ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 戦い -Kampf-

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「さぁて皆ぁ、集まったわねぇ?」

グラウンド。水銀燈の前に並んでいるのは2クラス分の生徒。
並んでいるのは水銀燈と真紅のクラス。なんと今日は2クラス合同の体育の授業なのだった。
「何で私まで……?」
水銀燈の隣には真紅がいる。赤いジャージが似合っているのか似合っていないのかよく判らない。
真紅の問いを水銀燈は無視し、生徒全員への話を続けた。というか、突然宣言した。

「今日はポートボールをするわよぉ!」

ポート……ボール……?
真紅と生徒たちは一斉に”小学校の授業ですか?”と心中でツッコミを入れた。


ここで突然だけどPCの前の皆にこのボク、蒼星石が解説をするよ!
ポートボールというのは、通常7人制で行われるバスケットボールのような競技だ。
バスケットボールとの大きな違いは、なんとゴールが台の上に立っている「人」であること。
と言っても別にぶつける訳じゃなくて、シュートしたボールをゴール役の人が受け止めればOKって事。
でもゴール役の下にはガードマンがいて、キーパーのようにジャンプしてシュートを阻止してるんだ。
そのガードマンのガードを掻い潜って、自チームのゴール役が受け止めやすいようにシュートしなくてはいけない。
中々に過酷な競技だけど、だからこそ楽しいんだ。皆も安全に気をつけて素敵なスポーツライフを楽しんでね!


「じゃあチーム分けも既に出来てるしぃ、同じクラス同士でトーナメントよぉ!」



―――意外にも生徒がノリノリでポートボールを始めて数十分後。
「水銀燈、どうやらこっちのクラスは終わったようよ」
「あらお疲れ様ぁ。こっちも丁度終わったところよぉ」
お互いのクラスのトーナメントが終わり、1位が決定した事を確認すると、
その優勝チームのメンバーをまじまじと水銀燈は観察し、すぐに定位置に戻った。
「じゃあ、まぁそろそろ予感はしてると思うけどぉ……」
「優勝チーム同士で戦いましょう、って事?」
「真紅冴えてるぅ。次は真紅先生の言うとおり、優勝チーム同士で戦うわよぉ!」
突然の展開、だが楽しそうな事になってきたと生徒たちは沸きあがる。
「じゃあ皆位置についてぇ!」
その言葉を合図に、素晴らしい統率力で素早く全員―――観戦者も含めた全て―――が位置についた。

だがゴール役が台に上ろうとしたその時、
「ちょぉっと待って! そこのゴール役ストップ!」
水銀燈がそれを静止した。更に彼女は真紅のクラスの方のゴール役も静止する。
そして全員が疑問を浮かべているのを尻目に、水銀燈が代わりに自分のクラスの陣地の台に上った。
台の上からフィールドを見下ろし、更にそのまま真紅を見下ろし……否、見下しながら高らかに宣言した。

「今回はスペシャルだからゴール役は私と真紅先生よぉ!」
「はい? ちょっと待ちなさい。ま、まさかわざわざ私を呼んだのは……」
「勿論この為よぉ。”クラス対抗で先生直々”はスペシャルの華でしょぉ?」
「……嫌よ、面倒くさい。あなたのそういう思いつきはろくな事がないもの」

水銀燈の提案を、真紅は心底嫌そうに断った。
そう、校長と水銀燈の思いつきは大体ろくな事がない。付き合って馬鹿を見るのはごめんなのだ。
だが水銀燈はそんな真紅の態度を見ても動じず、むしろニヤリと笑みを浮かべていた。

「ふぅん、そんなに私のクラスに負けるのが嫌なのねぇ?」
「……何ですって?」

静観を決め込もうとした真紅がその言葉にピクリと反応する。
水銀燈はその小さな反応を逃さずに、言葉を続けた。
「確かにこのまま負けると恥を晒しちゃうだけだものねぇ、真紅?」
「言いたい放題言ってくれるわね……」
「まぁどうしても嫌って言うなら止めてあげてもいいけどぉ……どうするぅ?」
一見すると馬鹿馬鹿しい水銀燈の明らかな挑発。だが真紅は乗った様だ。
自分の台に上り、水銀燈を睨みつける。そしてそればかりでなく、ビシッと指を指して宣言した。

