ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 新しき道

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ラプラス「…水銀燈先生、水銀燈先生。大切なお知らせがあります。至急校長室までお越しください。」
昼休み、校内に流れる放送…
その放送に、ラウンジの一角はにわかに騒がしくなった。
真紅「…大切なお知らせって何かしら?」
蒼星石「さぁ…しかも、何でこんな時間に?」
そんな思案顔の一同をよそに、当の本人はうきうきとした様子で、こんな事を言い出した。
水銀燈「決まってるじゃなぁい。ついに私が教頭になる日が来たのよぉ。それ以外、考えられないわぁ♪」
真紅「…そんな事、ある訳無いわ。大体、なるとしたら学年主任の私のほうが…」
水銀燈「真紅ぅ…相変わらず、おめでたい頭してるわねぇ…。あなたが教頭なんかになれるわけ無いでしょう?この学校にいられるだけでも、奇跡に近いのに…」
真紅「あら、1週間に3回しか学校に来ない人に言われたくないわ。それに、もし教頭になれたとしたら、それはあなたの体目当てって事じゃない?だって、あなたにはそれしか誇れるものがないもの。」
水銀燈「何ですってぇ!?」
真紅「何よ!!」
そう言うと2人は席を立ち、互いの胸ぐらをつかみあい、互いを罵り始めた。
そんな2人を見て、蒼星石が呆れた様子でこう言った。
蒼星石「はいはい、もう2人とも止めようよ…。行けば分かる話なんだから…。」
翠星石「そうですぅ!大体、あのうざうざうさぎや、おバカ校長がそんな簡単にこの学校を辞めるわけが無いですよ!もっと他に…例えば給料が少し上がるとか…」
雛苺「うー…でも、『いいお知らせ』とは言ってなかったのよ?」
彼女にしてみれば、それはただ単に『疑問』を口に出しただけだったのかもしれない。
しかしこの無邪気な言葉に、その場にいた全員が凍り付いた。


ローゼン「…で、水銀燈の素行があまりにも悪いから、もしかしてクビになるんじゃないかと思って、君たちまで集まって来ちゃったわけね…」
その言葉に、水銀燈以外の全員…つまり教師たちと用務員全員が、一斉に首を縦に振った。
水銀燈本人はというと、厨房にあった包丁を手に、目を血走らせている。
どうやら、自分が悪いとは全く考えていないようだ。
水銀燈「…で、どうなのよ!?返答しだいでは…」
ローゼン「大丈夫、いい知らせだよ…。だからその包丁…下ろしてもらえるかな?」
その言葉に、水銀燈の顔はパッと明るくなる。
もはや『勝ち』を確信したようで、彼女は包丁を机の上に置き、声を弾ませながら校長にこう問いかけた。
水銀燈「そぉ…♪じゃあ、やっぱり私が教頭に…」
ローゼン「いんや。…水銀燈。本日より、君には政治経済の授業も担当してもらう。雪華綺晶…悪いんだけど、それでもいいかな?」
その言葉に、一同は目が点になる。
授業が増える?それのどこが、いい知らせなのか…
しかし、そんな事を考える水銀燈より先にこの話に反応したのは、他の教師達だった。


翠星石「ちょっと待ちやがれですぅ!!コイツにそんな事教えさせたら、この学校がもっと大変なことになるですぅ!!みんな、コイツみたいな性格になっちまうですぅ!!」
真紅「そうよ!何で、よりによってこの水銀燈なのよ!?」
社会の裏の裏まで知り尽くしている彼女に、政治経済の授業なんてやらせたら、大変なことになると2人は猛烈に抗議する。
そんな2人を見て、校長は静かにこう言った。
ローゼン「だって、教師の中で水銀燈が一番、お金とか税制とかの話に詳しいじゃない。だから『生きた授業』ってやつができると思うんだ。政治経済の授業は一昨年もやってたから、大体のことはわかってると思うし…」
翠星石「はぁ!?生きるどころか、全員死に絶えるに決まってるで…きゃうっ!!…蒼星石ぃ…この暴力女がいじめるですぅ…!」
水銀燈「顔を殴らないであげただけ、ありがたいと思いなさぁい…!大体、私だって嫌よ!これ以上授業が増えたら、遊びに行けなくなっちゃうじゃなぁい!!」
そういうと、彼女は「今、担当の教員を変えるのはよくないことだ」とか「雪華綺晶が可哀相だ」など、もっともらしい理由をつけて、この話を断ろうとする。
その話を聞きながら、彼は真紅にこんな質問を投げかけた。
ローゼン「真紅…水銀燈のお母さんって会ったことある?どんな人なのかな?」
真紅「え…?温和で凄くいい方よ。何で、この人からこんな水銀燈みたいなのが生まれてきたのかってぐらいに…」
水銀燈「うるさいわね!!大体、あなた何を考えて…」
ローゼン「え?だって、これ以上は埒が明かないから、お母さんからも説得してもらおうと思って…」
水銀燈「や、やるわよ!!やればいいんでしょう!?」
そう言うと、彼女はブツブツと愚痴をこぼしながら校長室を後にした。
それを見て、翠星石は不思議そうに、こう声をあげた。
翠星石「どうしたですぅ?あいつ、いきなり…」
真紅「…迷惑かけたくないのよ。大切に育てられただけに…ね。」
翠星石「えっ…?」
いつもは自分のことしか顧みない彼女の、その意外な一面に、一同はただただ驚くばかりであった。


雪華綺晶「…と言うわけで、今日からは水銀燈先生が授業をすることになったから…。じゃ、後…お願いします…。」
そう言うと、雪華綺晶は全てを水銀燈に任せ、教室の後ろへと移動する。
紹介を受けた水銀燈は、面倒くさそうに髪をかき上げながら、皆にこう言った。
水銀燈「えーっと…今聞いたように、今日からは私が政経を担当することになったんだけどぉ…。…外の2人…バレてないと思ったら、大間違いよぉ…?話を聞きたいのなら、堂々と中に入ってきたらぁ?」
その言葉に、真紅とメイメイがバツの悪そうな顔をしながら、教室に入ってくる。
どうやら、彼女のやることに対して不安、もしくは心配になったため、こっそりと授業の内容を聞きに来たようだ。
水銀燈「全く…私はどれだけ信用されてないのよ…。で、何か自由にやっていいって言われたんだけどぉ、何か聞きたい事とかあるぅ?」
その言葉に、生徒たちは思い思いの質問を彼女にぶつける。
大方の予想通り、教室にいる者の大半はお金の話についての話を希望した。
水銀燈「…そう…そんなにお金持ちになりたいのぉ…?んー…じゃあまず、テーマは何でもいいから、隣の人と話をしてみなさぁい。」
その言葉に、一同は顔を見合わせた。
それは、先ほど生徒たちが希望した話とは全然関係がないことのように思える。
しかも、この学校では隣に異性が来るように机が配置されているため、必然的に会話をするのは『男女ペアで』と言うことになる。
この事に関し、彼女に色々と質問したいところなのだが、すでに本人は授業を放棄し、携帯電話のゲームに夢中のようなので、教室のあちこちでは以下のような話がヒソヒソと小声で語られた。
男子A「…どうする?何か、ゲームやってるみたいだけど…」
男子B「…邪魔したら、殺されるよな…。いくら、他に先生が2人いるって言っても…」
そう言って後ろを振り向くと、雪華綺晶先生は大方の予想通り暇そうにしており、真紅先生も…相当イライラしているようだが、水銀燈先生に注意を促す気配は無い。
用務員のメイメイさんにいたっては、「早くやれ」と言わんばかりに、こちらをじっと睨みつけている。
…どうやら、やるしかないようだ。
男子A「あ、あの…スイマセン…。柏葉さんは、普段どんなことを…」
彼は精一杯の勇気を振り絞り、どこかぎこちない様子で、隣にいる巴に声をかけた。


