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「いやー、にしても随分と広い所だな、ここは!」
「・・・浮かれてる状況じゃない。」
デビットとガンナーは現在1階を探索している。
「デビット、どうやらこの建物結構広いから、一人になって探そうぜ!」
「え?何でだ?」
「固まって探すより、バラバラになって探す方が能率がいいだろ?」
「なるほど・・・よし、それじゃ合流地点はどうする?」
「よし、んじゃ給食室前が合流地点だ!分かったな!」
「よし、分かった。」
そう言うと二人は別々の場所を歩き出した。

デビットの方は上の階から探索をしている。
「・・・さて、どうしたものか・・・」
「何やら気配を上から感じる・・・行ってみるか」
デビットは4階へあがっていった。

一方のガンナーはと言うと。
「おらおらおらおら!!」
「だめだ、びくともしねぇ・・・」
ガンナーは鍵がかかって開かない放送室を壊そうとして入ろうとしているが・・・
扉はびくともせず、それ以前に傷一つも付かない。
「ちくしょう・・・ここはあきらめるか。」
そう言うとガンナーは別の場所を探し始めた。

~~~波楼 第2話~~~

「・・・よし。 誰にも会わなかったぞ・・・」
階段を駆け下り、廊下を走りながら波楼は思った。

「波動が使えたら、もっと遠くの敵も探知できると思うんだけどなぁ・・・」
しかし波楼は波動を感じることがヘタクソで生き物か、物かしか分からないのである。
その矢先、曲がり角でチラリと水色の尻尾が見えた。
(敵・・・?)
一瞬思ったが、よくよく考えれば、尻尾の位置が低い。
(自分よりちいさ・・・い?)
それに微妙に先の曲がった尻尾、あの色からして、
「・・・リオル?」

そのときだった。

カツン。

「!! 誰だ!」
目の前に居たのは、一匹のカブトプス。
「ケケケッ。 まさか俺の鎌を血でぬらすのはどうやらお前のようだな・・・」
「・・・・・。」

そして戦いは始まった。

カブトプスは一直線に“とっしん”してきた。
(・・・遅い。)
波楼はそれを受け流すかのように避ける。
そして、
「“はどうだん”!」
近距離で“はどうだん”をぶち当てた。

本来、“はどうだん”は相手にショックを与える技である。
カブトプスは血を流すことなく、その場に倒れた。

「ふぅ・・・よかった。」
安心してさっきのリオルを追いかけようかと思った瞬間、
「もらったぁあああぁぁぁ!!!」
さっきのカブトプスが襲い掛かってきた。
倒れているフリをしていたのだ。

(しまった!! よけられな・・・・)

どすっ。

何かがカブトプスの急所、ミゾオチに突っ込んできた。
最初は速すぎて見えなかった。 
(“でんこうせっか”・・・?  !)