「いいわ、その勝負受けましょう! 生きることは戦うこと……戦うことは生きることッ!」
「そう、それでいいのよ真紅……でも、勝つのは私のクラスよぉ……ふふ、ふふふふふ」

”ゴゴゴゴゴゴゴ”、もしくは”ドドドドドドドド”。
そんな効果音が聞こえてきそうな程の緊張感が辺りを支配し始めた。

「さぁ、真紅を本気で叩き潰しなさい!」
「皆、水銀燈に負ける訳にはいかないわ!」

やはり2人は良い意味でも悪い意味でもライバルなのだ、と改めて生徒は痛感した。
絶対に負けられないであろう重い雰囲気に飲まれそうになりながら、ホイッスルの音を待つ。


緊迫した空気の中、ホイッスルの耳を劈くような音が鳴った―――。


水銀燈の狙い。それは単なる勝利ではない。”この授業という場で真紅に勝利する”事だ。
生徒に自分の勝利を見せ付ける。それがどれだけ素晴らしいことか。
今回は是非とも真紅には人柱になって頂いて、私の魅力を生徒に刻んでやろう。
そうすれば生徒からの人望も鰻登り間違いなし……と、水銀燈は企んでいたのだが、そう簡単にはいかなかった。

試合開始からかなりの時間が経った今、何度目かのシュート成功のホイッスルが鳴った。水銀燈チームのゴールだ。
水銀燈は開始直後から生徒のシュートを何度も成功させてはいたが、得点差が開くことが無いまま試合は続いていた。
そう、同じように真紅のクラスもシュートに成功し、いたちごっこの様な状況が続いているのだ。
更に間の悪いことにゲームも終盤戦。そして得点は真紅チームが1ゴール分上回っていた。ピンチである。
「中々……やるわねぇ……」
「往生際が悪いわよ、水銀燈」
真紅が不敵な笑みを浮かべながら言葉を返し、フィールドに視線を落とす。
試合が始まって意外と時間は経っている。現時点では自チームの方が得点は上だ。
このまま逃げ切れば勝ちだ。このまま勝利は頂く、と宣言するかの様に水銀燈を睨みつけた。

―――その刹那、ボールが真紅の顔面にヒットした。

何度かバウンドし、真紅の足元で静止するボール。
飛んできた方向を見ると、水銀燈が明らかにボールを投げた後のモーションで止まっていた。
そう、水銀燈はボールをフィールドに返さずに直接真紅にぶち当てたのだ。しかも顔面に。
自分がピンチなこの状況にイライラしていたのだろうか。水銀燈は”あぁ、スッキリしたぁ”と言わんばかりだ。

「あらぁ、ごめんなさいねぇ真紅ぅ」

全く悪びれない様子で言う水銀燈。その表情は、何か悪いことを企んだ時の翠星石の顔に似ている。
真紅は体を小刻みに震えさせ、何かをぶつぶつと呟いている様だ。生徒達は何も言えないままそれを眺めている。
重い空気の中、真紅は台から降りてボールを拾う。そして大きく振りかぶって勢いよく投げた。

ボールは勢いよく飛ぶ。
弧を描かずほぼ一直線に。

「ま、まさかぁ……」

その狙いは勿論、水銀燈。



「………何があったんだい?」
「いえ、なんでもないわ……」
「ちょっとふざけ過ぎただけよぉ……」

ボロボロになった挙句に顔の真ん中にボール痕をつけた真紅と水銀燈。
2人が職員室に戻ると、その奇妙な姿に気づいた蒼星石に疑問を投げかけられた。

結局あの後、水銀燈の顔面にボールがヒットしたのを合図に真紅と水銀燈は喧嘩を始めてしまったのだ。
1vs1のガチバトル。そう、まるで異界の闘い「アリスゲーム」の様な闘いを止められるものはいなかった。
生徒は各自避難。グラウンドに残った2人はチャイムが鳴るまで一心不乱にガチバトルを続けていたのだった。

だが、そんな事を他人に言えるわけがないではないか。
まぁどうせ後で噂が流れて、言っても言わなくても同じことになるだろうが……。
気遣ってくれる蒼星石には悪いが、自身のプライドの為にも言うわけにはいかなかった。
何も訊いてくれるな、と2人は互いの席に戻り、ぐったりとした様子で椅子に座った。
「今回は……悪かったわぁ、真紅ぅ……」
「こちらこそ……我を見失っていたわ……」
だが、2人の関係は少し良好になったと思われるので良しとしよう。


fin