ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 黒猫

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「またあの猫が来てるのだわ」
最近よく顔を出すようになった黒猫に、猫が嫌いな真紅はうんざりと独り言つ。
「誰かが餌でもやってんじゃないのぉ? 気にしすぎよ」
対して、水銀燈は雑誌を捲りながらめんどくさそうに対応する。
「今度猫を寄せ付けないやつでも買ってきてやるのだわ」
真紅が忌々しそうに言うと、傍にいた薔薇水晶が徐に立ち上がる。
「あの・・・それは、猫がかわいそう? ・・・なのでは・・・」
「え・・・? ええ、そうね・・・」
普段あまり発言をしない薔薇水晶に、少し戸惑い気味に答える真紅。
薔薇水晶はその答えに満足したのか、すぐに職員室を出て行った。
(薔薇水晶先生が餌あげてるのか・・・)
その場にいた、真紅と水銀燈の考えが珍しく一致した。


「ナーウ」
お世辞にもかわいいとは言えない鳴き声の黒猫は、彼女の姿を見るとゴミバケツの上から飛び降り、擦り寄う。
彼女はそんな黒猫をあやしながらお弁当の残りと思われるものを猫に差し出す。
すると、猫はすぐさま弁当箱の中に顔を突っ込み、ガツガツと勢い良く食べ始めた。
「何をしてる・・・?」
想定外の第3者の声に、猫は咄嗟にゴミバケツの上に跳び乗り、薔薇水晶は慌てて後ろを振り向く。
そこにいたのは、ゴミ袋を両手に持った用務員、槐だった。
「猫、か・・・・」
薔薇水晶は、別に悪いことをしているわけではないが、先ほどのことがあってか後ろめたさがあった。
だから、彼女はつい、その場から逃げ出してしまった。
残された槐は、残った餌を猫に食べさせようと弁当箱を近づけようとしたが、猫に逃げられ失敗した。

次の日の朝、そろそろ朝のHRが始まろうかというタイミングで、職員室に槐が入ってきた。
誰もが困惑の表情を浮かべ、黙ってその動向を見ていると槐は薔薇水晶の元へと一直線に向かい、洗われてすっかり綺麗になった弁当箱を手渡した。
皆、先ほどとは違う沈黙に包まれ、槐が出て行ったのとほぼ同時に、水銀燈が口を開いた。
「へぇ~、いつの間にそんな関係になったの?」
薔薇水晶はただ、どう説明していいかわからず黙っていただけなのだが、それが逆に皆の好奇心をそそってしまった。
「いつの間に用務員さんと仲良くなったのー?」
「もしかして、最近ふらっといなくなってたのは用務員さんとあってたからなのかしらー?」
「薔薇水晶も相当な奥手だと思ってたのに、案外やりやがります」
と、皆が好き勝手に言う中、突如、机を思い切り叩く音に場を沈黙が支配する。
「くそ・・・ローゼンに続いて・・・どうしてばらしーの周りにはああいうわけのわからない奴ばかり・・・」
雪華綺晶はかなりまいっていた。


昼休み、薔薇水晶はまた、猫に餌をやりに来ていた。
程なくして、猫が餌を全て食べた後も、薔薇水晶は何故かその場に残った。
しばらく猫と遊んでいると、また、槐が姿を現した。
猫はすかさず逃げてしまったが、薔薇水晶は立ち上がり、一度、ぺこりと頭を下げる。
「どうした・・・?」
「この前は、逃げ出してすいません。・・・お弁当箱も、洗ってくれて・・・」
「・・・驚かせたのはこっちだしな・・・」
話が続かず、二人の間に重い沈黙が生まれる。
それを察したのか、猫が鳴いた。
「ナーウ」
咄嗟に二人の視線が猫に集中する。
「猫、好きなのか?」
槐は不器用ながら、沈黙を打破しようと話題をふる。
「はい・・・この猫、鳴き声がかわいくなくて・・・だから、妙に、親近感が・・・」
「へぇ・・・」
「すいません、こんな話・・・」
「いや、大丈夫」
また沈黙。
二人は、決定的に会話が下手だった。
様子を見かねた猫は、しぶしぶ、かわいくない鳴き声を発しながら、薔薇水晶の足元に擦り寄る。
薔薇水晶は屈むと、猫をなでながら軽く微笑んだ。
その微笑が、その仕草が、今まで女性経験の全くない槐の精神を揺さぶらないわけがなかった。
「・・・かわいい、な・・・」   
「ええ、本当に・・・」
「ああ、そう、とるか・・・」  
「え・・・?」
「いや、いいんだ」      「はい・・・」

また沈黙が訪れるかと思われたとき、槐が思い出したように言う。
「あ・・・この前の弁当、うまかった」
この発言に、流石の薔薇水晶も多少驚愕の表情を浮かべる。
「え、食べたんですか? 猫の食べかけ、なのに・・・」
「ああ、うまかった。少し、味が薄かったが・・・」
「猫用に作ったやつなんです・・・」
「うらやましいな・・・」
「え?」
「いや、猫が・・・」
「そんな・・・凄い、手抜いてて・・・ちゃんとしたの、今度持ってきます、から・・・」
「いいのか・・・?」
「はい、一人分くらい、変わりません、から・・・」
槐は腹の底から湧き上がってくる喜びを抑え、礼を言う。
すると、猫はどこへともなく去っていき、同時に昼休み終了のチャイムが校内に響き渡った。

次の日、槐にとっては待ちに待った昼休み。
逸る気持ちを抑えつつも、ついいつもより早めにいつもの場所へ向かった。
しかし、着いた瞬間、槐の高揚は地の底へ叩き落される。
猫の様子が、あきらかにおかしかった。
眼球は光を無くし、口はだらしなく開き、体は地面に沈んでしまいそうなくらい、ぐったりとしていた。
槐はゴミ袋を投げ出す、猫を抱きかかえ走った。
走っている最中、生徒たちに変な目で見られても気にしなかった。
何より、気にする余裕がなかった。
学校を抜け出し、着いた先は動物病院。
至極落ち着いた口調で医者は言った。
「・・・残念ですが・・・目立った外傷もないので、心臓病か何かだったのでしょう」
絶望、次に、動揺だった。
どうすればいい・・・?
猫が死んでしまったことを正直に伝えるのか、それとも、隠し通すのが正解なのか・・・。
抱きかかえた、もう冷たくなってしまった猫をたまに見ては、生き返ってないかと確認する。
生き返っているわけがない。
気付けば、あたりはもう真っ暗だった。