ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

アリス・ゲーム

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~アリス・ゲーム~

 ここは有栖学園、まだ創立して浅いものの他校と比べればそのいろんな意味で実績は決して劣りはしない。
 その有栖学園は校長も然ることながら教師陣も決して侮れない個性と言う名のオリジナリティに溢れていた
 今宵、その有栖学園で起きた決して明かされない一つの事件を紹介する・・・・


 時刻は午後9:40本来なら誰も居ない時間であるが今日は数人の教師が残っていた
金糸雀「な・・・なんで・・・こんなことになったのかしら・・・・」
 いつもの元気は無く嗚咽混じりの声で教師の一人金糸雀は呟く・・・
蒼星石「校長が・・・校長がゲームを開始したから・・・だよ・・・」
 その横で冷静に、しかしいつもの凛とした声は無く答える蒼星石
 そう、ゲームは開始された・・・校長の起こすゲームにしては最も残酷で決して開けてはならないゲームが・・・
 そのゲームの名は・・・・ ”アリス・ゲーム”

 20XX年、少子高齢化に悩む日本はある法案を可決する、AG(アリス・ゲーム)法・・・
 その法案は20XX年初頭荒れた日本を直そうと教育委員会は極秘計画を発動させていたことから始まる
 数年後、一人の委員から驚くべき内容の計画書が本部に手渡された・・・
 それは子供が真面目に育たないのは教師が原因/95%と言うサーチ結果を元に計画された計画であり・・・
 教師同士を殺し合わせ一番優秀な教師のみを選抜させ将来の子供の質を向上させようというものであった
 しかし何故殺し合わせる必要があったのか・・・
 それは20XX初頭、未成年が関与する凶悪事件が多発していた時代教師は無力であった
 子供の凶行をとめる術を持たず、ただ言われるままに上から言われた事のみをこなし、時間外の子供の行動には一切興味を持たなかったからである
 その為、教師・親に隠れ凶悪犯罪に発展する事が多発し教育委員会は重い腰を上げたのだ。
 この法案が可決された時は大ニュースになった、当たり前である・・・死刑すら躊躇う国でありながらまっとうな人間を殺し合わせるのだから・・・
 しかし、この法案が可決された年は運が悪い事に教師による暴行事件・未成年による凶悪犯罪・教師のいじめによる生徒の自殺等が重なった為に反対派は発言力が異常に弱かった
 この影響を受け、各学校では教師が各自各々己を鍛え上げ生徒の行動を常に監視するという従来では考えられないような状態に陥った・・・
 しかし、これらの事が影響し少年犯罪等が激減、己の子を預ける父兄からは絶大な支持を得た為にこのAG法は以後覆る事が無くなってしまったのである。そして現在の有栖学園惨状に至る・・・・


~序章/奪われた平穏~

 時は遡り時刻は午後8:00、今日の仕事を終えた蒼星石は自宅に戻り一時の休息を楽しんでいた・・・そんな時
「トゥルルルルルル」
 電話が鳴り響き電話に向かう蒼星石、その時は翠星石が食事の誘いでもしてくるのだろうと思っていたが・・・
蒼星石「はい、もしも・・・」
ローゼン「午後9:00までに大至急学校に来て、自分のクラスに行って下さい。ガチャッ」
 蒼星石が喋りきる前に用件のみを伝えて急いで切るローゼン
蒼星石「一体なんだったんだろ・・・・」
 そして何のことだか判らない様子でぼやく蒼星石、この時異変に気づいていればいくらでも対応は出来たのだがそれは最後まで叶わなかった
 午後8:45真っ暗な学校に到着する蒼星石、何故か自宅から学校に行くまでに誰にも合わなかったが気にせず学校に向かう。
 そして学校に着き教室に向かう蒼星石・・・しかし、教室に入る前に異変に気づく・・・
 蒼星石の足音と寸分狂いなく一緒についてきてる謎の人物が2人・・・いや服装からして明らかにこの国の軍隊の者であるのは明白であった
蒼星石「あ・・・あのー・・・なんでここに居るのでしょうか?」
 恐る恐る聞く蒼星石、しかし軍人2人は無言のまま立ち尽くす・・・・・
 もう全てが異常であった、急な呼び出しに軍服の男2人・・・この場を支配するのは謎と言う名の恐怖であった・・・そんな時
ローゼン「皆さん来てくれたようですね、こんな遅い時間に申し訳ございません」
 この緊張をほぐすようにローゼンの放送が流れる、一瞬ホッとする蒼星石、そして他にも呼び出された人が居る事に気づく
ローゼン「では教室に入ってください」
 そんな放送を聞き男2人を気にしつつも教室に入る蒼星石・・・そしてそこで絶句する
 教室には机と椅子が無かった・・・代わりに中央に同僚ラプラスの首だけが置いてあった
蒼星石「・・・・・・うぅ・・・」
 変わり果てた同僚を直視した蒼星石は手を口にあてる・・・そして何か込み上げてくる物を必死に押さえ込む
 遠くでは悲鳴が聞こえた・・・恐らく他の場所でも同じような事が起きてるに違いない・・・
蒼星石「い・・・一体何が起きてるんだ!」
 敵意の混じる声で軍服の男に怒鳴る蒼星石・・・そして男が驚くべき言葉を発した
男1「AG法」
 そうAG法・・・教師なら誰でもわかる法案、そして悪魔のゲーム・・・
 そのゲームに参加させられたら決して逃げられない、そのゲームに参加してしまったら友を殺し生き延びるしか術がない。
 そして、そのゲームに反対をしたものは先ほど教室でみたばかりのラプラスのようになるのがこのゲームの常識であった
蒼星石「そ・・・そんな・・・な・・・なんで・・・ま・・・まさか」
 カタカタと震えながら必死に否定の言葉を上げる・・・
 しかしそんな蒼星石を全く気にしない様子で軍服の男はリュックを蒼星石に投げつけた・・・そして放送がそれを見ていたかのように流れる
ローゼン「もう皆には至急品は届いたかな?その中にはランダムで武器と水が入ってるよん♪」
 いつものローゼンのような声だが、その声には確かな恐怖と懺悔が混ざっていた・・・・
 あの校長が・・・どんなことがあっても決して生徒と教師を見捨てなかった校長が・・・あのローゼンが折れたのだ
 蒼星石は静かにもう逃げられないのだと悟った・・・


~次章/ゲーム開始~

 時刻は9:00になった・・・そう、つまりゲーム開始の時間である
ローゼン「では予定時刻になりました、皆さん頑張って殺しあってください♪ガチャッ」
 そして放送は切れる・・・・
 蒼星石はすぐさまリュックを奪い体育館の裏へ走り出した・・・数年前の約束が頭に浮かぶ・・・
蒼星石「もしも万が一AG法に触れたらどうしよう・・・」
翠星石「その時は二人で逃げ切ってやるですぅ」
蒼星石「あはは・・・君らしいや」
翠星石「からかうなですぅ!翠星石は本気ですぅ!もしもなったら体育館裏で会うのですぅ!」
蒼星石「大丈夫、僕は誰にも死んで貰いたくないから」
 あの頃はこんな事になるとは思ってもみなかった・・・しかし、確かに翠星石は体育館裏で会うと言ったのだけは覚えていた
 その記憶だけが今の蒼星石には頼りだった、彼女の親友であり頼れる友である翠星石と会う・・・それだけで今は満足だった・・・
 そして体育館裏に到着し・・・肩から血を流してる友を見ることになった・・・
蒼星石「翠星石!!!!!」
翠星石「!」
 一瞬の事で我を忘れ叫び駆け寄る蒼星石・・・
 その叫びに驚く翠星石だが声の主が蒼星石で安心し蒼星石にもたれかかる様に泣きつく翠星石
 しかし傷ついた翠星石を優しく抱きしめる蒼星石は複雑な顔をしていた
蒼星石「と・・・とにかく傷の手当てをしなきゃ」
 やっと思考が追いつき手当てを開始しようと声をかけた瞬間
 ドパパパパパパパパパパパパパ!!!!と遠くでマシンガンのような銃声が聞こえ、ハッと顔を上げる2人・・・
 銃声が聞こえたということは少なくとも1人はこのゲームに乗ってしまったのである
 顔を曇らせる蒼星石、それとは相対的に怒りの形相で教室の方を睨む翠星石
 そう平穏な時間はもう戻ってこないのだ・・・

