ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki ディア プリンセス

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レポーター「昨日午後2時40分頃、成田空港にエヌフィールド王国のアリス王女が到着されました。王女は9日間の日程で日本との友好を・・・」
飛行機の扉が開き、複数の護衛と共に1人の女性が出てくる様子を見ながら、金糸雀は誰も居ない職員室でコンビニ弁当を食べていた。
金(お姫様、か・・・)
玉子焼きを一口かじる。悪くは無いが、やはり自分が作った方が遥かに美味しい。
ペットボトルのお茶を一口飲む。お茶の苦味がまだ寝ぼけている頭をスッキリさせた。
改めて、テレビを見ながら考えてみる。
金(お姫様なら毎日美味しい物を沢山食べられるかしら・・・それに毎日面白おかしく遊んで・・・)
頭の中で思いつく限りのご馳走が浮かび上がる。そして目線を下げるとコンビニ弁当。その差は天と地ぐらい有った。
金(でも、お姫様にはお姫様なりの苦労も有るかしら)
毎日常に護衛やら何やらに付きまとわれ、自由に出来る時間も少なく、行動だって大幅に制限されるだろう事は
日本の皇室を見る限り簡単に想像がつく。
お姫様に一度なってみたいというのも本音だが、今の方が自分には合っていると思うのもまた偽らざる本音だった。

不意に職員室の扉が開いた。振り返るとラプラス教頭が入ってきた。
ラ「おはようございます金糸雀先生。また泊まっていったのですか?」
金「おはようございますかしら。えと、その・・・」
ラ「まあ、いつもの事なので気には留めませんが」
ラプラスの言うとおり、金糸雀は昨日も学校に泊まっていたのだ。
多くの部の顧問を受け持ち、自身も研究開発や授業に使う特製実験器具の製作を行ったりしている金糸雀は
そのまま学校に寝泊りする事がよくあった。
最初は机に突っ伏して寝るなどだったが、やがて寝袋や小型の冷蔵庫を購入して寝泊りに使う理科準備室を私物化していった。
着替えは予め用意しておき、シャワーなどは体育館のシャワー室で済ませるなど、かなり快適であった。

食べ終えた弁当をゴミ箱に捨て、再びテレビを見ていると段々と人がやってきた。
それは事務員だったり教員だったりと様々だが、ごく一部を除いて皆テレビの前に集まっていた。
翠「あぁ、一度で良いからお姫様になってみたいですぅ」
雛「ヒナもなりたいの~」
真「全く・・・貴女達は一度自分の年齢を考えてみなさい」
翠「夢の無い奴ですぅ・・・女の子なら一度は憧れるもんです」
雛「お姫様になったらぁ・・・うにゅ~が毎日たっくさ~ん食べられるの~♪」
などと話している時に、雪華綺晶と薔薇水晶の二人が出勤してきた。
薔「・・・おはようございます」
金「おはようかしら~」
雪「おはよう・・・そのニュースを見ているのか」
珍しく難しい顔をする雪華綺晶に、金糸雀は興味を示した。
金「どうかしたのかしら?」
雪「あの女性は本当に王女なのか?それが気になって・・・」
薔「・・・お姉ちゃん、昨日からそればっかり言ってて・・・」
蒼「何でそれを?」
雪「一応世界各国のVIPの顔と名前は覚えているつもりなので」
蒼「そうなんだ・・・まさか、顔写真付きでプロフィールを纏めたファイルがあるとか?」
雪「何故それを・・・?!」
蒼「・・・・・・何で冗談のつもりが本当になっちゃうんだろう」

やがて職員朝礼の時間となり、ギリギリやってきた水銀燈も加わって後は校長と居なくなった教頭を待つだけであった。
水「ふぅ・・・急いで損したわぁ」
真「もっと早く来れば急ぐ必要も無いのだわ」
水「間に合うか間に合わないか、そのギリギリのスリルが溜まらないんじゃなぁい」
真「・・・・・・はぁぁ」
職員室のドアが開き、校長と教頭、そして見知らぬ男女が入ってきた。
雪(この人は・・・!しかし何故・・・)
入ってきた二人を見ながら、校長の説明を待つ。
ロ「え~と・・・じゃあ、今日も1日がんばろ~」
全員『さらっと何事も無かったように終わらせるな!!』
ロ「ジョークだよジョーク・・・そんなに怒らなくても」

気を取り直して、早速説明を始める。
ロ「まず何から話せば良いかなぁ・・・ええっと、簡単に言うと彼女は昨日来たエヌフィールド王国のお姫様」
全員『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』
『一体何を言ってるんだこの男は?』
そう思う一同だったが、雪華綺晶の反応にそれが事実であるという事を告げていた。
雪「やはり・・・という事はあの時の人物は影武者・・・」
?「はい・・・彼女は私の従姉妹です」
女性・・・というよりは少女と言った方が相応しいあどけなさが残る声で彼女、アリス王女は答えた。
次に冷静さを取り戻した水銀燈が質問する。
水「それでぇ・・・どうしてそのお姫様がこの学校に来るわけぇ?」
ロ「それが実はさ・・・本来の親善外交とは別に、日本の教育事情の視察並びに研修に来たって訳で・・・」
水「その視察先にこの学校が選ばれた・・・ってわけぇ?」
ロ「そういう事・・・ちなみにこちらは姫様お付きの執事のセバスチャンさん」
全員(なんて安直な・・・)

大体の事情説明が終わり、それぞれ自己紹介を済ませる。
アリス「はじめまして、アリスと申します。日本での教育現場を視察し、私たちの国の教育に役立たせるため参りました」
雛「凄いの、日本語ぺらぺらなの~」
アリス「はい、この日のために日本語は沢山勉強しました」
ロ「じゃあ・・・早速だけど全校集会で皆に説明しないとね」
校内放送で臨時の全校集会を行う事を告げ、集会場所の体育館へと移動する。

ロ「という訳で、これから一週間皆と一緒に勉強する事になるからよろしくね。
   あぁ、あとこの事は口外しないでね。さもないと・・・黒服にサングラスしたお兄さんたちが大量にやってくるから」
壇上でにこやかな笑顔でさらりと怖い事を言うローゼン。
しかし、普段なら絶対に会う事の無い存在の上、美人という事で男子は勿論の事、女子も興奮していた。
王女はゆっくりと壇上へと上がり、マイクの前に立つ。そんな仕草にもどこか気品を漂わせるのは生まれの良さだからだろうか。
アリス「皆さんはじめまして。アリスと言います。1週間という短い時間ですがよろしくお願いします」
深々と頭を下げる。その様に男子達の間では新たなファンクラブ設立の構想が浮かびつつあった。
かくして、彼女を交えた掛け替えの無い1週間が始まったのであった。


王女が最初に視察する事にしたのは雪華綺晶の世界史の授業だった。
雪「さて、これから授業を始めるわけだが・・・今回は特別に王女とエヌフィールド王国の歴史について学んでいくとしよう」
いつでもどこでもマイペースな雪華綺晶だが、今回ばかりは多少路線を変更する事にした。
しかし、これにも彼女なりの理由があった。彼女の護衛である。
普通に授業を進めた場合、どうしても王女から目を離さざるを得ない状況が出来てしまう。
しかし、王女に授業をさせる事で自分は彼女の護衛に専念できる・・・そう考えたのだ。
雪「ではアリス王女・・・よろしくお願いします」
アリス「はい・・・では、私が生まれ育ったエヌフィールド王国の歴史をお話しましょう」
王女は自国の成り立ちについて話し始める。やはり緊張しているのか、多少しどろもどろになりつつも彼女は続けていく。
雪華綺晶はその間、窓の外から狙撃可能なポイントを重点的にチェックをしていた。
やがてチャイムが鳴り、1時間目の終了を告げる。
アリス「ふぅ・・・ほんの一部でしたけど、よろしかったでしょうか?」
生徒達は盛大な拍手でそれに答えた。王女はすこし照れたようにはにかみながらその拍手を受けていた。
雪「お疲れ様でした。・・・さて、お前たちは自分達が住む国に関してこれだけ説明できるか?」
雪華綺晶の一言にクラスは静まり返った。
雪「昨今、自国の歴史についてちゃんと説明する事が出来ない者が多いと聞く。しかし、それではダメだ。
   どの国の人間も自分の国に誇りを持ち、自国の歴史に敬意を持つ。そう遠くない将来、他国の人たちとコミュニケーションを
   取る時も来るだろう。その時、自国について何の説明も出来ない様ではダメだぞ」

次の時間は真紅の英語の授業を視察する。
真「失礼だけれど、エヌフィールド国で使用される言語は?」
アリス「英語は大丈夫ですよ」
真「そう・・・それならお手伝いしてもらいませんか?」
英語を母国語とする人を招いての授業はそう出来るものでは無いので、ここぞとばかりに授業を進めていく。
日常的な会話の練習や、単語の発音、英文法などを教えていく。
真「では、今日はこれまで。アリス王女、とっても助かったのだわ」
アリス「お役に立ててよかったです。ところで、その紅茶は?」
真「これはいつも飲んでいる紅茶なのだわ」
アリス「はぁ・・・」
不思議そうな顔で見つめる王女に、男子の1人が説明する。
A「気にしないでくださいよ。真紅先生にとっては紅茶はいわば燃料みたいな物なんですから」
アリス「燃料・・・?」
真「どういう意味かしら・・・」

