日記その九 朝の味噌汁はワカメ入りで


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  「明人さん、朝ですよ。起きて下さい。明人さん」
  眠りから覚める途中、意識が覚醒するのを感じ、俺はボンヤリとしながら目を開けようとする
  誰かに起こしてもらっているようだ
  「ん……んん………」
  いつもはノアに起こしてもらっているのだが、これはノアの声ではない
  なんというか、いつもとは違う
  なんか違うんだよ
  そう言うちょっとした違和感を感じながらゆっくりと目を開けると…
  「あ、おはようございます。明人さん」
  何か目の前にすっごい金髪美女がエプロン姿で微笑んでいた
  こんなとき皆ならどうする?

  1 「君は誰?」と、とりあえず冷静に聞いてみる
  2 夢だと確信してもう一度寝る
  3 夢でも現実でもいいから抱きついて押し倒す

  「…………」
  俺の選択は

  4 呆然とする

  正直、状況が呑み込めん
  突然すぎて動くことも出来ん
  いかん、まだ寝ぼけてんのか?
  冷静に冷静に考えろ、ここは俺のマンション、俺の寝室だ
  違う人様の家ではない
  となると…この美女はいったい…
  「あ、あのぅ…明人…さん?」
  俺が状況を飲み込めないで考え込んでいるので金髪美女の笑顔はだんだん不安げな顔になってい……ん?前もこんなことあったような…………あ!
  「……ラン?」
  「はいw」
  再び…いや、さっきよりも朗らかに微笑むのは昴の神姫、ランスロットだった
  そういや彼女もインターフェイスの試作型で、昨日は葉月たちがいる間は神姫素体の方を使ってたんだっけか……
  「あ~悪い、ちょっと寝ぼけてたみたいですぐに誰だか分からなかった」
  「いえ、というより…お加減の方はいかがですか?」
  「ん? ん~寝起きで少しだるいが、これといって不調はないかな」
  「明人さんもですか…」
  「?? どういうこと?」
  「いえ、昨日みなさんに開いていただいた昴さんの帰国と私の歓迎会で、みなさん物凄い量のお酒やワインを飲まれていたみたいなので…二日酔いになられたのではないかと思いまして」
  あ~
  …なんだか思い出してきたぞ…昨日の夜は歓迎会で飲めや歌えやのドンチャン騒ぎ(主に昴、ミコ、ユーナと巻き添えになった葉月とレイア)で遅くまで飲んでたっけか…
  んで昴とランはそのままうちに泊まっていくことになったんだったよな
  「本当に大丈夫なのですか?特に明人さんは皆さんに飲まされていらっしゃったようでしたが…」
  「ああ、俺は酔いつぶれることはあんまりないんだ。ザルってやつかな。それよりノアはどうしたんだ? あいつも俺と一緒で酒には飲まれない方だから二日酔いに唸ってるってことはないと思うんだが…」
  「確かにノア姉さまも全然体調に不都合は無いご様子でした。お二人ともお強いですね…」
  ランは「はぁ~」って感じで感心(?)している
  確かに昨日は飲みすぎ…いや、飲まされすぎたかな
  「姉さまは朝食の準備をしておられます。私もさっきまでお手伝いさせていただいていました」
  「ああ、なるほど。だからエプロン姿な訳だな?」
  「はい、お手伝いと言いましても、私は日本の料理には疎いもので…ノア姉さまに教えていただいていたんですけどね」
  「へぇ~、ランも料理できるんだな~」
  「少々洋風料理をたしなむ程度ですが。それで、準備が整いましたので皆さんを起こしてくるようにと」
  「そっか…わかった。起こしてくれてありがとうな」
  「いえ、それでは私は他の方を起こしてきま…」
  “モゾモゾモゾ……”………はい?
  ランの動きが止まる
  俺の動きも止まる

  ん~、な~にかなぁ~?
  俺の布団の中でなにか動くものがあるぞ~?
  それになんか腰の辺りに暖かな感触がぁ……(棒読み)

