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初恋は74式」(2007/07/18 (水) 17:38:09) の最新版変更点

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雪華綺晶は、陸上自衛隊の駐屯地をフェンス越しに覗いていた。 「……」 視線の先には、陸上自衛隊が誇る第3世代主力戦車"90式"が居座っていた。 「時代は変わったな」 74式の滑らかな曲線装甲は、レオパルドのような垂直装甲に変わっていた。 自動装填装置の追加、射撃統制装置の改良、日本の誇る技術をふんだんに盛り込んだ純国産の戦車である。 「一度は乗ってみたいものだな」 「先輩?」 雪華綺晶が90式に見とれていると、ふと声をかけられた。 「雪華綺晶先輩、生きていたんですね」 フェンスの向こうに隊員が居た。 雪華綺晶の一年後に陸自に入ってきた中村だった。 「中村だな? 久しぶりだな」 「えぇ、本当に」 中村も、雪華綺晶と同じ砲手を志望して陸自にやってきた。 成績はひどいものだった。 演習弾が教官の戦車に飛んできたこともあった。 「あの90式はお前のものか?」 「いえ、僕は戦車学校の教官になりました」 静止射撃もろくにできなかった人間が教官とは。 雪華綺晶は微笑した。 「しかし、どうしてこんなところに? アメリカ軍は辞めたんですか?」 「あぁ、近くの学校で普通の教師をしている」 「先輩が? まさか陸自式で生徒をしごいてるんじゃ……」 「想像に任せる」 陸自式、むしろナチス式の教育をしていたかもしれない。 雪華綺晶は図星だった。 「でも、生きて子供たちに勉強教えてるって聞いて安心しましたよ。エイブラムスに乗ってT-72をやっつける! って言った時には驚きましたよ」 雪華綺晶の妹の方が、驚き、心配していただろう。 「アフガニスタンと”イラクの自由”にも参加したんですか?」 「私は湾岸で引退した」 湾岸戦争の後、アメリカはアフガニスタンと再びイラクに侵攻した。 結果はニュースで報じられているとおり、ひどいものだった。 「なぁ中村、職業講和の時にお前を呼ばせてもらうぞ」 「えぇ? 本当ですか? 緊張するなあ」 中村は照れていた。 「中村教官! よろしいですか?」 奥の90式のハッチが開かれ、隊員が顔を出した。 「あぁ、ちょっと待っていろ。では先輩、失礼します。また覗きにきてください」 雪華綺晶は敬礼で中村を見送った。 ----- 「あらぁ、雪華綺晶、また戦車眺めてるのぉ? ほんとにほんとに戦争オタクなんだからぁ」 雪華綺晶の後ろには水銀燈がいた。 「水銀燈、どうしたんだ?」 「戦車に用はないんだけどぉ、近くのスーパーでヤクルト安売りしてるから一緒に買いに行こうかと思って」 「一人で行けばいいだろう」 「だってぇ、空から爆弾が降ってきたら怖いじゃない? あなたがいれば安心だわぁ」 「ありえない」 「もう、行くって行ったら行くの」 水銀燈は雪華綺晶を引っ張っていった。 ----- 後日 「えー、今回は職業講和ということで、近くの陸上自衛隊の駐屯地から隊員さんをお呼びした。私が許可するまで、一切の挙手、発言を認めない。では、どうぞお入りください」 扉を開いて、中村が教室に入ってきた。 先日とは違い、制服を着ている。 「どうも、中村といいます。先生のご紹介のとおり、僕は近くの駐屯地で働いています」 淡々と話を始めた。 「仕事は戦車を操る人間の教育、やわらかく言えば先生ですね。実は、この雪華綺晶先生の後輩なんです」 (中略) 「国を守る、とかそんな大それたことをしなくてもいいんです。機械いじりがやりたいとか、体力をつけたいとか、そんな動機でもいいんです」 「最後に、中村一尉に質問はあるか?」 (中略:真面目な質問から面白い質問までたくさん出た) 「では、これで職業講和を終了する。中村一尉に対し敬r、拍手でお見送りを」 職業講和は何事もなく終わった。 ちなみに、"雪華綺晶先生の彼氏"と噂した生徒は、一週間のレオパルド磨きの任についている。
雪華綺晶は、陸上自衛隊の駐屯地をフェンス越しに覗いていた。 「……」 視線の先には、陸上自衛隊が誇る第3世代主力戦車"90式"が居座っていた。 「時代は変わったな」 74式の滑らかな曲線装甲は、レオパルドのような垂直装甲に変わっていた。 自動装填装置の追加、射撃統制装置の改良、日本の誇る技術をふんだんに盛り込んだ純国産の戦車である。 「一度は乗ってみたいものだな」 「先輩?」 雪華綺晶が90式に見とれていると、ふと声をかけられた。 「雪華綺晶先輩、生きていたんですね」 フェンスの向こうに隊員が居た。 雪華綺晶の一年後に陸自に入ってきた中村だった。 「中村だな? 久しぶりだな」 「えぇ、本当に」 中村も、雪華綺晶と同じ砲手を志望して陸自にやってきた。 成績はひどいものだった。 演習弾が教官の戦車に飛んできたこともあった。 「あの90式はお前のものか?」 「いえ、僕は戦車学校の教官になりました」 静止射撃もろくにできなかった人間が教官とは。 雪華綺晶は微笑した。 「しかし、どうしてこんなところに? アメリカ軍は辞めたんですか?」 「あぁ、近くの学校で普通の教師をしている」 「先輩が? まさか陸自式で生徒をしごいてるんじゃ……」 「想像に任せる」 陸自式、むしろナチス式の教育をしていたかもしれない。 雪華綺晶は図星だった。 「でも、生きて子供たちに勉強教えてるって聞いて安心しましたよ。エイブラムスに乗ってT-72をやっつける! って言った時には驚きましたよ」 雪華綺晶の妹の方が、驚き、心配していただろう。 「アフガニスタンと”イラクの自由”にも参加したんですか?」 「私は湾岸で引退した」 湾岸戦争の後、アメリカはアフガニスタンと再びイラクに侵攻した。 結果はニュースで報じられているとおり、ひどいものだった。 「なぁ中村、職業講和の時にお前を呼ばせてもらうぞ」 「えぇ? 本当ですか? 緊張するなあ」 中村は照れていた。 「中村教官! よろしいですか?」 奥の90式のハッチが開かれ、隊員が顔を出した。 「あぁ、ちょっと待っていろ。では先輩、失礼します。また覗きにきてください」 雪華綺晶は敬礼で中村を見送った。 ----- 後日 「職業講話ということで、近くの陸上自衛隊駐屯地から隊員さんをお呼びしました。ちなみに、私の後輩です……」 えぇー、と生徒から声があがる。 「本当ですよ? いやぁ、とんでもない先輩でした。僕のご飯を全て奪ったり……」 と、中村。 雪華綺晶の鋭い視線が中村に突き刺さる。 「と、と、まぁ昔話はここまでにして……」 (中略) 「以上で職業講話を終了します。中村三尉に拍手を」 職業講話は、無事に終了した。 「雪華綺晶先生、あの人って先生の彼氏ですか?」 一人のある男子生徒が、終礼後に質問に来た。 「ねぇ、A君……」 沈黙が流れた。 「私の戦車(くるま)洗ってくれるかしら?」 その男子生徒は、一週間のレオパルド磨きの任についている。

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