巴「え…?部活に行ったり、勉強したり…とか…」
男子A「そ、そうですか…」
巴「うん…」
男子A「…」
巴「…」
男子A「…」
巴「…あ…」
男子A「…え?」
巴「A君は、普段何してるの…?」
男子A「あ、えっと…友達とブックオフに夜までいたり…あと…」
水銀燈「…はい、おしまぁい。」
そう言うと、彼女は携帯電話を閉じ、教壇の前に立ちなおした。
生徒たちの大半は、この突然の終了宣言に安堵しているようだ。
それを見て、水銀燈は静かにこう言った。


水銀燈「…ま、結論から言うと、今なにも話せなかった人はお金持ちなんかにはなれないわ。今のままではね…。」
その言葉に、生徒たちは一斉に不満の声を上げた。
先ほど、巴と話していた男子生徒も、彼女に対してこのような疑問をぶつけた。
男子A「…え!?どうしてです!?たったこれだけのことで、何で…」
水銀燈「だってそうでしょう?せっかくチャンスをあげたのに、何も話が出来ないなんて、どうかしてるとしか言えないわぁ…。」
その言葉に、キョトンとした顔をする生徒たち。
それを見て、水銀燈はこう続けた。
水銀燈「…そりゃ、あなたたちの歳じゃ、異性と話すのに緊張することぐらい分かってるわぁ…。そして、大半の人はそこから先に進めなかった。…つまり、あなたたちは相手から何かを学ぶ機会を放棄したって訳ねぇ。」
男子A「…学ぶ機会?」
水銀燈「いまいちピンと来ないかもしれないけどぉ、これから先…重要な決断を迫られる時が何度もあるわぁ。その時、動けるか動けないかでその先が変わってくるの。例えば、今のだってそう…。もしかしたら、これがきっかけで付き合うチャンスもあるかもしれないし、相手から何か実のある話だって聞けるかもしれない…そうでしょう?」
男子A「ま、まあ…それは確かに…。でも、それが何でお金持ちになることと関係が…」
水銀燈「…察しの悪い子ねぇ…。つまり発明だってなんだって、元は誰かのアイデアの集合体なんだから、どこにヒントが転がっているか分からないの。だから、とりあえず前に進めって言いたいのよ。分かる?」
その言葉に、彼は他の生徒たちと同様に、おぼろげではあるが彼女の意図を理解したようだ。
そんな生徒たちの顔を見て、彼女はさらにこう続けた。