 一方銃声の主水銀燈はアリス・ゲーム最大の敵となるであろう雪華綺晶と対峙していた
 二人の距離はおよそ15m・・・銃での撃ち合いが頃合の距離であろうかなかろうかの距離である
 しかしここは校舎、障害物と曲がり角の多さで相手に命中させるのは至難の業であろう
 無言で手にした銃、ベレッタM92Fを雪華綺晶に構え撃ち込む・・・
 弾倉に15発入る半自動拳銃で安定性のある拳銃である・・・
 だがそれに対する雪華綺晶の獲物はイングラムM10というサブマシンガンで装弾数30発、更に連射のスピードがかなり速い銃である
水銀燈「くぅ・・・」
 水銀燈は己の行動を悔やんだ・・・
 リュックを開けたとき入っていたのは拳銃で、これなら自分が勝ち残れると思ってしまったのが間違いであった
 すぐさま教室を出て遠くに見えた人影に向かって撃ち込んだのが最大の失敗だったのかもしれない・・・
 撃ち込んだ相手がマシンガンを持っていたのは予想外だがそれ以上に雪華綺晶であったのが最大の問題であった
 他の教師ならば拳銃でも殺れる自信は十二分にあった・・・しかし元軍人であり当校最強の雪華綺晶は今の水銀燈では手に負えない
 そんなことを考えてるとき雪華綺晶が逃げ込んだ曲がり角から黒い何かが飛んできた・・・それは手榴弾である、簡単に言うなら爆弾である
水銀燈「なっ!!!」
 水銀燈はすぐさま隣の教室に飛び込む、銃だけならまだしも爆弾まで持ってるとは・・・
 その1秒後の爆発音、一瞬判断が遅ければ間違いなく巻き込まれていたであろう
水銀燈「うぅ・・・・まだ終わったわけじゃない」
 誇りまみれになりながら呟く水銀燈・・・
 しかし”チャッ”と音が聞こえた・・・それは間違いなく銃を水銀燈の頭に押し付ける音であった
雪華綺晶「水銀燈・・・見損なったぞ」
 頬の一文字の傷から血が垂れているが気にする事もなく水銀燈を見つめる雪華綺晶、その目は憎しみや恨みではなく覚悟を決めた目であった
水銀燈「当然じゃなぁ~い・・・貴方わかってる?そうしないと生き残れないのよぉ?」
 精一杯の威勢を張る・・・しかし心のどこかでは諦めに似た気持ちに支配されていた
 水銀燈の言葉を聞き無言で手にしたリボルバー型の銃に力を込める雪華綺晶・・・しかしその時予期しない人物が
雛苺「け・・・喧嘩しちゃダメなのー!!!」
 隣のクラスで一人座り込んでいた雛苺である
雛苺「こ・・・こんなこと・・・絶対しちゃいけないのー!」
 涙ぐみながら必死に訴える雛苺・・・それに気を取られていた雪華綺晶は水銀燈の動きを見逃してしまった・・・
水銀燈「・・・・ほぉ~んと・・・おばかさぁ~ん」
 水銀燈は即座に自分のベレッタを雪華綺晶に向け撃ち込み教室から飛び出て行った
 一方の打ち込まれた雪華綺晶は腹部から赤い血を流しながら膝を着く・・・そんな雪華綺晶に駆け寄る雛苺・・・しかし
雛苺「本当に使えない子なのぉ~・・・」
 とボソリと呟き雪華綺晶の首にサバイバルナイフが突き刺さる・・・
 雪華綺晶の考えは真っ赤に染まる、あの雛苺が何故?どうして?そんな疑問ばかりが頭に浮かぶ
雛苺「怪我しなければ・・・私の武器として生かしてあげたのー・・・でも壊れたならいらないのー」
 目の前は真っ赤に染まり首を切られた為に脳に血が行き届かないで宙を見る目が喘ぐ・・・
 首の傷口からは心臓にいけなかった酸素が泡となって吹いている
 そんな雪華綺晶は口に広がる血の味が不味いなどと場違いな事を考えながら、残る薔薇水晶に対して”ごめん”と出ない声で謝り意識は闇に飲み込まれた
雛苺「やーっと、瞳孔も開ききったのー、これで雪華綺晶は脱落なのー♪」
 その一部始終を見ていた雛苺は愉快そうに叫び雪華綺晶の装備を剥ぎ取って教室を後にした・・・
 残されたのは雪華綺晶の死体とラプラスの手首だけだった