  「…………」
  「…………」
  しばしの間、ランと共になぜかさっきまで気づかなかった俺の身長を考えるとあまりにも不自然な布団の膨らみを見つめて固まる
  「……はぁ~」
  とりあえずはため息
  んでもって勢い良く布団を剥がしてみると
  「ン…うぅん……」
  俺の腰に抱きつくようにして包まっているネコを一匹発見…
  「まぁ…ミコ姉さま。いらっしゃったのですか?」
  ランさん?
  何故そこで笑顔なのかが俺、ちょっと不思議
  「…ラン…言っておくが誤解するなよ? 俺だってビックリしてるってのは…わかるよな?」
  「ええ、わかってますよw それでは私はユーナ姉さまと昴さんを起こしてきますので~…」
  なんかいままでで一番優しげで、一番不安の残る笑みを見せながらそそくさと俺の部屋を後にするラン
  ……ほんとうに分かってくれたのだろうか
  「ん……」
  急に眩しくなったので強く抱きついて俺の腰に顔を隠そうとしてくるネコ、もといミコ
  「ん…んにゃ…まだ寝るぅ…」
  ……まったく、こいつは…
  「アホ、寝るなっつーの。つうか何でお前が俺の布団の中で寝てるんだよ」
  「へにゅう……」
  「それはタスマニア辺りで絶滅寸前の動物だ」
  どうでもいいつっこみを入れさすな
  「………だって…」
  こんどはさっきよりもハッキリした声
  「約束は無効だっていったろ? ほら、さっさと離れろ」
  「…………」
  シカトですか…
  「おい、いつまでも抱きついてると俺が起きられんだろ…」
  「…………」
  「……ミコぉ;」
  「怖かった…」
  俺のダル気味な呻きを遮るように、消え入るほどの小さな声でミコは確かにそういった
  俺の腰に抱きついたままなので表情は分からないが…
  「…怖かったの。昨日の戦い」
  声は微かに震えていた
  「昨日の…戦い?」
  マハのストラーフとのバトルのことだろうか
  「終わったあとは何ともなかったのに…私、確かに昨日は酔っ払ってたんだと思うんだけど…部屋に戻ると急に酔いも醒めちゃって…寝ようと思っても一人になると考えちゃうんだ…」
  「…なにをだ?」
  「あのとき、『もしかしたらデータを削除されてた、死んじゃってたかも』って思うと…思い返すと…凄く怖くなってきて…」
  さらに俺の腰に強く抱きつくミコ
  それはお化けが怖くて親に抱きつく子供のように見えた
  「でも、おまえはあの時、俺を信じてくれたじゃないか。だからこうやって今もここにいるだろ?」
  「……だから余計に怖くなったんだよ」
  「え?」
  「ご主人様にもう会えなくなってたかもしれないって思った…いままで考えたこともなかったから…ずっと一緒だと…思ってたから……そう考えちゃうと…もう一人で寝れなかった!」
  顔を上げて俺の顔を見つめるミコの目は今にも泣き出しそうなほどに潤んでいた
  「……だからご主人様のお布団の中にいた……ごめんなさい…」
  また小さな声になりながら俯くミコ
  あ~あ~ああっ!
  こんな風にしょんぼりされたらなんだか罪悪感が凄いんですけど!!
  ……ったく、そんな顔されたら男として慰めたらにゃあならんような気持ちになるだろうが…
  「!? ご、ご主人様?」
  俺はそっとミコの背中に手を回し抱きしめる
  「ぁっ…………」
  こんどはミコが固まる
  耳まで真っ赤になって
  「感じるか?」
  「え?」
  「ミコは…俺を感じるか? 俺の心臓の鼓動を感じるか?」
  「う、うん…」
  「なら、もう大丈夫だ。何も怖がることなんてない」
  「なにも…怖く…ない…」


