池上燐介10

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**10.『機関』 「『機関』っつーのは、簡単に言えば『この世界を征服してる超巨大組織』の名前だ」 しばらくの沈黙の後、目の前の男――国崎シロウは俺の欲していた情報、『機関』について話し始めていた。 それが取引の成立を意味していたことは、言うまでもないだろう。 男が黙々と喋る間、俺は一言も言葉を発することなくその話に耳を傾けた。 「胡散臭いのは解るが、まあ聞け。 ……この世界に存在する国家、組織、会社、犯罪集団。  表裏も、善悪すらも問わず、ありとあらゆる組織に機関の構成員は潜伏している。  その存在意義、目的、規模、いつから存在しているのかも一切不明。  ある筋の情報だとだと、自分が機関の構成員だって知らないまま、  機関の為に動かされてる奴まで含めれば、その構成人数は数百万、或いは数千万に  なるって話だが……まあ、これは本筋には関係ないから別にいい。  とにかく、世界規模の秘密結社。それが『機関』の正体だ」 そこまで言った後、更に続ける。 「……と、ここまでは裏の世界にそれなりに関わった奴が、運があれば知れる情報だな。  ――そしてここからは、十数年前、裏の世界の底の底まで沈みきった  最低最悪のバケモノが、機関の「No10」とやらを倒して、拷問した時に得た情報だ。  『機関』……奴らの基本的な目的は『異能者』だ。  奴らが行う戦争や慈善活動、それは一見何の関係も無い用に見えるが、そのほぼ全てが、  異能者と接触、研究、拿捕、勧誘する為に行われている。ある時は、戦争を引き起こして、  人工的に異能者を開発する研究を行わせたり、またある時は、探し出した異能者を拉致して、  解体してサンプルを作ったりと、目的は解らんが、とにかく異能者に対して貪欲だ。  ……まあ、今回この街で起きている事なんかが解りやすい例だな。  奴らの幹部はナンバーで呼び合っている様だが、拷問相手はそいつらの名前までは  知らなかった様で、それは入手してない。  つまるところは、異能者を狙う世界組織。それが『機関』だって考えればいい。  ……一応忠告しとくが、『機関』に抵抗するのは構わんが、『敵』になろうとは  考えないほうがいいぞ。大切な存在があって、それを無くしたくないのならな」 ────。 十分程経った頃だろうか、男は全てを話し終えたかのように口を閉じていた。 再び訪れる沈黙の時間──。 その間に俺は、男から聞いた話の全てを、頭の中で整理するのだった。 秘密結社ときて世界征服か…… まるでどこぞのライダーと闘う悪の軍団のようだな……。 いきなり目の前の男の言った突拍子も無い事を聞いて、 初め俺は、内心で時間を無駄にしたかと思わないでもなかった。 だが、それでも俺の中では、最終的にこの話を信ずるに至っていた。 ……なぜ、『首謀者』は『異能者』同士を闘わせたのか。 男の話を聞いて、これまで不透明であったこの一件の根幹の部分が、 俺の中で徐々にハッキリとしていったからだ。 この男曰く、『機関』というのはとにかく異能者に拘り、 それは様々な方法となって表れる。話しが正しいとすれば、 この男の言うように確かに今回の一件はそれを裏付けるもののはずだ。 そう考えれば、少なくとも今回の一件での首謀者達の目的は想像がつく上、 更にその想像通りであれば調度話の辻褄が合うのだ。 異能者同士を闘わせれば、自ずと異能者の中で弱者と強者が生まれる。 能力が暴発=死 であるなら、弱者に待つのは決定的な死。 狙いがこの街の異能者を弱者と強者に『選別』することにあるのだとすれば、 つまり、この一件での目的は強者を出現させること……。 ──『異能者と接触、研究、拿捕、勧誘する為に行われている』 俺の頭の中で、先ほどの男の言葉がこだまする。 ……そうして生き残った強者を組織に連れ帰り、そこで解体して研究するか、 構成員の一員として雇うか、断れば洗脳して否が応でも従わせるか…… なんにせよ情報通りであれば、碌でもないことを企んでいるに違いない。 頭の中で一つの結論を出した時、俺はこれまで貝のように閉じた口を開き、 沈黙を破るようにして言葉を発した。 「『敵になるな』……か。ご忠告は感謝しよう。 が、話を聞いて、ますますそいつらを片付けたくなった……」 そう言い終えた瞬間だった。突然、店の玄関先から声がしたのは。 それと同時に俺の右手が警告を発したのを俺は感じ取っていた。 ──異能者! 異能者がこの店に……。 俺は警戒するように静かに後ろを、店の玄関を振り返る。 そこで俺の目に飛び込んできたもの、それは小学生と思われる二人の男女だった。 反応からみて異能者は恐らく一人、どちらかだが……なるほど、女の方か。 この様子では俺と『国崎シロウ』のどちらかの命を狙いに来たわけじゃなさそうだ。 女に敵意が無いことを悟ると、俺は二人の客をそっちのけで男に話しかけた。 「ところで、『そいつら』の居場所は知らないのか?……いや、知っていることはあれで全てだったな」 「ああ……改めて言う必要は無いかも知れないが、『約束』は守ってやるよ。 灰色の髪の毛をした『池上』という名の大学生には関わるなと、 その仲間とやらに言っておくんだな。……じゃあな、店長さん」 言い終えると、俺は店の玄関に向かって歩き出した。 これ以上得るものがなければ、ここに留まっていても仕方がない。 『機関』のことはある程度は分かった。後は、そいつらが何処にいるか……だ。 ……さて、どうするかな。 [[池上燐介11]]