~3章/日本刀~

蒼星石「・・・鳴り止んだ・・・?」
 さっきから銃撃の音がひっきりなしに聞こえていたがそれが収まり安堵に包まれる2人、しかしその数秒後足音が聞こえる
 とっさに身を翻し足音のほうを見つめる蒼星石、そこに居たのは・・・・
水銀燈「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・」
 足から血を流し肩を押さえながら這う様に歩いてくる水銀燈だった
 その体はもはやボロボロというのが似合うほど傷ついており今にも手当ての為に飛び出したかった・・・
 が、水銀燈の右手には銃が握られており、もしも先ほどの銃撃戦が彼女が起こしたものなら逆に殺されかねない為一瞬躊躇したが
蒼星石「水銀燈!」
 思わず声をあげてしまう蒼星石
 その声に反応したように手にしたベレッタM92Fを構える水銀燈
翠星石「や・・・やめるですぅ!!!」
 そして翠星石が銃を構えた水銀燈に対して叫ぶ・・・が、それは無駄に終わる
 銃を構えた水銀燈は容赦なく蒼星石に向けて発砲したのだ
 その瞬間翠星石を引っ張って体育館裏の影に隠れる蒼星石・・・
蒼星石「水銀燈・・・・」
翠星石「や、やめるですぅ!おめぇは心底腐ってるですけど、根は良い奴だと信じてるですぅ!!」
 体育館裏で諦めに似た声で蒼星石が呟き、翠星石が必死の説得をする
水銀燈「も・・・もう戻れないのよぉ!」
 しかし、水銀燈は涙声でその説得を跳ね除けるかのように発砲する
水銀燈「私は雪華綺晶を襲ったわ!!えぇ!私から襲ったのよ!!!」
 もはや半狂乱で叫ぶ水銀燈・・・しかしその叫びは懺悔に近かった・・・
翠星石「判ったから静まれですぅ!まだやり直しは出来るですぅ!!!」
 そう言いなんとか説得しようとする翠星石であったがもはや状況は絶望的であった・・・その時
蒼星石「翠星石・・・そこで隠れていて・・・出てこないでね」
翠星石「な・・・何する気ですぅ!?」
 蒼星石は翠星石に一言いい、止めようとする翠星石を振り切って体育館の影から出てきた
 そして蒼星石の手にはリュックに入っていた日本刀があった
蒼星石「水銀燈・・・これが最終忠告だよ・・・今すぐ銃を捨てて欲しい・・・そうすれば手当てするからお願いだ」
 蒼星石は静かに・・・ただし相手にキッチリと聞こえる声で水銀燈に伝えた
水銀燈「・・・だ・・・だってぇ・・・もう・・わたしぃ・・・取り返しのつかない・・・・」
 その声に一歩後ろに下がって続けて言う水銀燈・・・その時
 ダン!ダン!ダン!と3発の銃声が水銀燈の背後・・・つまり校舎から聞こえ全弾水銀燈に命中する
水銀燈「・・う・・・うそぉ・・・」
 一瞬の後、崩れ落ちる水銀燈・・・
 それを目にした蒼星石は崩れ落ちた水銀燈の元に駆け寄り水銀燈を抱きかかえ体育館裏へ逃げ込む
 その間にも数発の凶弾が蒼星石と水銀燈を襲ったであろうが蒼星石は気にせず走り翠星石の元へ逃げ込む
水銀燈「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・ゴフッ・・・ハッ・・・・・」
 逃げ込んだ蒼星石と水銀燈・・・
 しかし水銀燈は口から血を流し体も痙攣しており素人からみても助かる状況ではなかった
翠星石「し・・・しっかりしやがれですぅ!胸にチョコボールみたいな穴が開いてるだけですぅ!こんなのなんでもないですぅ!!」
 水銀燈を見て泣きながら必死に声をかける翠星石
 そんな翠星石を見て蒼星石は暗い声で翠星石に言う
蒼星石「翠星石・・・・もう水銀燈は助からないよ・・・心臓を打ち抜かれてるんだ・・・どうしようもない・・・」
 その言葉を聞いた瞬間翠星石は立ち上がり蒼星石の胸倉を掴み怒鳴り叫んだ
翠星石「ふざけるんじゃねぇですぅ!まだ水銀燈は生きてるんですぅ!諦めるなですぅ!!!」
 目には涙を溜めながらも必死に叫ぶ翠星石・・・しかし蒼星石は顔を伏せたままだった
 この約15秒後、二人に見送られ水銀燈は息を引き取った・・・・
 その瞬間、蒼星石の目が紅蓮の輝きを放ち水銀燈を殺した者へ殺気を放った
 手には日本刀・・・骨光を持ち・・・・


~4章/引き裂かれた親友~

 静まり返る中庭・・・すぐ側の体育館の隅には翠星石と今しがた息を引き取った水銀燈、そして中庭の中央には・・・
蒼星石「・・・・やめてくれ、これ以上はやめてくれ!!!」
 咆哮を上げ怒りと殺気に見舞われながらも必死に自分を制御する蒼星石が居た
 しかし、その蒼星石の祈りとは裏腹に銃声が響く・・・・争いを止めようとする蒼星石に対して
 パンッ!パンッ!パンッ!・・・乾いた音が3発聞こえ・・・全弾叩き落された・・・
雛苺「・・・・え?」
 蒼星石の持つ日本刀”骨光”は刃物の中で上級格である日本刀の中の特別品である・・・
 軽く、硬く、どんな物でも斬る呪われた刀、その呪いは絶大な力を貸し与える代わりに持ち主を壊すという内容であるが咄嗟に骨光を取った蒼星石は知る由も無い
蒼星石「・・・・・・・」
 左目が赤く光る・・・闇に包まれた有栖学園・・・人影がやっと見えるか見えないかの光量でありながらその瞳は輝いていた
蒼星石「・・・・雛苺・・・覚悟は出来たかい?」
 小声で言う・・・しかしそれは雛苺にはっきりと聞こえた・・・・
雛苺「か・・・覚悟するのはそっちなのー!」
 聞こえるはずの無い声、交わるはずの無い視線・・・
 両者は暗闇の中の相手を見つめ開戦の時を待つ・・・
蒼星石「いくよ」
 そして一言、蒼星石の声が響き渡り蒼星石が校舎に向かい走り出す
 対して雛苺は雪華綺晶から奪った手榴弾のピンを抜きその場において階段へ走り出す
 それを見ていた蒼星石は雛苺を追うために一気に走り出し校舎に飛び込んだ瞬間・・・・ドドーン・・・という爆音と共に手榴弾が爆発する
雛苺「他愛無いのー!」
 階段の影から見ていた雛苺は勝利を確信し声をあげる・・・が
蒼星石「僕はここだよ・・・雛苺」
 いつの間に移動したのか・・・蒼星石は2Fと1Fの中間、つまり階段の真ん中に雛苺を見下す形で立っていた
 暗黒に包まれた有栖学園で赤い瞳を輝かせながら・・・骨光を手に持ちながら
雛苺「な・・・!!!」
 科学的に証明できない高速移動を成し遂げ銃弾をはじき落とした元同僚が怒りを込めて見下している・・・
 それは雛苺の知ってる蒼星石ではなく悪魔とも悪鬼とも言える闇の化身であった
雛苺(・・・こ・・・こんな化け物・・・勝てるわけがないのー)
 蒼星石の紅蓮の瞳に睨まれ後ずさりする雛苺・・・しかし、雛苺は起死回生の策を思いつく
雛苺(そ・・そういえばさっきもう一人体育館裏にいたの!そいつを人質にすれば!!)
 思いついたら即行動、蒼星石に雪華綺晶から奪ったイングラムM10を撃ちながら自分は体育館裏へ足を進める
 イングラムM10の反動なのか体育館裏へ移動する速度は決して速くないがマシンガンを打たれながらでは流石に骨光を持った蒼星石も迂闊に近づけない為二人の距離は徐々に開く
 蒼星石は焦った、雛苺は自分から狙いを蒼星石に変えたのは明白であった為今すぐにでも雛苺の首を切り落とそうとしてたがマシンガンに阻まれる・・・ 
 カチッ!!!そして30発を撃ちつくし中庭には雛苺、校舎には蒼星石という先ほどとは逆の位置で戦闘が続行される
 イングラムM10を投げ捨て拳銃を出しながら体育館裏へダッシュする雛苺・・・しかし体育館裏まで2mというところで
蒼星石「惜しかったね・・・雛苺」
 蒼星石に追いつかれ雛苺の左腕が宙を舞う・・・
雛苺「ひぎゃあああああああああああ!!!!」
 突然の事に膝をつき、悲鳴をあげる雛苺・・・そして帰り血を浴びながらも紅蓮の瞳を輝かせる蒼星石・・・
蒼星石「・・・僕だけならまだしも・・・翠星石を狙ったのは許せない・・・」
 片腕を失い、地面を這う雛苺に冷酷に告げる蒼星石・・・そして手にした凶器が雛苺の首に埋まり・・・・
雛苺「がっ・・・・っは・・・・」
 見近い断末魔の後その首を跳ねた・・・
 だが、それは行ってはならない事だった・・・蒼星石の大事な親友の目の前では・・・決して・・・
翠星石「・・・・・そ・・・そぅせぃ・・・い・・せき」
 近くで悲鳴が聞こえたので体育館裏から出てきた翠星石に飛び込んできたのは片腕を失いもがき続ける雛苺と・・・
 その雛苺を紅蓮の瞳で見つめ、首を跳ねる蒼星石の姿であった・・・・
翠星石「・・・・う・・・うそです・・・うそです!うそです!!!うそです!!!!!!」
 次の瞬間翠星石は顔面蒼白になり泣き喚き必死に親友が起こした事を否定した・・・
 しかし、目を瞑っても蘇るのは片腕を失いもがく雛苺に最後を与えた親友の姿・・・
蒼星石「す・・・翠星石・・・」
 我に返る蒼星石・・・しかし全ては終わっていた。
 蒼星石は翠星石を戦いから遠ざける為に雛苺を・・・・そして足元に転がる無惨な姿の雛苺を直視し強烈な吐き気に見舞われる
蒼星石(・・・・僕が?・・・僕がこれを?・・・雛苺を殺した?・・・殺した?・・・殺し・・・殺・・・殺)
 自問自答を繰り返す・・・しかしこれは紛れも無く自分が引き起こした一つの末路であったがそれを否定したかった
 だが、我に返ると言っても骨光を手にしてた時の自分の行動は鮮明に思い出せる・・・間違いなく自分がやったことなのだ、と
蒼星石「す・・・翠星石」
 蒼星石は何かを求めるように翠星石に手を伸ばす・・・未だに雛苺の返り血で真っ赤なその手で・・・だが
翠星石「・・・・・・・・ひっ・・・・」
 その手の先にはいつものように暖かく自分を迎え入れてくれる親友の姿は無く、自分を見つめ怯える翠星石の姿があった・・・
 その瞬間蒼星石の中では何かが音を立てて崩れていく気がした・・・
翠星石「お・・・おめぇなんて・・・ひっく・・・そ・・蒼星・・・石・・じゃねぇ・・・ですぅ・・ひっく・・・とっとと消えやがれですぅ・・・」
 その蒼星石に追い討ちをかけるように翠星石の嗚咽混じりの言葉が降り注ぐ
 この言葉は今の蒼星石には何よりも残酷で、何よりも聞きたくなかった言葉であった・・・
蒼星石「・・・・・・・うぅ・・・・うぁぁあぁあぁああぁあぁぁぁああぁああああ」
 数秒の後、その場から逃げるようにして立ち去る蒼星石の姿があった・・・・
 日本刀”骨光”・・・その刀は呪われている・・・持ち主に絶大な力を与える代わりに持ち主を壊す・・・まるで自分の使い手をあざ笑うかのように


