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[[前に教えてもらった事>教科書が教えない歴史『エルトゥールル号』]]
「て、薔薇水晶先生に教科書に載らない歴史っての教えてもらったんですよ」
と、言うのは柿崎めぐ。
病弱で有名な彼女だが……愛しの天使こと水銀燈の事となると病弱? はっ! なにそれ!
と、言った感じになる不可思議な女の子……だ。うん。
「へぇ……それなら私もしってるわよぉ……歴史を生きた女性達で、そうねぇ~
有名どころで与謝野晶子なんてそうね」
「そうなんですか?」
「そうよぉ~」
くるくるとボールペンを回しながらめぐにそう告げる水銀燈。
「説明メンドイから自分でしらべてねぇ~」
「えぇええ!! そんなぁ!」
「だってぇ……私仕事あるしぃ」
「いつも仕事さぼってるじゃないですか!」
「そ、そうだけどぉ……薔薇水晶と雪華綺晶が監視してるのよぉ~」
ちらっと見れば、確かにコチラを見ている双子の姉妹。
「与謝野晶子は、説明が難しいのも本当なのよぉ~……
別のヤツ話すからぁそれで勘弁してちょうだぁい」
「それなら……」
ちょっと、ふてくされながら頷くめぐ。
「二十八日間」
「へ?」
「二十八日間、ユダヤ人にビザを書き続けた一人の男性が居るわぁ……
名前は、杉原千畝(ちうね)。ソ連専用の外交官だったの」
ほうけた表情をしためぐをみて苦笑しながら水銀燈は話をつづける。
「千九百三十年……昭和十四年ね。その年の九月一日ほらめぐもならったでしょう?」
「ナチス・ドイツがポーランドに進攻。第二次世界大戦が始まった……でしたっけ?」
「そうそう。そのヒトラーは反ユダヤ主義を掲げてヨーロッパ各地でユダヤ人狩りを繰り広げた」
「はい……」
「翌年千九百四十年、七月二十七日。杉原千畝の居る領事館の前におびただしい人の群れが埋め尽くしてた
埋め尽くしていた人達は、ポーランドからやってきたユダヤ人難民。
杉原はさぞ驚いたでしょうねぇ~。自分の仕事していた部屋の窓から外をみたら人の群れよぉ~?
まぁそれはともかく、ユダヤ人難民は、日本領事館へ行けばビザを発行してもらえると聞いてます。
どうかビザを交付してください。って言ったのよ」
ビザとは、人が外国に入る場合、その国の領事などから旅券の検査を受け安全に入国できるよう
裏書してもらう事。
「ユダヤ人たちは、ソ連経由で日本に上陸して其処から
第三国へ落ち延びようって考えてたのよぉ~
だけど、外務省からの訓令は無条件のビザ発行は駄目。
杉原はたいそう悩んだわぁ……何とかしてあげたい! そう思っても自分は外交官と言う立場。
指示にそうむいて行動なんて出来なかった。
杉原は悩んで悩んで眠れない夜が続いたわ……
そりゃぁ私だって同じ立場になれば悩むわねぇ……」
同僚の真紅か翠星石あたりが聞いたら、疑いそうな言葉を吐く水銀燈。
そんな水銀燈の言葉を聴いて、めぐ……水銀燈を見ていた薔薇水晶と雪華綺晶は
やっぱり水銀燈(先生・お姉さま)は優しい。と、思ってたりする。
「同年、八月一日早朝。杉原の姿は日本領事館の外にあったわぁ……
そして大声で、皆さん方に日本の通過ビザを発行することになりました。と、告げたのよぉ。
一大決心だったでしょうねぇ~。外務省にそむいた訳だし……良い事なんて一つも無いわぁ
だけど、杉原のその決心の言葉に、ユダヤ人たちは一瞬沈黙の後大いにどよめいたわ。
抱き合ってる人もいたそうよぉ~」
まぁ損得じゃぁ……得られない物もあるわよねぇ~……と、水銀燈らしからぬ言葉を呟く水銀燈。
どこか苦笑してる様に見えた。
「さて、これからが大変。一枚一枚手書きでビザを発行する訳だから……大変な労力よねぇ~
気が遠くなるような作業だわぁ……昼飯抜きの日々が二十八日間。私なら死んじゃうかもしれないわぁ~
睡眠時間もほとんどないようなものだしぃ~お肌が荒れちゃうわねぇ~
まぁそれはともかく、その時のビザをもって日本から各国へ脱出したユダヤ人の数は
六千人に達するといわれているわぁ~たいしたものよねぇ~ほんと」
そういった後、コーヒーを一口すする水銀燈。
水銀燈はめぐに、一枚のクッキーを手渡す。
「カウナスに残ったユダヤ人は全て殺された。リトアニア自体八月三日にソ連と併合。
杉原はこう語ってるわぁ……私のした事は外交官として間違った事だったかもしれない。
しかし、私に頼ってきた何千人もの人を見殺しにする事はできなかった。
実に、男らしいわぁ……今の日本人男性にこんな言葉を吐ける男がいるかしらぁ……
居たとしても本当に少数よねぇ……まぁ杉原は、帰国後事実上の外務省を解雇。
その後は貿易会社なんかに勤めたけどぉ~
千九百八十五年の一月、イスラエル政府から杉原に
諸国民の中の正義の人賞を授けられたわぁ~、これはイスラエル建国に尽くした
外国人に与えられるものでぇ~日本人として杉原が初めて授かったのよ~
それまで~カウナスでの杉原の行為は日本人に知られなかったのぉ~
んで、杉原はその翌年に八十六歳でひっそりと死去」
大和魂って訳じゃぁないけどぉ~いまじゃぁ珍しい男の話よぉ~
教科書に載ってない歴史の一つねぇ~
と、水銀燈がそういい終わると、さぁ~書類済ませなきゃ~とデスクに向かった。
めぐは、ありがとうございました。と一礼して職員室から出て行った。
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