヘル…いや、エリーがいたことに気づいた
  「やぁ。やっと気づいたの?」
  「お、おまえ何時から居たんだよ…」
  「ついさっき。あ、父さんお茶持ってきたよ」
  そういってテーブルに緑茶と醤油せんべいの盆を出すエリー
  「おお、ありがとうエリー。流石、私の愛娘だね」
  いつもの博士に戻っちまったな……
  「はいはい、その台詞聞き飽きたってば…」
  ゴキゲンな父親と半ば呆れ気味の娘
  どうでもいいけど緑茶とせんべえ……二人は和風な外国人だった
  「というかエリー、その呼び方はどうにかならないか?」
  「ん? 『アキース』?」
  「そう、それは偽名なんだ。俺だってちゃんと直しただろ?」
  「ん~君がそういうなら…じゃ、あ・き・ひ・と♡」
  俺の名前を呼びながら腕に擦り寄ってくる
  「…なんだ?」
  「あれ? 照れないの?」
  ミコでなれてるからな…とは言わない
  それよりも…
  「そういうことはもう少し成長してから言うんだな…」
  正直ミコより小さいぞ、お前
  「なっ! し、失礼しちゃうなぁ~」
  「事実だろ」
  「僕は今からなの! すぐに香憐みたいなスタイル抜群の超美人になるんだから、プリティな僕は今が見納めかもしれないよ~?」
  香憐ねぇみたいな? はっ、この調子じゃ4、5年はこのままだろ
  どっからその自信がくるんだか…
  「ところで明人君、アルティ君とはどうなの?」
  いきなり話題を変える博士
  「へ? どうって…」
  「元鞘に納まったんじゃないのかい?」
  元鞘って…どこでそんな日本語覚えたんですかあなたは…
  「アルとは…今はそういうんじゃないですよ…」
  「でも嫌いになったから別れたんじゃないんだろ?」
  ん~、確かにそうなんだが…
  「そうなんですけど…実はここに来る前にアルと二人で話したんです。俺たちにとってこの五年間は大きくて…今すぐお互い元には戻れないって。だからまたゼロから始めようってことになったんです」
  「すると…恋人の前の段階ってことかい?」
  「ええ、まぁ…」
  「そうか…(それじゃ、あの子たちにもまだチャンスはあるってことか…)」
  「父さん?」
  「い、いや、なんでもないよ」
  俺は部屋にあった時計を見て席を立つ
  「じゃ、あいつらが待ってると思いますんでそろそろ…」
  「そうか…また遊びにでも来てくれ。エリー、外まで送ってあげなさい」
  「わかった。それじゃいこうか、明人」
  「ああ、それじゃお邪魔しました」
  またしても俺の腕にしがみ付いて来たエリーと共に笑顔で手を振る博士に見送られながら俺たちは博士の書斎を後にしたのだった

  追記
  何故か今日は家に帰ると三人の機嫌が良かった

  ご機嫌要素その一、夕食はいつもより豪華だった(作ったのはもちろんノア

  ご機嫌要素その二、いつもよりミコがべたべたに甘えてきた気がする

  ご機嫌要素?その三、いつもはミコが俺に甘えると怒るユーナが何故か今日は寛大だった

  ……なんでだろうか?
                             続く

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