~5章/もう一人の紅蓮の化身~

 雛苺と蒼星石の戦闘から5分が経った
金糸雀「も・・・もう出ても平気かしら~・・・・」
 とある教室の教卓に隠れていた金糸雀はひょこっと顔を出す・・・
 そこから見えるのは廃墟と化した教室にボロボロの廊下・・・そして遠くにはうっすらと人が倒れてるシルエットが映し出されている・・・
金糸雀「か・・・隠れてるだけじゃ・・・ダメなのかしらー・・・」
 そういうと凹んで見るからに狭そうな教卓からはいずり出てきた
 辺りは手榴弾の爆発により窓ガラスは割れ、凶弾の後がそこらじゅうにあり、よく見れば血痕も発見できたであろう・・・
金糸雀「と・・・とりあえず、倒れてる人を確認するのが先かしらー・・・」
 そう言って、こそこそと出てきた金糸雀は注意深く中庭に倒れてる人物を見ようとしたが誰だかわからない・・・
 しかし、倒れてる人物とは別にもう一人の人物を確認できた・・・それは翠星石なのだが金糸雀は知る由もない
 その人物は体育館裏に居た為校舎からはほとんど確認できなかったがよく見れば倒れてる人物を介護してるようにも見える
金糸雀「あれは・・・誰なのかしら・・・・」
 そう呟いた瞬間・・・・
真紅「貴方が知る必要はないのだわ」
 と、真紅の一声がかかりその場を飛び退く金糸雀・・・この行動が無ければ彼女も倒れてる人物と同じ末路を辿ったであろう
 そして飛び退くと同時に自分の居た場所・・・それも首の辺りにギラギラと輝く刃渡り40cm前後の刃物が横一文字の線をひいた
金糸雀「あ・・・・わわわわわわわわ」
 背後の薄っすらとした光に現れたのは蒼星石とはまた違う紅蓮を帯びながら金に輝く髪の毛をなびかせた一人の女性・・・
 これが手に持つ獲物とAG法等という馬鹿げた法案が無ければ見とれてしまったであろう
金糸雀「な・・・なにするのかしらー!」
 思わず尻餅をつく金糸雀に対し赤き紅蓮の女性は冷酷に告げる
真紅「貴方を殺し・・・アリス・ゲームに勝つのよ・・・」
 そして手に持つ獲物・・・”ククリナイフ”を金糸雀に向け歩を進める
 このククリナイフはグルガ兵等が使用していた軍用ナイフであり、人を絶命させるなど容易い破壊力を持つ凶器であった
金糸雀「・・・じょ・・・冗談じゃないのかしらー!」
 そして金糸雀が得た獲物、鋼鉄製の三節棍を取り出す
 三節棍という武器は間合いの遠近に対する対応が優れ攻防のバランスも良い武器なのだが初心者には到底扱える品物では無い武器としても名高い
真紅「あら・・・私と勝負する気なの?金糸雀」
 真紅を睨み構える金糸雀を目を細めて威嚇するもう一人の紅蓮化身
 それを無言で睨み返す金糸雀、しかしその目は今にも泣きそうで頼りないものであった
 数秒の時が流れ両者動かずの均衡が保たれていたが・・・・
真紅「はっ!」
 真紅の一声によりその均衡が破られ真紅の獲物”ククリナイフ”が金糸雀の懐へ潜り込む・・・しかし
金糸雀「ぅぁっ!」
 それを泣き声のまま三節棍で流し受ける金糸雀、その動きはとても素人とは思えない動きであった
 だがナイフだけが真紅の武器ではない
真紅「やぁっ!」
 次声が上がり真紅の右足が金糸雀の腹部を捉える
 次の瞬間金糸雀の腹部に重い物が圧し掛かる衝撃が加わりそのまま校舎内から中庭に飛ばされる
金糸雀「きゃ!!」
 珍しく金糸雀から女性のような声が上がるがそんなこと気にしてる状況ではない
金糸雀「うぅ・・・痛いのかしらー・・・・」
 と、悪態をつきながら立ち上がり金糸雀が最初に目にしたものは・・・・
 首を?がれ絶命してる雛苺の変わり果てた姿であった
金糸雀「・・・・ひっ!」
 短い悲鳴を上げる・・・
 雛苺は刃物で引き裂かれており、よくみれば左腕も失っている
 その姿はまるで首を捜し求め呻く胴体のような格好であった
翠星石「・・・・か・・・かなり・・・あ?」
 そして先ほど視認した介護してると思われた人物から声がかかる
 しかし、金糸雀は雛苺を惨殺したのは翠星石と誤認した為に急いで翠星石から離れる
翠星石「ま・・・待ちやがれですぅ!」
 それを止めようと声を上げる翠星石
金糸雀「こ・・・こないでぇ!」
 しかし金糸雀はあらん限りの声でそれを拒絶した
 もしこのまま翠星石と話せば自分も雛苺のようになるに違いないと恐怖が体を占める・・・しかしその恐怖も束の間
真紅「死ぬ準備はいい?」
 背後から赤き化身の声が金糸雀にかかる
金糸雀「あ・・・・あ・・・・」
 挟まれる金糸雀、後ろには真紅、前には翠星石この状況から逃れる手立ては無いのかと必死に考えようとした瞬間
真紅「とりあえず、壊れなさい・・・・金糸雀!!!」
 後ろの真紅が叫び、目にも留まらぬ速さで右手に持つククリナイフが金糸雀の顔面に迫り
翠星石「よけやがれですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
 翠星石に蹴り飛ばされた・・・・
 ポカンと口を開ける金糸雀、凄い形相で翠星石を睨む真紅、その真紅を真っ向から見据える翠星石
金糸雀「な・・・な・・んで」
 なんで自分を助けたんだろう?と疑問に思う金糸雀だったがその問いに答える事無く翠星石は叫ぶ
翠星石「蒼星石を呼んできなさい!!!!!」
 いつもの”です”口調ではなく額に汗を流しながら自分を鼓舞するような形で叫ぶ翠星石
 その叫びを聞き、反論する訳でも無く体を起こし走り出す金糸雀・・・
真紅「もういいかしら?」
 そして一部始終を何をする訳でもなく眺めていた真紅
翠星石「余裕じゃないですか・・・真紅」
 真紅に対して精一杯の虚勢を張る翠星石・・・
 その手にはいつの間にかサバイバルナイフが2本・・・両手に握られていた
翠星石「こんなゲーム参加する気はないですぅ・・・」
 呟く翠星石・・・それをただ見つめながら聞く真紅
翠星石「でも・・・・でも!・・・私は蒼星石に謝らないと死んでも死にきれないですぅ!!!」
 そして言い終わると同時に翠星石が真紅との距離を一気に詰める
 翠星石の左手のナイフが真紅に襲い掛かるがこれを体をずらすだけで避ける赤き化身
真紅「・・・無様ね」
 そして重心がずれた状態でありながら右手に持つククリナイフを翠星石に入れようとしたがそれを翠星石は右手に持つサバイバルナイフで受け止める
 ガキィ!!!という鉄と鉄が擦れる音がしてすぐに両者距離を取り直す
真紅「・・・どこでそんな短剣術覚えたの?」
 一拍置いてから真紅が翠星石に喋りかける
翠星石「料理をしてれば自然と覚えるのですぅ」
 それを律儀に返す翠星石・・・額には汗を流し軽く肩で息をしていた
 この二人の争いに逃げるという選択肢はない、そんな選択肢なんて最初から存在しないのだ・・・
 どちらかの死を持ってのみ終わらせられる死闘、そんなもの縁が無いと思っていた二人だが今こうして刃を向け合う形になっている