  「俺は……ここにいる」

  「ここに…いる?」
  「ああ、ここでミコを抱きしめてる。お前の一番近くにいる。だから……大丈夫だ」
  できるだけ優しく微笑んでやれるように努力してやる
  これでこいつが安心できるなら…
  「ご主人…様…」
  「大丈夫……大丈夫だ…」
  「…………」
  ミコの目から一筋の涙がつたう
  しかし目はトロンとしているので不安からくる涙ではないようだ
  そのまましばらくは背中を優しくなでながらそうしていた


  ふぅ、何とか安心したようだな……ん?
  なんかミコの顔、さっきより近くなってるような……
  「ご主人さ…」
  “バァン!!!”っといきなりの大きな物音

「アネキぃ! 御用だぁぁぁぁ!!」


  「「!!!!」」
  「ああぁぁぁぁ…………」
  ミコが何かを言おうとした瞬間、突然ユーナの声がする
  俺とミコは突然のことにドアの方を見ると、ユーナが俺たちをみながら口をぽかんと開けたまま固まっていた…
  「あ、あ、あ、あに…き?」
  「どうした?ユーナ」
  「な、な、なんで…アニキが…アネキを…抱きしめ…て……」
  「あ、いや、これはねユーナ。ちょっと、その、ご主人様に慰めてもらってて…」
  おたおたと言い訳を始めるミコ
  いつも抱きついてくるくせに真っ赤になって焦りまくっている
  「は、はぁぁぁ!? な、な、慰めてもらってた………だぁとぉぉぉぉぉ!!!??」
  さらにヒートアップするユーナ
  おい、それは勘違いだ…
  お前は絶対おかしな方向に勘違いしてるってば…
  「アニキ…ちょっと、そこに直れ…」
  ゆらりと揺れながら低い声でそういったユーナの声は今までの中で一番怖かった
  ちびりそうなぐらいだ
  なんか黒いオーラのようなものも見える
  ああミコ、もしかしたらこんどはお別れかも…な……


  “バキィッッ!!”


  「かぁ~! 美味い!! 美味いぞノアちゃん!! やっぱり日本人の朝は味噌汁だよな~」
  「有り難うございます昴さん。でもそれはランさんが作ったものなんですよ」
  「うそ! まじでか!? ラン、おまえ和食なんて作れたのか?」
  「いえ、ノア姉さまに教えていただいたので…」
  「私はそんなに教えることもなかったですよ。ランさんは飲み込みが早かったですし、料理の基礎は出来ていましたから。この調子なら他の和食もすぐに覚えられますよ」
  「へぇ~、よかったじゃないかラン。ノアちゃんの御墨付きだぜw」
  「あ、ありがとうございます、ノア姉さま…」
  「そっか~、ランが和食をねぇ~……ところでさぁ…」

  「アニキ! ほんっっっっっっっとにゴメン!!!」
  俺に深々と頭を下げるユーナ
  「いや、もういいから……」
  「だって、だってアタシ、勝手に誤解して…」
  「いいって、あんなとこ見たら誰だって誤解もするだろうし…」
  なんとか誤解は解けたしな
  「ううぅ…すまない、アニキ……」
  ガクッと首をうなだれて落ち込むユーナ
  「…………」
  そんなことが隣で起きているのに当事者のミコはさっきからポケーーっとしている
  食事だけはしているようだが、声が耳に入っていないようで無反応だ

