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卒業式のボイストレーニング」(2006/03/03 (金) 15:57:16) の最新版変更点

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学生生活の全てを締め括る行事。ある意味学校行事の中でも一番大切で重要な行事。 『卒業式』 それぞれの先生は慌ただしく動き回っていた。担任の先生達はボイストレーニングまで始めて余計に騒がしい。 そんな中、彼女は一人だけぽつんと座っていた。 蒼星石。その人である。 今からちょうど一年前。蒼星石は3年C組の担任だった。 蒼「はぁ………」 先程からこのように溜め息をついてばかりいた。 薔「………大丈夫………ですか?」 蒼「あ……ええ。大丈夫です」 翠「緊張してるですか?」 蒼「緊張はして……るかな」 水「しっかりしなさいよぉ。私もやりたいんだからぁ」 蒼「……うん。頑張るよ…」 雛「蒼星石もボイストレーニングするのー。青木さやかーなのー」 蒼「……うん。青木さやかさん……」 金「…青木さやかなんて生徒いないのかしらー」 蒼「あ…うん。いないよね。あはは……」 紅「………あまり緊張しないで頑張って頂戴」 蒼「………うん」 水「蒼星石先生大丈夫なのぉ?私とっても心配よぉ」 薔「心ここにあらず………という感じですね………」 翠「緊張しすぎてるですか?」 紅「そうね………」 雛「ヒナ励ましてくるのー!」 金「カナも行くのかしらー」 水「……副担の私が代わりにやりましょぉかぁ?」 紅「いや、それは辞めときなさい。クラスの生徒達はきっと蒼星石先生に呼名されることを望んでいるのだわ」 水「それもそうねぇ…」 翠「でもどーしたですか?緊張だけじゃねーような気がするです…」 薔「………やっぱり今のクラスと離れるのが嫌……だから?」 水「クラスのために何かしようと色々奮闘してたわねぇ…」 紅「きっとそうなのだわ。…とにかく今は私達は私達のやるべきことをやりましょう」 そう真紅が言い終えると、4人はまたそれぞれの持ち場に戻っていった。 金「蒼星石元気出すかしらー」 雛「頑張ってーなのー」 蒼「二人ともありがとう……。でも元気がないわけじゃないんだ…」 金「じゃあ一体どうしたのかしらー?」 蒼「……………」 雛「そこで黙るななのー!」 蒼「………泣きそうなんだ」 雛「うにゅ?」 蒼「今ですら泣きそうなのに、呼名なんかしたら……どうしよう……絶対途中で泣いちゃうよ……」 金「……頑張るしかないかしらー。皆楽しみにしてるかしらー。とにかく練習するかしらー!」 蒼「……そうだね。何かしら動かないとね。迷惑かけてごめん」 金「どういたしましてかしらー」 雛「どういたしましてなのー」 そうして蒼星石の呼名練習…兼ボイストレーニングが始まったのだが… 蒼「ほっ………堀江貴ふゅみくっ、くn………ぅぁぁぁぁん!」 紅「…やれやれなのだわ…」 水「…やれやれだわぁ…」 金「…やれやれかしらー…」 雛「…やれやれなのー…」 翠「…蒼星石先生っ!しっかりするです!試合はえーと、諦めないと終了ですよぅっ!」 薔「それは…ちょっとちがうかと…」 薔薇水晶が珍しく人に突っ込む。そんなレアなことも見逃される程蒼星石の泣きじゃくり方に呆れていた。 いつもは頼り甲斐があり、比較的クールである蒼星石がここまで涙脆いとは…。 蒼「ぐずっ………ぅぅ………ボクは駄目な先生だ………」 薔「そんなことは……ありません……。これ……ティッシュ……」 蒼「ぐすっ……ありがとう……」 紅「…どうするのだわ。本番前からこれでは絶対に無理なのだわ」 水「…やっぱり私がするぅ?」 蒼「…それだけは絶対駄目ですっ!」 水「でもぉ………」 蒼「……そうですよね……教師としてこんな情けない態度、生徒達に見せられないよ……」 翠「……いい加減にしやがれですっ!!」 蒼「!!……びっくりするじゃないか…」 翠「蒼星石は何のために今まで頑張ってきやがったですか!」 蒼「何のためって、それはもちろん生徒のため…」 翠「だったら笑いやがれです!今まで一緒に過ごして来た生徒達ですよぅ!?   自分が泣くのは勝手に泣きやがればいいですが、それでも笑ってめでたい門出を祝ってやれです!」 金「そうなのかしらー!泣いてばっかりじゃ、生徒も悲しいのかしらー!」 雛「笑って見送られる方が嬉しいのー!」 紅「そうね…。泣いてばかりじゃ教師としてつとまらないのだわ」 水「副担としても応援するわぁ」 薔「頑張って下さい……!」 蒼「皆………ありがとう…!………ぐずっ」 翠「また泣きやがったです…」 紅「…もう仕方ないのだわ…」 そうしてどうにか迎えた卒業式本番。 A組、B組の呼名が予行通り終わり、C組の順番が回ってきた。 名前を呼ばれ返事をし、次々と立ち上がる生徒達。何人か泣いているようだ。 …蒼星石はクラスの最初から最後までの名前を読みあげた。 何度も泣きそうになって詰まったが、なかないようにぐっとこらえた。 蒼「……以上、〇〇名。一同礼!………着席」 …そう言ってC組の呼名は終わった。 だが様子がおかしい。C組の生徒達が着席しないのだ。 蒼「?…………着席してくださいね」 すると突如、全クラスの生徒が立ち上がった。 そして声を揃え、叫んだ 「蒼星石先生!!今までありがとうございました!!」 男子の低い声、女子の高い声、そしてそれぞれの気持ち。 それらが重なって空にまで響き届くような、そんなお礼の言葉だった。 そして生徒達は何事もなかったかのように一斉に座った。 他の先生達がやはり人気がありますねぇ。彼女にはかないませんね…。はっはっはっ羨ましい限りですよ。などとひそひそと話始めた。 蒼星石はその場に立ち尽くしていた。…焦点がどこか合ってない。 と、突然ストンと膝が折れたようにへたり込んだ。顔を手で覆い隠す。 そうして少し間をおき、今まで溜まっていたものがどっと吹き出るように大声で泣き始めた。 ありがとう、ありがとうと何度も呟いていた様だが、感動からか声が出なかった。 そして、足に力が入らずにその場で泣き続けていた。 「蒼星石先生。次のクラスの呼名があるのですこちらに来てください」 蒼「あ………はい。でも………力が………」 水「…立てるぅ?肩貸してあげるわよぉ」 蒼「ごめん………あはは………結局泣き崩れちゃったよ」 水「いいえぇ…あなた、とてもかっこよかったわぁ…」 「次はD組、△△先生…」 そうして無事、卒業式は幕を閉じた。 ~Fin~

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