ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 彼らの旅立ち

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注:オーディルとコリンヌは姉妹。

 卒業。
 それは、人生において階段を一歩昇った事を実感させる行事。
 社会に出る前においての事前準備を終え、若者達は様々な道を歩き出す。
 大学へ行く者。専門学校へ行く者。仕事社会へ行く者。
 様々である。
 三年間(場所によっては四年間)の教育期間は、楽しくも苦しく。
 それもまた良い思い出となる。
 あの時、こんな事があったよな。と、将来同窓会等で笑い話として話せるかもしれない。
 あの時、こうすれば問題を解決できた。と、将来において何か問題にぶち当たった時の解決につながるかもしれない。
 過去を顧みて何かを振り切れるかもしれない。
 卒業とはそう言うモノなのだろう。

 卒業式当日。
 卒業する生徒達は、各々の教室に居り何事かを話ている。
 卒業した後、進学? 就職? とか
 卒業式終わった後、遊びに行かないか? とか
 そんな他愛の無い会話をしている卒業する生徒達。
 そんな他愛の無い会話も今日で最後。
 正確には、生徒としてのとなるが……
 そんな柔らかな喧騒に包まれた教室の扉が開き教師が入ってくる。

「アンタ達ぃ~卒業式後、問題起こすんじゃないわよぉ~」

 などと、言って入ってきたのはこのクラスの副担任である水銀燈。
 何時もの服装と違い、礼服をビシッと着こなした水銀燈。
 その直ぐ後に、担任である薔薇水晶が教室へ入ってくる。
 薔薇水晶も水銀燈と同じく礼服をキッチリと着こなしている。

「まだ……卒業式開始まで……時間あるから……静かに自由にしてね……」

 と、薔薇水晶が何時もの調子でそんな事を言うと、生徒達は笑ってしまった。
 そんな生徒達に首をかしげる薔薇水晶だったが、のほほんと水銀燈の隣へ行き水銀燈と何事かを話し始めた。
 生徒達も、また各々会話を始める。

「へぇ桜田君は、就職するの?」
「ん、まぁこの前体験入社した服とか作ってる会社からこないか? って言われてて」
「良い事ね」
「ま、最初は雑用からだろうけどね」

 と、桜田ジュンと柏葉巴がゆったりとした雰囲気でそんな話をしている。

「ジュン。その会社って何処?」

 巴の隣で、その話を聞いていた柿崎めぐが唐突に尋ねる。

「なんだよいきなり……パンプキンシザーズって言う会社だ」
「ふぅ~ん」
「お前……自分から聞いてそう言う反応かよ」

 はぁ……と、ジュンは肩をガックリと落とした。

「めぐは、看護士専門学校に行くんだったわね?」
「そうよ~。まぁ私の身体が身体だったから良い経験になると思うしね」
「元病弱女が、看護士ねぇ~……」
「何よ、文句ある?」
「別に、応援はする。がんばれ」
「あ、うん」

 ジュンの言葉に、気恥ずかしいのかめぐは少々そっぽを向きながら頬を軽く掻いた。

「柏葉は何処だっけ?」
「実家の道場を手伝うって形になるかな?」
「あぁ……柏葉流守護剣術だっけ? 親父さんと一緒に教えるのか?」
「そうなると思うけど、まだ私免許皆伝じゃないから、しばらくは道場の生徒達を教えつつ私も教えられるって感じかな?」
「私通おうかしら?」
「お前なぁ……看護士になる為に専念しろって」
「うん。私もそう思う」

 と、二人にそういわれめぐは、冗談だって! と、慌てた様に言う。
 そんなめぐを見て、絶対本気だったな……と、ジュンと巴は笑みを浮かべた。

「良く考えてみると結構就職する人多いーかな」
「由奈さんは、進学みたいよ?」
「へぇ? 何処に?」
「代々……」
「おk。わかったもう言わなくて良い」

 と、ジュンは巴の言葉を遮ってそう言う。
 そんなジュンに巴は、首を傾げたがまぁいいかと考えた。

「オディールとコリンヌは、実家の家業を継ぐて言ってたわね」
「あ~……なんだっけ?」
「ジュン。同級生の事ぐらいちゃんとしておきなさいよ……」
「うるせぇ」

 めぐの言葉に、苦虫を噛み潰した表情を浮かべながらそう言うジュン。

「フォッセー財団のえーと……」
「お前だってわかってねぇじゃねぇか」
「其の理論は、おかしいわ桜田君」
「……そうだな」
「フォッセー財団のなんとか部門に着くって言ってたわ。一応、社員としてって言ってけど」