~6章/誓い叶わず~

金糸雀「はっ・・・・はっ・・・・はっ・・・・はっ・・・・はっ・・・・」
 金糸雀は中庭から校庭に向かって走り続けていた
 目的はただ一つ蒼星石を見つけ翠星石のところへ行かせる為だ
 だが目的の人間とは別の人間を捜し当ててしまう・・・
金糸雀「ば・・・ばらしー?」
 校庭についた金糸雀だったがそこに居たのは雪華綺晶の妹薔薇水晶であった
薔薇水晶「・・・・」
 薔薇水晶は答えない・・・
 闇に包まれた校庭、まるで自分なんて存在しないような儚さで校庭の中心に後姿で立ちつくす薔薇水晶
金糸雀「ば・・・薔薇水晶先生!聞こえてたら返事お願いしたいのかしら!」
 目を離せば本当に消えてしまいそうな薔薇水晶に大声で話しかける金糸雀・・・すると
薔薇水晶「・・・・・来た」
 本当に小さな声で・・・聞こえるかどうかの声で”来た”と呟いた瞬間辺りの空気が変わる
 生きる者は死して動くアンリミデットへ、死する者はその力を得て動く悪鬼喜ぶその空気
 忌まわしき呪いの祝福を受けた日本刀”骨光”を携えて金糸雀の後ろから紅蓮の瞳を輝かせ蒼星石が姿を現した
蒼星石「・・・・僕の骨光を呼んだのは君かい?薔薇水晶」
 その声を聴いた瞬間蒼星石と判った金糸雀は声を上げようと蒼星石の方を向き・・・・
金糸雀「そうせ・・・・・・・・・・・・・・・」
 声が出ない、息が詰まる、目を合わせられない・・・
 もう金糸雀の知ってる温厚な蒼星石の姿はそこには無く・・・自身を壊し、生きる殺戮者に堕ちた蒼星石の姿がそこにはあった
 時刻は9:30・・・時折突風の吹く校庭で紅蓮の化身と儚い女性と自分が残された空間が出来た
蒼星石「用事が無いなら斬って戻らせてもらうよ」
 まるでここの全てを支配してるような威圧感を出し蒼星石は薔薇水晶に喋る
薔薇水晶「お姉ちゃんの仇・・・その仇を貴方に取られたから、貴方を仇の代わりにする・・・・」
 そう言い蒼星石の方に顔を向ける・・・
 まるで蒼星石の殺気なんて気にも留めないように
 その言葉を聞き蒼星石は薔薇水晶に向けて構えを取る
蒼星石「・・・・・やれるものなら」
 腰を低くし、刃を相手に向ける、体がギギギと音を立てるかの如く低くなった姿勢から・・・・
蒼星石「やってみろ!!!!!!!」
 相手に刃を向け突進する蒼星石、その姿は相手を殺すためのみに発射された弾丸のようだった
 この攻撃に対し薔薇水晶は懐から雪華綺晶の遺品と思われるチタン合金で出来た拳銃を出し日本刀”骨光”の刃先を拳銃にぶつけ蒼星石の突撃を受け流す
 しかしこの程度で蒼星石の猛攻がとまるはず無く刀を止められたと同時に膝蹴りが飛んでくるもこれを左手で抑え自ら後ろに飛び退きその威力を殺す
蒼星石「・・・・・・」
薔薇水晶「・・・・・・」
 瞬く間の攻防が終わり両者共に相手を凝視する
 この攻防を一人見ていた金糸雀は凍り付いていた・・・
 頭の中ではここに居ては死ぬと警報をガンガン鳴らしてるのに体が動かない、いや動けない
 そして翠星石に頼まれた事すら出来ずに終わってしまうのかとぼんやり考え・・・・ハッと自分が何をしに来たのか思い出す
金糸雀「そ・・・蒼星石!!翠星石がピンチなのかしらー!助けて欲しいのかしらー!!!」
 蒼星石に呼びかける金糸雀、しかしその声は今の蒼星石には届かない
蒼星石「・・・・・・・」
 金糸雀の叫び声を無視し再び骨光を構えなおす蒼星石
 その刃の先は薔薇水晶を捕らえていた
 対する薔薇水晶の拳銃コルトガバメントも蒼星石に向けて今か今かと主から引き金を絞られるのを待っていた
 時が止まる・・・二人の殺気は全てを殺さんと獲物を睨み合う・・・
 雌雄を決するのは一瞬、薔薇水晶のコルトガバメントが蒼星石を撃ち抜くか、蒼星石の骨光が薔薇水晶の命を両断するか・・・
蒼星石「・・・・はっ!!!」
 そして蒼星石の掛け声と共に時は動き出す
 距離にして15m前後、刀では届くはずもない距離にして銃ならばその距離は0に縮まる距離
 つまり、銃にとって最高の距離と言える間合いで蒼星石は戦いを挑んだ事になる
薔薇水晶「・・・・・」
 蒼星石の突進に対して無言で銃を構える薔薇水晶、その銃の先には蒼星石が刀を構え突進してきているのが見える
 そして距離が10mを切った時…ドゥン!ドゥン!…2発の銃声が聞こえ凶弾が蒼星石に向け放たれた・・・
 しかし蒼星石の骨光は先の雛苺との戦闘にてサブマシンガンの攻撃すら回避した呪われた刀である、その刀に2発の凶弾では余りに無力であった・・・
 目の前で弾丸を弾かれ更に突進をする蒼星石に対してあくまで無言で銃を構え続ける薔薇水晶、その手に持った銃は寸分たがわず蒼星石を狙い続けていた
 距離にして5m・・・銃ではかなり近い距離、刀ではまだ届かない距離・・・次の凶弾が放たれる
 ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!・・・連射に近い発砲、時間にして0.3秒かからず3発を撃ち込む、しかもこの近距離・・・外れるはずが無い
 だがこの攻撃に対し蒼星石は顔を地面すれすれまで低くし、突進してきた時の約半分の背丈にして回避した上に骨光を薔薇水晶に向け放った
 しかしこの姿勢は些か無理をしすぎた・・・蒼星石の筋肉はその動きに追いつかず悲鳴を上げ、一部では内出血すら起きていた
 だが呪われてる刀の力か、蒼星石に痛みは伝わらずその赤い紅蓮の瞳だけが薔薇水晶を見つめていた
蒼星石「もらった!」
 勝敗はついたと思われた・・・しかし・・・
薔薇水晶「・・・・動き・・・遅くなったよ」
 蒼星石の体は酸素を欲し動く事を強制的に弱めるよう蒼星石の意思に反して動いていたのだ
 この小さな小さな差が勝敗を大きく変えた
 寸でのところで蒼星石の骨光を回避した薔薇水晶・・・その銀色の髪の毛が3本余り切れて校庭に落ちた
 そして回避したと同時にカウンターに入った薔薇水晶は蒼星石の胴に銃口をつけ・・・発砲した。詰まるところ、ゼロ距離射撃である
 ・・・・・・・ドゥン!!
蒼星石「グゥ・・・・」
 流石に呪われた刀でも、鬼神の如き動きをする蒼星石でも零距離で発砲された凶弾を避ける術は無く薔薇水晶にもたれ掛るように倒れる
 その倒れてきた蒼星石を邪魔だと言わんばかりに払いのけ距離を再びとる薔薇水晶
薔薇水晶「まだ・・・生きてる・・・刀の間合いに居る必要・・・無い」
 そう言い相手が生きてるなら容赦なく攻め立てようとする薔薇水晶
蒼星石「・・・・・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ」
 それに対し払いのけられた蒼星石は腹部から血を流し倒れたまま骨光を強く握り締めていた