水銀燈「…それに、もし仮に相手のいけない面が見つかったとしたら、『反面教師』って意味でいい勉強にもなるでしょう?だから、色んな経験しておいたほうがいいわよぉ?好き嫌い問わずにね…。さて、じゃあ教科書の…」
真紅「…自分の考えは決して曲げようとしないくせに、言うことだけは立派ね…。」
沈黙を守ることに耐えられなくなったのか、真紅はぽつりとそう呟いた。
それは、本当に小さな声で…。
だが、その言葉を水銀燈は聞き逃さなかった。
水銀燈「あ…いくら色んな経験をしておいたほうがいいっていっても、『ヒニン』だけはちゃんとしなさいよぉ?お馬鹿の真紅みたいになってからじゃ、遅いんだから…。」
生徒全員「…え!?」
思わぬ言葉に、生徒たちの視線が一斉に真紅の元へと向けられる。
中には、「おめでとー!」などと声をかける女子生徒も現れる始末…
これに対し、真紅は慌ててこう弁解した。
真紅「な!?わ、私はそんな不潔なこと…」
その言葉を待っていたかのように、水銀燈はさらにこう続ける。
水銀燈「そうね、あなた昔から彼氏がいなかったものねぇ…♪ブサイクだしぃ…♪ヤケ食いしたくなる気持ちもわかるけどぉ、もう少しダイエットしたほうがいいんじゃなぁい?」
真紅「何ですってぇー!!大体、あなたなんか、1人の人と2週間以上続いたためしが…」
水銀燈「何、そんなにムキになってるのぉ?みっともなぁい♪それに、授業に関係ない話は慎んだほうがいいんじゃないのぉ?仮にも、学年主任でしょう?」
メイメイ「そうですよ。それに…あんまり怒ると、顔の小ジワが増えますよ?」
真紅「くっ…この2人は本当に…」
そう言って真紅が閉口したのを確認すると、水銀燈は教科書を手に取り、皆にこう言った。
水銀燈「…さて、じゃあさっき言ったことをふまえたうえで、今日は需要と供給について教えてあげるわぁ。教科書68ページ、開きなさぁい。」
その言葉に、教科書を広げる生徒たち。
彼女は、基本、応用問題、そして実践的なケーススタディーといった段階を踏んで、授業を進めていった。
その時、彼女はこんな事を言って皆を奮い立たせた。
水銀燈「…この場合、みんなだったらどういう対策をすればよかったと思う?今見たように、大人でもこれを間違えて店を潰す羽目になったんだから、あなたたちが間違えても別に気にはしないわぁ。だから、勇気を出して発表してごらんなさぁい。」
その言葉通り、彼女は一昨年のように何かを間違えたからと言って頭ごなしに叱ることはせず、むしろみんなの前で発表したことに対する勇気を評価した。
そんな姿を見て、雪華綺晶は真紅にこう耳打ちした。
雪華綺晶「…もう、大丈夫そうだよ?だから、職員室でお菓子でも食べよ…?」
その言葉につられるように、真紅たちも静かに教室を後にした。


真紅「でも…自由にやりすぎだわ!」
廊下に出た瞬間、彼女は水銀燈の授業をこう評価した。
どうやら、先ほど在らぬ『妊娠説』を流されたのが尾を引いているようだ。
これに対し、水銀燈と古くから行動を共にしてきたメイメイは、こんな感想を洩らした。
メイメイ「…でも、私はあれでいいと思います。あんなに生き生きしてるお姉様…この学校に来るまでは見たこともなかったから…。」
考えてみればそうかもしれない。
彼女は今まで、あんなに明るい表情を他人に見せたことはなかった。
それに今までの彼女なら、あそこまで深く、生徒たちに物を教えようとはしなかったはず…。
真紅「…そうね…。ま、昔よりは大分マシに…」
そう彼女が言おうとした矢先、教室からはこんな話が聞こえてきた。
水銀燈「…あ、そうそう…。あなたたち、間違っても人を信用しちゃダメよぉ?所詮、人間なんて自分のことしか考えてないんだから…。」
真紅「ん?」
水銀燈「…知ってる?たった1000万…いや100万でも、人は悪魔になれるの…。だから、友達なんていざってときには何の役にもたたないし、それに…その人は、本当にあなたのことを友だちと思って…」
真紅「…やっぱり、全然成長してないわ!!雪華綺晶、少しの間メイメイを見ててあげて頂戴…!全く、あの子だけは…!!」
そう言うと、真紅は怒りをあらわにしながら、教室へと戻っていく。
対する雪華綺晶は、顔面蒼白になっているメイメイの肩にそっと手を当てて、こう励ました。
雪華綺晶「大丈夫…。お姉様は別に、あなたの事を言っているわけではないよ…。あなたはお姉様にとって大切な存在だから大丈夫…。よしよし…泣かない、泣かない…」
…結局、このことがきっかけで、水銀燈が政治経済の授業を受け持つという話は、一時見送られることになった。
この事に関し、水銀燈はこう不満をあらわにした。
水銀燈「何で私が怒られなきゃいけないのよぉ!?真実を言ってあげただけなのに…」
蒼星石「まだ君はそんな事言ってるの?しょうがないなー…」
去年自分が言ったことを思い出し、蒼星石はそんな感想を洩らす。
水銀燈が素直に人と接することが出来るまでには、まだまだ時間がかかりそうだった。