**10.機関 「『機関』っつーのは、簡単に言えば『この世界を征服してる超巨大組織』の名前だ」 しばらくの沈黙の後、目の前の男――国崎シロウは俺の欲していた情報、『機関』について話し始めていた。 それが取引の成立を意味していたことは、言うまでもないだろう。 男が黙々と喋る間、俺は一言も言葉を発することなくその話に耳を傾けた。 「胡散臭いのは解るが、まあ聞け。 ……この世界に存在する国家、組織、会社、犯罪集団。  表裏も、善悪すらも問わず、ありとあらゆる組織に機関の構成員は潜伏している。  その存在意義、目的、規模、いつから存在しているのかも一切不明。  ある筋の情報だとだと、自分が機関の構成員だって知らないまま、  機関の為に動かされてる奴まで含めれば、その構成人数は数百万、或いは数千万に  なるって話だが……まあ、これは本筋には関係ないから別にいい。  とにかく、世界規模の秘密結社。それが『機関』の正体だ」 そこまで言った後、更に続ける。 「……と、ここまでは裏の世界にそれなりに関わった奴が、運があれば知れる情報だな。  ――そしてここからは、十数年前、裏の世界の底の底まで沈みきった  最低最悪のバケモノが、機関の「No10」とやらを倒して、拷問した時に得た情報だ。  『機関』……奴らの基本的な目的は『異能者』だ。  奴らが行う戦争や慈善活動、それは一見何の関係も無い用に見えるが、そのほぼ全てが、  異能者と接触、研究、拿捕、勧誘する為に行われている。ある時は、戦争を引き起こして、  人工的に異能者を開発する研究を行わせたり、またある時は、探し出した異能者を拉致して、  解体してサンプルを作ったりと、目的は解らんが、とにかく異能者に対して貪欲だ。  ……まあ、今回この街で起きている事なんかが解りやすい例だな。  奴らの幹部はナンバーで呼び合っている様だが、拷問相手はそいつらの名前までは  知らなかった様で、それは入手してない。  つまるところは、異能者を狙う世界組織。それが『機関』だって考えればいい。  ……一応忠告しとくが、『機関』に抵抗するのは構わんが、『敵』になろうとは  考えないほうがいいぞ。大切な存在があって、それを無くしたくないのならな」 ────。 十分程経った頃だろうか、男は全てを話し終えたかのように口を閉じていた。 再び訪れる沈黙の時間──。 その間に俺は、男から聞いた話の全てを、頭の中で整理するのだった。 秘密結社ときて世界征服か…… まるでどこぞのライダーと闘う悪の軍団のようだな……。 いきなり目の前の男の言った突拍子も無い事を聞いて、 初め俺は、内心で時間を無駄にしたかと思わないでもなかった。 だが、それでも俺の中では、最終的にこの話を信ずるに至っていた。 ……なぜ、『首謀者』は『異能者』同士を闘わせたのか。 男の話を聞いて、これまで不透明であったこの一件の根幹の部分が、 俺の中で徐々にハッキリとしていったからだ。 この男曰く、『機関』というのはとにかく異能者に拘り、 それは様々な方法となって表れる。話しが正しいとすれば、 この男の言うように確かに今回の一件はそれを裏付けるもののはずだ。 そう考えれば、少なくとも今回の一件での首謀者達の目的は想像がつく上、 更にその想像通りであれば調度話の辻褄が合うのだ。 異能者同士を闘わせれば、自ずと異能者の中で弱者と強者が生まれる。 能力が暴発=死 であるなら、弱者に待つのは決定的な死。 狙いがこの街の異能者を弱者と強者に『選別』することにあるのだとすれば、 つまり、この一件での目的は強者を出現させること……。 ──『異能者と接触、研究、拿捕、勧誘する為に行われている』 俺の頭の中で、先ほどの男の言葉がこだまする。 ……そうして生き残った強者を組織に連れ帰り、そこで解体して研究するか、 構成員の一員として雇うか、断れば洗脳して否が応でも従わせるか…… なんにせよ情報通りであれば、碌でもないことを企んでいるに違いない。 頭の中で一つの結論を出した時、俺はこれまで貝のように閉じた口を開き、 沈黙を破るようにして言葉を発した。 「『敵になるな』……か。ご忠告は感謝しよう。 が、話を聞いて、ますますそいつらを片付けたくなった……」 そう言い終えた瞬間だった。突然、店の玄関先から声がしたのは。 それと同時に俺の右手が警告を発したのを俺は感じ取っていた。 ──異能者! 異能者がこの店に……。 俺は警戒するように静かに後ろを、店の玄関を振り返る。 そこで俺の目に飛び込んできたもの、それは小学生と思われる二人の男女だった。 反応からみて異能者は恐らく一人、どちらかだが……なるほど、女の方か。 この様子では俺と『国崎シロウ』のどちらかの命を狙いに来たわけじゃなさそうだ。 女に敵意が無いことを悟ると、俺は二人の客をそっちのけで男に話しかけた。 「ところで、『そいつら』の居場所は知らないのか?……いや、知っていることはあれで全てだったな」 「ああ……改めて言う必要は無いかも知れないが、『約束』は守ってやるよ。 灰色の髪の毛をした『池上』という名の大学生には関わるなと、 その仲間とやらに言っておくんだな。……じゃあな、店長さん」 言い終えると、俺は店の玄関に向かって歩き出した。 これ以上得るものがなければ、ここに留まっていても仕方がない。 『機関』のことはある程度は分かった。後は、そいつらが何処にいるか……だ。 ……さて、どうするかな。 [[池上燐介11]]

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