 一方の翠星石の方は未だに真紅と対峙していた
 しかしその状態は決して良いとは言えず、所々切り傷を作っており既に戦闘続行は厳しいものと思われていた
翠星石「く・・・くやしいですぅ・・・」
 そう言う翠星石・・・そう、彼女は真紅と戦う前、蒼星石にも会う前に偶然に居合わせた薔薇水晶の凶弾を肩に受けていたのだ
真紅「ほんと・・・まだ生きてるのが信じがたいのだわ」
 それに対し多少のかすり傷はおってるかもしれないもののほとんど無傷の真紅が告げる
 この2人の距離は5m強と言ったところだろうか・・・
翠星石「まだ・・・・蒼星石が来るまで倒れられないですぅ!!!」
 と翠星石が吼えたその時、遠くから微かに銃声が聞こえた・・・
 その銃声に”はっ”と顔を上げる翠星石
真紅「戦いの最中余所見とは余裕ね・・・翠星石」
 その翠星石を睨む真紅、だがその声は翠星石には届いておらず
翠星石「・・・・」
 無言で真紅に背中を見せて距離をとりその銃声の方へ走り出す翠星石・・・
真紅「な・・・今更怖気づいたの!?」
 それを逃げたと取った真紅は怒りの形相で翠星石を追う
 しかし、翠星石の足は速く真紅では追いつかない・・・・
真紅「あの傷だらけで良く走るのだわ・・・」
 悪態をつくかのように言う真紅・・・
 そして数十秒走ったと思われるところで急に翠星石の足が止まる
 どこかと思って見てみれば・・・校庭であった
 校庭の中央には2人、薄暗く誰かは判断できないが一人は倒れている。その横にはもう一人立っている
翠星石「・・・・・蒼星石」
 しかし翠星石は一言呟くと倒れている人物の元へ駆け寄った・・・
 視力に自信のある真紅は驚いた・・・何故この闇の中相手の人物が誰だか判るのか?と

 そして舞台は蒼星石に戻り・・・蒼星石と薔薇水晶の戦闘は終結を迎えようとしていた
 一対一ではどうあがいても薔薇水晶の勝利は変わらない・・・そう、一対一ならば・・・
薔薇水晶「・・・さよなら」
 そう言い引き金を絞ろうとする薔薇水晶に対し倒れながらギリッっと奥歯を噛み締める蒼星石・・・しかし
翠星石「離れやがれですぅ!!!!」
 と叫びながら翠星石の飛び蹴りが薔薇水晶の顔面をもろに捕え細身の薔薇水晶はそのまま吹っ飛んでいく
蒼星石「す・・・いせい・・・せき・・・なぜ」
 腹部を撃たれてる為声が余り出ない蒼星石、しかしそんなことよりも何故翠星石がここにいるのかという疑問のほうが大きかった
 蒼星石は翠星石とは決別したと思い全てを雛苺を殺したときに捨てて来たつもりだったのに・・・その心が揺らいだ
 自分のピンチには翠星石が隣に、翠星石のピンチには隣に自分が・・・それは決して決別できるものではなかった
翠星石「このぉ!ヘッポコポコのすけ!とっととこんな傷直して起きやがれですぅ!!!」
 そして自分が倒れているのを必死に否定するように叫ぶ翠星石
蒼星石「も・・・う・・・大丈・・・夫」
 その翠星石を見て痩せ我慢をする蒼星石・・・その蒼星石の目は骨光を手にしたときのような紅蓮の色ではなかった
翠星石「・・・さっきは・・・・」
 そして目に涙を溜め飛びっきりの笑顔を見せた翠星石はさっきの侘びをする為に喋りかけ
 ドゥン!!・・・と銃声が一発聞こえ・・・・永遠に言えなくなった


