ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

意地とプライド

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蒼星石「一本!それまで!!」
この日、蒼星石は水銀燈に『体育の授業で剣道をやるから、生徒たちに見本を見せてやってくれ』と頼まれていた。
しかし、気がつけば授業の全てを蒼星石が担当する羽目になっていた。当の水銀燈はといえば、隅のほうでコックリコックリと、気持ちよさそうに船をこいでいる。
蒼星石「…水銀燈!君はこんなことをするために、僕を呼んだのかい!?」
水銀燈「!?…なによぉ…せっかくいい気持ちで寝てたのに…。いいじゃなぁい、あなた剣道部の顧問なんだからぁ…。」
「そう言うことじゃなくて…」と蒼星石が反論しようとした時、ある生徒がヒソヒソとこんな話をしだした。
男子A「…なあ、水銀燈先生と蒼星石先生が試合したら、どっちが勝つと思う?」


その問いに、すぐに反応したのはある1人の男子生徒だった。
男子B「絶対銀様だろ!!銀様の運動神経は凄いんだぜ!!」
すかさず1人の女子生徒が反論する。
女子C「はぁ!?蒼星石先生は、剣道部の顧問なのよ!?何言ってるの!?」
白熱する2人の議論。一方の教師たちはといえば、さめた様子でそれを見つめるだけだった。
蒼星石「ははは…どうしよう、困ったな…。」
水銀燈「勝手に言わせておけばいいのよぉ…。面倒くさい。」
だが、蒼星石の心配をよそに、議論はさらに白熱する。
男子B「いや!それでも、銀様が勝つ!だって、あの銀様だぜ!?」
女子C「何よ!銀様銀様って!!蒼星石先生が負けるわけ無いじゃない!だって、昔は水銀燈先生って怖いイメージあったけど、今じゃ薔薇水晶先生や真紅先生にいいように扱われて…」
その言葉に、水銀燈はワナワナと手を震わせる。
この子は今、何を言ったの?この私が、あの蒼星石や薔薇水晶、それに真紅ごときに劣るですって…?
事の重大さに気がついた蒼星石は、すぐに水銀燈をフォローしようとする。
が、その手を払いのけ、水銀燈は静かにこう言った。
水銀燈「…蒼星石、今すぐ私と勝負しなさい。」
その目は、完全に以前の恐ろしい水銀燈の目へと戻っていた。


その後、蒼星石や他の生徒がどんなに説得しようとも、水銀燈は考えを改めることはなかった。
なんてことを言ってしまったんだろう…と、当の女子生徒は頭を抱える。
でも、憧れの蒼星石先生ならきっと…そんな幻想にも似た思いを抱いていた。
しかし、当の蒼星石の表情は、緊張で強張っていた。
自身のプライドを傷つけられたとあっては、水銀燈はおそらく本気で向かってくるだろう…。それに、仮に勝ったとしても…
蒼星石「…巴君、審判のほうやってもらえるかな?」
半ば諦めたように、巴に審判をお願いし試合場へと向かう蒼星石。
蒼星石「水銀燈、やるのなら早く防具を…」
水銀燈「いらないわぁ…。だって、そんな臭いの付けてられないものぉ…。」
蒼星石「で、でも…」
水銀燈「それに…私が負けるなんて、まずありえないわぁ…。」
その言葉に、思わず竹刀を握り直す蒼星石。そんな蒼星石を、水銀燈は手招きしながらこう言った。
「さあ…ゲームをはじめましょう…。」と。


巴「始め!」
その合図と共に、全力で蒼星石に切りかかる水銀燈。それを切り替えし、反撃に転じる蒼星石。
両者の、一進一退の息もつかせぬ攻防戦は、見る者を魅了した。
両者に対し、生徒たちは惜しみない声援を送る。しかし、均衡は一瞬にして破られた。
水銀燈「…ふぅん。ま、確かに少しはやる様だけどぉ…所詮、おままごとなのよねぇ…。」
蒼星石「…それはどういう意味…」
蒼星石の言葉を遮るように、水銀燈は蒼星石の顔に向けて鋭い突きを繰り出した。
それを間一髪でかわし、尻餅をつく蒼星石。
が、あまりのことに、もはや足がすくんで立てないでいる。
蒼星石「あわわわわわ…」
水銀燈「あらぁ…残念。せっかく、もっと可愛い顔にしてあげようと思ったのに…」
「止め!!」と、慌てて巴が2人の間に割って入り、水銀燈に注意を促す。
巴「先生!これは反則です!!」
水銀燈「反則?なぁに、それ?本当の戦いで、そんなのが通用すると思ってるのぉ?だから、おままごとだって言ってるのよぉ…。」
そう言って、水銀燈はもう1度竹刀を構えた。
巴「な、何を!?」
水銀燈「決まってるでしょう?最低でも、気絶するまでやらなきゃ勝ったことにならないものぉ…。邪魔をするなら、あなたも同じ目にあわせてあげるわぁ…」
その時、武道場に1人の生徒の悲鳴がこだました。


