ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki セットアップPS2

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  とある休み時間のこと。数人の男子生徒が、机の上にゲーム雑誌を広げ、ゲーム談議に耽っていた。
「やっぱヤ○ガスだろ?」
「ええーっ、F○12じゃねえの?」
「でもよー、F○の戦闘シーンのプロモ、見た? 戦闘シーンなのに、キャラがてくてく歩いてやんの。何か、すっげー興ざめじゃね?」
  と、生徒の一人がはっと息を呑んだ。
「あなたたちーーっ、まーた学校にこんな物を持ち込んで!!」
  真紅だった。するりとゲーム雑誌を取り上げられる。まだ予鈴が鳴っていなかったので、生徒たちはすっかり油断していた。
「で……でも先生、くんくん探偵のゲームの記事も載っているんですよっ」
「えっ……」
  没収を恐れた生徒が慌てて取り繕うと、真紅の顔色が変わった。即座に雑誌のページをめくり始める。
「ど、どこ……どこのページに載っているの?」
「ほら、もっと後ろのほう……新作情報のページのところです」
  あった。くんくん探偵の不思議なダンジョン、鋭意製作中!! なぜ探偵で不思議なダンジョンシリーズなのか、顧客のニーズを著しく見誤っている気がするが、そこのところは置いといて。
  目を皿のようにして、記事を読み耽る真紅。くるりと踵を返すと、そのまま教室を出て行ってしまう。
「え……先生、授業は……?」
  結局、持ち去られたゲーム雑誌が返ってくることはなかった。


  半年後の木曜日。午後十一時。
  真紅は、手に大きな紙袋をぶら下げて、ようやく帰宅できた。
「……まったく、あの莫迦ウサギ……今日に限って残業を押しつけてくるなんて、陰険にも程があるわ! ゲームが終わったら、きっと復讐してやるから、見てらっしゃい!」
  部屋着に着替え、テレビの前に陣取る。
「さてと、まずゲーム機本体をセットしないとならないのね」
  プレステ2のパッケージを開け、中身を取り出す。ビデオケーブルを取りつけようとして、テレビを裏返したところで、真紅は硬直した。
「ええと……これはどこに挿し込むのかしら?」
  入出力端子がずらりと並んでいた。真紅は元々機械に疎く、どれがどれだかさっぱり判らない。ええいままよと挿し込んで電源を投入するが、ちっとも反応は現れなかった。
「どうしたら……どうしたらいいの?」
  説明書と首っ引きになって二時間。焦燥感が募った。真紅はとうとう音を上げた。
  携帯電話の短縮ダイヤルを操作する。
「蒼星石……蒼星石? すぐに来て頂戴!!」


  金曜日。午前二時。
「真紅……いま何時だと思っているんだい? 明日じゃ駄目なの……?」
  ふわわ……と大きなあくびをした蒼星石。まだ半分眠っているような口調だ。
  それでも来てしまうのだから、蒼星石は人が好い。
「すぐに紅茶を淹れるから、さっさと上がって手伝うのだわ」
「紅茶はいいよ、眠れなくなっちゃう……」
  まだ反応の鈍い蒼星石を、居間へと引っぱっていく真紅。テレビの前には、ケーブルやら説明書やらが、乱雑に散らかされていた。
  と、くんくん探偵の不思議なダンジョンのパッケージに気づく蒼星石。
「ああ……真紅も買ったんだ、これ。僕もプレイしてる……今ね、ちょうど地下十二階のボスを倒したところ……」
  室温が、二度くらい下がった気がした。蒼星石の喉元に、真紅のステッキの先端が突きつけられていた。蒼星石は、一発で目が覚めた。
「ネタばれは、なしでお願いするのだわ……!」
「あは、あは……はははははは……」
  乾いた笑いが漏れた。


  学校で情報処理の教鞭を振るっている蒼星石は、さすがに手際が良かった。五分も経たずに、プレステ2の起動画面が表示される。
「今から帰ると、三時になっちゃう。今日は泊まってっていい?」
「好きにすると良いのだわ」
  真紅は、画面から目を離さない。コントローラーを手に、くんくん探偵のオープニングムービーにもう夢中のようだ。
「じゃあ、そうさせてもらう……」
  いつものことだった。この家の家電製品は、ほぼ例外なく蒼星石がセットしたものだ。勝手知ったる真紅の家。蒼星石は、寝室の真紅のベッドに潜り込んだ。

  午前四時。
「蒼星石……蒼星石?」
「うーん、何だい、真紅……もう朝なの……?」
「武器だか防具だか装備だか、何だかちっとも解らないのよ……ちょっと来て、教えて頂戴」
  結局その日、蒼星石が休めた時間は、正味二時間ほどに過ぎなかった。


  しかし、その夜の出来事は、これから始まる地獄の日々のほんのプロローグ。
「な……何ですって!?」
  真紅は、ゲームの取扱説明書の最後のページに載せられた告知を見て、唖然とする。
  それは、不思議なダンジョンシリーズ恒例の早解きキャンペーン。期限までに定められたイベントをクリアして、表示されたパスワードを送ると、くんくん探偵の特製アイテムがもらえるというものだった。
「こ……これは、何としてでも手に入れなければ……!」
  コレクター魂が、ふつふつと刺激された。真紅の戦いが始まった。
  それまでは、ほとんどゲームに興味のなかった真紅。ずぶの素人の彼女に、いきなり難易度の高い不思議なダンジョンの攻略は、至難を極めた。
  加えて彼女の性格だ。地道に準備を整えず、ついつい先を急いでしまうため、自滅するパターンが多かった。
  完徹が日常茶飯事になった。
  薬局でユンケルを大量に買い込む。
「今日は……自習にします」
  そう言って、教卓に突っ伏した。
  蒼星石からは、とうとう着信拒否されるまでになった。

  学校の廊下で、水銀燈と出くわす。
「あらぁ、真紅。どうしたの、その目の下のくま……全然隠せてないわよぉ?」
「何でもないわ。それより水銀燈こそどうしたの、コンシーラーがやけに厚めのようだけど?」
「ふふふ、何でもないわぁ、気にしないでぇ……」
  両者の間に火花が散ったかに見えた。
  救いようのない二人であった。