ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki コロと雛苺

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コロと出会った日のことは、今でもはっきりと覚えている。
朝ご飯は何を食べたか、どんな服を着てきたか、中庭にはどんな花が咲いていたのか、空に浮かんでいた雲の形さえも覚えている。
コロは、中庭にちょこんと座っていた。それがあまりにも自然体だったので、雛苺が見つけるまで、誰一人として気付かなかった。
近付いても、逃げることはなかった。それどころか、見つけてもらった事が嬉しかったのか、尻尾を振ってまるで話しかけるかのようにワンと吠えた。
雛苺は、早速職員室へ連れて行こうとしたが、真紅にそんな汚らしい犬を入れるなと言われたので洗うことにした。
水をかけることを嫌がったので、家庭科室でお湯を沸かしてそれで洗ってあげた。すると気持ちよさそうに目を細めた。
洗ったコロは、見違えるように綺麗になった。
再び職員室へ連れて行くと、真紅がまた何か言おうとしたが「綺麗に洗ったもん」と言うと、諦めたように溜め息をついた。
蒼星石が「名前はなんていうの?」と聞いてきた。その時はまだ決めていなかった。
なんとなくコロコロとしていたので、コロと名付けた。水銀燈が「もっとセンスの良い名前は無いのぉ?」と言ったが、コロが嬉しそうに吠えたので、コロで良いことにした。
その日から、コロの定位置は雛苺のデスクになった。雛苺がいる時は、常に戯れていた。授業が無い時などは、散歩にも行ったりした。
雛苺が授業の時は、デスクの下でじっと雛苺の帰りを待っていた。雛苺が帰って来ると、尻尾を千切れんばかりに振って喜んだ。
コロの噂は瞬く間に生徒にも広がり、休み時間になるとコロに会うために多くの生徒が職員室に訪れた。
コロはそんな生徒たちも尻尾を振って歓迎した。
トイレのしつけはしっかりされており、職員室で用を済ませることは一切無かった。用は全て散歩の時に済ませた。
蒼星石が言うには、コロは以前誰かに飼われていた犬らしい。しかし首輪が無いのを見ると捨てられたようである。
それと蒼星石はコロがかなりの老犬であると言った。雛苺が「じゃあコロはおじいちゃんね!」と言うと、コロは意味が分かっていないのか嬉しそうにワンと吠えた。
雛苺はこの時はまだ、蒼星石の言わんとしたことを理解できていなかった。


はじめはコロを職員室で飼う事を反対していた真紅と翠星石だったが、日が経つにつれ、雛苺に次いでコロを可愛がるようになった。
真紅は一生懸命コロに芸を仕込もうとした。翠星石はコロの為にご飯を作ってきた。
コロは職員室で一夜を過ごした。雛苺の部屋ではペットは飼えない。
それと、蒼星石がコロの体力を考えるとあまり環境を変えるのは好ましくないと言ったので、職員室で寝泊りさせることにした。
コロもそれを理解したのか、教師たちが帰ってゆくのをおとなしく見送った。
朝、職員室の鍵が開けられる音で目を覚まし、誰か人が入ってくると嬉しそうに、それとどこか安心したように吠えた。
雛苺とコロは本物の姉妹のように仲が良かった。雛苺が少しでも沈んだ表情をすると、コロはぺろぺろとその顔を舐め、元気付けた。
雛苺は、そんな毎日がいつまでも続くと信じていた。


雛「おっはよーなのー!」
ある日の朝、雛苺がいつものように職員室へ入ると、そこには浮かない表情をする蒼星石たちがいた。
蒼「あぁ、おはよう…」
雛「あれー?みんなどうしたのー?」
翠「コロが、その、起きないです…」
デスクへ駆け寄った。そこには、力なくぐったりとしているコロがいた。
金「いつもは職員室の鍵を開けると嬉しそうに吠えるのに、今日は寝たきりかしらー…」
力なく膝をつき、コロを揺すった。
雛「コロ、コロ?ヒナよ、起きて」
するとコロはカッと目を開き、先程までの様子が嘘であるかのようにばっと立ち上がると、千切れんばかりに尻尾を振り雛苺の顔をぺろぺろと舐めた。
雛「あははは!こらぁ、コロったら!」
翠「あれ…?起きたです。翠星石がいくら起こしても反応しなかったのに…」
雛「もう翠星石!いじわるはめーなの!」
またいつものようにコロとの楽しい一日が始まるのだと雛苺は思った。


しかしコロは、雛苺を舐め終わると、よっこらせと横になると、静かに目を閉じた。
雛「あれ?コロ、もうお昼寝なの?」
再びコロを揺すった。だが、全く反応しなかった。
雛「コロ、散歩行くの!」
いつもは「散歩」と聞くと目の色を変えて喜ぶのに、微動だにしない。
雛「コロ!コロ!今日はコロの好きな苺大福を持って来たの!!一緒に食べるのよ?」
苺大福をあげた日のことを思い出す。雛苺が職員室で苺大福の封を開けていると、それをコロが涎をたらしながら見つめていた。
雛苺が「一口だけよ?」と差し出すと、丸々1個をペロリと食べてしまった。雛苺が「あー!」と悲鳴をあげる横で、コロは満足気に舌なめずりをした。
雛「コロ…コロ…!!」
しかし、それでもコロは起きなかった。雛苺の目から大粒の涙がこぼれた。
蒼「コロは老犬だったんだ…」
雛苺の肩にそっと手を置く。そしていたわるようにコロの体を撫でた。
蒼「恐らく寿命だったんだ。僕たちが来た時には既にもう限界だったんだね…。
けれど、最後の力を振り絞って君が来るのを待っていたんだ。君にお別れを言いたくて…。
捨てられた自分を拾ってくれて、まるで我が子のように可愛がってくれた君にお礼を言いたくて…」
雛「ヒナ、ヒナどうすればいいの…?」
蒼星石に尋ねる。それはまるで自問のようでもあった。
蒼「笑顔で送ってあげよう?」
雛「笑顔、で…?」
蒼「うん。コロが大好きだった君の笑顔でね」
雛苺が少しでも浮かない表情をすると顔を舐めたコロ。雛苺が笑顔を取り戻すと、コロはまるで「それで良し!」と言うかのようにワンと吠えた。
雛苺は、そんなコロを思い出した。
雛「ありがとう…コロ…。お礼を言いたいのは私のほうよ…?ずっと、ずっと忘れないんだから…!!」
雛苺は、今にも壊れてしまいそうな笑顔でコロの体をそっと抱き寄せた。
思い出の中のコロが、ワンと鳴いたような気がした。


雛「コロと出会った時、ちょうどこんな雲が浮かんでいたのよ…?」
コロと出会った中庭の片隅で、空を見上げる。足元に置かれた石には雛苺の文字で「コロのお墓」と書かれている。
土の中で眠るコロに話しかけるように言う。
雛「ほら、コロの好きな苺大福よ?ヒナと半分こ!」
半分食べた苺大福をコロの墓に置く。一陣の風が雛苺の髪を撫でる。
雛「もうヒナ、授業だから行くね!」
土の中で眠るコロに笑顔を投げかける。コロが大好きだった笑顔で…