3時間目の蒼星石の数学の授業は極普通に始まり、極普通に終了した。
蒼「別に何か有るわけでも無いしね」
とは本人の弁である。

昼休みはいつにも増して校内が騒然としていた。
何せ本物のお姫様が来ている、それも美人という事もあって『是非昼食を一緒に』と校内を隈なく探し回っているのだ。
B「居たか?」
C「いや、居ない」
B「どこに行ったんだ?外には出ないと思うんだが」
D「とにかくもう一回探そう」
ちなみにどこに居たのかというと、校長室を利用して食事を摂っていた。

4時間目は薔薇水晶の日本史で江戸時代の文化を一緒に学び、5時間目の古文では土佐日記を学ぶ。
そして、6時間目の化学の授業を視察する事になった。
金「さぁ、今日は実験をするかしら。今回は酸とアルカリを使用するから注意が必要かしら」
今回の実験では同じ濃度の塩酸と水酸化ナトリウム溶液の水溶液を同体積だけ混ぜて中和させるという実験である。
金「単なる中和実験だけだと思ったら大間違いかしら。どうなるかは実験してからのお楽しみかしら~」
生徒達は早速実験に取り掛かる。まずはメスフラスコに500mlの塩酸と水酸化ナトリウム溶液を正確に入れる。
次に1リットル以上入るメスフラスコにこの2つの液体を入れて中和させるだけという簡単な実験である。
早い班ではすぐに中和を終わらせていたが、生徒達はある事に気付いた。
E「あれ?増えてる」
T「ホントだ。ちゃんと500ずつ入れたはずなのに」
金「ふっふっふ・・・それこそが今回の実験の狙いかしら~」
簡単に説明すると、電解質のイオンは溶媒である水と結びついて安定する。
その為、純粋な水同士よりも分子間の構造は緻密になっている。
それが中和される事で引き付けられていた水分子が開放され、体積が増えるという仕組みになっている。

王女はその様子を見て、自分も実験に参加したいと考えた。
そこで実験していた班の一つに近づいていく。
アリス「あの、よろしいですか?」
U「えっ?あ、あ、あの、どうしましたか?」
アリス「出来ればその実験に参加させて欲しいのですけれど」
U「え?・・・でも、もし何か有ったら大変だし」
アリス「大丈夫ですよ」
U「でもなぁ・・・」
Y「良いんじゃないの?ただ入れれば良いだけなんだし」
アリス「ありがとうございます。これを入れれば良いんですね?」
王女はそう言って、メスフラスコの一つを掴む。
U「あ、それは!」
アリス「きゃっ・・・!」
Uの声に驚いた王女は思わずフラスコを持つ手を滑らせてしまった。

コンッ・・・トポトポ・・・・

Y「うわ!こぼれた!」
その一言に班は大騒ぎになった。
すぐさま教科書やノートを避難させ、テーブルから離れる。
金「一体どうしたかしら?!・・・って、大変かしら~!早く離れるかしら!!」
金糸雀は生徒達を退かせ、濡れ雑巾を持ってきて少しずつ拭いていく。
U「あの、金糸雀先生?」
金「何かしら?」
U「それ、水です」
金「え・・・?・・・ふぅ、塩酸とかだと思って驚いたかしら~。じゃあ、皆で早く拭くかしら」
班員達は雑巾を持ってきてテーブルを拭いていく。
一通り拭き終わった後、金糸雀は班員達を説教していく。
金「あれだけいつも薬品は慎重に扱うようにって言ってるかしら。今回は水だったから良かったものの・・・」
普段は滅多に怒らない、あるいは怒っていてもどこか愛嬌のあった金糸雀だったが、今回は本気で怒っていた。
班員達は一様にうな垂れて聞いていた。その様子に居た堪れなくなった王女はそれを取り成そうと金糸雀に話しかける。
アリス「金糸雀さん、彼らを許してあげてください。・・・こぼしたのは私なんです」
金「・・・アリスさんが?」
アリス「はい・・・私も皆さんと一緒に実験がしたくて・・・」

その言葉に金糸雀の矛先は王女へと変わった。
金「どうしてそんな事をしたかしら?!一歩間違ったら怪我じゃ済まなかったかも知れないかしら!」
アリス「・・・・・・」
金「安易な気持ちで実験なんてして欲しくないかしら!」
どんどんヒートアップしていく金糸雀に、生徒達は恐る恐るフォローに回る。
E「先生、まずいですよ。相手はお姫様なんですよ?下手すりゃ護衛の人たちに・・・」
金「王女だとかお姫様だとかそんなの関係無いかしら!」
取り付く島もなかった。そして説教は続く。
アリス「・・・・・・っ」
王女は目に涙を浮かべ、理科室を飛び出していった。
金「あ・・・」
ここでようやく正気に戻る。普段怒り慣れていないため、一度火が点くとなかなか収まらなかった。
そして、収まると同時に猛烈な自己嫌悪が襲ってくる。
そんな、なんとも言えない気分でその日の授業は終わっていった。

王女は屋上の片隅で蹲っていた。
金糸雀はその姿を見つけると、少しずつ近づいていった。
金「・・・随分探したかしら~」
アリス「・・・・・・」
金「・・・・・・さっきはごめんなさい」
アリス「・・・・・・」
金「かなり言い過ぎたかしら。昔から怒ると見境が無くなる・・・悪い癖かしら」
アリス「・・・・・・それは良いんです」
金「?」
黙っていた王女が唐突に呟く。今度は彼女が話し出した。

アリス「私、ああやって本気で怒られる事、無かったんです」
金「・・・」
アリス「皆、私が間違った事をしても叱らずにいます。それは私が王女だからなんだと思います。
     でも・・・金糸雀さん、貴女は違います。肩書きなんて気にせず、私を1人の人間として怒ってくれました。
     私はそれが嬉しいです」
『でも、ちょっと怖かったです』そう言って彼女は笑った。
金糸雀はほっとした。
冷静になって改めて考えたら、自分がかなり危険な橋を渡っていた事に気付いたからだ。
金「それは良かったかしら。こっちも気になって仕方なかったかしら」
アリス「それでは改めて・・・ごめんなさい」
金「こちらもごめんなさいかしら」
二人して頭を下げる。それから頭を上げてどちらとも無く笑い出した。
もう二人とも大丈夫なようだ。

翌日以降、二人は一緒に行動するようになった。
そこには庶民と王女という身分の差など無く、昔からの親友であるかのような雰囲気があった。
そんな二人がどうなったかは・・・・・・また、次回。



2日目以降、王女は金糸雀と共に学校内を行動するようになった。
その手始めとして、一緒に学食に行く事に。
アリス「こういう所で食事をするのは初めてです」
金「ちょっと騒々しすぎたかしら?」
アリス「いえ、お料理は大勢の人と食べた方が美味しいと思いますから」
A「そうそう。やっぱ大勢で食った方が美味いですよね」
生徒『うんうん』
すぐさま周りに生徒達の人だかりが出来た。
よく言えば物怖じしない、悪く言えば怖い物知らずなこの学校の生徒達にとって、王女は畏れ多いものではなく、
是非ともお近づきしたい美人のようだ。
そして思い思いに食事を摂り始めるが、そこに1人の男子生徒が近づいてくる。
B「なんだよC。今日もカップラーメンかよ」
C「金無いんだよ。先月使い果たしちゃったし、バイト代貰えるの今週末だし」
Cはそう言ってテーブルに付く。王女はCの持っている物に興味を示した。
アリス「あの・・・失礼ですけど、それは一体なんですか?」
C「え、知らないの?カップラーメン」
アリス「カップ・・・ラーメン?」
B「ば~か、知るわけ無いだろ」

アリス「一体、どういう食べ物なのでしょうか?」
C「どういうって・・・ラーメンですよ。・・・えーっと、ヌードル」
アリス「ヌードルですか」
C「そ。この中に入っているスープと具の袋を開けてそれを中に入れた後、お湯を注いで3分で食べられる」
アリス「まぁ!それだけで食べられるんですか?!」
どうやら、本気で感心しているようだ。それに気を良くしたCは続けてこう言った。
C「あの、よかったら・・・一口、食べてみませんか?」
この一言で、食堂内のボルテージが上がり始める。そして・・・。
アリス「よろしいんですか?では、失礼します」
王女は箸を器用に使って麺を食べる。その様子を真剣な面持ちで見る男子達。
アリス「・・・・・・美味しい。ありがとうございました、こんな美味しい物を頂いて」
Cに容器を返す。そして、そのカップラーメンを巡る争奪戦が開始された。
A「それをよこせ!!」
B「いや、それは俺のカップラーメンだ!」
C「お前らに絶対やるもんか!!」

金「そんなにカップラーメンが珍しかったかしら?」
アリス「初めて見たというのも有りますけど、一番感心したのが保存に適しているという点です」
王女は自分の国の食糧事情について説明する。
エヌフィールド王国はヨーロッパの東端にある小国だが、ヨーロッパよりも中東との付き合いが長く、
気候もそれに似て、日差しが厳しい所であった。
アリス「その為、食料の長期保存というのは我が国にとって重要な課題なのです」
金「そうだったのかしら~」
アリス「それに作るのも簡単で、子供たちでも作る事が出来ます。ですから、すぐにでも買い集めておきましょう」
王女は執事のセバスチャンにカップラーメンを大量に購入するように命じた。
金糸雀はその様子を見ながら『翠星石先生や雛苺先生が聞いたら、なんて言うかしら?』と考えていた。

金「今日は部活動も見学していくと良いかしら」
アリス「はい」
まずは吹奏楽部と合唱部へと足を運ぶ。
国や文化の違いは有れど、音楽に関する違いはそう無いだろうと踏んだからだ。
音楽室からは練習している音が流れてくる。
アリス「美しい音色ですね。何度かオーケストラの演奏を聴いてきましたが、それに負けないくらいに素晴らしいです」
金「そんなに褒められると顧問として嬉しいかしら~」
音楽室の扉を開いて、中へと入る。
金「皆遠慮しないで続けるかしら~」
練習を再開する部員達。金糸雀はその一つ一つを見て行きながら、指導をしていく。
U「金糸雀先生~、この部分を教えて欲しいんですけど~」
1人の部員が金糸雀たちに近づいてくる。
金「ええっと、どの部分かしら~」
金糸雀は彼女の担当であるフルートの楽譜を見る。聞いてきた部分は確かに1年生の彼女では難しい部分かもしれない。
金「う~ん・・・どう教えてあげれば良いかしら~」
アリス「あの・・・良かったら、お教えしましょうか?」
金「え?アリスさん、フルート演奏できるのかしら?」
アリス「ええ。それほど上手ではありませんけど」

王女は予備のフルートを受け取ると、楽譜を真剣に見つめる。
そしてフルートを構え、曲を奏で始める。その音色は、その場に居た全ての者達を魅了していった。
やがて問題の部分へと差し掛かる。複雑な部分であると同時に、単に楽譜通り吹いても伝わらないという難所である。
聞く者に対して如何に感情を伝えるか。演奏者の腕が要求される部分であった。
王女はそれを見事にやってのける。キリの良い所で演奏を終えた王女に対して、惜しみない拍手が送られた。
金「凄かったかしら~。カナが口でどう説明しようかと思っていたところなのに」
アリス「ありがとうございます。ところで、分かりましたでしょうか?」
U「はい!ありがとうございました」
そして、その日はそのまま吹奏楽部の練習に付き合って一日が終わった。



アリス「・・・私、先生になりたいんです」
最終日前日の夜、宿泊に使っている空き教室(改装済)にて、王女はそんな事を言い出した。
金「先生になりたいのかしら?」
アリス「はい」
金「う~ん・・・カナとしては、先生よりもお姫様の方が良いと思うかしら」
アリス「そんな事ありませんよ。もし、私が今の境遇じゃなかったら、きっと先生を目指していたと思います」
真剣な表情で金糸雀を見つめる。どうやら本気の様だ。
金「先生と言っても大変かしら~。特にカナ達は高校生・・・難しい年頃の子達と接してるかしら」
金糸雀は立ち上がり、窓の側へと近づいて空を眺める。
金「毎年多くの子達と出会って、そして別れていくかしら。星の数にも負けないくらい多いかしら」
夜空には無数の星々が煌めいていた。
金「全く同じ星が無い様に、生徒達も皆違うかしら。強く光る子もいれば、穏やかに輝く子も居るかしら。
   ちゃんと見ないと、綺麗な光も見逃してしまうかしら」
目で星空を追っていく。上空には白鳥座のデネブ、こと座のベガ、わし座のアルタイルが結ぶ『夏の大三角形』が現れていた。
王女も金糸雀の横に並び、一緒に星空を眺める。
アリス「金糸雀さんは、生徒の皆さんとどの様に接しているのですか?」
金「いつも全力でぶつかったり、受け止めたりしてるかしら。こっちが全力なら、向こうも全力でぶつかって来るかしら」
『偶に空回りする事もあるかしら~』と自嘲気味に笑う。
アリス「やはり金糸雀さんは素敵な先生です」
金「そう言われると照れるかしら・・・・・・そうだ!明日の授業なんだけど・・・」

翌日、化学の授業の教壇に立ったのは王女であった。
アリス「今日は私が授業を進めて行きたいと思います。よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。それにつられて生徒達も頭を下げた。
着席した生徒の1人が質問する。
E「あの、今日はどんな授業をするんでしょうか?」
アリス「はい、ええっと・・・そろそろ金糸雀さんが来るはずなんですけど」
その時、遠くから金糸雀の声と何かを引きずる音が聞こえてきた。
金「んしょ、んしょ・・・ふぅ、助かったかしらピチカート」
ピ「これくらい大した事じゃないかしら。授業終わりにまた来るね」
教室のドアが開き、金糸雀は台に載ったテレビを運んできた。
金「皆お待たせかしら~。今日は特別授業をするかしら~」
テキパキとコンセントにプラグを差して準備をしていく。
王女はそれを横目に説明を始める。
アリス「特別授業と言いましたが、今日は皆さんと星のお勉強をしようと思います」

教室内が一瞬ざわつく。それが静まってから説明を続けた。
アリス「皆さんは普段夜空を見上げることはありますか?私は良くあります。日本に来て少し残念なのが、
     私の国で見た時よりも星の数が少ないことですね」
東京の様に地表が明るいと比較的暗い星は見ることが出来なくなる。(逆に言うと、明るい星のみを見ることができるが)
アリス「そこで、皆さんに星の美しさを知ってもらおうと思い、今日の授業を行うことにしました」
教室の電気を消し、テレビとビデオデッキの電源を入れて星のビデオを再生する。
テレビに映し出された夜空は、まさに満天の星空であった。
これほどの空はプラネタリウム等でしかなかなか見ることができなかった。
王女はビデオを見ながら、それに合わせて説明をしていく。星が好きと言うだけあって、その説明は見事だった。
星に纏わる伝説や星を見て方角を知る方法、自分の国の夜空に煌めく星々の話。
生徒達はそれらの話に耳を傾け、彼女の言葉を聞き入っていた。
やがて授業が残り5分になった頃、金糸雀は皆にある提案をした。

金「それで、今日は皆と一緒に天体観測をしたいと考えてるかしら~。都合が良い人はちゃんと家の人に言って、
   夜9時に学校に集まって欲しいかしら」
その一言で教室内は沸き立った。この分だと、全員参加するだろう。
その様子に二人は満足して、授業を終えた。

そして、今度は職員室が沸き立った。
前述の通り、明日で視察並びに研修も終わり帰国する事になるので、最後の夜になる今夜は職員全員と会食をしようと持ちかけたのだ。
当然、この申し出に2名が積極的に賛成し、他の職員達も断る理由も特に無かったので、快く承諾した。
さらにその後の天体観測に関しても提案した所、『なら屋上じゃなくて裏山でやろうよ』というローゼンの案が通り、
それぞれの教師達も授業や部活にてその話をして参加者を募った。

午後7時。職員達と一部の生徒は学食へと集まっていた。
ここで会食が行われることになる。

レ「給料日前にご馳走にありつけるなんて・・・くぅぅ、生きてて良かった」
蒼「ははは・・・泣くほど嬉しいんだ」

雪「ご馳走・・・楽しみで武者震いがする」
薔「・・・お姉ちゃん、よだれよだれ」

め「お姫様が食べるご飯って、どんなのかしら?」
水「流石の私も想像がつかないわぁ」

翠「外国の料理を学ぶ良い機会ですぅ。後でレシピを教えてもらうですぅ」
雛「ついでにエヌフィールド国にも、うにゅ~を広めてもらうの~」
巴「広まると良いですね」

真「3度ぬるいのだわ。淹れ直して来て頂戴」
ジ「何でボクがわざわざ淹れ直さなきゃならないんだ」
ホ「まぁまぁ、桜田君落ち着いてください。私が淹れてきますよ」

などと、楽しそうに談笑していた時に食堂の扉が開いて王女と金糸雀が入ってきた。
アリス「皆さん、本日はようこそお集まり頂きまして、ありがとうございます」
そう言って頭を下げる。座っていた面々も軽く会釈する。
アリス「今夜は私がこの学校での最後の夜。是非とも皆さんと一緒に食事をしたいと思って開きました。
     この後の天体観測とも併せて、存分に楽しんでください」
そう言って席へと座る。金糸雀はその横の席へと座る。何となく浮かない顔しているのは気のせいだろうか。
そして料理が運ばれてきた。
全員『え・・・・?』
その場に居る王女以外の人間が唖然としていた。
各人の前に置かれたのはカップラーメンだった。
王女「さぁ、冷めない内に召し上がってください」
全員『は、はぁ・・・・・』
仕方なく箸を手に取りカップラーメンを食べ始めるのであった。

雪「お腹・・・・・・・すいた」
レ「折角昼飯抜いたのに・・・」
午後9時を回り、生徒達も集まって裏山の山頂へと行く道すがら、大食い二人のぼやきは止まらなかった。
蒼「ほら、ご飯買って来たからこれでも食べて元気だしなよ」
薔「・・・コンビニ弁当だけど、我慢してね」
二人は即座に受け取ってその場で食べ始めた。
蒼「それじゃ、僕達は先に行くよ。後から来てね」
薔「・・・ごみは捨てたらダメだよ」
雪「分かった」
レ「りょうか~い」

一方、先頭の方では既に星談義が始まっていた。
I「あれが夏の大三角形ですよね」
アリス「そうです。デネブとベガ、アルタイルを頂点とした三角形がそう呼ばれています」
Y「スピカってのはどれですか?」
アリス「スピカですか・・・この時期だと見つけるのが難しいですね。でも、どうしてスピカなんですか?」
Y「いや、まあちょっとね・・・ハハハ」
ロ「偶にはこうして星空を見上げるってのも良いもんだねぇ」
ラ「確かに・・・この広大な星空を見上げると、自分という存在が如何にちっぽけなのかというのが分かります」
ロ「辛気臭いなぁ、もっと明るく行こうよ。地球は自分を中心に回ってるんだって思うくらいにさ」
水「それは少し違うわぁ、地球は私を中心に回っているのよぉ」
真「傲慢もそこまで行けば尊敬に値するわ」

雛「金糸雀先生、何を背負ってるの?」
金「折角だから、自作の天体望遠鏡を持っていくのかしら。・・・でも、ちょっと重いかしら」
A「だったら俺持ちますよ」
金「ありがとうかしら~。落とさないように気をつけて欲しいかしら~」
A「大丈夫ですよ・・・って、何だこの重さは?!」
金「大体20キロ位あるかしら。色々詰め込んだら重くなっちゃったかしら」

やがて山頂へと到着する一行。
学校の屋上よりも空に近いためか、星の輝きは普段よりも一層綺麗に見えた。
アリス「今日は星を見るのにとっても良い夜ですね」
金「早速、望遠鏡を組み立てるかしら。誰か手伝って欲しいかしら」
化学部員たちと一緒に望遠鏡を組み立て始める。
雪「私も準備するか」
翠「何をです?」
雪「まだ9月とは言え、夜はやはり冷える。コーヒーを淹れる為にお湯を沸かそうかと」
真「紅茶は無いの?」
雪「持ってきてます」

望遠鏡も完成し、次々と覗いていく。
A「あれが水星か、ちっちゃいなぁ」
B「火星も小さいな」
薔「・・・あ、木星だ・・・ジュピトリス製のMSだと・・・パラス・アテネが好き」
翠「すげーですぅ。やっぱり土星には輪っかがあるですぅ!」
蒼「う~ん、一番小さいとは聞いてたけど冥王星は見えにくいね」
一方では一つ一つ星を眺めながら星座を確認していく。
王女はそれぞれの星座について、その由来など説明し、生徒達はそれに耳を傾ける。
アリス「南の空に山羊座がありますが、神話では牧神パンが怪物から逃れるために山羊となり、
     そのままナイル川に飛び込んだ際に下半身が魚になった事から星座になったそうです」

コポコポッ・・・・・・

雪「ん、沸いたな」
ホ「お手伝いします」
レ「お~い、コーヒー飲みたい奴はこっち来~い」
やってきた生徒達にマグカップに淹れたコーヒーを手渡していく。
金糸雀は二つ受け取って王女に手渡す。
アリス「・・・美味しい。星空の下で飲むとやはり美味しいですね」
金「皆で一緒に飲むとさらに美味しくなるかしら」
アリス「はい」
二人でみんなの輪の中へと入っていく。
談笑しながらコーヒーを飲んでいると、どこからとも無くハーモニカの音が聞こえてきた。
その音色の主を探すと、少し離れた木に寄りかかった白崎が吹いていた。

白「おや、皆さんどうかしましたか?」
水「柄にも無く、珍しい事してるわねぇって」
白「はっはっは、下手ですけどね」
金「そんな事無いかしら。とってもいい音色だったかしら」
白「金糸雀先生に褒められるとは光栄ですねぇ。では、失礼して」
再びハーモニカの演奏を開始する。
アリス「素敵な曲ですね」
金「星空の下で演奏するには最適な曲かしら」
白「ライオンさんは居ませんけどね。ウサギさんなら居ますけど」
ラ「ゴホン」
薔「・・・皆で歌ったら・・・きっと楽しいかも」
ロ「それ良いねぇ。じゃあ、白崎君頼むよ」
金「カナも手伝うかしら~」
どこからとも無くヴァイオリンを取り出し、一緒に演奏を開始する。
歌詞を知らない王女に、さっと紙に書いた歌詞を手渡し、一緒に歌いだす。
その様子を見つめるように、星々は優しく輝いていた。

アリス「皆さん、本当にありがとうございました」
ロ「いえ、こちらこそありがとうございました」
翌日、朝の職員室にて別れの挨拶をする。
この日は流石に水銀燈も早めに来ており、別れを惜しんだ。
アリス「金糸雀さん。貴女には何度お礼を言っても言い足りません」
金「そう言われると照れるかしら~」
アリス「もし、エヌフィールドに来られる事が有ったら、必ずお迎えに行きますね」
金「いつか必ず行くかしら~」
二人は固く握手を交わし、そのいつまでも話し続けていた。
セバス「姫様、そろそろ出発のお時間です」
アリス「・・・わかりました。では、これで失礼します」
王女は職員室を出て行く。この後、彼女は影武者である従姉妹と交代し、親善外交を勤めてから帰国する事になる。

ロ「行っちゃったね」
翠「折角仲良くなったのにですぅ」
真「今生の別れという訳ではないのだわ」
雛「でも外国だし、お姫様だし、もう会えないかも知れないの・・・」
その言葉を聞いた金糸雀は脇目も振らず走り出した。そのまま玄関へと向かう。
金糸雀が到着した時、王女は車に乗り込むところだった。
アリス「金糸雀さん?!どうしたんですか?」
金「はぁ、はぁ・・・これを渡したかったから」
金糸雀はいつも使っている髪飾りを取り外す。
アリス「そんなに大切な物、受け取れません」
金「ううん、貰って欲しいかしら。これはアリスとカナの友情の証かしら」
アリス「友情・・・・・・金糸雀さん・・・」
二人の間で、この一週間の出来事が甦ってくる。
初めて出会ったときの事、化学の実験での出来事、学食での出来事、吹奏楽部やその他の部活動での出来事、そして昨日の天体観測・・・。

気がつけば二人は泣いていた。
遠い異国である日本でできた親友、その別れはあまりにも悲しかった。
金「な、泣いたりしたら・・・折角の・・・美人が台無しかしら~・・・」
アリス「金糸雀さん、貴女だって・・・・・・分かりました、この髪飾り、大切にします」
王女は自分のイヤリングを外し、金糸雀に手渡す。
そのイヤリングは、星が好きと言うだけ有って、星や月の模様が描かれていた。
金「大切に、絶対大切にするかしら・・・・・・」
アリス「私も・・・これを貴女だと思って、大切にします」
セバス「姫様」
アリス「はい・・・」
車へと乗り込み、窓を下ろす。
金「アリス・・・さよならは言わないかしら」
アリス「はい・・・また、お会いしましょう」
やがて車がゆっくりと走り始める。
金「絶対に会いに行くかしら~!」
アリス「いつまでも、待っています!金糸雀さん、お元気で!!」

車は校門を出て、大使館へと向かっていく。
セバス「良い方々でしたな、姫様」
アリス「はい。私は絶対に忘れません、この1週間の出来事を・・・」
車から校舎の方を見たとき、彼女は再びその瞳から涙を流した。
校舎のあちこちに垂れ幕が掛かっていた。
『アリスさん、さようなら』『また来てね』『また一緒に星を見ましょう!』
アリス「皆さん・・・」
セバス「日本に来て、本当に良かったですな」
アリス「はい・・・」

レポーター「10日前に来日したエヌフィールド王国のアリス王女は、9日間の日程を全て終了し、
       昨夜午後7時19分成田発の便に乗って帰国されました」
いつもの様に誰も居ない朝の職員室で金糸雀はニュースを見ていた。
内容はアリス王女帰国のニュースだ。
レポーター「出発前の記者会見の様子をご覧ください」
テレビには記者会見の様子が映し出された。王女は机の中央に座り、金糸雀の髪飾りをつけて会見を行っていた。
記者『日本の印象について、教えてもらえませんでしょうか?』
アリス『大変活気があって素晴らしい所だと思いました』
記者『9日間の日程で色々な所へ行かれたと思いますが、特に印象的だったのは何でしょうか?』
アリス『そうですね・・・5日目にこの国の学校へと視察しましたが。日本の教育は素晴らしいと思いました。
     我が国は日本に比べると、教育を受けられない子供がまだ多く居ます。子供たちのためにも日本の教育を取り入れられればと思っています』
記者『日本の食事はどうでしたか?』
アリス『はい、とっても美味しかったです。特に玉子焼きはとても美味しかったです』
レポーター「この様に王女は日本に対して、かなり良い印象を持って帰国されました」

金糸雀は玉子焼きを食べながらテレビを見ていた。
勿論彼女に玉子焼きを作ったのは金糸雀だ。
金「ごちそうさま。さて、今日も一日頑張るかしら~」
そう言って伸びをする金糸雀の耳には、星と月のイヤリングが輝いていた。