ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 天秤

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水銀燈「…よし、じゃあみんな集まってくれるぅ?」
その声に、プールで自由に練習をしていた水泳部の面々は、一斉に彼女の元へと集まった。
総勢40人…よくもまあ、ここまで揃ったものだと水銀燈は感心する。
これだけよい環境で始められたのも、全てメイメイのおかげ…
その上、彼女は事務員という特権を生かし、かなり強引に部活動費の追加を承認させたらしい。
水銀燈「…これで失敗したら、本当に首でも吊らなきゃダメね…」
自嘲気味にそう呟くと、彼女は集まった部員たちに向かって、こう話を切り出した。
水銀燈「…一応、今日は一人一人の泳ぎ方を見せてもらったわけだけど、やっぱり気になる点がいくつかあるわねぇ…。ま、それに関しては、後で個人別にメモしたものをあげるから、明日以降はそれを意識して練習しなさぁい。」
その言葉に、部員たちは「はい!」と元気よく声をそろえる。
そんな部員たちの様子に、彼女は「…何か、調子狂うわねぇ…」と頬をポリポリと掻くと、あるものをファイルから取り出し、皆にこう言った。
水銀燈「…で、今日の所はこれで解散と言いたいところなんだけどぉ…。みんな、今からこれ書いてくれるぅ?濡らさないように気をつけてねぇ…。」
男子A「え…何ですか、これ…?」
水銀燈「何って、水着の発注書よぉ。どの程度早くなるかは知らないけど、一応例の鮫肌競泳水着…『ファーストスキンFS2』っていうらしいんだけど、それ…取り寄せてみるわぁ…。で、洗濯して乾かないといけないから、とりあえず1人3着ずつ注文しておくわよぉ。」
その声に、部員たちは一気に沸きあがる。
その水着に対する物珍しさもそうだが、先生も本気だということが分かり、部員たちにはそれが嬉しかったようだ。
一方、水銀燈はというと、そんな部員たちの姿を見ながら、冷めた様子でこんな事を考えていた。
「期待と絶望って…その落差が大きいほど、ダメージが大きいのよねぇ…」
そこには、どうしても人というものを信用できない、彼女の姿があった。


水銀燈「…で、Nは息継ぎの時に頭を上げすぎ…自分の斜め後ろを見上げるつもりで頭を回すことを意識するように…と…。ふぅ、やっと終わったわぁ…。メイメイ、そっちはどぉ…?」
部員たちと別れた後、水銀燈はメイメイのいる事務室を訪れ、それぞれの職務をこなしていた。
問いかけられたメイメイは、電話から耳を離し、こう答える。
メイメイ「ええ、量が量だけに1週間ほどかかるそうですが、何とか手配のほうは…。」
1週間か…。まあ、120枚も集めなくてはいけないのだから、仕方が無い。
それにしても…120枚だなんて、業者にしてみればとんだ臨時収入に…臨時収入…?
その時、水銀燈の頭にある考えが閃いた。
水銀燈「…120枚…ということは、たった千円違うだけで12万も儲かるって事じゃなぁい…♪」
考えてみれば、臨時手当もなくこのような仕事を押し付けられたのだ。
それに業者の方だって、本当ならこの時期にこんな大金を得る機会はなかったはず…。
なら、それがそっくりそのまま私の元に転がり込んできたとしても、なんら不都合は無い…!
水銀燈「…メイメイ、担当者の名前…教えてくれるぅ?」
妖しげな笑いをまじえつつそう言う彼女を見て、メイメイは内心で安堵する。
良かった…ようやく、お姉様が本来の姿に戻ってきた…と。
やっぱり、お姉様にはしょぼくれた姿は似合わない…そんな事を考えながら、メイメイは彼女の問いに、うやうやしくこう答えた


メイメイ「担当者は、『草笛みつ』という方です。何でも、金糸雀さんのお知り合いらしく、かなりの値引きをさせてもらったのですが…ただ…」
水銀燈「…ただ、なぁに?」
メイメイ「…何でも、お姉様に1度お会いしたいそうなんです…。『金糸雀から噂は聞いているのでどうしても会いたい』と…」
水銀燈「私に…?」
いきなりの指名を受け、水銀燈は困惑する。
自分に会いたいだなんて、物好きな女もいるものだ…。
昔の知り合いか何かだろうか…。
いずれにしても、メイメイの口調から、その女に何らかの魂胆があるのは間違いなさそうだが…
水銀燈「…いいわよぉ…。別に会うぐらいなら…」
こうして、水銀燈は相手の出かたを探りながら、草笛みつ…通称『みっちゃん』との『商談』に臨むのであった。


