ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 仮面○イダーカブトショー

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  小テストの採点が終わった。水銀燈は、椅子に座ったまま、大きく伸びをした。
  本日の業務は、これで全部終了。時計を見ると、定時まで後三十分残されていた。
  隣の机では、蒼星石が、授業用のプリントの原稿を作成していたが、どうやら情報処理に使う物のようで、水銀燈には手伝えそうになかった。
  手持ち無沙汰になった彼女は、生徒から没収した雑誌のページをめくりつつ、退出まで時間を潰すことにする。
「何、これぇ……つまんない雑誌ぃ」
  と、クロスワードパズルのページを見つけた。水銀燈は、シャープペンシルを手に取る。
  没収したからといって彼女の私物になった訳ではないが、特にためらう様子も見せず書き込んでいく。
「ええっとぉ、何々……天の道を往き、総てを司る男は誰かですってぇ? そんなの分かんないわよぉ……」
「……天道総司のことじゃないかな?」
  隣の席の蒼星石が、ぼそりとつぶやいた。
「えっ……あら本当ぅ、ぴったりと当てはまったわぁ……でも、それって誰ぇ?」
「えっ、いや、僕もちょっと聞きかじっただけだから、詳しいことは何も知らないんだ……気にしないで」
「ふーん、そぉ……」
  蒼星石の態度に、何か釈然としないものを覚えた水銀燈だったが、特に追求はしない。



  数日後の日曜。
  二人は、昼食を共にすることになった。
  自宅のパソコンのトラブルを解決してもらったお礼に、水銀燈がおごると言い出したのだ。
  蒼星石は、約束の午後一時に、待ち合わせ場所のデパートの屋上へと赴いた。
  と、バッグの中の携帯電話が鳴る。水銀燈からだった。
「こめんなさぁい、ちょっと野暮用ができちゃったのぉ。三十分ほどで済むから、その辺で待っててぇ」
  やれやれと、蒼星石はベンチに腰を下ろした。買ったばかりのコンピュータ雑誌を紐解く。
  にわかに、遊戯設備のある一角が騒々しくなってきた。幼い子供達の歓声。
  何事かと覗き込んでみると、特設ステージでは、ヒーロー物のキャラクターショーが繰り広げられていた。
  仮○ライダーカブトショー。看板には、そう記されていた。
  へえ、こんなのここでやっていたんだ。
  蒼星石は、少しだけ興味を覚え、遠目に覗き込んだ。
  双子の翠星石以外誰も知らないことだが、蒼星石は、子供の頃からヒーロー物に目がなかった。
  土日の早朝はテレビの前に釘づけになり、架空の超人の一挙手一投足に、瞳を輝かせた。
  同い年くらいの男の子に交ざって、よくヒーローごっこに興じたものだった。
  勧善懲悪をよしとする蒼星石の人格形成に、大いに役立った。
  ……蛇足ながら、同じ番組を見ていた翠星石は、ニヒルな悪役や、ヒーローを手玉に取る悪女に入れ込むことが多かったとか。
  ヒーロー好きは、社会人になった今でも変わらなかった。
  さすがに真紅のように身を持ち崩すほどのめり込むことはなかったが、土日のビデオ録画は欠かさなかった。
  キャラクターショーのスーツアクターは本物には遠く及ばず、演出も子供向けの幼稚なものだったが、退屈しのぎにはなった。
  スピーカーのハウリングのせいだろうか。司会の声が良く聞こえない。
  待ち合わせの時間まではまだ間があったから、蒼星石はこっそりと客席の隅に紛れ込んだ。


「さあ、みんな!! 悪者ワームがぞろぞろと攻めてきたぞぉ……今回のターゲットは……」
  司会役の青年が、客席をぐるりと見渡すと……。
「そう、そこの美人のお姉さん!! あなただ!! 今回のターゲットは、あなたに決定!!」
  指名されたのは、何と蒼星石だった。男に間違えられたりはしなかった。そこそこのレストランで食事をすると言うので、ちゃんと正装してきたのだ。
「えっ、えっ!?」
  まごまごする蒼星石を、醜悪なモンスターが取り囲んだ。
「ささっ、ステージの上へどうぞ~~!!」
  子供達に付き添う父兄の間から、美人のお姉さんに拍手が上がった。もう、とても辞退できる雰囲気ではなかった。ばつが悪そうに赤面しつつも、ステージに上がった。
  蒼星石は、両腕をモンスターに捕まえられる。
「さあ、お姉さん!! 悪者ワームに捕まったあなたは、このままでは何と!! 食べられてしまう運命に!! さあ、大きな声で悲鳴を上げてみてください。そうすれば、正義の味方がきっと助けに来てくれるはずです!!」
「ええと……きゃーーっ!」
「もっと大きな声で!!」
「きゃーーーー!!」
「だめだめ!! そんな小さな声じゃ、全然ヒーローは助けに来てくれません。もっと本当に大きな声で叫ばないと、ほらほら、両側のワームに食べられちゃいますよ~~!!??」
  グロテスクな怪人が、わさわさと触手をくねらせる。追いつめられた蒼星石は、ええいままよと大きく息を吸い込むと。
「きゃああああああああああああああああっ、いやぁああああああああああああああああッ!!!!」
  お腹の底から絶叫を絞り出した。
  観客席に視線を戻した蒼星石は、我が目を疑った。
  中央の通路には、この上なく得意気ににんまりと笑みを浮かべ、カメラ付き携帯のレンズを向ける水銀燈の姿があったからだ。
  顔から炎が吹き出しそうになった。
  この日二度目の絶叫が響き渡った。

  おごってもらうはずの昼食を、蒼星石がおごらされたのは語るまでもない。