ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 翠星石の如雨露

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~翠星石の如雨露~


翠「健やかにー。伸びやかにー。・・・やっぱり野菜に水をあげるにはこの如雨露でないと、ですぅ。」

ご機嫌で野菜の水遣りをする翠星石。
その翠星石を隣で見ていた生徒が何気ない疑問を漏らした。

生徒A「そういえば先生の如雨露はずいぶんと立派ですね。どこで買ったんですか?」

その問いに翠星石はすぐに答えず、少し笑いを浮かべた。不思議がるA。
そしてその後の授業で彼女はこう言い放った。

翠「今日の家庭科は教科書の・・・と言いたいところですが、さっきの休み時間にAがとてもいい質問をしやがったので急遽変更ですぅ!
  今日は翠星石の持っている如雨露を作ってくれた職人さんの工房を見学させてもらうですぅ!」

みんな驚く。みんな彼女の持つ如雨露が手作りのものとは知らなかったようだ。
しかし確かに風格は抜群だ。模様も非常に細かい。
生徒たちは社会科見学と聞き喜んで行く事となった。

道中も生徒たちは質問をする。しかし翠星石はあくまで見学で答えを得て欲しいようだ。

B「どうやってこんなすごい如雨露とか作るんですか?」

翠「ふふふ、着けば分かるですぅ。もうちょっと待ちやがれですぅ。」

この有様である。
そして数十分で一行は職人の工房に到着した。

翠「お邪魔するですぅ!・・・いらっしゃいますかぁ?」

景気良く挨拶する翠星石。その声を聞いて工房の奥から一人の初老の男性が現れた。

翠「お久しぶりですぅ!・・・この方が翠星石の如雨露を作ってくれた山田さんですぅ。」(名前は適当です)

翠星石はよくここに来るらしく山田さんとはかなり親しいようだ。
仕事柄そう多くの人が訪れることは少ないので嬉しそうだ。

山「おぉ久しぶりだね。ん、後ろの子供さんたちはどうしたんだい?」

ここまでのいきさつを話す翠星石。

翠「・・・というわけですぅ。どうか見学させて頂けないですか?」

山「うん、私の仕事に興味を持ってくれるとは嬉しいね。どうぞ見学していってくれ。」

いきなりの話にもかかわらず交渉は無事成功した。彼もまんざらでもなさそうである。

そして生徒たちは山田さんの工房に足を踏み入れた。
そこは綺麗に片付いており、有るものと言えば金槌、鑿、作業台、そして鉄板くらいのものであった。
周りには完成した作品が棚に並べてある。いずれも見事な出来だ。

C「早速ですが、如雨露はどうやって作るんですか?」

その問いに山田さんはこともなさげに答えた。

山「如雨露かい?ウチは他にも色々作っているんだが、こういったものはは「鍛金」という技法で作るんだ。」

翠「そ、そうですぅ。鍛金で作るですぅ。」

一応言ってはみるが翠星石自身も自信は無いようだ。苦笑する山田さん。

山「ははは、いきなり言っても難しいな。『鍛金』とは文字通り金属を鍛えて物を作るんだ。
  具体的に言えば鉄の板をこの金槌で叩くんだよ。」

感嘆する生徒たち。密かに翠星石も納得顔をしていたのはこの際触れないでおこう。

山「・・・君たちも美術で『板金』というものをやったことがあれば分かるかもしれないね。
  まぁ口で言っても分かりにくいからね。実際に打っているところを見てくれ。」

そう言って作業を始める山田さん。台の上に鉄の板を置き、右手に金槌、左手に鑿。
そしてかなりのスピードで槌を振り下ろす。

カーン!カーン!カーン!

工房に景気の良い音が響き渡る。その音の感覚はメトロノームのように正確だ。
数分間打っただけで山田さんは汗でびっしょりとなっていた。
少し手を休め周りを見渡す。

山「ふぅ、歳を取ると疲れやすくて困るな。・・・どうだい、誰か試しに打ってみるかい?」

それに名乗りを上げたのはクラス1の力持ちの生徒であった。自信満々である。

D「じゃあ俺にやらせて下さい。・・・うわっ、なんだこの槌は!?」

何とその槌は力持ちの生徒でさえ驚くほどの重さであった。何とか握りなおし金を打つものの、とても数分間続けることもできない。

山「気をつけてくれ。この槌で手を叩いてしまうと凄く痛いからね。」

確かにこの重さの槌をあれだけの速度で振るのだ。ミスをすれば骨も折れかねない。
再び山田さんは作業に戻る。その表情は真剣そのものだ。
見る間に何の変哲も無い鉄板が姿を変え、その表面に綺麗な模様が打ち出されてゆく。
それはこの段階でも見事な出来と分かる如雨露であった。