みっちゃん「どーもー初めましてぇー!結菱物産営業部第2課1係、そしてカナの友達の草笛みつでーっす♪」
一週間後、そう言って現れた彼女を前に、水銀燈は自分の考えの甘さを悟った。
色々なパターンを想定してきたが、まさかこんな人間が現れるとは思ってもいなかったのだ。
自分の手を握り、そしてブンブンと握手を繰り返す彼女に、流石の水銀燈も「…あ、そぅ…。」としか声が出ない。
同席したメイメイにいたっては、何かあったときにはすぐに動けるようにと、警戒心をむき出しにしている。
なるほど…あの時、メイメイが難色を示したわけだ…と水銀燈は一週間前のことを思い返す。
もしかして、この女には『そっち』の気があるのだろうか…。だとすれば、正直あまりかかわりたくは無いが…
水銀燈「…もう満足した?だったら、早く仕事の話をしましょ…。私には時間が無いの。」
うんざりした様子でそう語る水銀燈に、ようやく彼女も本来の仕事を開始した。


みっちゃん「…118、119、120…っと。…では、間違いなく120万円頂戴いたします。あと、こちらが領収書で…」
そう言って領収書を差し出す彼女の手を握ると、水銀燈はいつも他の男達にやっているように、上目遣いでこんな事を言い出した。
水銀燈「ねぇ…。その領収書のほかに、定価…つまり1枚2万5千円で買ったときの領収書もくれなぁい?」
正直、この方法がこの女に効くかどうかは分からない…。それに、効いた時のほうが厄介な気もするのだが…
そんな考えをよそに、みつは慌てた様子でこう答えた。
みっちゃん「…え!?で、でもそれって違法行為であって…」
その言葉に、水銀燈は彼女の口にそっと手を当てる。
…良かった。一応、常識はあるようだ。だが…
水銀燈「…私、いけない子なの…。でも、あなたなら私の気持ち…分かってくれるでしょう…?」
そう言うと、水銀燈は自身の財布を取り出し、その中から20万円程度を彼女の前に差し出すと、さらにこう言った。
水銀燈「…あげる。で、これを気に…これからもいい関係を築いていきたいと思わなぁい?」
そう言いながら彼女の後ろに回りこみ、そして耳元で何かを囁こうとしたその時、何者かが水銀燈の肩を叩き、こう声をかけた。
?「…そんなに人にあげるお金があるのなら、『僕達』にもそれ…分けてくれるかな?」
その声に、水銀燈は全身の血の気が引いていくのを、はっきりと感じていた。


蒼星石「しばらく顔を出せなくてごめんね…。でも、本当にみんな見違えたね!今日届いた新しい水着も馴染んでいるみたいだし、この調子で3日後の練習試合も頑張ろうね!!」
この日、学校の屋内プールには、水銀燈の代わりに先任の蒼星石が水泳部の指導のためにやってきていた。
彼女の話によると、顧問である水銀燈は『急病』のため、保健室で療養中らしい。
「そういえば、凄い疲れた顔してたもんなぁ…」と、昼休み終了直前に彼女を見掛けた者は仲間にそう語った。
ちなみに、今回の彼女の損失額は、全部で120万円…。
つまり、部員たちの水着の代金は全て水銀燈が負担することになったというわけだ。
この事に関し、水銀燈とメイメイはしきりに抗議をしたが、蒼星石に「本来なら、これ以外に部活動反則金を取られてもおかしくない訳だし、それでも文句がある場合は、僕も事の真相をみんなに話すよ?」と言われてしまったため、泣く泣くそれに従うことになったのだった。
…ま、あそこでお金を選ばなかっただけでも、少しは成長したと言えるのかな…。
そんな事を考えながら、蒼星石は各部員たちに解散の指示を出そうとする。
その時、「私の代わりにやってきて…。今は1人になりたいの…」と水銀燈から指示を受けたメイメイが、皆を引き止め、こんな事を言い出した。


メイメイ「待ってください…!あの…今日皆さんが着ている水着の事なんですけど、実はそれ…水銀燈先生が自費で購入したものなんです…。だから…大切に使ってください…。そうすれば、少しは先生も報われると思いますので…」
おずおずと彼女が語った言葉…それは部員たちに思わぬ効用をもたらした。
メイメイとしては、別にその言葉以上に何かを狙ったわけではなかったのだが、部員たちは皆、控え室に戻るのをやめ自主的に練習を再開し始めたのだ。
それはメイメイにとって、全く理解の出来無い行動であった。
メイメイ「…え?どうして…?みんな疲れているのだから、今日はゆっくり休んで明日に備えたほうが、効率がいいのに…」
その言葉に、蒼星石はメイメイの肩に手を置き、こう声をかけた。
蒼星石「そんなこと言っちゃダメだよ…。みんな、君たちの気持ちに応えようと必死なんだから…」
その言葉に、メイメイは思わずはっとする。
そして、何か目頭が熱くなるのを感じながら、メイメイはみんなの姿を見ながらこう呟いた。
メイメイ「…ありがとう。みんな…」
誰にも聞こえないような…しかし、はっきりとした口調で…。
こうして、有栖学園水泳部はこの熱気を保ったまま、3日後の練習試合を向かえることになるのであった。