始業のチャイムが鳴る。それとほぼ同時に世界史担当の雪華綺晶が入ってきた。
毎回、廊下でチャイムが鳴るのを待っているのかと思いたくなるほど見事なタイミングである。
教壇に立ち、生徒たちと向き合う。
雪「授業を、始めます…」
その声を合図に、クラスの代表が号令をかける。
「起立、礼、着席―」
その声にあわせ、他の生徒たちも動作する。いつもと変わらない光景である。
雪「・・・・・・」
いつもだったら号令を終えた瞬間に、授業に入るはずの雪華綺晶が、微動だにせず黙り込んでいた。
暫しの沈黙の後、おもむろに口を開いた。
雪「昨日の夜、ずっと考えていました…」
「先生…?」
雪「皆さん、もう一度立って下さい…」
状況が理解できない生徒たちは、どうすれば良いのか分からず、辺りを見回すばかりだった。
雪「…はやく…!!」
静かな、だが威圧感を秘めた口調で生徒たちに起立を促す。これには流石に従わざるを得なかった。
全員が立ち上がったのを確認すると、雪華綺晶は語り始めた。
雪「学校の号令は、どうも緊張感が無く、これから授業を始める儀式として、相応しくないと思います…」
「べ、別に号令なんかどうでも良いよな…?」
雪「よくありません…!!号令の乱れは、心の乱れ…。この学校の統治の乱れに繋がります…」
号令などどうでも良いと言い合う男子生徒たちの意見をピシャリと叩き落とす。
そして両手を大袈裟に広げ、淡々と語り続ける。その様は、一昔前の軍事演説のようである。
雪「そこで、私はこの世界史の号令に、軍隊敬礼を取り入れたいと思います…」
毎回、廊下でチャイムが鳴るのを待っているのかと思いたくなるほど見事なタイミングである。
教壇に立ち、生徒たちと向き合う。
雪「授業を、始めます…」
その声を合図に、クラスの代表が号令をかける。
「起立、礼、着席―」
その声にあわせ、他の生徒たちも動作する。いつもと変わらない光景である。
雪「・・・・・・」
いつもだったら号令を終えた瞬間に、授業に入るはずの雪華綺晶が、微動だにせず黙り込んでいた。
暫しの沈黙の後、おもむろに口を開いた。
雪「昨日の夜、ずっと考えていました…」
「先生…?」
雪「皆さん、もう一度立って下さい…」
状況が理解できない生徒たちは、どうすれば良いのか分からず、辺りを見回すばかりだった。
雪「…はやく…!!」
静かな、だが威圧感を秘めた口調で生徒たちに起立を促す。これには流石に従わざるを得なかった。
全員が立ち上がったのを確認すると、雪華綺晶は語り始めた。
雪「学校の号令は、どうも緊張感が無く、これから授業を始める儀式として、相応しくないと思います…」
「べ、別に号令なんかどうでも良いよな…?」
雪「よくありません…!!号令の乱れは、心の乱れ…。この学校の統治の乱れに繋がります…」
号令などどうでも良いと言い合う男子生徒たちの意見をピシャリと叩き落とす。
そして両手を大袈裟に広げ、淡々と語り続ける。その様は、一昔前の軍事演説のようである。
雪「そこで、私はこの世界史の号令に、軍隊敬礼を取り入れたいと思います…」
「軍隊…敬礼…?」
意味の分からない生徒たちに、雪華綺晶が見本を見せる。
右手をあげ手のひらを左下方に向け、人さし指を額の右斜め前部にあてる。
動作一つ無駄の無い、普段の雪華綺晶からは想像できないほどきびきびとした動作だった。
雪「こうです…」
どこか満足気な表情を浮かべ、生徒たちに「さぁやれ」という意味の視線を送る。
「起立、け、敬礼…?」
クラス代表の声に合わせ、生徒たちが雪華綺晶の動きを真似る。
雪「そのまま止まりなさい…!!」
突然教壇を叩きつけ生徒たちの動きを止める。自衛隊の教官のような迫力だった。
生徒たちは、敬礼の姿勢をとったまま微動だにできない。
雪華綺晶は、ある一人の生徒の前に立ちはだかり、敬礼をしている左手を掴んだ。
雪「敬礼は…右手です…!!」
「え…?」
生徒の左手を下ろすと、続けて右手を掴み無理矢理敬礼をさせた。
雪「敬礼は、自分は武器を使わないという意思表示でもあります…
だから、右手でするのが基本です…」
学校で武器を使うわけ無いだろうと思ったが、雪華綺晶の鋭い眼光の前では、何も言えなかった。
「あ…あ…」
雪「返事は…!?」
生徒を睨み付ける。
「あ、す、すみません!!」
雪「よろしい…」
満足気にくるりと振り返り、後ろで手を組んだまま教壇に再び立った。
雪「今日は、この新しい号令ができるようになるまで、授業は始めません…」
意味の分からない生徒たちに、雪華綺晶が見本を見せる。
右手をあげ手のひらを左下方に向け、人さし指を額の右斜め前部にあてる。
動作一つ無駄の無い、普段の雪華綺晶からは想像できないほどきびきびとした動作だった。
雪「こうです…」
どこか満足気な表情を浮かべ、生徒たちに「さぁやれ」という意味の視線を送る。
「起立、け、敬礼…?」
クラス代表の声に合わせ、生徒たちが雪華綺晶の動きを真似る。
雪「そのまま止まりなさい…!!」
突然教壇を叩きつけ生徒たちの動きを止める。自衛隊の教官のような迫力だった。
生徒たちは、敬礼の姿勢をとったまま微動だにできない。
雪華綺晶は、ある一人の生徒の前に立ちはだかり、敬礼をしている左手を掴んだ。
雪「敬礼は…右手です…!!」
「え…?」
生徒の左手を下ろすと、続けて右手を掴み無理矢理敬礼をさせた。
雪「敬礼は、自分は武器を使わないという意思表示でもあります…
だから、右手でするのが基本です…」
学校で武器を使うわけ無いだろうと思ったが、雪華綺晶の鋭い眼光の前では、何も言えなかった。
「あ…あ…」
雪「返事は…!?」
生徒を睨み付ける。
「あ、す、すみません!!」
雪「よろしい…」
満足気にくるりと振り返り、後ろで手を組んだまま教壇に再び立った。
雪「今日は、この新しい号令ができるようになるまで、授業は始めません…」
しかし、この後授業を見回りに来ていたローゼンに見つかり、雪華綺晶はこっぴどく叱られた。
その日以来、生徒たちに軍隊敬礼を強要することは無くなった。
その日以来、生徒たちに軍隊敬礼を強要することは無くなった。