「最終回」
真紅「・・・・・・・・」
ある日の朝の職員室、いつもはキリっとした佇まいを見せていた真紅なのだがこの日は酷く沈んでいた。それは話かけるのも躊躇わすほどだった。
そんな真紅が醸し出す重い空気を感じながら蒼星石は隣にいる翠星石に話しかけた。
そんな真紅が醸し出す重い空気を感じながら蒼星石は隣にいる翠星石に話しかけた。
蒼星石「ねぇ・・真紅先生どうしたのかな・・?まるでこの世の終わりみたいな顔してるけど・・」
翠星石「あぁ、きっと原因は昨日のくんくん探偵ですよ」
そう言われて蒼星石は昨日のVIPに
『くんくん探偵最終回来るぞ!』
『くんくん\(^o^)/オワタ!』
などのスレが乱立していたことを思い出した。
『くんくん探偵最終回来るぞ!』
『くんくん\(^o^)/オワタ!』
などのスレが乱立していたことを思い出した。
どうやら真紅が愛してやまないくんくんのTV番組『くんくん探偵』が来週で最終回を迎えるとのことらしい。
そういうことか、と蒼星石が一人納得しているとそこに授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
そういうことか、と蒼星石が一人納得しているとそこに授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
各々授業があるクラスへ向かう教師達だが、真紅は立ち上がろうともせず虚ろな目をしたまま一点を見つめ、ただひたすら「くんくん・・・くんくん・・・」と連呼しているだけだった。
真紅の異様な雰囲気に怖じけついたがさすがに放っておく訳にも行かないので蒼星石はしかたなく真紅に近づいていった。
蒼星石「真紅先生・・授業始まるよ・・教室行かなきゃ・・ねぇ・・」
恐る恐る真紅に話しかける蒼星石。真紅はそんな蒼星石を表情は変えず、目線だけを送りしばらく見つめるとゆらりと立ち上がった。
その足には力が入っておらずフラフラとした足つきで出口へ向かい歩き出した。
その足には力が入っておらずフラフラとした足つきで出口へ向かい歩き出した。
蒼星石「真紅先生、大丈夫かなぁ?」
翠星石「相当ショックなようですぅ。まぁ真紅先生のくんくんへの溺愛っぷりは異常なほどでしたからねぇ」
そんな二人の心配をよそに真紅は沈んだ顔のまま職員室を後にした。
真紅「なぜ・・?なぜなのくんくん・・もう・・お別れなの・・?私達の関係はもう終わってしまっているの・・?」
そんな被害妄想的な事を呟きながらなんとか教室まで辿り着いた。そして教壇に登ると一言
真紅「今日は・・自習にするのだわ・・静かにしていて頂戴・・」
普通授業が自習になれば生徒からの歓喜の声が上がるが、真紅の異様な雰囲気に生徒は誰も声を出さない。
生徒の中にもくんくん探偵を見ている生徒は多く、真紅の沈んでいる原因を理解した者が数人いた。やがてその生徒達が周りの友達にヒソヒソとその事を伝えることで、ようやくクラス全員が理解したようであった。
生徒の中にもくんくん探偵を見ている生徒は多く、真紅の沈んでいる原因を理解した者が数人いた。やがてその生徒達が周りの友達にヒソヒソとその事を伝えることで、ようやくクラス全員が理解したようであった。
真紅は椅子に座りまた虚ろな目をして重苦しい空気を出している。こんな空気では友達と話し続けている訳にもいかない。仕方なく生徒達が自習を始めようとしたその時、一人の生徒が沈黙を破り真紅に話しかけた。
生徒A「先生~くんくん探偵終わっちゃうんですよね~!俺も好きで見てたから残念ですよ~!まぁ俺にはハルヒのDVDがあるからいいんですけどw」
この生徒Aはいわゆるお調子者で、クラスの重い空気に耐えきれずに和ませようとこんなことを言ったのだが、その軽い口調が真紅の逆鱗に触れてしまった。真紅の無表情だった顔がみるみる内に怒りの表情へと変わる。
真紅「ちょっとあなた!この非常事態にいったい何を言っているのだわ!終わって残念!?だったらその半笑いは何!?」
ツカツカと生徒Aに歩み寄り巻くしたてる真紅。生徒Aは口ごもり何も言えなくなってしまった。
真紅「あなたの言う好きとはその程度の物なのでしょう!?私の想いを理解できないくせに軽々しく言ってほしくないのだわ!」
