ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

貨幣経済

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水銀燈「…じゃあ、今から政経の授業を始めるわぁ。それにしても…随分たくさん集まったわねぇ…」
そう言うと、彼女は実に気だるそうに教室の後ろを見やった。
そこには校長であり、彼女の政治経済担当を強く推したローゼン、その先任の雪華綺晶、学年主任の真紅、何か不安だったからついて来た薔薇水晶と蒼星石、そして何か面白そうだったからついて来た翠星石と、そうそうたる面子が揃っている。
実は、前回彼女が試験的に行った政治経済の授業が、意外にも反応がよかったため、今回改めて適任かどうかを見るために一同は集まったと言うわけだ。
それに対し、「そんな暇があるのなら、恋人でも探せばいいのに…」と小さく呟くと、水銀燈は皆に向かってこう声をあげた。


水銀燈「えっと…じゃあ、今日はみんなに『お金の流れ』っていうのを体験してもらうわぁ。校長、例のもの…渡してもらえるぅ?」
ローゼン「ん?ああ、あれね。はいはい…」
そう言うと、ローゼンは胸元から何かを取り出した。
どうやら、それは水銀燈自作の貨幣らしく、1000や500といった数字のほかに、裏面には逆十字に黒い羽…そして表面にはアルフォンス・ミュシャを模したと思われる、水銀燈の横顔が描かれている。
これを見て、真紅が思わずこんな感想を洩らした。
真紅「凄い…けど、こんなの作っている暇があるのなら、保健体育のほうもちゃんと面倒見なさいよ。」
翠星石「そうですぅ!!全く…こういうのだけは、無駄に凝りやがって…」
水銀燈「うるさいわね…。私は楽しくなきゃ、やらない主義なの。」
真紅「…だったら、あなたもサッカーでも水泳でも、みんなと一緒にやればいいじゃないの。見ているだけでは、つまらなくて当然だわ。」
水銀燈「ふん…。私はこの子達の遊び相手や、見せ物になる気は無いの。それに、着替えるのめんどくさいしぃ…」
そう言うと、彼女は校長に渡したおもちゃのお金をひったくり、生徒1人に対し1万ずつ配り始めた。


水銀燈「で…今見たように、元々このお金を持っていたのは校長…つまり、校長が『国』ってわけ。私は、皆がやっていることが正しいことかどうかを判断させてもらうわぁ。ま、いわば『公正取引委員会』ってところかしら…。あと、両替も私に言えば…」
その言葉を遮るように、教室の一角からはこんな声が聞こえてきた。
翠星石「プーッ!!あいつが公正な取引なんて片腹痛いですぅ♪悪の温床のくせに…」
蒼星石「や、止めなよ…。また痛い目にあっても知らないよ?」
だが、その言葉に水銀燈は怒るでもなく、ただ少しだけ微笑むだけだった。
そして、鞄から葉書大の紙の束を取り出すと、皆にこう説明した。
水銀燈「…で、今からみんなにコレを渡すから、それを使ってお店屋さんゴッコをしてみなさぁい♪あ、1人3枚よぉ。」
配られたものを見て、生徒の1人がそれを読み上げる。
男子A「えーっと…『6月10日…今日は、チビチビのジュースに、唐辛子を大量に入れてやったですぅ♪飲んだ途端、ゴジラみたいに口から火を噴いてたですぅ♪とっても楽しそうだったですぅ♪』…何ですか、コレ?」
水銀燈「翠星石の日記。」
翠星石「な…!?おめー、いつの間にそんなもの…!!は、早く返せですぅ!!」
水銀燈「やぁよぅ。さっき言ったでしょう?楽しくなきゃ、やりたくないって…♪」
翠星石「お…おめーは、やっていい事と悪い事の区別もつかんのですかっ!?これは明らかにプライバシーの侵害ですぅ!!みんな、いつものようにこいつを叱ってやれですぅ!!翠星石は、その隙に持ち物の確認を…」
そう言って逃げようとする翠星石の肩に手をかけ、蒼星石がいつになく険しい顔つきでこう言った。
蒼星石「…どこに行くんだい?授業は最後まで聞いていこうよ…。」
その言葉に、翠星石の顔はみるみる青ざめていく。
それを見て、水銀燈はくすくすと笑い声を上げつつ、最後にこんな説明を付け加えた。
水銀燈「で、通貨を20万以上集められた人は、特別に政経の成績を満点にしてあげる♪そのことはもう、校長に相談済みだから、安心して頑張りなさぁい。…ま、例えそこまで到達しなかったとしても、蒼星石がこの紙を全部買い取ってくれると思うから、せいぜい頑張るのよぉ♪」
蒼星石「うん!1枚500円で買うよ…!」
この言葉がまるで合図だったかのように、皆は一斉に『商売』を開始した。


男子B「さぁ、今ならナンバー103…5月31日の日記を2000で売るよ!!さぁ、誰か欲しい人はいないかい!?」
男子C「こっちは、1週間前のプールの話の詳細が全て書かれたものをオークション形式で売るよ!!最初は100からスタート!!さあ、もうすぐ締め切りだよ!!」
教室のあちこちで響き渡る、元気な声。
生徒たちは、「翠星石の日記が読みたい」「もっと多くの稼ぎを出したい」といった理由から、一生懸命この企画に取り組んだ。
だが、中にはそれどころではない者もいた。
生徒A「学校中の消火器のピン抜いたの、翠星石先生の仕業かよ!!これのせいで、俺たちすげー疑われたのに…!!」
翠星石「あ、あれはですねぇ…。事が大事になっちまったから、いい出せなくて…」
女子D「見て、このナンバー77の…。これ、翠星石先生の仕業だったんだ…」
女子E「ホントだ!あー…バカ男子のみんなには、悪いことしちゃったね…」
蒼星石「本当にごめんね…。あとで、きちんと謝らせるから…」
そんな彼らをよそに、真紅はふとこんな感想を洩らした。
真紅「凄いわね…。今回ばかりは素直に賞賛するわ…」
水銀燈「当たり前でしょう?私を誰だと…」
真紅「みんな、教えてもいないのに、色んな方法で相手に対してアプローチをかけている…。この上達の速さには素晴らしいものがあるわ…。…ところで、何か言った?」
水銀燈「…別にぃ…」
そういいながら、彼女はふと窓の外を見やった。
「次は、何を言ってやろうか」と考えながら…
その時、教室の一角がにわかに騒がしくなった。


男子F「おい!こんなの卑怯だろ!!品物、全部返せよ!!」
オディール「いいえ、これは卑怯ではありません。れっきとした買収方法の1つで…」
水銀燈「なに…?どうしたのよぉ?」
騒ぎを聞きつけ、水銀燈は慌てた様子…とは程遠い、実に面倒くさそうな様子で間に割って入る。
どうやら商売上のトラブルらしく、1人の男子生徒がオディールと5人の男子生徒を相手に、いちゃもんをつけている。
そして、水銀燈の姿を見るやいなや、彼はその不満を彼女にぶちまけた。
男子F「こいつが、俺のいない隙にうちの従業員と結託して…!で、挙句の果てに俺が集めた物を全て奪い取っていったんですよ!!せっかく、20枚近く集めたのに…」
先ほど、蒼星石が「日記1枚につき1枚500円で買う」と言っていたので、1万は貰えるはずだったと、この男子生徒は涙ながらに語る。
それに対し、水銀燈はこのような判断を下した。
水銀燈「ふーん。流石、名門のフォッセー家の血を引き継いでるだけあるわねぇ…。この子がやったのは、『EBO』…エンプロイー・バイアウトって言って、対象の会社の従業員が投資ファンド等の協力を受けて会社を買収するって方法よぉ。ま、ちょっとやり方が汚かったみたいだけど、別に違法では無いわぁ。」
男子F「マジかよ…。そんなのアリかよ…」
水銀灯「だから前にも言ったでしょう?正しいことだけしていたのでは、世の中生きられないの。もっと賢くなりなさぁい。世の中には、『グレーゾーン』なんて腐るほどあるんだから…」
男子F「で…でも…」
水銀燈「ま、手元にお金が残ってるだけマシじゃなぁい。それに、会社を起こす前にいい勉強になったはずだしぃ…次からは気をつけて頑張りなさぁい。」
そう言って励ますと、彼女はまた教卓へと戻っていった。
その後も、いくつかのトラブルはあったものの、問題は全て解決…
生徒たちは最後の最後まで力を出し切り、後は結果発表を残すだけとなった。


水銀燈「…というわけで、優勝は24万稼ぎ出した、柏葉巴よぉ♪ま、勝因は『みんなにも見せてあげよう』っていう、優しいのか意地悪なのか、よく分からないところかしら…。はい、拍手ぅ!」
その言葉に、皆は惜しみない拍手を巴に送った。
ちなみに巴がやった事は、自分の持っていた日記をコピーして相手に格安で見せてあげるという手法だった。
これなら、自分の持ち物を売らずに済むし、なおかつお金も人望も増えるというわけだ。
ただ、巴本人はそんな事を一切考えておらず、気がつけば勝手にお金が増えていたようだったが…
「ま、無欲の勝利ってやつねぇ…」と、この事を総括する水銀燈に対し、1人の生徒がこんな疑問を彼女にぶつけた。
生徒A「そういえば…巴さんは20万超えたから、もう政経の成績は満点確定なんですか?たとえ次のテストで0点取っても…」
水銀燈「いいえ、最後の行事が1つだけ残ってるものぉ。」
生徒A「行事?」
そんな不思議そうな顔をする生徒に対し、水銀燈は意地悪く笑いながらこう言った。
水銀燈「…今から、校長があなたたちのお金を半分よこせって言ったらどう思う?」
その言葉に教室が一気に騒がしくなった。
このクラスの生徒の数は全部で39人…半分も取られたら、20万なんて絶対に届かない…。と言うことは、はじめからご褒美なんてあげる気はなかったって事なのか…?
「最悪!!」「死んだほうがいいと思います!!」「てか、死ね!!」といった校長に対しての罵詈雑言が、教室中を埋め尽くす。
それに対して、ローゼンはこめかみをピクリと動かしながらこう言った。
ローゼン「き、君たち…ちょっと言い過ぎじゃないかな…?」
そんな彼らを見て、水銀燈は皆に向けてこう言い放った。
水銀燈「どう?むかつくでしょう?…でも、それを本当にやってるのが、『国』なのよ…。」
どこか苦々しげな顔をしながらそう言う彼女に対し、ある者はこう反論した。


薔薇水晶「税金の話…?でも、待って…。国は、私たちのことを補償してくれているよ?道路だって…病院だって…。」
水銀燈「そんなの一部じゃない。ほら…校長だって、いつも好き勝手にやってるでしょう?権力を持つものは、みんなそう。下の人間のことなんて、なぁんにも考えていないの。考えるのは、自分とその仲間に都合のいいことだけ…。ま、目くらまし程度の『ご褒美』を貰って、政府に感謝している国民にも責任があるんでしょうけどぉ…。」
薔薇水晶「で…でも…選挙だって…」
水銀燈「選挙ぉ?あれこそ、力のあるものが勝つ、いい例じゃなぁい。…いいこと…?お金も、『当たり前』と思われていた日々の生活も、最後にはぜんぶぜんぶ奪われてしまう…。そう…私たちは、絶望するために生まれてきたの…。」
その言葉に、重苦しい空気が教室中に立ち込める。
真紅「…言い過ぎよ。水銀燈…」
彼女は、いつになく厳しい口調で水銀燈にそう迫った。
残念だけど…やっぱり、この子は教師には向いていない…。もしかしたら、そんな事を考えていたのかもしれない。
しかし、それに怯むことなく、水銀燈はこんな事を言い出した。


水銀燈「真実を伝えて何が悪いの?大人になってから気づくより、今のうちに気がついておけば、色んな手が打てるじゃない。それを、目を背けて良い事だけ伝えたって、何の役にも立たないわぁ。」
真紅「でも…」
水銀燈「例えば、今からなら…かなり難しいかもしれないけど、国会議員になれる子もいるかもしれない…。どこにも負けない凄い会社を作り上げて、政府に圧力をかける事も出来るかもしれない…。要は可能性の問題って事。この事に、サラリーマンになってから気がついたって遅いでしょう?」
真紅「まぁ…一概には言えないけど、スタートは早いほうがいいのは確かね。」
水銀燈「でしょう?だから、みんな…もっと賢くなりなさぁい。力なき正義には、何の意味も無いの。分かった?」
その言葉に、「はい…」とどこか不安そうに返事をする生徒たち。
それを見て、水銀燈はこう付け加えた。
水銀燈「…あ、そうそう。この授業が終わるように、国の経済が終わってしまった時、最も効果を発揮するものは、ズバリ『物』よ。さ、蒼星石にさっきのプリント売ってあげなさぁい♪」
翠星石「あっ…!!せっかく忘れてたのに、何でそんな余計なことを…」
蒼星石「…そうだったね。真紅…悪いんだけど、次の数学替わってくれるかな?ちょっと、翠星石と大事な話がしたいんだ…。」
こうして、教室はようやく普段の明るさを取り戻した。
その光景に、「ふぅ…」とため息をつく水銀燈に、1人がこう声をかけた。


ローゼン「お疲れ様。…うん。多少危ないところもあったけど、大丈夫そうだね。」
水銀燈「当然じゃなぁい。私を誰だと思ってるのよぉ?」
ローゼン「そうだったね…。じゃ、政治経済については、これからすべて君に任せる。…それでいいかな?」
その言葉に、彼女は少し考えた後、静かにこう答えた。
水銀燈「…分かったわ。週一ぐらいなら、やってあげる…。」
真紅「毎日来なさいよ。毎日。」
薔薇水晶「うん…。毎日来なきゃダメ…」
水銀燈「うるさいわねぇ…。で、次は何をやればいいのぉ?」
そう言うと、彼女はペラペラとぶっきらぼうに教科書を開く。
そして次の瞬間、彼女は生き生きした様子でこう言い放った。
水銀燈「まぁ…♪次は遺産相続の…」
ローゼン「いや、それは雪華綺晶に任せるからいいや。」
水銀燈「どうして!?さっき『すべて君に任せる』って…」
真紅「当然だわ。雪華綺晶、悪いけど頼むわね。」
水銀燈「だから、どうしてなのよ!?理由を言いなさいよ!!理由を!!」
「相続の話は一番得意だ」と豪語する彼女に対し、他の教師たちはなおいっそう難色を示す。
得意だからこそ、この話だけは彼女にさせてはならない…。
その理由を、水銀燈本人だけは最後まで分からないようだった。






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