~7章/代償はその人生~

 銃声の直後翠星石の体は蒼星石に被さるように倒れ込む
蒼星石「翠星石!!!」
 その翠星石に声を上げる蒼星石
翠星石「・・・・・・・・・・・・・」
 しかし翠星石の返事は無い・・・そう、即死である
 近くではコルトガバメントを蒼星石に向ける薔薇水晶の姿があり、手に持つコルトガバメントからは白煙が昇っている
蒼星石「・・・・すいせい・・・せき?」
 しかし薔薇水晶のことなど気に止める素振りすらせずに自分に倒れ掛かる親友を抱きしめる
 その親友のこめかみには真新しい親指程度の黒い穴が開いていた
薔薇水晶「・・・・・・次は貴方」
 そして次の獲物を仕留める為に蒼星石に近寄る薔薇水晶・・・
 起き上がる力も無い蒼星石にはただその動きを見ることしか出来なかった
薔薇水晶「これは・・・邪魔」
 近寄った薔薇水晶は蒼星石の手に持つ日本刀を蹴り飛ばし銃口を蒼星石に向ける
金糸雀「す・・・・すいせいせき!?」
 そして今までただ傍観していた金糸雀も声をあげたが既に遅し、彼女の立ち入る隙等無いように殺気が充満する
 だが、この時金糸雀に声をかける人物が1人・・・
蒼星石「金糸雀・・・・僕の日本刀・・・取って」
 震えた声で小さく金糸雀を呼ぶ蒼星石、その声はどこか寂しげで儚かった
 その声を聞いた金糸雀は一瞬の躊躇の後日本刀を取り蒼星石の元へ走る
 しかしその動きを黙っておくはずもなく薔薇水晶のコルトガバメントが走ってくる金糸雀へ向けられる・・・が
蒼星石「させるかっ!」
 倒れていたはずの蒼星石の拳が薔薇水晶の右腕に直撃し、その反動と同時に銃声が一つ上がりながら金糸雀のすぐ横を銃弾がかすめる
薔薇水晶「・・・・なっ!?」
 その光景に驚く薔薇水晶・・・無理も無い瀕死で立つ力すら残ってない人間がどうして立てるのか?
 更に刀も何も無い状況で神秘的な力も何もない状況で何故起き上がれるのか薔薇水晶には理解できなかった
 その間に金糸雀は蒼星石の元に行き日本刀・・・骨光を渡す・・・その金糸雀は既に泣いており顔はくしゃくしゃになっていた
金糸雀「な・・・なんで・・・こんなことになったのかしら・・・・」
 いつもの元気は無く嗚咽混じりの声で教師の一人金糸雀は呟く・・・
蒼星石「校長が・・・校長がゲームを開始したから・・・だよ・・・」
 その横で冷静に、しかしいつもの凛とした声は無く答える蒼星石
蒼星石「そして・・・ゲームに僕らも乗ったから・・・だよ」
 そして懺悔をするように一言付け足す・・・
薔薇水晶「・・・・・」
 そのやり取りを睨みながら見つめる薔薇水晶・・・だが手に持つコルトガバメントは一時も離れず蒼星石を睨む・・・
 逆に刀を手にした蒼星石は倒れている親友に一言・・・側に居る金糸雀にすら聞こえない声で”ごめん”と呟いた後刃先を薔薇水晶に再び向ける
 一時の静けさの後また殺気の渦巻く極悪の空間になる校庭・・・
蒼星石「はっ!!!」
 その殺気を蹴散らすように飛び出した蒼星石・・・
 本来は痛みで動かないはずなのだが何故かその痛みは無かった・・・
 ただ・・・あるとすれば蒼星石は悔やんでいた、自分を助けるために散った友に対して自分の無力さに
薔薇水晶「くっ・・・!?」
 その蒼星石の突進を手に持つ銃で応戦しようとする薔薇水晶
 しかし相手との間合いは超近距離・・・・つまり銃を打ち込むよりも先に刃物が相手の体を裂くという距離である
 だがその距離ですら薔薇水晶は意に期さないように凶弾を蒼星石に放つ・・・
 しかしその凶弾は誰にも命中する事はなく・・・目の前の獲物も消え・・・なぜか世界が回りだし・・・近くで自分の体が倒れるのが見えた
 次の瞬間、薔薇水晶の意識は途絶え首と胴体が別々になった彼女は息を引き取った・・・
 その一部始終をずっと見ていた金糸雀は真っ青になりつつも蒼星石を瞬きせずに見つめていた・・・
 残ったのは血に染まった蒼星石と日本刀・・・そして首を跳ねられた薔薇水晶に何も出来ずに棒立ちになっていた金糸雀だけであった・・・
蒼星石「・・・・・・また・・・守れなかった」
 しかし蒼星石は一人勝利の美酒に酔うこともせず、骨光の誘惑すら押し退け虚無の空間を見つめるだけであった・・・
金糸雀「・・・・・そ・・・そうせいせ・・き?」
 その蒼星石を不思議と言わんばかりに声をかけようとする金糸雀であったがその声はどこか震えている・・・
 だがこの虚無もすぐに終わりを告げた・・・・
真紅「そこまでだわ!」
 と、いきなり声をあげ登場した真紅・・・その手に持つククリナイフを金糸雀の首に突きつけて蒼星石を睨む
 その動きを何もする訳でもなく見つめている蒼星石・・・まるで何が起きても平気だ、と言わんばかりで
 そしてその蒼星石には生きた人間の覇気が既に無かった・・・
 だが、その蒼星石を見ても決して警戒を解くことなく真紅は蒼星石に喋りかける
真紅「蒼星石、薔薇水晶を打ち破った事おめでとうだわ、けど貴方はここで終わり・・・こいつの命が大事ならその刀捨てなさい!」
 と言って金糸雀をぐいっと前に出す、その首元にはククリナイフを突きつけた状態で・・・
 そして脅迫材料になっている金糸雀は自分はもう助からないと確信し恐怖で声が出ずに居た・・・が
蒼星石「・・・・判った」
 と蒼星石が刀を手放した事で自然と声が出てきた・・・
金糸雀「な・・・なにやってるのかしら!?早く刀を拾うのかしら!!!」
 本当に蒼星石の行動には理解できなかった金糸雀だったがどうしても蒼星石にはここで死んで貰いたくなかった・・・
金糸雀「そんなんじゃ貴方を守った翠星石や薔薇水晶に言い訳できないのかしら!!?」
 そこまで言って金糸雀の腹部に強烈な痛みが走る・・・
真紅「馬鹿は黙ってるといいのだわ」
 そしてククリナイフを持つ右手はそのままの状態で左手のフックを金糸雀に叩きつける・・・
金糸雀「・・・ぅぅ・・・・・」
 叩きつけられた金糸雀は小さな呻き声を上げる
真紅「蒼星石、貴方は後ろに下がるのだわ!刀から離れないとダメなのだわ!」
 そして金糸雀等気にも留めずに真紅は叫び、その要請どおりに刀から離れる蒼星石
 その瞬間勝利を確信し気を緩めた真紅だった・・・それが命取りになるとも知らずに・・・
金糸雀「もう許さないのかしらー!!!」
 そう、人質として取っていたはずの金糸雀が突如真紅から離れ刀へ走り出した
真紅「!?」
 その瞬間手に持つククリナイフを金糸雀へ向けたが既に遅く、金糸雀へは首に一筋の赤い線をつけるだけであった・・・・
 真紅の攻撃を避けきり刀を手にした金糸雀はそのまま真紅と対峙した・・・・