水銀燈が、その悲鳴の先に目を向けると、そこには先ほど自分に対して暴言を吐いた生徒がいた。
その生徒の下に近寄ると、水銀燈は優しく声をかけた。
水銀燈「そういえばあなた…さっき、私に面白いことを言ってくれたわよね?」
女子C「い、いや…それは、その…」
水銀燈「ふふふ…ありがとぉ。あなたのおかげで、大切な事を思い出したわぁ…。」
女子C「へ?」
水銀燈「そうよねぇ…。いつまでもやられっ放しなんて、私らしくないわよねぇ…。」
その時、事態を重く見た1人の生徒が、薔薇水晶と雪華綺晶を連れて戻ってきた。
この2人なら、きっと上手く水銀燈の怒りを鎮めてくれる…そう思ったに違いない。
しかし、事態はそんなに簡単に収拾できるほど甘くはなかった。
水銀燈「まぁ…探す手間が省けたわぁ♪さぁ、どっちが相手をしてくれるのかしらぁ?もちろん、2人同時でもかまわないわよぉ…?」
「待って…」と、雪華綺晶は説得を試みる。が、薔薇水晶はそれを制止すると、水銀燈に対し、こう言った。
薔薇水晶「可哀想…。」


水銀燈「…可哀想?この私が!?」
薔薇水晶からの思わぬ言葉に、さらに激しい怒りを燃やす水銀燈。しかし、薔薇水晶もそれは同じだった。
自分の欲望のために、大切な生徒たちを傷つけようとした…。しかも、その凶行に及ぼうとした人物が自分の1番の親友とあっては…
それは、薔薇水晶にとって裏切り以外の何物でもなかった。
薔薇水晶「なんて弱い心…。そうやって、いつまでも過去にとらわれ続けるなんて…可哀想…。」
そう言うと、薔薇水晶はその場にあった竹刀を拾い上げ、さらにこう続けた。
薔薇水晶「…だったら、私が正してあげましょう…!」
水銀燈「…上等じゃなぁい…!じゃあ、あなたから先に壊してあげるわ!!」
もはや、激突は不回避かと思われた。
しかし、その時雪華綺晶が、備え付けの防犯用ネットランチャーを2人に向かって、立て続けに発射した。


水銀燈「ちょっと!何よこれ!?」
薔薇水晶「姉さん…何を!?」
その網に絡まり、身動きが取れない2人に対し、雪華綺晶は訴える。
雪華綺晶「だめ…2人ともあんなに仲良しだったのに、そんなの絶対だめ…。」
水銀燈「何を言ってるの!?さあ、今なら許してあげるから、早くこれを外しなさい!!」
薔薇水晶「姉さん、こういう人は1度痛い目見ないと分からないんだから…!さあ、早くこれをはずして!!」
雪華綺晶「だめ…私にとって2人は両方とも大切な人…。だからこそ、喧嘩なんか…だめ…。」
その言葉に、思わずシーンとする場内。
水銀燈「…あーあ、何か白けちゃったわぁ…。」
そう言うと、水銀燈は竹刀を捨て、その場に座り込んだ。


次の日、水銀燈は快適に惰眠をむさぼっていた。
未遂とはいえ、あれだけやらかせば誰も私に逆らうものなど誰もいない…
そう、誰も私の邪魔をするものはいない…はずだった。
薔薇水晶「銀ちゃん!!もう8時半だよ!?何で学校に来ないの!?」
何で、こいつが家の中にいるんだろうと布団をかぶり直す水銀燈。そして、不機嫌そうに声を上げた。
水銀燈「…うるさいわねぇ…。この私を誰だと思ってるの…!?」
薔薇水晶「何を馬鹿なことを言ってるの!?さあ、早く来なさい!!」
そう言うと、薔薇水晶は水銀燈の耳を引っ張り、外へ引きずりだした。
これには流石の水銀燈も、たまらず飛び起きる。
おかしい、こんなはずでは…と、水銀燈の頭の中には『?マーク』が無数に飛び交う。
しかし、その思いは痛みによってかき消された。
薔薇水晶「何をボサっとしているの!?もう1時間目が始まってるのに!!」
水銀燈「痛っ!!わ、分かったわよぉ!牛や馬じゃ無いんだから、そんなに引っ張らなくても、ちゃんと行くわよぉ!!」
急いで仕度をし、家を出る2人。こうして、今日もいつもと変わらぬ1日が幕を開けた。


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