ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

真夏の夜の夢

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女子A「でね…何でそのプールが使われてないかというと、水を張るたびに長い髪の毛がぶぁーっと浮いてきて、その水の中から…」
ある夏の夜のこと、むしむしとした外の空気とは違う、ぞくぞくとした空気が学校のとある一室には漂っていた。
実はこの日、水泳部のみんなが夏の合宿のために学校に泊まっていたのだが、あまりに寝苦しいので、女子たちの部屋では急遽百物語をすることになったようだ。
ちなみに百物語とは、数人が一堂に会し、夜を徹して百話の怪談を語るという趣向のことを言う。
部員たちは、それぞれ自分の自慢の怪談話をみんなに聞かせ、その度に聞く者たちの肝を冷やした。
女子A「…はい、これで私の話は終わりっと。さ、次は誰が行く?」
あっけらかんと、それでいて楽しそうにそう言う彼女に対し、あるものは声を震わせてこう言った。
由奈「…もう止めようよ…。こういう話してると、そういうのが寄ってくるってよく言うし…」
女子A「へーきだって!もしお化けが出ても、私たちには心づよーい味方がいるし…」
怯える由奈の肩をぽんぽんと叩きながらそう励ますと、彼女はその者の顔を見て、さらにこう言った。
女子A「そうだ!メイメイさんも、何か話して下さいよ!!」
その声に、見回り当番に来ていたメイメイは、意外そうな顔でこう聞き返す。
メイメイ「…え?私も混じっていいんですか…?」
女子A「もちろん!すっごい怖いの、お願いします!」
メイメイ「…そうですか…。うーん…もしかしたらあまり怖くないかもしれないですが…」
そう言うと、メイメイは声を潜めつつ、こんな話をし始めた。


昔…世界が今よりも小さなものだと考えられていた時代…あるところに、錬金術を学ぶ一人の男がいました。
ある時はサンジェルマン…ある時はカリオストロと呼ばれたその男は、その素性からか、人々から気味悪がられ、そして忌み嫌われていました。
そのため、彼は『愛』というものに飢えており、それを人ではなく、別の物にそれを求めました。
…人に似て、人に在らざるもの…。すなわち人形に…
彼は周囲の罵声や弾圧に耐え、必死に人形に魂を宿す方法を捜し求め続けました。
そして、ついにその努力が実る日が来たのです…。
初めて作られた人形は、それはとても美しい姿でした。
端正な顔つきに、豪華なドレス…そして、天使を思わせるような、背中に生えた黒い大きな翼…
錬金術の原料となる物質名をモチーフに名前を付けられたその少女は、どれをとっても完璧だった…はずでした。
しかし、その彼の人間に対する深き憎悪は、その人形…そして、その時に副産物として生まれた従者にも宿ってしまっていたのです。
『彼女たち』は、『お父様』の気持ちを汲み取ると、愛用の武具を手に、外へと羽ばたいていきました。
少女は剣を、従者は盾を持って…
そして、彼女たちはあらゆる場所に死を降り注ぎ、お父様の無念を晴らそうとしました。
ひとえに、彼に愛されたいがために…
しかし、その時…すでに彼の心はもう別の人形に向けられていたのです。
…そのまま、彼女たちは捨てられました。
彼女たちは苦悩します…。「何故、自分たちはこんなにもお父様を愛しているのに捨てられたのか」と…。
彼を愛する気持ちは、いつしか激しい憎悪へと変わり、あらゆる場所を手当たり次第に死の大地へと変えていきました…。
…あなたたちは、中世ヨーロッパでペストが猛威をふるった事があるという話をどこかで聞いたことがありますか?
その中に、明らかにペストとは違う…どうにも説明のつかない死体が、多数見受けられたそうです…。
その死体の体内には、どれも真っ黒な羽がびっしりと…
…ごめんなさい、少し話がそれてしまいましたね…。
で、そんな時…彼女たちは意外な者と出会います。…それは、彼が新しく生み出した人形でした。
彼女たちは考えます。「…この子達を1人ずつ消していけば、いずれはお父様にも会えるかもしれない…」と。
…こうして、彼女たちとその姉妹は今も争い続けているそうです…


一通り語り終え、ふぅとため息をつくメイメイに、ある生徒はこんな感想を洩らした。
女子B「…何か、可哀相な話ですね…。勝手に生み出されて、そして捨てられるなんて…」
メイメイ「…ええ…。でも、この話には続きがあるんです…。」
女子A「…え?」
メイメイ「一説には、これらの人形は全部で7体作られたそうです…。そして、その最後の7番目は、彼が望む姿になるために人間に生まれ変わろうとしたそうです…。人間の誰かを、いけにえにする代わりにね…」
その言葉に、生徒たちの顔に畏怖が翳りを広げていく。
メイメイはさらに続ける。
メイメイ「…でも、人間になろうとしたのは、果たしてその一体だけなのでしょうか?もしかしたら、他の人形たちも…可能性は十分にあるでしょう?」
そこへ、ある者がいっそう声を震わせながらこう問いかけた。
由奈「で…でも、私たちは大丈夫ですよね…!?」
メイメイ「さぁ…この日本にも、『八咫烏(やたがらす)』という伝承が残されていますし…もしかしたら、あなたのすぐ側にいるかもしれませんよ…?」
怯える生徒たちを前に、彼女は少し微笑みながら、こう付け加えた。
メイメイ「…あなたの後ろとかに…ね。」
由奈「…え?」
その時…彼女の肩に、何者かがそっと手をかけた。


由奈「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あたりに響く叫び声。そして、その声に反応するように、他の女子たちも一斉に悲鳴をあげる。
そんな彼女たちの様子に、手を置いたものは呆れたようにこう言った。
水銀燈「…何、馬鹿なことやってるのよ…。そんなに元気があるなら、今から50m10本泳がせるわよぉ?」
由奈「せ、先生…!!よかったぁ…呪いの人形とかじゃなくて…!!」
水銀燈「呪いの人形…?いいから早く寝なさぁい。もう夜中の1時よぉ…?」
そう言うと、彼女はメイメイを連れ、彼女が日ごろからお世話になっている保健室へと戻っていった。
水銀燈「全く…。全然帰ってこないから、一体何をしてるのかと思えば…」
メイメイ「ご…ごめんなさい…。つい時間を忘れてしまって…」
水銀燈「もういいわぁ…早く寝…あ、ちょっと…」
メイメイ「…?何ですか?」
「何だろう」と怪訝な顔をする彼女に対し、水銀燈は自身の布団を広げながら、こう続けた。
水銀燈「…この部屋…何か冷えるから、こっちに入りなさぁい…。そうすれば、少しは暖かくなるでしょう…?」
その言葉に、メイメイは戸惑いつつも嬉しそうに彼女の布団へと潜っていく。
水銀燈にとって、シングルベッドに2人というこの布団の狭さよりも、先ほどの『呪いの人形』という言葉のほうがよっぽど気になる存在のようであった。


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