普段生徒にこんな酷い事を言う真紅ではないがこの日はまずかった。真紅の怒りはまだ治まりそうもない。
真紅「それと何よハルヒって!あんな訳の解らない物とくんくんを比べないでほしいのだわ!そもそもくんくんとは・・」
真紅先生もハルヒ知ってるんだ、と数人の生徒が思ったがもちろんそんな事を口に出せる状況ではない。真紅によるくんくん講座が始まってしまった。
一通りそれが終わると今度は自分がいかにくんくんを愛しているかという話になった。
異常な程の熱意でくんくんを語る真紅。それは自習をするのもはばかられる勢いだった。
異常な程の熱意でくんくんを語る真紅。それは自習をするのもはばかられる勢いだった。
結局真紅のくんくん話は授業終了時間まで続き、その間生徒達は何もできず真紅の話を聞いていることしかできなかったそうな。
そして一週間後、ついにこの日が来てしまった。そう、今日はくんくん探偵の最終回日だ。
番組が始まる前からTVの前にいる真紅の周りには涙を拭いたティッシュが乱雑している。
そして番組が始まるとまた滝の様な涙が溢れた。それをなんとか拭い、くんくんの勇士を目に焼き付ける真紅。くんくんは無事に事件を解決することができ、物語はハッピーエンドを迎えた。
そして番組が始まるとまた滝の様な涙が溢れた。それをなんとか拭い、くんくんの勇士を目に焼き付ける真紅。くんくんは無事に事件を解決することができ、物語はハッピーエンドを迎えた。
真紅「よかった・・よかったのだわくんくん・・ありがとう・・今まで本当にありがとう・・」
涙を拭いながらエンディングを見守る真紅。やがてエンドロールも終わりを告げた。
真紅「あぁ・・本当に終わってしまうのね・・」
真紅がそう呟き力無くTVを消そうとしたその時
くんくん「やぁみんな!今までくんくん探偵を応援してくれてありがとう!」
なんとTVにくんくんが現れたのだ。真紅は慌ててTVのスイッチに伸ばした手を戻し姿勢を正した。
真紅「くんくんからの最後のメッセージなのだわ!見届けなくては・・」
そしてTVの中のくんくんが続ける。
くんくん「今日でくんくん探偵は最終回です。今まで僕の活躍を見守っていてくれてありがとう!」
真紅「そんな・・そんな事当然よ・・これからも応援するわ・・だから!だから行かないで頂戴くんくん!」
そんな真紅の叫びが通じたのか、くんくんは以外なことを口にした。
くんくん「今日で『くんくん探偵』は最終回ですが・・来週からは曜日と時間帯を変えて『くんくん探偵ツヴァイト』が始まりまーす!」
そう、くんくん探偵は終わるのではなく移籍という形を迎えるのだった。
その事を理解すると真紅の沈んでいた顔が歓喜の笑顔へと変わった
その事を理解すると真紅の沈んでいた顔が歓喜の笑顔へと変わった
くんくん「という訳で来週からもよろしくんくん!」
真紅「信じていたのだわくんくぅーん!!!」
真紅は手に持っていたくんくんのぬいぐるみを力いっぱい抱き締め、心の底から叫んだ。
次の日の職員室、眩しいほどの笑顔を見せる真紅。
真紅「みんなおはようなのだわ!今日も一日張りきって頂戴!」
そんな真紅の豹変を見て二人が話す。
翠星石「まったくぅ、先週一週間死にそうな顔してたくせにえらい変わり様ですぅ」
蒼星石「まぁまぁ、また元気を取り戻してくれてよかったじゃない」
翠星石「せっかく小言を言われないからイタズラしほうだいだったですのにぃ」
昨日のくんくん探偵は二人も見ていたので真紅の変わり様は容易に理解できた。
そして授業の開始を告げるチャイムが鳴り響くと、真紅はスキップ混じりの足取りで職員室を後にした。
翠星石「ほ、本当にえらい変わり様ですぅ・・」
蒼星石「そ、そうだね・・」
そして教室。授業を始めようとする真紅だが
真紅「そういえば先週のくんくんの話がまだ途中だったわね・・続きを話してあげるのだわ!」
そう言ってはまた一人でくんくんについて話し始めた。
生徒達はまたか、と苦笑いをするしかなかったが、先週とは違い幸せそうに話す真紅を見て穏やかな気持ちで話を耳にした。
生徒達はまたか、と苦笑いをするしかなかったが、先週とは違い幸せそうに話す真紅を見て穏やかな気持ちで話を耳にした。
終わり