ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki

視聴覚室のゲーム

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「JL725便、只今より搭乗手続きを開始いたします。」
空港の出発ロビーに流れるアナウンス。
それに反応し、水銀燈はパタンと読んでいた本を閉じ、搭乗口に向かう。
最近はみんなと行動することが多くなったが、やっぱり旅は一人のほうが楽でいい…と彼女は思う。
水銀燈「さぁて…ついたらまず、ホテルを予約しなきゃねぇ…。やっぱり、フォーシーズンズ・リゾートかしら…」
頭の中に浮かぶ、最高ランクの食事やサービス…専用プール…そして、白い砂浜…。
それは、まさにバカンスにはもってこいの場所だった。
意気揚々と、搭乗口に向かう水銀燈。数時間後には魅惑の島、バリに到着…さようなら、健気にも頑張って働いているみんな…。
そんなことを考えながら、彼女は空港職員にチケットを見せ、飛行機までの通路へと足を踏み入れた。
しかしその瞬間、彼女は何者かに手をつかまれ、後ろへと引き戻された。
水銀燈「え!?な、何!?」
薔薇水晶「…銀ちゃんはこっち…!」
振り返ると、そこには愛すべき同業者がいた。


真紅「…で、何で今日は学校休もうとしたのかしら?」
水銀燈「…天気が良かったから。」
真紅の問いに、彼女はふてくされた顔でそう答えた。
真紅「…全く、何であなたは大掃除の時になると、どこかに逃げようとするのよ!?…ともかく、あなたの担当は視聴覚室よ。遅れた分、しっかりやって頂戴。」
視聴覚室と聞いた瞬間、水銀燈思わず笑みを浮かべた。
それを見て、真紅はすかさず言葉を付け足した。
真紅「…それと、視聴覚室にあったあなたの映画コレクションは、全部別の場所に隠しておいたわよ。」
その言葉に「チッ」と舌打ちすると、彼女はとぼとぼと視聴覚室へ向かった。


水銀燈「…何で、この私が下女みたいな事しなきゃいけないのよ。冗談じゃないわ。」
廊下で、水銀燈誰に言うでもなく愚痴をこぼす。その様子を雪華綺晶がじっと見つめる。
水銀燈「…何よ。」
不機嫌そうにそう言う彼女に対し、雪華綺晶は冷静にこう答えた。
雪華綺晶「逃げないように、見張れって言われた…。」
その答えに、水銀燈は思わずため息をつく。もはや、真面目に掃除するしかないのか…そう思われた矢先、金糸雀が視聴覚室に入ろうとするのを発見した。
「ちょうどいい、この子に全部やらせよう」と、彼女は嬉々として声をかける。
水銀燈「何してるのぉ?もしかして、手伝ってくれるのぉ?」
金糸雀「ち、違うかしらー!これをやろうと思って、ここに来たのかしらー!!」
そう言いながら、金糸雀は持っている紙袋を広げて見せた。
見るとその中には、色んな種類のゲーム機とそのソフトがあった。
水銀燈「…!?あなたまさか…!!」
金糸雀「ふっふっふ…楽してズルして、掃除をパスするかしらー!?」
何の躊躇もなく、悠然と答えるその姿…
水銀燈にとって、今日ほど金糸雀を尊敬した日は無かったという。


