ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 狂気の嵐

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いつもは、何事もなく過ぎる毎日の朝。
起きることと言ったら、校長の不真面目極まりない朝礼ぐらいだろうか。
そんな、いつもの朝の職員室に、狂気の嵐が吹きぬけようとは、このとき真紅は思いもしていなかった。

規則正しく、毎朝同じ時間に登校する真紅は、今日もその時間に職員室へと足を踏み入れた。

「今よぉ!」
「了解かしらー!」

突然の水銀燈の号令とともに、金糸雀が真紅のもとへと突撃を開始する。
その大声に驚いた真紅は、いともたやすく金糸雀によって羽交い絞めにされてしまった。

「ちょっと、放しなさい、金糸雀」

圧倒的に不利な状況であろうとも、真紅は冷静さのこもる声で金糸雀に告げる。

「少しの間の我慢かしら! 安心するかしら!」

何を安心すればいいのかしら、と、真紅は心の中で思う。
だが、どうせまた、水銀燈のくだらない悪巧みだろうと理解し、その矛先を水銀燈へと向ける。

「今度は何の悪巧みかしら、水銀燈」
「そんな物騒なこと言わないでぇ、真紅ぅ。ちょっとコーディネートしてあげるだけよぉ」

何がコーディネートよ、私の美貌は完璧なのだわ、と、真紅は心の中で強く反論し、この拘束を解きにかかろうとする。
しかし、思いのほか金糸雀の力は強く、振りほどくことができなかった。
真紅が、金糸雀って、意外と力持ちなのね、などと考えている間に、水銀燈が、ワックス片手にこちらへとやってきた。

「それでいったい何をするつもり?」
「何って、真紅っていつも同じ髪型だからぁ、イメチェンさせてあげるのよぉ」

そんな水銀燈の答えに、真紅は、あなただっていつも同じ髪型じゃない、と、言い返すと

「私は自然体でも発する美貌のオーラがあるからいいのよぉ。真紅にはそれがないからかわいそうだと思ってぇ」

と、水銀燈は、あわれみの目を真紅に向けながら言った。

「大きなお世話なのだわ」

そんな真紅の言葉に耳を貸さず、水銀燈は真紅の髪型のコーディネートにかかる。
ツインテールを形成するためのリボンを解き、髪を下ろしたところで、水銀燈はワックスを手に取った。
そのワックスを十分に手になじませ、髪型のセットを始める。

作業が始まってからの真紅は、思いのほか静かで、水銀燈も金糸雀も、これは予想外であった。
だが、その姿からふつふつと湧き上がる闘志に、二人は気付くことはなかったが。

そうしてる間にも、水銀燈の華麗な手さばきが、真紅の大量の髪の毛を、新たな姿へと昇華させてゆく。
そして、仕上げのヘアスプレーを吹きかけ、髪型を固めたところで作業は終わった。

「プーッ! 何ですか真紅その髪型は! どこの昭和のヤンキーですか!? 腹いてぇですぅ!」

作業が終わった頃に、職員室へとやってきた翠星石は、リーゼントスタイルの真紅を見て、開口一番に笑い転げる。
しかし、真紅の視線が翠星石へと向いたその瞬間、翠星石は凍りついた。
真紅の目には、復讐の炎が燃えさかり、今にも爆発しそうな勢いであったからだ。
そして、すでに職員室にいた雛苺に、目線で何かを訴える。
雛苺は、その何かを一瞬で判断した。むしろ、あまりにも迫力あるその姿に、支配されたかのように。

狂気の嵐は、まだ吹き始めたばかりである。



一仕事終えて、ヤクルトを味わっていた水銀燈の背後に、狂気が迫る。
だが、それに気付く間もなく、水銀燈は、真紅に操られた雛苺によって、羽交い絞めにされてしまった。

「ちょっと! 何するのよ!」

しかし、水銀燈の言葉は真紅には届かず、真紅は黙々とワックスを手になじませる。
その真紅の不気味な姿に、水銀燈はたまらず折れる。

「そ、そんなに怒ってるの? そ、そうねぇ、私が悪かったわぁ、こ、今度何かおごりましょうかぁ……?」

真紅はなおもワックスをなじませている。その一動作ごとに、水銀燈への復讐の想いをこめて。

「し、真紅、聞いてる? 私が悪かったわぁ、だから許してぇ!」

水銀燈の悲痛な叫びも、狂気に支配された真紅には届かない。
そして、手に十分にワックスをなじませた真紅は、その想いに満ちた両手で、髪をわしづかみながら一言

「コーディネートしてあげるのだわ」

と、満面の笑みで水銀燈に答えた。

「い、嫌ァァァァァァァァァァァァァァ!」



「で、真紅ぅ、どうするのよこれからぁ……」
「このまま授業に行くのは厳しいわね……」

狂気の嵐は過ぎ去り、静けさを取り戻した職員室では、今日び、殆ど見かけることの無いだろう昭和のヤンキー二人が、
職員室の隅っこで、これからどうするかを話し合っており、あえてこの二人のことに触れないように、残りの面々が、
今日の授業の準備に取りかかっていた。

「ねぇ真紅。いい考えがあるんだけどぉ」
「私も同じことを考えていたのだわ」

この、二人の阿吽の呼吸の会話を、残りの面々は恐々としながら聞き耳を立てていた。

「話が早くて助かるわぁ」
「まずはあの子から行くとしましょうか」

いったい何が起こるのだろうか。皆の心は、おそらく起こるであろうその災禍に、自分が巻き込まれないことを祈るばかりであった。
やがて、話を終えた二人は、つかつかと、職員室の床に地獄の調べを奏でながら、ある教師の席までやってきた。
そして、その教師を羽交い絞めにし、慣れた手つきで狂乱の演舞を始めようとしていた。

「な、何するですかァ! 放しやがれですぅ!」

狂気の嵐は、再び、職員室に吹き荒れる。





「あれ~? みんなどうしたの~? 何、今日なんかのお祭り? なんなら先に言ってくれれば盛大に準備したのに~」

いつも通り、遅い時間に職員室へとやってきたローゼンは、教師一同の姿を見て、のんきに席に着きながらそう言った。
そんなローゼンを気にもせず、リーゼント姿の彼女達は、ローゼンへと、一歩、また一歩と近付く。
その異様な姿にやっと気付いたか、ローゼンは逃げ出そうとするが、あっと言う間に背後に回られた雪華綺晶によって、
自らの席へと拘束された。
皆が思い思いにワックスを手になじませる。それは、さながら怪しい宗教団体の祈りのような光景であった。
そして、最後の宴が、今、ここに始まった。

「アッー!」

狂気は、伝染する。