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教科書が教えない歴史『特攻の母』

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「と、言う訳で薔薇水晶先生に教えてもらったのですが~
 先生なんかしってる?」

 と、声をかけたのは服や人形を作る腕がマエストロクラスな
 ごく普通(普通か?)の青年、桜田JUM。
 JUMの言葉に、一瞬の考察の後、その声をかけられた先生
 真紅は、「一つぐらいなら知ってるのだわ」とJUMに告げた。

「どうやら、薔薇水晶先生は日本と他国の友情の歴史を話したみたいだから
 私は別の……そうね……誇り高い歴史を生きた女性達の一人について話すのだわ」
「へぇ……誇り高いですか?」
「そうね……今の時代に生きる私たちより遥に誇り高き女性達よ。
 その時代はそうしなければならなかったのかもしれないけれどね」
「で? その女性達の一人って誰です?」
「鳥浜トメと言う名の女性よ」

 真紅は、腕を組みながらJUMにそう告げる。
 少々昔に教えてもらった事の為か、額にその綺麗な指を当てて
 思い出しながらJUMに話していく。

「一九四五年。昭和二十年の事ね……本当にごく最近の事だわ
 その三月に、米軍が硫黄島を占領。その矛先を沖縄に向けたのだわ
 この戦いに負ければ日本の敗北は決定的な物で、
 当たり前のように、沖縄を絶対死守する作戦が敢行されたのだわ」

 たしか……と、瞼を閉じてん~と小さく唸る真紅。

「沖縄特攻作戦。そう……沖縄絶対死守の為に行なわれた特攻。
 片道の燃料だけを積み、爆弾を搭載した機体もろとも敵艦に体当たりする
 最強にして最後の必殺である肉弾攻撃なのだわ……
 この世界の戦争史上類を見ない凄まじい攻撃を遂行したのは……
 JUM……貴方よりちょっと年上の二十歳前後の若者達よ……」

 段々と思い出してきたのか、真紅は流暢な口調で話しを進めていく。

「この作戦の為に最前線の基地となったのが、太刀洗陸軍飛行学校分教所が存在した
 鹿児島県の知覧。鳥浜トメは、ここの特攻隊の隊員から『お母さん』と慕われていたのだわ。
 トメと飛行兵との交流が始まったのは、トメが経営していた『富屋食堂』が
 一九四二年、昭和十七年に軍指定食堂となった為なのだわ」

 まだ、作戦が開始される三年前の事ね。と、JUMに告げる真紅。
 たちながら話すのが疲れたのか、設置してあったベンチに腰掛けると貴方も座りなさいとJUMに言う。

「でも、その交流も沖縄特攻作戦が開始されると別離の悲しい体験に変わったのだわ……
 全国から集まってくる若者達、わずか四、五日の滞在で二度と帰る事の出来ない沖縄攻撃に出る。
 帰りたくても帰る事など出来ない。それが特攻なのだわ……
 『特攻の方々が征かれるときはにっこり笑って、嫌とも言わず、涙一つ落とされませんでした。
  さぞ肉親の方々に逢いたかっただろうに、日本を勝たせる為に早く征かなければと、ただソレばかり言っていました』
 純真で『幼児の様にやさしかった』特攻隊員をトメは親身になって世話をしたのだわ……
 さながら、本当の母親の様にね?」

 其処で一息つく真紅。話詰めでちょっと疲れてきた感じが眼にとって見える。

「トメは、彼らが注文した食事が終わると、お茶や牡丹餅、寿司や夜食、焼酎やつまみを出したのだわ。
 農家から取り寄せた新鮮な野菜や卵を食べさせたり、物不足で手に入らない石鹸や薪を買ってきて入浴させたり……
 これらは当たり前の様な事に聞こえるかもしれないけど、違うのだわ……
 今、私たちの時代では今あげた物は気軽に買える手に入る……でも、トメの時代では
 ソウやすやすと手に入る品物ではないのだわ……どれだけ苦労をしたのか想像もつかないのだわ……
 それに、託された遺書の送付や遺族に手紙を書いて知らせるなど、本当に尽くしたのだわ。
 トメは、『明日には命を捧げていく方からお金はいただけない』と言う気持ちから
 ほとんどお金を取る事をしなかったのだわ……ほんと、この話を何処かのサボリ教員に聞かせてやりたい物だわ」

 と、真紅は苦笑しながらそういうと、誰に対して言ってるのか瞬時に分かったJUMも苦笑をもらした。

「まぁ……その為にトメは、自分の持っていた着物、飾り棚、衝立(ついたて)などの調度品、
 家財道具まで売り払って特攻隊員達の世話をしたのだわ。
 でも、特攻隊による決死の戦いも無駄に終わってしまったのだわ。まぁ無駄と一言で片付けられないのだけど
 功奏さず、日本敗退を迎えた。それとともに特攻隊に対する世間の目は冷たくなった。
 特攻隊を作ったのは誰? 特攻隊として特攻しろと言ったのは誰? まったくもって遺憾な話なのだわ……
 しかし、トメは隊員たちへの追慕を少しも変えず
 『国のために死んでいったあの若者達を忘れさせてはならない』と、一人で飛行場の片隅に
 小さな棒切れを立てて墓作りを続けていたそうよ」

 世間の目の言葉に当たりで真紅は、苦虫を潰したような表情を作る。

「やがて、遺族や関係者を動かし、一九五五年、昭和三十年ね。本当にごく最近の事なのだわ
 その九月に『特攻平和観音堂』を建立、毎日花と線香を持ち、慰霊と清掃が続いたのだわ
 今から十年前……正確な年数はしらないけど、十数年前には、観音堂の横に
 『知覧特攻平和会館』が建設され、特攻隊員の遺書や遺品が数多く陳列されているわ
 今では、全国から大勢の人々が訪れて、特攻隊員達の姿に目頭を熱くしてるといった感じだわ……
 コレも、戦後トメが特攻隊の人々の慰霊と顕彰(けんしょう)に身を捧げてきた
 献身的努力の賜物なのだわ……今の女性……私を含め、こんな事本心から出来る女性がいるかしら?」

 多分、ほとんどいないわね。と、苦笑しながらそう呟きをもらす真紅。

「トメは、特攻の母と慕われ続け、平成四年、八十九歳で死去したのだわ……
 本当にごく最近の事なのだわ……でも、この事を知ってる人は余り居ないのだわ」

 これで私の知っている話は終わり。と真紅はそう言うと自分の腕時計を見て眉を顰める。

「……長々と話しすぎてしまったのだわ……あと十五分二十七秒でくんくんが始まってしまうのだわ……」
「あ、録画しておきましたよそれ」
「……なんで録画してるのかわからないけど、後でダビングしてよこしなさい。いいわね?」
「へいへい」

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