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金糸雀のおみくじ

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匿名ユーザー

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  元旦。
  近所の神社の境内で、振り袖姿の二人がばったりと出くわす。

金「明けましておめでとうなのかしらーーっ」
薔「……今年もよろしく……」

  お参りした後、一緒におみくじを引くことになった。

薔「……金糸雀先生から、どうぞ……」

  先輩を立てる薔薇水晶。
  おみくじ箱を受け取った金糸雀はごくりと喉を鳴らし、真剣なまなざしになると。

金「凶出るかしらーーっ、凶出るかしらーーっ……」

  一心にそう念じ始めた。
  薔薇水晶は、かすかに小首を傾げる。

薔「……なぜ、凶……?」

  そう問われると、金糸雀は少し戸惑った表情を浮かべて。

金「実は……カナは生まれてこの方、おみくじで吉の一文字にお目にかかったことがないかしら……。去年とおととしは二年連続で大凶を引き当ててしまったから、今年はせめてただの凶に留めたいところかしら……」
薔「……金糸雀先生、かわいそう……」

 金糸雀の寂しげな様子に、薔薇水晶は、ほろりと目元を潤ませる。
 表情をぐっと引き締めると、おみくじ箱を抱える金糸雀の手に、そっと自分の手を重ね。

薔「……今年は大丈夫……。私は今までに一度も凶を引いたことがないから、先生に私の運を分けてあげる……」
金「本当かしらっ!? ……でも、そんなことをして、もしも薔薇水晶のツキが下がったら……」

  いったんは表情を輝かせたものの、すぐにトーンダウンしてしまう金糸雀。
  しかし、薔薇水晶の誠実なまなざしに、意を決した。
  がらがらと箱を揺さぶって、番号の記された棒を取り出す。

金「四十九番かしら……」

  不吉な数字に、不安をよぎらせつつも、巫女さんから折り畳まれた紙片を受け取る。
  果たして、金糸雀の今年一年の運勢は?

二人「……末小吉……」

  たらりららりらりらりら~~♪
  天使が舞い降りてきたようだった。
  二人は手を取り合って喜んだ。

金「こんなに嬉しい一年の始まりは、初めてかしら~~」

  お互いに涙ぐんで祝福した。

金「このおみくじは、額に飾って家宝にするかしらーーっ」

  そう言って、手にしたおみくじを天にかざす。どこまでも澄み切った青い空。まぶしく降り注ぐお日さまの光。



  と。

金「……あれ?」
薔「……どうかした……?」
金「おみくじが……何だか二枚重なっているような……」

  何かの手違いだろうか。
  爪を立てて、貼りついた二枚を引きはがしてみると、もう一枚に書かれていた文言は……。

二人「……大……凶……」

  がーーーーーーーーんっ!!
  一陣の北風が吹き込んできて、金糸雀は背筋をぞくぞくと震わせる。にわかに日もかげり出したような。

金「……これって……これって……、末小吉から大凶を差し引いて、末凶ってことかしらーーっ!?」

  涙腺が決壊した。滝のような涙があふれ出した。

薔「……あ、あの……」

  もう目も当てられなかった。かける言葉が全く思いつかない。

薔「……とりあえず、何か美味しい物でも、食べに行きません……?」

  ぐずぐずと泣きじゃくる金糸雀は、促されて歩き出した。
  べしゃり。
  足元をよく見ていなかったから、水たまりを盛大に踏み抜いた。

金「うわわわわわわーーっ、振り袖が、振り袖がーーっ。染みになってしまうかしらーーっ!!」

  金糸雀は今年も、前途多難なようだった。

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