水銀燈「超兄貴…?え…!?これ、シューティングなの…?…イカレてるわ…」
金糸雀の持ってきたゲームを見て、水銀燈はどれをやろうかと真剣に考える。
その時、その服を雪華綺晶が引っ張ってこう言った。
雪華綺晶「ダメだよ…。またばらしーに怒られる…。」
水銀燈「大丈夫よぉ…。だってバレなきゃいいんだもぉん。」
雪華綺晶「でも…」
水銀燈「いいから、あなたは私が逃げないように見張ってればいいの。それに、バレたらあなたも同罪よぉ?だから、しっかり他の人がこないように見張っててねぇ?これ、あげるからぁ…」
そう言うと、彼女は持っているお菓子を手渡し、雪華綺晶に外を見張らせた。
その横で、金糸雀はてきぱきとスクリーンを下ろし、プロジェクターとゲーム機を起動させる。
どうやら2人は、往年の名作『スーパーマリオブラザーズ』をやることに決めたらしい。
水銀燈「…今まで、このマリオを馬鹿にしてたけど、その考えは今日で捨てるわ…。こんな大きな亀が歩いてきたら、そりゃ死ぬに決まってるわよ…」
等身大サイズのマリオとノコノコを見ながら、水銀燈はしみじみとそう語る。
その時、2人の背後から視聴覚室のドアが開く音がした。


雪華綺晶「…つまんない…。」
水銀燈「あらぁ?あなたも入れて欲しいのぉ?困ったわねぇ…何か三人で出来るゲームってあるぅ?」
金糸雀「うーん…あ!雪華綺晶には、これがオススメかしらー!」
そういって取り出したのは、『ワールドコンバット』というゲームだった。名前から、戦争をテーマにしたゲームだということが分かる。
金糸雀「このゲームは、『ガンコン』と呼ばれる銃の形したコントローラーを使って、敵を撃つシューティングゲームかしらー!
舞台は戦場!一兵士として、敵の兵士や戦車…それに飛行機なんかを…」
雪華綺晶「やりましょう!!」
目を輝かせながら、そう言う雪華綺晶。
水銀燈「…でも、ガンコンなんかどこにあるのよぉ?」
金糸雀「ふっふっふ…有栖学園一の頭脳派、金糸雀に抜かりはないかしらー!!」
そういい、部屋に隠してあったガンコンを取り出す金糸雀。どうやら、大画面でこういうゲームをするのを、前々から楽しみにしていたようだ。
そのガンコンを見て、2人は思わず感嘆の声をあげた。
何故なら、そのガンコンは通常の拳銃型のものとは違い、本物の戦場で使われるようなライフルの形をしていたからである。
これには、嫌が応にも気分が盛り上がる。
雪華綺晶「…行くぞ!」
その掛け声と共に、ゲームは開始された。


雪華綺晶「左舷、敵小隊!」
金糸雀「了解かしらー!!」
雪華綺晶の指揮の下、順調に戦場を駆ける3人。プレイヤーの成績によって階級が上下する『階級システム』の効果もあいまって、みんなゲームに熱中する。
その時、視聴覚室のドアを叩く音が聞こえてきた。
水銀燈「…まずいわ…。あのお馬鹿さんがやってきたみたい…」
金糸雀「カギはかけてあるけど、マスターキー持って来られたらお終いかしらー!?」
雪華綺晶「でも…最後まで…!」
そういうと、雪華綺晶はドアを押さえに行った。
雪華綺晶「ここは私に任せて…!大丈夫、あなたたちならきっと出来る…!!」
金糸雀「…でも…!」
雪華綺晶「いいから!さあ、目の前の敵だけに集中するの!!」
そう…このとき、3人は友情を超えた深い絆で結ばれていた。
ドアを必死に押さえる雪華綺晶、真剣な目つきでゲーム…いや戦いに興じる2人。
そんな光景に感極まったのか、金糸雀は涙をこらえながら銃を乱射する。
いつもなら、この場から真っ先に逃げようとする水銀燈も、その場に踏みとどまり、みんなのために戦い続けた。
そして、いよいよラストステージ…というところで、なにやら校内放送が流れ始めた。
薔薇水晶「…姉さん、あなたも視聴覚室にいるんでしょう?いい加減にしないと、今日からご飯抜きよ…!」
…その一言で、絆はもろくも崩壊した。
重き扉は解き放たれ、真紅以下3名の教師が雪崩をうって室内に突入…逃げる間も無く、捕まる3人。

…その後、その場にあったゲームは全部没収。3人は、罰として学校中のトイレを掃除する羽目になった。

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