 めぐは、巴とジュンのやり取りをさらっと流してそう告げる。
 めぐの言葉に、なんとか部門ってなんだよ……とジュンは思いながらもとりあえず頷いておいた。
 ふと、ジュンは後ろを振り向く。
 其処には、容姿そっくりの女子生徒が二人。

「ふたりは」
「フォッセー」
「いや、わからん。意味がわからん」

 うん、やった私達もわからないわね。オディール。
 そうですね。コリンヌ御姉様。
 と、ジュンの言葉にそう返す女子生徒二人ことコリンヌ・フォッセーとオディール・フォッセー。

「ちなみに、私達が所属する部門は……」
「戦争孤児救済等を行なう支援・援助が主な部門です」
「それだけを」
「いいたかったのですよ」

 と、言うや否や二人はさっさとジュンの後ろから歩き去っていった。
 呆気にとられた表情になるジュン並びにめぐと巴。
 そんなこんなを話している内に、チャイムが鳴る。
 丁度そのチャイムは、一時間目の授業終了を伝えるチャイムであり……
 今回の卒業式の開始を告げるチャイムでもあった。
 話し合っていた水銀燈と薔薇水晶は、話をやめ教壇の方へと歩み改めて生徒達を見る。
 チャイムの音を聞いた生徒達は、既に会話をやめ卒業式らしいキリッとした表情になっていた。

「……みんな……廊下に並んでください……」
「さぁ、学校生活最後の晴れ舞台よぉ……気合入れていきなさい」

 と、水銀燈の言葉を最後に生徒達は教師から廊下へと出て整列を始める。
 やはり喧騒はあるもので……和気藹々とした雰囲気の元、生徒達が整列した。
 既に、会場には生徒達の親がパイプ椅子に座って待っている。
 PTAの会長や、校長に教頭等の人物もスタンバイしている。
 あとは、主役が入場すればいいだけ。
 生徒達が整列した後、会場の入り口前で生徒達は一旦止まる。
 そして……

【3-A 入場】

 と、アナウンスが入る。
 それと同時に会場の扉は開かれ教員を先頭に生徒達が進む。
 もう喋る者は居らず、皆無言でそして真剣な面持ちで会場に入場したのだった。
 卒業式は恙無く進んでゆく。
 PTA会長の祝辞や生徒代表による卒業すると言う事についての話。
 教頭による卒業生とへの為になる話。
 その後、卒業証の授与。
 次々に、そのクラスを受け持つ教員達が、生徒達の名前を呼び呼ばれた生徒は、元気良く返事をして校長がいる
 ステージの上へ上がってゆき、卒業証を受け取る。
 かなりの時間が経過して、卒業証が総ての生徒へと渡される。
 最後に、校長からの話となった。

「諸君! まずは、卒業おめでとう! と、ありきたりだが心からの言葉を送る!
 諸君らは、今日を持ってこの有栖学園を卒業する! と、言っても四月の入学式までは、学園の生徒と言う形になるから
 問題はおこすなよぉ~! せっかく就職、進学がパァになっちまう!
 で、諸君らは社会人になる! 苦しい事や嫌な事が増えると思うが新しい発見や楽しみを見つける事が出来ると思う!
 苦しい事があったなら、今までの学園生活を思い出せ!
 嫌な事があったなら、蹴飛ばしてしまえ!
 それでも、駄目だったら! 学園に来い! 社会人になっても! 諸君らは、有栖学園の生徒である事に変わりは無い!

