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結婚生活」(2006/07/23 (日) 23:57:44) の最新版変更点

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男子A「…わが国では、法律的には男性は満18歳、女性は満16歳になれば結婚が認められます。しかし現実には、初婚年齢はそれよりも10歳以上も高くなっています。…えっと、結婚とは、生い立ちも個性も異なる者どうしの共同生活の出発を…」 水銀燈「…やぁめた。」 不意に打ち切られる、教科書の音読… 彼女はそう言って教科書を投げ出すと、荷物をまとめてさっさとその場を後にしようとする。 その様子に、「ああ…またか…」と、生徒たちは残念そうにため息をついた。 彼らとしては、水銀燈に保健の授業をもっと熱心に行って欲しいのだが、その意に反して彼女は全くそれをやる気が無いからだ。 でも、今日はマシなほうかもしれない。 普段なら、学校そのものに来ないこともよくあることだから… 男子A「…まあ、姿が見れただけでもよしとするかぁ…」 そう、半ば諦めたようにそう言う彼に対し、その後ろの人物は熱い口調でこう語った。 男子B「バカ…!今日のテーマは『結婚生活と健康』だぞ!?こんなチャンス、めったに無いじゃないか…!!」 そう言うと、彼は勢いよく手を上げ、「せんせーい!せんせーい!!」と彼女を呼び止めた。 その声に、水銀燈は面倒くさそうに振り返る。 水銀燈「なによぉ…うるさいわねぇ…」 男子B「あ、あの…スイマセン…!!先生って、どんな方と結婚したいんですか!?出来ればタイプみたいなのをお聞かせ願えると嬉しいのですが…」 水銀燈「…まあ、あなたみたいにうるさくて、デリカシーの無い男じゃないことだけは確かねぇ…」 男子B「え…?」 そのやりとりに、教室中が笑い声に包まれる。 そして、人一倍意地の悪い顔をしながら、彼女はこう続けた。 水銀燈「大体…結婚なんて、なぁんにもいい所は無いわよぉ?あんなの、一体何が楽しいのよぉ?」 男子B「い、いや…楽しいじゃないですか!好きな人とずっと一緒にいられるし…」 その『純な』答えに、彼女は低く笑いながらこういった。 水銀燈「ふふ…♪そうね…あなたぐらい単純に物を考えられるのなら、結婚もいいかもしれないわねぇ…♪でも、結婚したら何かとお金はかかっちゃうしぃ…。何より、自分の家に自分以外の人間がいるなんて、考えただけでもゾッとするわぁ…」 それだけ言うと、彼女はため息をつき、物憂げな様子で外を眺めやった。 やがて、それを見つめる生徒たちの視線に気がつくと、彼女は何かを思い出したかのようにこう続けた。 水銀燈「そうね…じゃあ、結婚に関する教材でも見てみるぅ?誰かTVとビデオデッキ持ってきなさぁい。図書室に置いてあるでしょう?」 その声に、数名の男子生徒たちは、我先にと喜び勇んでTVを取りに行った。 水銀燈「…もう取ってきたのぉ?ご苦労様ぁ♪…さて、今日は『結婚』についてねぇ…。じゃ、早速ビデオを見ましょお♪えっと…」 そう言って辺りを見回す彼女に、1人の生徒が1本のビデオを差し出しながら、こういった。 男子A「あ…これですね…。『結婚生活における、夫婦の絆と…』」 水銀燈「…何それ?教材…?全く…こんなの買ってるから、うちの学校はお金が無いのよ…。えーと、C君…それにDくぅん…♪あなたたち、今日持ってきたもの…みんなに見せてあげなさぁい♪」 C・D「へ?」 水銀燈「隠しても無駄よぉ?私、さっき聞いちゃったんだもぉん…♪なんか、凄く興奮する内容らしいじゃなぁい♪鞄に入ってる、そのビデオ…♪」 その言葉に、皆の視線が一斉に集まる。 そして次の瞬間、教室は一気に騒がしくなった。 男子B「マジで!?何!?もしかして裏とか!?」 男子E「おい、マジか!?てか、授業中にこんなのやっていいの!?」 男子F「俺…本当に今日休まなくてよかった…。クラスの女子たちと…そして銀様と一緒にエロビデオがみれる日が来るなんて…」 そう歓喜に沸きあがる男子たちをよそに、女子たちは冷ややかな視線を彼らに送った。 どうやら彼女たちは、クラスの男子たちに対して『完全無視・徹底的な非協力』を決め込んだらしい。 そして、渦中のCとDはと言えば、「そんなんじゃないんだ!」と必死に弁解して回っていた。 しかし、その時…誰よりも俊敏に動いたものがいた。 水銀燈「…見ぃつけた♪」 そう言って、彼らのバックからビデオテープをひったくると、彼女はそれを素早くビデオデッキにいれ、再生ボタンを押す。 1秒…2秒…真っ暗な画面に映る『再生』の文字… そして、次の瞬間現れたものに、皆は度肝を抜かれた。 TVリポーター「いやー、そしてマウントポジションを取ったら、もうパンチを撃っておいて、いつ腕を取ろうかと言うタイミング…。