ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 兎さんと蒼い子

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「じゃあ後は頼んだぞラプラス君」
そう言い残すとローゼンは脱兎のことく会議室を抜け出した。
この日は休校の原因ともなった経済難の解決のために職員会議が開かれていたのだが、
まだほとんど会議が進んでいないのに校長であるローゼンが帰ってしまった。
いつもならば多少暴力的になってもそのまま帰すはずのないラプラスなのだが、
今回は何も言わずに帰してしまった。
他の教師たちが不思議に思っていると
「そうですね校長も帰ってしまいましたし今日のところは終わりということで」
と言ってほかの先生方も帰してしまった。

次の日の昼休み。
有栖学園の中庭にラプラスはいた。
途中自動販売機で買ってきた野菜ジュースを飲みながら、
木で出来たベンチに座り、彼は独り愚痴を零していた。
「私はいつもこんな役ばかり……」
思えば、愚痴の一つや二つ言いたくなるのも仕方のないことだ。
この学校の校長であるローゼンは、ある時は却下したはずの変な企画を勝手に実行したり、
またある時は落とし穴を掘ったりと、本当に校長となのかと思えるほどの変人ぶりで、
いつも教頭であるラプラスを困らしていた。
「私も有栖学園の教頭という立場に誇りはある」
「けれど校長はあんなだし、教頭である私は生徒たちとはなかなか触れ合えない」
大抵の場合は元凶であるローゼンへの制裁と胃薬で乗り切っていたのだが、
さすがに限界が来ていたようだった。
「本当に誇れるほどの仕事なのだろうか……」
少しずつ涼しくなってきた有栖学園の中庭には、冷たい秋風が吹き抜けていた。

永遠と続けていた仕方のない思考を中断したとき
「こんなところで何してるんですか?ラプラス教頭」
「蒼星石先生」
ラプラスの後ろには蒼星石が来ていた。
教頭という立場上、ネガティブな思考を繰り返していたなどと言えるはずもなく、
ラプラスが返答に困っていると
「僕はこれから食事です。たまには外で食べるのもいいかなって思って」
と小さな弁当箱を見せながらラプラスの横に座った。
先ほど飲んでいた野菜ジュースを見せながらラプラスは一言
「私も昼食です」
とだけ言った。
「ちゃんと栄養取らないと体壊しちゃいますよ」
生徒からはもちろん、他の先生からの人気も高い、
いかにも蒼星石先生らしい台詞だとラプラスは思う。
「私なんかの体を心配してくれるのは蒼星石先生だけですよ」
力なく笑いながら、つい否定的な言葉が口から出てしまう。
今のラプラスには前向きになることなど出来ようもなかった。
「そんなことないですよ。みんなだってきっと心配しますよ」
疲れきったラプラスとは対照的に、笑顔で蒼星石は答えた。
「だってみんな教頭にたくさん助けられてますから」
「私に?」
ラプラスがそう聞き返すと頷いて蒼星石は続けた。
「先生方同士の衝突の時にはラプラス教頭が出てくると収まりますし」
「僕だってアーチェリー部で同じ顧問としてとても親しく接してくれて助かっています」
確かにそれはそうかもしれないがとラプラスは思う。
「それに、なんといっても校長の暴走は教頭にしかとめられないと思います」
しかし、それは私である必要があるのだろうか。
「私は校長の付き人なんですかね」
その言葉を発するとラプラスは自分の意志で喋ることが出来なくなった。
溜まっていたストレスを吐き出すように、次から次へと言葉が出てきた。
ローゼンの事から有栖学園の経営のことまで。
自分のやっていることに意味はあっても、自分である意味はあるのか。
蒼星石は何も言わず話を聞いた。

喋り終えてある程度落ち着くと、
さっきまでラプラスの心にあった鬱々とした気分は、少しだけ和らいでいた。
が、それと同時に一教師である蒼星石に愚痴を零したことを少し後悔していた。
人一倍気の利く先生であるために余計な心配をかけてしまったからであり、
また、どちらかと言えば蒼星石先生も頼られることの多い先生に対して、
なんだか愚痴を零した自分が情けなく思えてしまったからである。
意外なことにラプラスが喋り終えた後も蒼星石は一言も喋らなかった。
黙ったまま残っていたお弁当を食べ始めていた。
ラプラスもそれ以上は何も喋らずにただ空を眺めていた。
青い空には一片の雲が漂っていた。

「ちょっと蒼星石助けてですーー!」
蒼星石がご飯をちょうど食べ終えたときに翠星石が校舎の窓から顔を出して叫んでいた。
「どうやら行かなきゃいけないみたいです」
苦笑しながら蒼星石は呟いた。
立ち上がって一歩踏み出したところで、蒼星石は振り向いた。
「……僕は教頭という大変な立場にはいないので教頭の苦労がわからないですけど」
一呼吸置いて蒼星石は付け足した。
「でも、僕はこの学園が好きですし、それは教頭も同じだと。僕はそう思っています」
それでは、といいながら今度こそ翠星石のところへ駆けて行った。
ラプラスは一人残った後にまた少しいろいろと思考を巡らせ、
紙パックの中に残っていた野菜ジュースをすべて飲み干した。
秋とはいえ、長時間日光に当てられていたために、酷くぬるく後味は良くなかったが、
仕方のないことだと割り切って、重い腰を上げ職員室に向い歩き始めた。

ラプラスが去った後の中庭には、爽やかな秋風が吹き抜けていた。