ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

食わず嫌い

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お題 『銀様が苦手なピーマンを克服。ピーマン以外でも可だが、意外なものほど面白い。』


水銀燈「…ごちそうさま。」
ある日の昼休み、皆が食堂で食事をしている中、1人席を立つ水銀燈。見ると、その食事にはほとんど手をつけた様子がなかった。
薔薇水晶「銀ちゃん…どうしたの?具合…悪いの…?」
その様子に、薔薇水晶は心配そうに声をかけた。しかし、それに対し真紅は呆れた様子でこう言った。
真紅「…ただの我が儘よ。気にする必要は無いわ…。」
薔薇水晶「ワガママ…?」
その言葉に対し、ある人物がいち早く反応しこう言った。
翠星石「全く…自分で頼んどいて何て奴ですか!その『お楽しみ定食』は、食堂のおばちゃんが一生懸命作ったものですよ!ほれ、さっさと食べやがれですぅ!!」
水銀燈「うるさいわね…。お金を払ったのは私なんだから、どうしようと勝手でしょう!?こんな安っぽいもの、私の口には合わないの。こんなまずいもの食べるくらいなら…」
翠星石「…取り消せです…」
水銀燈の発した言葉…それはあまりに軽率なものだった。
ワナワナと手を震わせ小さくそう呟くと、翠星石はいきなり水銀燈に掴みかかった。
翠星石「同じ料理に携わる者として、今の発言だけは許せんですぅ!!取り消しやがれですぅ!!」
その様子に、慌ててその場の教師全員が両者の間に割って入り、やっとの思いで2人を椅子に座らせた。
しかし、それでもなお翠星石の怒りは収まることはなかった。


翠星石「ほら、さっさと食いやがれですぅ!!」
水銀燈「絶対に、嫌よ!」
机の上の料理を前に、そう言って対峙する2人。両者とも互いの信念を決して曲げることはなく、気がつけば30分以上このやり取りがなされていた。
そんな様子に、蒼星石はため息をつきながらこう言った。
蒼星石「ほら、もうすぐ昼休み終わっちゃうよ?そうなると、今日は1日2食になるわけだから、美容にも健康にも悪いと思うんだけど…」
その言葉に、しぶしぶ食事を口に運ぶ水銀燈。
はじめは「こんなまずい物…何でこの私が…」と、嫌々食べていた彼女だったが、すぐにその表情は穏やかなものへと変化していった。
うん…多少安っぽさは残るものの、正直悪くない…。
どうやら、最初に「煮魚や煮物のどこが“お楽しみ“!?」と憤りながら食べたのがいけなかったようだ。
翠星石「どうです!?ほら、早く自分の間違えを認めやがれですぅ♪」
その表情の変化をいち早く察知すると、翠星石は勝ち誇ったようにそういった。
そしてその発言に対し、水銀燈は静かにこういった。


水銀燈「…ま、我慢すれば食べられないことも無いわね。でも…少しもったいないわね…・。もっといい食材…例えば鯛とか黒メバルとか使えば、もう少しマシなものに…」
翠星石「馬鹿ですか、おめーは!?これはチビ共のために作られたものですよ!?安くなきゃ、誰も食えんですぅ!!…全く、なんでもかんでも自分中心に考えやがって…。」
ため息混じりにそう返答すると、彼女は続けてこう言った。
翠星石「…そりゃ、金かければ美味しいの食べられるのは当たり前ですぅ。でも、たった400円でこんなものが作れるなんて奇跡に近いですよ。翠星石でも、ここまでは出来ないかも知れんですぅ…」
水銀燈「…何よ。急にしおらしくなっちゃって…。あなたにとって、この料理はそんなに素晴らしいものだって訳?」
翠星石「そりゃそうですぅ。定食は前もって調理されたのがほとんどです。でも、その全てにチビ共への愛情が込められてるんですから…。」
その言葉に、水銀燈は思わずハッとした。
食べていた時に感じた、どこか懐かしいような味は、その昔…お母様が作ってくれたものによく似ていた。
そういえばここ数年…お母様の手料理なんて、全然食べていない気がする…。
それは、家が貧しかったことへの一種の反発だったのかもしれない…。
だからこそ、世の中の『美味しい』と言われるものには積極的に手を出してきたし、今ではその食事が『当たり前』になるぐらいまでに這い上がった。
しかし…その過程で、私は何か大切なものを忘れていたのかもしれない…。


翠星石「ん?どうしたです?」
空になった食器をボーっと見つめる水銀燈に、彼女は思わずその顔を覗き込んだ。
数秒後、それに気がつくと水銀燈は慌ててこう言った。
「…ま、犬の餌よりはマシね…」
と。
その言葉に、もう一度彼女に掴みかかろうとする翠星石。それを難なくかわすと、水銀燈は面倒くさそうに午後の授業へと臨んだ。
そして、それから数時間後…水銀燈の家の一室からはこんな声がかすかに響いていた。
水銀燈「あ…もしもし、お母様…?あの…今度の週末なんだけど…たまには、お母様の料理が食べたいなって…うん…ただそれだけなんだけど…行っても…いい?」
…自己の虚栄心を満たすためだけに購入した、1人で住むにはあまりに広く、そして1つの部屋以外ほとんど電気のつくことがない4LDKのマンション…
その中で、唯一その部屋にだけ暖かい光が溢れていた。


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