  「あっちは何かあった? なんで明人は朝からあんな怪我してんだ?」
  「いつものことですよ。朝の恒例行事です。心配要りません」
  「…ノア姉さまは大人ですねぇ~」
  「大人だなぁ~」
  「昴」
  「ん? なんだ? 朝の行事は終了か?」
  なにニヤニヤしてやがる…
  「うっせえ、んなことよりおまえらどうするんだ?」
  「どうするって?」
  「住む場所だよ。実家には戻れねぇだろ?」
  「ああ、そのことか」
  「おまえ一人なら実家に帰っても問題ないが、ランが一緒だとそうはいかないだろ。おまえもフェレンツェ博士からモニター頼まれてんなら実家にこのままランを連れて行けないぞ? 神姫素体に入れ替えたいときにも不都合が出るかもしれない。逆にずっと神姫素体のままだとサンプルも取れねえし、なにかと機密を守る上で不便なことは多いんだ」
  「それは解ってるよ。そのことでなんだけど……このマンション、まだ空き部屋あるか?」
  「はい、隣の部屋の方が先月引越しなされましたので…」
  答えるノア
  「よっしゃ! ラッキーw」
  指をパチンと鳴らす昴
  ちょっと待て
  おまえもしかして……
  「このマンションにする」
  言うと思った……
  「なんで即決なんだよ。もっとほかにもいい物件はあるだろ? 花菱財閥は都内の不動産関係にも着手してるだろうが」
  「俺だっておまえと一緒だ。できるだけ私情に本家の力を挟みたくない、そうだろ?」
  「そりゃまぁ、そうだが…」
  「なによりおまえがここに住んでるんだ。なにかと便利なんだろ?」
  確かにここは住みやすい
  駅やコンビニに近いしエルゴだってあるから神姫マスターにとってはとても便利だ(神姫を始める前から住んでいたので、エルゴがあるからここにしたというわけではないんだが…)
  「ランもノアちゃんに料理教えてもらえるし、家事の助手がいればノアちゃんだって楽になる」
  「ちょっと待て昴、おまえメシ時になると来るつもりか」
  「心配するな、食費はちゃんと出すよ?」
  「誰もそんな小さいことで心配しとらんわ!」
  「だってそのほうが楽しいじゃねぇか。なぁラン?」
  「私としましてはノア姉さまから学ぶことは多々ありますし、ご迷惑でなければ…」
  「…だとよ、ノア」
  「私はかまいませんよ。ランさんと料理するのは楽しかったですし、お教えしたいこともありますから」
  「よし、決まりだな!本当はこの部屋で一緒でもよかったが…俺のランが明人の毒牙に掛かるかも知れんからなぁ…」
  「何さらっとアホなこと言ってんだ……」
  「私は明人さんならかまいませんが、一応、マスターは昴さんですし…その…」
  真顔でそういうこと言うのはヤメテクダサイ
  「ラン、それはボケとして受け取っておこう。しかしツッコミは無しの方向で…」
  だからノアールさん、俺の太股をギューって抓るのはヤメテクダサイ
  何はともあれ、こうして俺の生活にまたもや喧しい隣人(主に昴が)を加えることとなった
  これから俺の気苦労はさらに重くなるだろうな…
  ま、その分楽しみも増えるかも知れないけど…

  追記
  「いや~しかし、やっぱり和食はいいよなぁ~」
  「そんなに懐かしいんですか?」
  「いやいや、そうじゃないんだよノアちゃん。懐かしいって言うよりかは美味いんだよ」
  「それはどういう…」
  「というよりかは、イギリスの料理は…ほんっっっっっとに不味いんだよ~」
  「そうなんですか?」
  「あれは噂じゃなかったんだなぁ~。でも、5年もいたら慣れちまって、久しぶりの和食には少し大袈裟なぐらいの感動があるんだよ。でもな、おかげで大抵の不味いもんでも我慢できるようになったからよかったかなぁ~なんて、ははははは」
  「………よし、ノア、今日の『昴の』昼飯はミコとユーナに作らせよう」
  「お? ミコちゃんとユーナちゃんも料理できたのか?」
  「あ、アニキ…いいのか?」
  「ああ、昴のために思いっきり腕によりをかけて作ってやれ。おいミコ、いつまでポケーっとしてるんだ」
  「ホエ?」
  「それはぺルーの山奥に住む幻の動物だ」
  「そっか~それは楽しみだなぁ~」
  「あくどいですね、ご主人様…」
  「ふっ、ノアよ、お茶目といってくれ…」

  そしてその日は昼ごろになると昴の悲鳴が聞こえてきたりこなかったりした一日だった…
                                続く

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