しばらく時間が過ぎ、仕事が一段落したところで生徒たちが質問できる時間が設けられた。
疑問に思ったことを遠慮なくぶつける生徒たち。

A「やっぱり仕事は大変ですか?」

山「もちろんそうさ。でも仕事が嫌だと思ったことは一度も無いよ。」

B「なぜこの仕事をしようと思ったんですか?」

山「ウチは代々この鍛金業を営んできたんだ。小さい頃から父親の仕事姿を見て技術を身につけたんだよ。
  そりゃ最初はうまくいかなくて親父にも何度も叱られた。でもその悔しさが私に火をつけたんだな。」

にこやかに答える山田さん。その顔には自信が漲っている。
そして最後の質問を聞いてその顔には今度は笑顔が溢れた。

C「この仕事をしていて嬉しい瞬間はどんなときですか?」

山「それはやっぱりウチの作品を買ってくれたお客さんから褒められることかな?
  ふふふ、そういえばそこの翠星石先生に例の如雨露をお渡ししたときの喜びようはすごかったな。もう子供のようにニコニコしてて。」

翠「・・・何で言っちゃうんですかぁ!」

赤面する翠星石。工房内は爆笑に包まれた。山田さんは語る。

山「君たちの目にはこの仕事は単調できつそうなものだと映るだろうね。
  でもこれを使ってくれる人が喜んでくれるのは我々にとって何よりも嬉しいんだよ。
  ・・・ただ今この仕事を選択する人は少ないんだよね・・・。」

そしてため息をつく。しかしそこに声がかかった。さっきの力持ちの生徒だ。

D「決めました!俺は卒業したら鍛金の仕事をしたいです!・・・今度は絶対あの槌を使えるようになってみせる!」

思いがけない申し出に山田さんは驚く。しかししっかりとした口調で告げる。

山「よし!よく言った。だがこの仕事の道は険しいぞ。それでもいいなら大歓迎だ!」

D「もちろんです!」

拍手が沸き起こる。最初に槌を持ったのがこの生徒であったから目立たなかったが、実はあの重さの槌を振れるのはそうそういないのだ。
彼はきっとすぐに槌をしっかり振ることができるようになるだろう。

翠「こんな早く就職が決まる人も珍しいですねぇ。でもやるからには頑張れよ!ですぅ。
  みんなも将来就職するときはどんな仕事であろうと誇りをもってやるですぅ!
  勿論翠星石も今の教師という職業に誇りを持っているですよ?」

生徒一同「はい!!!」

元気のいい返事が返ってくる。
現在の若い人たちがよく辞めるのは自分の仕事に自信を持てないからだという。
しかしこの見学を通じて翠星石のクラスの生徒は仕事に対する情熱の大切さをしっかり学べたようだ。

「好きなものこそ上手なれ」という言葉がある。
仕事自身を好きになればそれに対する技術も一緒についてくるのだろう。

翠星石は小声で呟く。

翠「ふぅ、Aもいい質問をしてくれたですぅ。
  ・・・翠星石も誇りを持って仕事をしないとアイツに笑われちゃうですねぇ。」

そして楽しかった見学も終わりを迎える。

翠「今日はありがとうございました。またちょくちょく顔を出させてもらうですぅ。」

山「あぁ、いつでも来なさい。修理ならいつでも引き受けるぞ。」

生徒一同「ありがとうございました!」

山田さんは笑顔でみんなを見送った。

こうして急遽決まった社会科見学は大成功を収めた。



後日。

ラ「全く、許可を取らずにいきなり押しかけるなんて・・・もし断られたらどうするつもりだったんですか?」

翠「考えてなかったですぅ・・・」

その場の勢いで決めてしまったようだ。
その後ラプラスにこってり叱られる翠星石の姿があったとか。

蒼「僕も呼んでくれればよかったのに。」

翠「悪かったですぅ。」

蒼星石の鋏も山田さんの作品らしい。・・・て鋏を鍛金で作れるのかッ!?