~最終章/結末~

 既に雪華綺晶・薔薇水晶・翠星石・水銀燈・雛苺の死亡が確認されており、残りは瀕死の蒼星石・金糸雀・真紅のみであった
真紅「・・・貴方では私には勝てないのだわ、大人しくしなさい」
 二度目の対峙、違う点があるとすれば金糸雀の獲物が刀になって真紅が多少の傷を負ってるという点だけであった
 端から見れば先ほどの戦闘の通りならば金糸雀に勝ち目はほとんど無く真紅の圧倒的有利という展開である
 しかし金糸雀が手に持っているのは温厚な蒼星石を変貌させた呪いの刀・・・その刀を持ち金糸雀は叫ぶ
金糸雀「もう、蒼星石は十分にやったのかしらー!これ以上はやらせないのかしら!」
 そこまで言うと先ほど中庭で対峙したときとは打って変わり刀身を真紅に向ける金糸雀、その構えは素人のものではなく隙が無かった・・・
蒼星石「・・・・なっ!?」
 そのやり取りを刀を手放した蒼星石は両者に挟まれるように聞いていた
 体はボロボロで腹部に凶弾を受け何度かの戦闘で体も限界に達していた蒼星石に呪いの加護も無く二人を止める術は残されていない・・・
金糸雀「蒼星石、伏せて!」
 その言葉を始まりの合図にして金糸雀と真紅の戦闘が始まった・・・
 先に手を出したのは驚く事に金糸雀であった
 初撃は突き、もっとも最短距離で相手を捕えもっとも殺傷能力の高い攻撃方法である
真紅「・・・・甘いのだわ」
 それを体をずらし避けカウンターに入った真紅は日本刀とすれ違いに右手に持つククリナイフの刃先を金糸雀に向けた・・・・が
 ボキィ・・・という鈍い音と共に自分の体が思いっきり後ろに吹っ飛んでいくのを感じた・・・
金糸雀「まだ終わりじゃないのかしらー?」
 左手で拳を作り吹っ飛んだ真紅を見下す金糸雀・・・そう、刀の突きと同時に左手で殴りかかりカウンター体制にはいった真紅は直撃してしまったのだ・・・
真紅「ケホッ・・・ケホッ・・・」
 見下された真紅は怒りに支配されかけるも腹部に命中した拳の痛みに咽返り反論が出来なかった
 しかし真紅の中で一つ確信できる事があった・・・
 それは金糸雀では刀の力を100%出せていないということだ、いや蒼星石でも100%は出せていないのではないだろうか?
 仮に蒼星石の刀での攻撃の場合今ので自分は気づくことなく絶命していただろう・・・しかし、いまこうして生きている・・・
 つまり、蒼星石が相手でなければ十分勝機はあるということだ
真紅「ふぅ・・・所詮は子供だましだわ、貴方じゃその刀は宝の持ち腐れよ」
 一息ついて呼吸も整い金糸雀を挑発する真紅
金糸雀「・・・・・・」
 それを無言で返し”チャ”っという音共に再び刀を構える金糸雀
 金糸雀にとって使い慣れない刀は体にかなり負担をかけるがこの際そのような事は言ってられない・・・
 二度目の突撃、刀身は未だに真紅を狙い続けたまま距離を詰める・・・いや詰めさせる
真紅「遅い・・・」
 しかし、二度目は足の軸をずらしただけで避けられた
 だが、金糸雀は初撃同様、刀での攻撃は囮で本命の回し蹴りが真紅に決まるはず・・・だった
金糸雀「きゃっ!」
 短い悲鳴と共に真紅の顔面に叩き込まれるはずの蹴りが宙を描き、何も無い空間を裂く
 それと同時に金糸雀の左目が最後に捕えたものは自分に向かってくる白銀のククリナイフであった
 一拍の後、左目を失いうずくまる金糸雀とククリナイフを金糸雀に向け月光の光を浴び立つ真紅の姿があった
金糸雀「うぅ・・・ぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
 そして左目から鮮血を流しながら倒れる金糸雀・・・・もう戦える状況ではない
蒼星石「・・・・っ!」
 その姿を見た瞬間少し離れたところから蒼星石は何かを叫ぼうとしたが声にならなかった
真紅「無様ね・・・」
 そして真紅の一言と共にナイフが振り下ろされ・・・金糸雀の手に持つ狂喜に阻まれた
真紅「なっ!?」
 驚き、金糸雀から離れる真紅、未だに倒れたまま左手で傷を庇う金糸雀、目は開けていない・・・
 けれど右手に持つ刀だけが動いていた、その姿はまるで刀に操られる人形のように
 その光景を見ていた真紅・・・しかし直ぐに気を戻し眼前の”敵”を凝視する
 見れる範囲重傷、片目を失い足もしっかり踏めていない、要するに真紅ならば負けることは無い
 一方の蒼星石は立っているものの戦闘続行は不可能と思えるほど衰弱していて腹部からは未だに出血が続いている
 もう一度見渡し、一言呟く真紅・・・
真紅「勝てる・・・・」
 そして呟き終えたと同時に今度は真紅から金糸雀へ仕掛けた
 目標は右肩、そこさえ機能できなくさせればもう勝利も同然・・・
 手に持つ”くの字”のナイフで円を描きながら金糸雀の右肩とナイフの距離を零にする・・・
金糸雀「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
 そして”ザッ!”という音と共に金糸雀の右腕と胴体が離れる・・・しかし真紅は疑問に感じていた
 あのカウンターや死角からの攻撃すら防いだ刀がどうして正面からの攻撃を防ぐ事すらせず切られたのか・・・
 あっけなさ過ぎるとすら思えたが、相手は片腕を失い丸腰・・・もう疑う余地すら無い。
真紅「うるさいのだわ、いい加減楽にしてあげるのだわ」
 まるで迷いを振り切るような想いで金糸雀にそう告げナイフを上げた・・・が
蒼星石「やりすぎだよ・・・真紅」
 蒼星石の一声で再び空気が凍て付いた・・・
 そう、蒼星石は金糸雀の切り離された腕から刀を取り再び戦場へ戻ってきたのだ・・・
蒼星石「・・・・・・・・もう終わりにしよう」
真紅「ふざけないで欲しいのだわ!死にぞこないは寝ていればいいのだわ!」
 そして静かにこの惨殺ゲームを終わらせるために告げる蒼星石、それを勝ち残るのは自分だ!と言う真紅
 二人の間に亀裂が走る・・・全てを終わらせんとする想いが弾け・・・二人同時に駆け出す
真紅「・・・はぁ!」
 先手は真紅、獲物はククリナイフ・・・その刃先を蒼星石に定めながら切り込む・・・
 もはや真紅自身体が壊れるような動きで一気に間合いを詰め蒼星石に最速のスピードで切り込んだ・・・
蒼星石「・・・・うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 しかしその凶器を止めることなく甘んじてその身で受けた蒼星石だが、蒼星石の勢いは止まらず、刀が真紅に向かって距離を詰める
 腹部に銃弾を受け、その上から胸をナイフで突き刺されながらも突進する蒼星石・・・
 最後に彼女が聞いた”ザッ”と言う音と共に全ては終わりを告げた・・・・


エピローグ

 私が目を覚ましたのは誰も居ない病室、全身は包帯でぐるぐる巻きにされて自分でも体が重くて動かない状況だった・・・
 右腕の感覚が無い上に左目も開かない・・・よく覚えていないけどあれは夢じゃなかったんだろうと思う・・・
 しばらくすると何やら偉そうな人がやってきて”アリス・ゲーム”優勝おめでとう等とふざけたことを言って去っていった
 殴り飛ばしてやろうと思ったけど、体がそれを拒絶した・・・
 更にしばらくすると医者らしき人物が現れた
看護士「脈は正常に戻った、君は本当に運が良い」
 それだけ言うと医者らしき人物は病室を後にした
 あの血生臭い殺し合いは何だったのだろうか?なんの為にあんなことをしたのか?それは自分では決して判らないものだと思う
 とにかく、今は少しでも休んで居たい・・それだけを考え意識は再び闇に飲み込まれた

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