「智天使」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

智天使」(2006/05/29 (月) 05:17:28) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

>お題 『メイメイさんに、不良教師銀様をどう見ているのか訊いてみたい』 女子A「メイメイさーん、ハードルってここに置いておけばいいんですかー?」 ある日の午後、重そうにハードルの束を抱え指示を仰ぐ女子生徒。 「ふぅ…」と指示を待たずにその場にそれを置くと、彼女はその上に腰掛け、手で顔をパタパタと仰ぎ始めた。 一方、呼ばれたメイメイの方はというと、そんな彼女の様子に少し微笑みながらこう返答した。 メイメイ「ええ…ありがとうございます…。」 今ではすっかり珍しくなった、烏の濡れ羽色の黒髪…。そして、白い肌に整った顔立ち…。 理知的であるにもかかわらず、どこか幼さの残るその顔はどことなく天使を髣髴とさせる。 …もっとも、本人はその『幼さ』を気にしているのだが…。 メイメイ「…あの…。何か…?」 そんなことを考えながら自分の顔を見つめる生徒に対し、メイメイは不審そうに声をあげた。 女子A「あ!いえいえ!!メイメイさんて、ホント綺麗だなーって思って…。でも、何で用務員なんかになったんです?ほら、仕事なんてほかにも色々あるじゃないですか?」 メイメイ「…一緒にいたい人がいるからでは、答えになりませんか?」 少し考えた後、彼女は顔色一つ変えずにそう答えた。 一緒にいたい人…それはおそらく水銀燈先生の事だろう…。 しかし、その答えに新たな疑問が生まれる。…どうして、教師ではなく用務員なのか…と。 もしかしたら、その質問はタブーなのかもしれない…。でも、彼女にはどうしてもそれに対する好奇心が抑えられなかった。 恐る恐る手を上げ、少女はメイメイにこう問いかける。 女子A「あの…怒らないで聞いてくださいね?何で、メイメイさんは水銀燈先生と同じ教師の道を選ばなかったんですか?そのほうが一緒にいられる時間は長いし、それに…正直、あの人よりメイメイさんのほうが教師に向いている気が…」 その瞬間、生徒は慌てて口をふさいだ。 まずい…つい本音を洩らしてしまった…。それも、彼女のことを一番慕う人の前で…! ゆっくりと視線を戻し、彼女を見る…。表面上は怒っていないようだが…しかし… そんなどこか脅えた様子の少女に対し、メイメイは静かにこう言った。 メイメイ「…それはお姉様…いえ、水銀燈先生のことをよく知らないからそんなことが言えるんです。…あなたは、去年先生が授業に関して、大変な苦労をなされていたということをご存知ですか?」 女子A「…ええ、先輩から聞いたことがあります。本当に…大変なものだったとか…」 そう、それは今から1年前の話… 水銀燈は、そのあまりに熱心な授業ぶりについていける者がいなくなり、担任や社会科系の授業の担当を降ろされていた。 そして、薔薇水晶に出会うまでの長い間、ずっと心を病んでいたのだが… メイメイ「そう…。でも、不思議ではありませんか?あれだけ人の心を惑わし、そして操ることを得意とする方が、何故そんな失敗をしたのか…。あなたは何故だと思います?」 女子A「えっ…?人の心は、そんなに単純じゃなかった…とか?」 その言葉に、メイメイは首を振ってこう答えた。 メイメイ「…いいえ。あなたたちに対してだけは、本心で接しようとしているからですよ…。」 それは、少女にとってあまりに意外な答えだった。 確かに、彼女が生徒をからかって遊んでいる場面はよく見るが、自ら生徒に気に入られようとしている姿は見た事が無い…。 今までは、それを『妙なプライド』のせいだと思っていたのだが…。 そんな気持ちからか、少女はこんな疑問を彼女にぶつけた。 