「金糸雀のおみくじ」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

金糸雀のおみくじ」(2007/02/10 (土) 21:54:08) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

 元旦。  近所の神社の境内で、振り袖姿の二人がばったりと出くわす。 金「明けましておめでとうなのかしらーーっ」 薔「……今年もよろしく……」  お参りした後、一緒におみくじを引くことになった。 薔「……金糸雀先生から、どうぞ……」  先輩を立てる薔薇水晶。  おみくじ箱を受け取った金糸雀はごくりと喉を鳴らし、真剣なまなざしになると。 金「凶出るかしらーーっ、凶出るかしらーーっ……」  一心にそう念じ始めた。  薔薇水晶は、かすかに小首を傾げる。 薔「……なぜ、凶……?」  そう問われると、金糸雀は少し戸惑った表情を浮かべて。 金「実は……カナは生まれてこの方、おみくじで吉の一文字にお目にかかったことがないかしら……。  去年とおととしは二年連続で大凶を引き当ててしまったから、今年はせめてただの凶に留めたいところかしら……」 薔「……金糸雀先生、かわいそう……」  金糸雀の寂しげな様子に、薔薇水晶は、ほろりと目元を潤ませる。  表情をぐっと引き締めると、おみくじ箱を抱える金糸雀の手に、そっと自分の手を重ね。 薔「……今年は大丈夫……。私は今までに一度も凶を引いたことがないから、先生に私の運を分けてあげる……」 金「本当かしらっ!? ……でも、そんなことをして、もしも薔薇水晶のツキが下がったら……」  いったんは表情を輝かせたものの、すぐにトーンダウンしてしまう金糸雀。  しかし、薔薇水晶の誠実なまなざしに、意を決した。  がらがらと箱を揺さぶって、番号の記された棒を取り出す。 金「四十九番かしら……」  不吉な数字に、不安をよぎらせつつも、巫女さんから折り畳まれた紙片を受け取る。  果たして、金糸雀の今年一年の運勢は? 二人「……末小吉……」  たらりららりらりらりら~~♪  天使が舞い降りてきたようだった。  二人は手を取り合って喜んだ。 金「こんなに嬉しい一年の始まりは、初めてかしら~~」  お互いに涙ぐんで祝福した。 金「このおみくじは、額に飾って家宝にするかしらーーっ」  そう言って、手にしたおみくじを天にかざす。どこまでも澄み切った青い空。まぶしく降り注ぐお日さまの光。  と。 金「……あれ?」 薔「……どうかした……?」 金「おみくじが……何だか二枚重なっているような……」  何かの手違いだろうか。爪を立てて、貼りついた二枚を引きはがしてみると、もう一枚に書かれていた文言は……。 二人「……大……凶……」  がーーーーーーーーんっ!!  一陣の北風が吹き込んできて、金糸雀は背筋をぞくぞくと震わせる。にわかに日もかげり出したような。 金「……これって……これって……、末小吉から大凶を差し引いて、末凶ってことかしらーーっ!?」  涙腺が決壊した。滝のような涙があふれ出した。 薔「……あ、あの……」  もう目も当てられなかった。かける言葉が全く思いつかない。 薔「……とりあえず、何か美味しい物でも、食べに行きません……?」  ぐずぐずと泣きじゃくる金糸雀は、促されて歩き出した。  べしゃり。  足元をよく見ていなかったから、水たまりを盛大に踏み抜いた。 金「うわわわわわわーーっ、振り袖が、振り袖がーーっ。染みになってしまうかしらーーっ!!」  金糸雀は今年も、前途多難なようだった。
  元旦。   近所の神社の境内で、振り袖姿の二人がばったりと出くわす。 金「明けましておめでとうなのかしらーーっ」 薔「……今年もよろしく……」   お参りした後、一緒におみくじを引くことになった。 薔「……金糸雀先生から、どうぞ……」   先輩を立てる薔薇水晶。   おみくじ箱を受け取った金糸雀はごくりと喉を鳴らし、真剣なまなざしになると。 金「凶出るかしらーーっ、凶出るかしらーーっ……」   一心にそう念じ始めた。   薔薇水晶は、かすかに小首を傾げる。 薔「……なぜ、凶……?」   そう問われると、金糸雀は少し戸惑った表情を浮かべて。 金「実は……カナは生まれてこの方、おみくじで吉の一文字にお目にかかったことがないかしら……。去年とおととしは二年連続で大凶を引き当ててしまったから、今年はせめてただの凶に留めたいところかしら……」 薔「……金糸雀先生、かわいそう……」  金糸雀の寂しげな様子に、薔薇水晶は、ほろりと目元を潤ませる。  表情をぐっと引き締めると、おみくじ箱を抱える金糸雀の手に、そっと自分の手を重ね。 薔「……今年は大丈夫……。私は今までに一度も凶を引いたことがないから、先生に私の運を分けてあげる……」 金「本当かしらっ!? ……でも、そんなことをして、もしも薔薇水晶のツキが下がったら……」   いったんは表情を輝かせたものの、すぐにトーンダウンしてしまう金糸雀。   しかし、薔薇水晶の誠実なまなざしに、意を決した。   がらがらと箱を揺さぶって、番号の記された棒を取り出す。 金「四十九番かしら……」   不吉な数字に、不安をよぎらせつつも、巫女さんから折り畳まれた紙片を受け取る。   果たして、金糸雀の今年一年の運勢は? 二人「……末小吉……」   たらりららりらりらりら~~♪   天使が舞い降りてきたようだった。   二人は手を取り合って喜んだ。 金「こんなに嬉しい一年の始まりは、初めてかしら~~」   お互いに涙ぐんで祝福した。 金「このおみくじは、額に飾って家宝にするかしらーーっ」   そう言って、手にしたおみくじを天にかざす。どこまでも澄み切った青い空。まぶしく降り注ぐお日さまの光。   と。 金「……あれ?」 薔「……どうかした……?」 金「おみくじが……何だか二枚重なっているような……」   何かの手違いだろうか。   爪を立てて、貼りついた二枚を引きはがしてみると、もう一枚に書かれていた文言は……。 二人「……大……凶……」   がーーーーーーーーんっ!!   一陣の北風が吹き込んできて、金糸雀は背筋をぞくぞくと震わせる。にわかに日もかげり出したような。 金「……これって……これって……、末小吉から大凶を差し引いて、末凶ってことかしらーーっ!?」   涙腺が決壊した。滝のような涙があふれ出した。 薔「……あ、あの……」   もう目も当てられなかった。かける言葉が全く思いつかない。 薔「……とりあえず、何か美味しい物でも、食べに行きません……?」   ぐずぐずと泣きじゃくる金糸雀は、促されて歩き出した。   べしゃり。   足元をよく見ていなかったから、水たまりを盛大に踏み抜いた。 金「うわわわわわわーーっ、振り袖が、振り袖がーーっ。染みになってしまうかしらーーっ!!」   金糸雀は今年も、前途多難なようだった。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー