ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

水銀燈の誕生日

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職員室に、真紅の鼻唄が響く。普段の真紅からは想像のできない、軽快な鼻唄だった。
銀「あぁら真紅先生なにかいい事あったのぉ?」
真「あら、分かる?」
とぼけてみるものの、口はにやけっぱなしだった。
銀「なによぉ、教えてくれたっていいじゃなぁい?」
真「ふふ、大したことじゃないわ」
真紅はそう言うと、一つのぬいぐるみをデスクの上に置いた。
銀「そ、それは…!!?く、くん・・・くん…!?」
それは、ちびっ子に大人気の人形劇番組『くんくん探偵』の主人公・くんくんのぬいぐるみだった。
真「あら、水銀燈先生もくんくんをご存知なの?」
銀「ま、まぁねぇ」
知っているなんてものではない。くんくん探偵は毎週欠かさず見ている。
ビデオ録画だってしている。もちろん標準だ。
銀「か、可愛いお人形さんだことぉ…」
その人形は、先月発売された『くんくん探偵コレクションドール』シリーズの最新作、くんくん探偵服バージョンであった。
値段の割に完成度が高く、ファンの間では今世紀最高のキャラクター商品と言われている。
しかしその商品は、若者が集まる巨大ショッピングセンターにしか売っていない。
いい歳をした大人が、こどものおもちゃを買うというのはかなりの抵抗があった。
しかも、ある程度くんくんファンとして認知されている真紅ならともかく、
隠れくんくんファンの水銀燈が生徒のよく行くショッピングセンターにくんくん人形を買いに行くことは、公開処刑にも等しかった。
もし、買っているところ生徒に見られたら、教師を辞める覚悟さえあった。
しかも都合の悪いことに『くんくん探偵コレクションドール』シリーズは、店頭販売限定で、通販では買えないのである。


真「水銀燈先生も、くんくんが好きなの?」
突然の質問に、水銀燈は戸惑った。
銀「な、なぁに言ってるの…!?
私がそんなくんくん探偵コレクションドールシリーズNO,5「くんくん探偵服バージョン」に興味があるわけ無いじゃなぁい…。
本当、馬ぁ鹿みたい…」
真「その割には、やけに詳しいのね」
銀「な…!!あ、あれよ…。この前読んでいた雑誌にたまたま載っていただけよ。
別に私がくんくん探偵のファンだなんてことじゃないわぁ」
真「そう」
真紅はそう言うと、くんくん人形を愛ではじめた。今は水銀燈には興味ないようだ。
雛「あーー!!くんくんなのー!真紅先生、それどうしたのー!?」
雛苺がくんくん人形に飛びつく。真紅はそれはひらりとかわした。
真「これは、3年2組の生徒たちにもらったのよ…。誕生日プレゼントだって。
あぁ、やっぱり私とくんくんは見えない糸で結ばれているのだわ…」
真紅は両手を合わせると、天井のほうを見上げた。自分の世界に入ってしまったようだ。
銀「誕生日…プレゼント…?」
蒼「3年2組の生徒たちは誕生日にプレゼントをしてくれるんだ。みんなでお金を出し合ってね。
ボクも、帽子をプレゼントされたんだ」
後ろから蒼星石がお茶を持って近づいてきた。確かに、2月ほど前蒼星石は新しい帽子を被っていた。
雛「うゅー。ヒナの誕生日、まだまだ先なのー」
銀「私の誕生日は・・・」
2週間後だった。恐らくまだ誕生日プレゼントは買っていないだろう。いや、それ以前に自分は買ってもらえるのだろうか?
少し不安になった。3年2組の授業は、明日だった。明日、勝負に出るしかない。
水銀燈は、一人小さく頷いた。


~翌日
銀「授業を始めるわよぉ」
水銀燈は、意気揚々と教室に入ると、授業を始めた。
授業は、なんの支障もなく続いた。授業の残り時間がどんどん減っていく。
水銀燈は内心焦っていた。できれば生徒のほうから誕生日プレゼントの話を振ってもらいたかったが、無理なようだった。
水銀燈は、覚悟を決めた。
銀「はぁ~」
大袈裟に溜め息をつく。
「水銀燈先生、どうしたんですかぁ?」
男子生徒が食いついた。
銀「歳をとるって嫌だわぁ」
水銀燈はさりげなく、そして自然に年齢の話をした。
「そういえば水銀燈先生の誕生日って2週間後ですよねぇ」
水銀燈は心の中でガッツポーズをした。計画通りだ。
銀「そ、そうだけどぉ?」
「俺らみんなで先生の誕生日プレゼントを買おうと思ってるんですけど…」
銀「え、そうなのぉ!?いいのぉ?」
驚いて見せるが、もちろん知っている。
乗り気な男子に対し、女子からは「しょうがねぇか」という雰囲気がにじみ出ていた。
「一応俺らの考えではヤクルト50パックセットなんですけど…」
銀「な・・・!?」
冗談じゃない。そんなに大量にヤクルトを貰っても嬉しくは無い。
しかし生徒の話によると、まだ買ってはいないらしい。変えさせるなら今しかない。


銀「う、嬉しいわぁ。でも、ヤクルトって高いじゃなぁい。そ、そんなにお金をかけなくたっていいのよぅ」
「そ、そうですか?じゃあ20パックで…」
銀「か、数の問題じゃなくてぇ…!!ヤクルトって、飲んだらお終いじゃなぁい?
できれば、いつまでも形の残るものが良いわぁ。思い出として残るじゃなぁい?」
もっともな事を言ってプレゼントの変更を促す。ヤクルトなど貰ってたまるか。
「それもそうっすねぇ。じゃあどんなものが良いっすかね?」
銀「そうねぇ…くん、くんとか・・・」
水銀燈は呟くように言った。
「え…?くんくん?くんくんって真紅先生にプレゼントしたあのくんくんっすか…?」
銀「そ、そうよ!あれ!あれよ!」
「水銀燈先生もくんくんが好きなんですか?」
銀「な、なに言ってるの!?そんなわけないじゃなぁい。ふふふふ・・・・。
ただ、雑誌に載っていたのがちょおっと可愛いかなぁ、なんて・・」
「雑誌・・・?」
銀「そ、そうよ…。これなんだけど…」
水銀燈はそう言うと、ポケットから雑誌の切抜きを取り出すと、生徒に渡した。
「なになに…?『くんくん探偵ドールズシリーズ』…?あぁ真紅先生に買ったやつと一緒か」
銀「ち、違うわ!!よく見なさい!!切抜きにはまだ続きがあるわよ!!」
水銀燈が即座に否定する。
「え・・・?えっと…『最新作NO,6くんくん私服バージョンが今月○日に発売!!』…?」
銀「そう、そうよぉ!!」
「こんな雑誌の切抜きまで…。水銀燈先生ってやっぱりくんくんが好きなんですか?」
銀「ち、違うって言ってるじゃない!!ただあれよ、ど、どうせなら新しいほうがいいじゃない?」
水銀燈は、手を後ろで組み、モジモジとして下を向くばかりだった。


水銀燈は、手を後ろで組み、モジモジとして下を向くばかりだった。
「はぁ…まぁ…。えっと、○日ってことは一週間後か…」
「そんなら今度一緒に買いに行こうぜ?」
「あぁ、そうするか…」
銀「ほ、本当ぉ!?」
水銀燈はパァッと顔を明るくした。
「みんなもそれでいい?」
男子生徒が同意を求めると、クラスから賛同の声が上がる。女子は、ただ適当に拍手をするだけだった。
「それじゃあ先生、誕生日楽しみにしていてください」
銀「あぁんもう良い子ねぇ!!」
水銀燈は堪らず男子生徒に抱きついた。生徒は座っていたので、ちょうど顔に水銀燈の胸が当たる。
男子生徒が一斉に叫び声をあげた。水銀燈の胸に圧迫された生徒はその感触に酔いしれた。
銀「それじゃあ今日の授業はここまでぇ。うふふふふ・・・」
授業終了まであと数分はあったが、いてもたってもいられなくなった水銀燈は、教室を出て行ってしまった。
銀「あぁ、くんくん…くんくぅん!!」
職員室へ向かう足取りは、いつの間にかスキップになっていた。

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