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昨夜から続いた雨は、昼前には既に止み、空は灰色に支配されている。 その灰色の世界のもと、有栖学園の屋上に彼女は居た。 おもむろに、彼女はポケットから、くすんだブルーのパッケージの煙草を取り出した。 その一本をくわえ、着飾る彼女にしては珍しい、ただの100円ライターの火をともす。 曇り空に、紫煙が浮かぶ。 やがては消えゆく、儚きもの。 「ここに居たのね、水銀燈」 「なによぉ、息抜きしちゃいけないのぉ?」 「別に。まぁいいわ、丁度いいから私もお一つ頂戴してよろしいかしら?」 「…はぁい」 そう言って、彼女は煙草とライターを差し出す。 少しずつ、コバルトブルーに染まってゆく曇り空に、二つの紫煙が浮かぶ。 複雑に絡まりながら、やがては消えゆく、儚きもの。 「たまには、こういうのもいいかもしれないわね」 「あらぁ、貴女もサボりぃ?」 「ええ、たまにはね」 「ふぅん……」 屋上に、灰色の世界を切り裂く光が差し込み、彼女達を照らす。 ここは、もっと陽のあたる場所。 彼女達のための舞台。

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