ここで腕を取りました!」 解説者「もう、教科書どおりですねー…」 水銀燈「…な、何よこれ…?」 それは、水銀燈が予想していたものとは全くかけ離れたものだった。 彼らが持ってきたビデオ…それは、ただの格闘技のビデオだったのだ。 「だから、『興奮する』の意味が違うって言ったのに…」と、彼らは半ば呆れた様子で、そう呟いた。 TVの中では、筋骨たくましい格闘家2人が、リングの上で激しい試合を繰り広げている。 その映像にぽかんと口をあけたままの水銀燈をよそに、TVレポーターは熱っぽくこう語った。 TVリポーター「…ノゲイラがあっという間の勝負…。ズールはどうすることも…」 水銀燈「つまんなぁい!!」 そう言うと、水銀燈はいきなりビデオデッキを蹴り飛ばした。 鈍い音を立てて、いくつかのパーツがあたりに飛散する。 それを見て、ある者がにやりと笑いながらこういった 「なら…みんなで楽しいことしませんか?」 と。 その頃、上の教室では薔薇水晶が日本史の授業を行っていた。 しかし、それでも彼女の頭の中は下の教室の事で一杯だった。 急に騒がしくなったかと思えば、TVの音が聞こえたり、それに…さっきは何かが壊れるような音がした気がするのだが… これについては、『銀ちゃん』…つまり水銀燈がしっかり授業をしているのかと言う点からも、調べに行きたいところなのだが、何分自分の授業にも遅れが出ている。 しかし… 薔薇水晶「ごめんなさい…。みんな…少しの間、自習してて…」 そういうと、彼女は急いで階段を降り、水銀燈がいる教室へと直行した。 薔薇水晶「…ちゃんとやっていればいいんだけど…」 半ば祈りに近いような、そんな言葉を呟きながら彼女は教室前に立つ。 そして扉に手をかけようとした時、教室の中からこんな声が聞こえてきた。 水銀燈「…今なら、まだ間に合うわよ…。私が本気で怒る前に、手を引きなさい…!!」 薔薇水晶「…銀ちゃん?」 ?「本気でかかって来いって言ったのは、先生のほうだろ?ほらほら、もう後がないぞー?」 水銀燈「くっ…この…ウジムシのくせに…!!」 薔薇水晶「銀ちゃん…?それに、ジュン君…?」 彼女が発した名前…それは、この前ようやく引きこもりから立ち直った生徒の名前だった。 しかし…この状況は… そして、これに呼応するように、教室の中からはこんな声が聞こえてきた。 女子G「やっちゃえやっちゃえ!!」 男子C「よし、まわせ!そして入れろ!!」 それらの言葉に、ある最悪の事態が彼女の脳裏に浮かんだ。 今、銀ちゃんが教えていたもの…それは保健体育… これまでの経験上、彼女が生徒を挑発することは何度もあった。 しかし、いくら彼女が強いと言っても、30名強を相手に戦うのは流石に… そして、思春期を迎えた彼らがひとたび暴走すれば、それこそ… もしかしたら、他に誰か人を呼んできたほうがいいかもしれない…でも… 震える手を押さえつけ、そして力いっぱいドアを開けつつ、彼女は叫んだ。 薔薇水晶「銀ちゃん…!!」 そんな彼女の声に、そこにいるもの全員はその動きを止めた。 薔薇水晶「…で、どっちが最初にこんな事しようって言ったの…?」 水銀燈「ウジムシ。」 ジュン「なっ!?お前だって、全然授業やる気なかったじゃないか!!」 水銀燈「お前って、誰に言ってるのよぉ!!」 薔薇水晶「…いい加減にしなさい!!」 その言葉に、2人は思わずすくみ上がる。 薔薇水晶「…全く…。」 そう言うと、彼女は「ふぅ…」とため息をついた。 あの時教室で行われていたこと…それは、ただのテトリス大会だった。 そこで、絶対に負けるはずが無いと思われていた水銀燈が負けそうになったので、あそこまでみんなが盛り上がっていたと言うわけだ。 薔薇水晶「…でも、何事もなくてよかった…」 今回の事を振り返り、彼女はしみじみとそう語る。 その言葉に、「何が?」と質問する水銀燈に対し、たまたま職員室にいた真紅がこう忠告した。 真紅「全く…ゲームなんかにうつつを抜かしてないで、そろそろ真面目に働いたらどう?もう、あなたもいい大人なんだから…」 この言葉に、同じく職員室にいた翠星石が目を輝かせてこう言った。 翠星石「そうですぅ♪あと少しで四捨五入したら30歳の大台に乗ろうかと言うのに、この尻軽女は…」 水銀燈「何ですってぇ!?」 翠星石「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ばばあが怒りやがったですぅ!!」 その言葉に、激しい憤怒とともに翠星石を追い回す彼女を見て、ジュンはしみじみとこう呟いた。 「…こりゃ、当分結婚は出来そうに無いな…」 と。 その言葉に、真紅だけは大きくうなずいていた。 完

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