少女A「…でも、それなら何でこんなに授業をサボって…」 メイメイ「…それは、先生がこの保健体育を『実生活ではあまり役に立たないもの』と考えているからですよ。…実際、テスト勉強だって1日あれば全て網羅出来ますし…」 …確かにそれはいえる。体育の得意不得意なんて短期間でどうこうできるものではないし、保健だって教科書には『綺麗事』しか書いてないし… そんなことを考える生徒に対し、彼女は続けてこう言った。 メイメイ「…『教師』という仮面をかぶり、演じることは簡単です。正直…それについては何度も提案したのですが、あの方はあえてそれを実行しなかった…。私には、とてもそんなこと…」 そう言うと、メイメイは少し考えた後にこう付け加えた。 メイメイ「…でも、今は少しその気持ちが分かる気がします。…ここはいいところです。活気があり、何より優しさに溢れている…。一緒にいたいのは山々です。でも、彼女が1人で出来ることに私が手を出しても邪魔なだけ…。だから私は、あの方が行う事…そして、この学校がきちんと運営していけるように影でそれを支える…。それが私の…」 その時、彼女の携帯電話がけたたましく鳴り響いた。 着信音から誰がかけてきたか即座に判断すると、メイメイは急いで電話に出る。 それは、本来ここにいなければいない人物からの電話…。そして、大切な人からの電話…。 水銀燈「今どこぉ?もう車には乗ってるんでしょうね?」 電話から洩れる不機嫌そうな声…。その声に、彼女は申し訳なさそうにこう言った。 メイメイ「いえ…まだ用具を片付けている最中なんですが…。」 水銀燈「まったく…何やってもトロいんだから…。ほら、さっさとこっちに来なさぁい。『いつか、2人でスイーツフォレストに行ってみたい』って言ったの、あなたでしょう?」 その言葉に、彼女は急いで駐車場に向かう。 普段、あまり感情を表に出さない彼女が見せた、嬉しそうな表情… それを見て、女子生徒はある言葉を言うのを忘れてしまった。 「…まだ、6時間目の授業が残ってますよ…。」 と。 完
>お題 『メイメイさんに、不良教師銀様をどう見ているのか訊いてみたい』 女子A「メイメイさーん、ハードルってここに置いておけばいいんですかー?」 ある日の午後、重そうにハードルの束を抱え指示を仰ぐ女子生徒。 「ふぅ…」と指示を待たずにその場にそれを置くと、彼女はその上に腰掛け、手で顔をパタパタと仰ぎ始めた。 一方、呼ばれたメイメイの方はというと、そんな彼女の様子に少し微笑みながらこう返答した。 メイメイ「ええ…ありがとうございます…。」 今ではすっかり珍しくなった、烏の濡れ羽色の黒髪…。そして、白い肌に整った顔立ち…。 理知的であるにもかかわらず、どこか幼さの残るその顔はどことなく天使を髣髴とさせる。 …もっとも、本人はその『幼さ』を気にしているのだが…。 メイメイ「…あの…。何か…?」 そんなことを考えながら自分の顔を見つめ続ける生徒に対し、メイメイは不審そうに声をあげた。 女子A「あ!いえいえ!!メイメイさんて、ホント綺麗だなーって思って…。でも、何で用務員なんかになったんです?ほら、仕事なんてほかにも色々あるじゃないですか?」 メイメイ「…一緒にいたい人がいるからでは、答えになりませんか?」 少し考えた後、彼女は顔色一つ変えずにそう答えた。 一緒にいたい人…それはおそらく水銀燈先生の事だろう…。 しかし、その答えに新たな疑問が生まれる。…どうして、教師ではなく用務員なのか…と。 もしかしたら、その質問はタブーなのかもしれない…。でも、彼女にはどうしてもそれに対する好奇心が抑えられなかった。 恐る恐る手を上げ、少女はメイメイにこう問いかける。 女子A「あの…怒らないで聞いてくださいね?何で、メイメイさんは水銀燈先生と同じ教師の道を選ばなかったんですか?そのほうが一緒にいられる時間は長いし、それに…正直、あの人よりメイメイさんのほうが教師に向いている気が…」 その瞬間、生徒は慌てて口をふさいだ。 まずい…つい本音を洩らしてしまった…。それも、彼女のことを一番慕う人の前で…! ゆっくりと視線を戻し、彼女を見る…。表面上は怒っていないようだが…しかし… そんなどこか脅えた様子の少女に対し、メイメイは静かにこう言った。 メイメイ「…それはお姉様…いえ、水銀燈先生のことをよく知らないからそんなことが言えるんです。…あなたは、去年先生が授業に関して、大変な苦労をなされていたということをご存知ですか?」 女子A「…ええ、先輩から聞いたことがあります。本当に…大変なものだったとか…」 そう、それは今から1年前の話… 水銀燈は、そのあまりに熱心な授業ぶりについていける者がいなくなり、担任や社会科系の授業の担当を降ろされていた。 そして、薔薇水晶に出会うまでの長い間、ずっと心を病んでいたのだが… メイメイ「そう…。でも、不思議ではありませんか?あれだけ人の心を惑わし、そして操ることを得意とする方が、何故そんな失敗をしたのか…。あなたは何故だと思います?」 女子A「えっ…?人の心は、そんなに単純じゃなかった…とか?」 その言葉に、メイメイは首を振ってこう答えた。 メイメイ「…いいえ。あなたたちに対してだけは、本心で接しようとしているからですよ…。」 それは、少女にとってあまりに意外な答えだった。 確かに、彼女が生徒をからかって遊んでいる場面はよく見るが、自ら生徒に気に入られようとしている姿は見た事が無い…。 今までは、それを『妙なプライド』のせいだと思っていたのだが…。 そんな気持ちからか、少女はこんな疑問を彼女にぶつけた。 少女A「…でも、それなら何でこんなに授業をサボって…」 メイメイ「…それは、先生がこの保健体育を『実生活ではあまり役に立たないもの』と考えているからですよ。…実際、テスト勉強だって1日あれば全て網羅出来ますし…」 …確かにそれはいえる。体育の得意不得意なんて短期間でどうこうできるものではないし、保健だって教科書には『綺麗事』しか書いてないし… そんなことを考える生徒に対し、彼女は続けてこう言った。 メイメイ「…『教師』という仮面をかぶり、演じることは簡単です。正直…それについては何度も提案したのですが、あの方はあえてそれを実行しなかった…。私には、とてもそんなこと…」 そう言うと、メイメイは少し考えた後にこう付け加えた。 メイメイ「…でも、今は少しその気持ちが分かる気がします。…ここはいいところです。活気があり、何より優しさに溢れている…。一緒にいたいのは山々です。でも、彼女が1人で出来ることに私が手を出しても邪魔なだけ…。だから私は、あの方が行う事…そして、この学校がきちんと運営していけるように影でそれを支える…。それが私の…」 その時、彼女の携帯電話がけたたましく鳴り響いた。 着信音から誰がかけてきたか即座に判断すると、メイメイは急いで電話に出る。 それは、本来ここにいなければいない人物からの電話…。そして、大切な人からの電話…。 水銀燈「今どこぉ?もう車には乗ってるんでしょうね?」 電話から洩れる不機嫌そうな声…。その声に、彼女は申し訳なさそうにこう言った。 メイメイ「いえ…まだ用具を片付けている最中なんですが…。」 水銀燈「まったく…何やってもトロいんだから…。ほら、さっさとこっちに来なさぁい。『いつか、2人でスイーツフォレストに行ってみたい』って言ったの、あなたでしょう?」 その言葉に、彼女は急いで駐車場に向かう。 普段、あまり感情を表に出さない彼女が見せた、嬉しそうな表情… それを見て、女子生徒はある言葉を言うのを忘れてしまった。 「…まだ、6時間目の授業が残ってますよ…。」 と。 完

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー