ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 昔の話

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 ずっと彼方と共にありたかった。だけど、もうソレは叶わない夢。
だから、私は前を行くわ。彼方を忘れた訳ではないし忘れようとしている訳でもない。
私は、彼方と言う存在を失礼な言い方だけど糧として前に進むわ。
だって、彼方はもう居ないのだから……その場にとどまる事などしない。私は私である為に
私が私である様に、前を進むの。だから、彼方は空でも地でも何処でも良い。私を見守ってて。

 空は清々しいほどに蒼く。雲ひとつ無い晴天の空。
そんな空の下を、金色と紅が印象的な女性が歩いていた。女性の名前は真紅。
有栖学園の英語教師であり、茶道部顧問である。ただ茶道は茶道でも、欧米式簡単に言えば紅茶。
まぁ、そんな事は置いておこう。
 真紅は、少々難しい顔をして道を歩いていた。原因は、今日見た夢。
久々に見たあの人の笑顔。最後に見たあの人の顔は、ただ青白く無表情で目を瞑っていただけ。
なんで、あの人の夢を見たのか分からなかった。まだ心のどこかで引き摺っているのか? と考えたが
直ぐにその事について考えるのをやめた。考えるだけ無駄と思ったからだ。
 さぁ、今日も生徒達相手に頑張ろう。と、空を一度見上げて歩き出す真紅。

「で、あるから。この単語はこの文法の終了にあっても変じゃないのだわ」
 英語の時間。いつもの様に授業をこなす真紅であったが、やはり夢の事が頭から離れないのか
何処か、違和感が其処にあった。生徒達もその違和感を何処と無く感じてはいたが明確にはわからないので
心の中で首をかしげていただけだが……そして、授業が終わると真紅は、今度小テストするから。と告げて教室を後にした。
 次の時間に英語は無いわね。と、真紅は職員室の自分のデスクで予定表をしばらく眺めた後職員室から出て行った。
 屋上。相変わらず空は青い。まだ初春ゆえか、少々肌寒い風が真紅の頬をなでた。
屋上に設置された、ベンチに座り特に何をする訳でもなくただぼぅっと座っている真紅。ふと、真紅の隣に誰かが座る。
「辛気臭い顔してるわねぇ? 真紅せんせぃ?」
 そう真紅に声をかけたのは、同僚の水銀燈。どうやら、彼女も授業が無い為に屋上に来たようだ。
「あの人が死んでから、もう十年だっけぇ?」
 くすくすと、笑いながら水銀燈は真紅にそう言う。真紅は、短くそうね。と答えただけ。
水銀燈は、胸ポケットからタバコを取り出すと一本口に咥え火をつける。そして、手にしていたタバコの箱をそのまま真紅に向ける。
真紅は、何も言わずにタバコを一本手に取ると口に咥える。水銀燈からライターを受け取りタバコに火をつけた。
紫煙が二つ、風にながれ薄れ消える。二人はしばらく無言。
「あの頃が懐かしいわね」
「もう既に終わった事だわ」
 そう漏らす水銀燈に、淡々とそう答える真紅。極端に会話の数が少ないが、嫌な雰囲気では無い。
時々、下の教室から生徒達の声が聞こえてくる。

「あの人の夢見たわ」
 水銀燈の言葉に、真紅はそう。と漏らし……私もよ。と答えた。
「死んでからも美女二人に思われるあの人は、幸せもんよねぇ?」
 水銀燈は笑ってそう言うと、また紫煙を吐く。不規則な形を描いて紫煙は昇り薄れ消える。
「まったくなのだわ……なんで死んだのか。なんでなんで……馬鹿」
「そうねぇ。馬鹿だわ」
 二人の脳裏にあの人の笑顔が浮かんで消えた。
「墓参りいってないわねぇそういえば」
「来いって事かしら? 私達の夢に出てくるのだもの」
 違いないわね。と、苦笑する水銀燈。あの人は意外に寂しがりやだったと思い出す。
「来週あたりにでも行く?」
「そうね……あの人が好きだった芋羊羹でも供えてやるのだわ」
 もう、フィルターの近くまで燃えているタバコの火を消す水銀燈。同じく真紅もタバコの火を消した。
そして、二人は立ち上がり屋上を後にしようとした時、一陣の風。
その風は、まるであの人待ってるぞ。といっているみたいで、二人は顔を見合わせて苦笑した。

 昔の話。教師になる前の話。自分が生徒でその人が教師だった時の話。
実に教師らしくない人だった。不良していた自分を、心から叱ってくれたが「ばれない様に吸うのが上級テクニックだ」と教えてくれた。
教師であり教師でなく憧れの人。自分はその人に恋していた。だけど、もうその人は居ない。
 そんな、昔の話。