 だから、諸君! もし社会で苦しい事や嫌な事! 迷う事があったならば有栖学園に来い!
 私達が、相談に乗ろう! 共に解決策を見つけよう!
 諸君! 社会とは、学園生活の様に楽しいとは限らない! その事を忘れないで欲しい!
 と、まぁかたっくるしい言葉になってしまったが……
 以上をもって! 有栖学園の学園長である私からの諸君らへの祝いの言葉です!
 最後に!!」

 と、ローゼンが、一度頭を下げた後直ぐに頭を上げて不敵な笑みを浮かべ……

「サプライズ!」

 と、ローゼンが叫ぶとバンッ! と言う大きな爆音と共に会場の四方八方から紙吹雪が舞い起こる。
 生徒達の驚く顔と笑顔を見て、ローゼンはもう一度頭を下げてステージから降りた。
 そして、しばらくして卒業生徒退場になる。
 クラシックな音楽……誰が選曲したのか分からないが卒業式には不釣合いなベートヴェンの歓びの詩が会場に流れる。
 生徒達は、親やPTA会長、校長や教頭からの歓びの視線を受けながら退場した。

 卒業生徒たちは、己の教室へと帰ってくる。
 もうその生徒達の中には、涙目になっている者や感極まって泣いている者もいる。
 笑顔を浮かべている者や相変わらず真剣な表情な者も居る。
 教室に入り、雑談しはじめる生徒達。
 泣いている者の背を撫でてやる生徒もいる。
 皆、良い笑顔を浮かべていた。

 教員も笑みを浮かべ、生徒達が己の席に座らないのも構わず話を始める。
 生徒達は、教員の話が始まるとしだいに声が少なくなり、教員の言葉に耳を傾けた。

「おめでとう……校長が言っていた言葉……みんな忘れないでね?」
「そ、貴方たちは、十年たっとうが百年経とうがこの学園の生徒である事には、かわりないのだからねぇ?」

 と、薔薇水晶と水銀燈の言葉に「はい!」と返事を返す生徒達。
 其の後は、三年間に亘って提出されてきたレポートや美術のスケッチブック等を生徒達に返却。
 それらが終了すると自由帰宅となる。

「先生! これあげます!」

 と、水銀燈にめぐが花束を手渡した。
 水銀燈が、ちょっと困った表情を見て薔薇水晶の方を見れば……
 薔薇水晶の方もジュンから花束を受け取っていた。
 なんでも、生徒達全員がお金を集めて購入した花束らしい。
 水銀燈は、まだ教室に残る生徒達に出来うる限り長持ちさせるわぁ~などと告げて笑った。
 薔薇水晶も、水銀燈と同じ様な事を言い、枯れはじめたら押し花にするから……と、やんわりと笑みを浮かべた。
 そして、時間の経過と共に生徒達は帰宅し一時間も経過すれば、教室はガランとしたものになった。

「少しの間寂しくなるわねぇ? 薔薇水晶先生」
「そうですね…………」
「色々あったわねぇ~」
「今回の生徒達は特に……そうでしたね……」
「そういえば、校長が打ち上げやるって言ってたわぁ……」
「モチロン……参加します」

 生徒達が居なくなった教室で、そんな他愛の無い会話をする水銀燈と薔薇水晶だった。

 寒空の下、一人の男子生徒と四人の女子生徒が、校門前に居る。
 桜田ジュン。柏葉巴。柿崎めぐ。コリンヌ・フォッセー。オディール・フォッセー。
 が、色んな色を含んだ瞳で、校門前から見える学び舎を見る。

「色々あったよな」
「えぇ……」
「水銀燈先生には毎年会いにいくわぁ~」
「めぐ……その口調」
「似合いませんわ」
「うるっさぁ~い」

 と、五人は笑みを浮かべて笑う。
 しばらく他愛の無い会話をして笑い合う五人。
 そして、ピタッと会話が止まると五人は、改めて学び舎の方に向き直った。

「今まで」
「本当に」
「ありがとう」
「ござい」
「ました」

 五人は、そう言って学び舎に頭(こうべ)を垂れた。
 頭を上げ五人は、お互いの顔をふと見る。
 ジュンは、何時もの様に飄々とした表情を浮かべ……
 巴は、何処か物悲しそうな表情を浮かべ……
 めぐは、少々涙目になりながらも笑顔を浮かべ……
 コリンヌは、優しげな笑顔を浮かべ……
 オディールは、少々寂しげな笑みを浮かべていた。

「じゃぁ……」
「「「「「また(な(ね(ねぇ~(ですわ(ですね」」」」」

 と、五人は各々帰路についたのだった。