突っ込んできたのは、あのリオル―――ココだった。

応急処置を終え、校庭を歩く祐樹すると………
祐樹「ん?誰だ?外出ようと攻撃してるやつ」
その名はガンナーと言うらしい
祐樹「(なんやかんやで一緒に行動かよ………)早く行こう」
そして彼らはどこに行くか話し合うことにした

        • ある生徒はこう言った。
「アトロポスさん・・・? あ、あぁあの人ね!3年前に転校して来た・・・確か女子だったと思うけど」

しかし、ある生徒はこう言った。
「知ってるよ。アトロポスってあの薄気味悪い男子だろ?入学式の時見た事あるような気がするから同学年だと思うが、6年間で同じクラスになった事は無いな」

そしてある生徒はこうも言った。
「え?アトロポス?・・・そういや、そんな名前の奴が今度転校して来るんだっけ? いや男か女かなんて知らねぇよ。まだ会った事無ぇもん。」

アトロポスという生徒がいつからこの学園にいたのか。 ・・・・・・それをこの学園の生徒達に聞いた結果がこれである。
では具体的にどんな生徒だったのかを聞いたなら、どんな返答が返って来るのか。
意外な事に、今までの返答とは打って変わって誰もが同じ返答を返してくるのである。

「何も分からない」

アトロポスの声を聞いた事のある者はいない。 常に仮面を被っているアトロポスの素顔を見た事のある者はいない。
そして好きなものは何なのか、どこに住んでいるのか、そもそも男か女かすら誰も知らない。
かろうじて分かるのは、種族がキマワリであるという事のみ。

「・・・・・・・・・・・・・・ここで君に会うとはな」
アルティカがそう言うと、アトロポスはゆっくりとアルティカの方へ顔を向けた。
気持ち悪いほどの満面の笑みを浮かべた仮面を被りながら。
「アトロポスちゃん? ・・・アトロポスちゃんなの!?」
「ちょっと待て」
ミミアンの言葉にアルティカは疑問を覚え、その疑問を解消すべくすぐさま質問を投げかけた。
「アトロポス”ちゃん”って何だよ・・・女じゃあるまいし。 そもそもコイツは僕と同学年。つまり君から見れば先輩だぞ?生意気にも程が・・・」
「何言ってるの・・・?」
今度は逆にミミアンが疑問を覚えた。
「アトロポスちゃんは1年前に転校してきた女の子じゃなかったの・・・?」
「はぁ!? 1年前!? 君、人をからかうのは勝手だけど・・・・・・彼は少なくとも3年前にはこの学園にいた。この事を僕は知っているんだ。だから」
「ねぇ、アナタが何を言っているのか分からないんだけど・・・」

次第に2人の話はただの水掛け論と化した。
ミミアンは相手が男でもちゃん付けをする少女だが、それを踏まえてもなおアトロポスは自分と同い年の女子と言い、そしてアルティカは自分と同い年の男子だと言い張る。
しかし、この2人が『何'故'自'分'が'ア'ト'ロ'ポ'ス'の'名'前'を'知'っ'て'い'る'の'か'』という疑問を持つ事は無かった。

結局2人の話は収集が付かず、結論も出ないまま終わってしまった。
普通なら本人に直接聞けば済む事なのだが、言葉を発する事の無いアトロポスに返答など期待できるはずもなかった。
「お・・・・・・・・・おい、待てよ」
アトロポスがどこかへ行こうとした事に気付き、アルティカは慌ててアトロポスを引き止めた。
するとアトロポスの体から根が生え、床に根付き・・・次第に根は文字の形になっていった。
               ”ついてきて”
アルティカとミミアンがその文字を確認した直後、アトロポスは根を引っ込めて再びどこかへ向かって歩き出した。
「待てって!・・・・・・僕を置いていくな!」
「え? ・・・・・・・・・・・・・・・え!? まま、待ってくださぁ~い!」

+++プロローグ 斬子&美羽+++

『今から君達に、この学園を舞台に10匹になるまで殺し合ってもらう。』

「…は?」
 意味分からん。それが、鬼瓦斬子が最初に思いついた一言であった。
 斬子は、フカフカのソファの上で目を覚ました。欠伸をしながら伸びをして、ようやく目が覚めた所で、短いノイズの後にあの放送が聞こえた。

「…いや、いきなり殺し合えーとか言われても…つーか、ここ何処?何で起きたら見覚えの無い部屋で見覚えの無いフカフカソファの上に居ましたーって事になってんだ?」
 言い切った後、斬子はソファの背中部分から、背後にあった窓の前に飛び降りる。
「外はどうなってんだ?」
 のん気に言いながら、窓に設置されていたブラインドに爪を引っ掛ける。窓からはグラウンドが見えていた。が、見た瞬間に戦慄が走った。

「何…だよ。……コレ」

 本当にやってた。まさか、本当に殺し合いが行われてたなんて。

 斬子の見たグラウンドでは、ポケモン同士の殺し合いが行われていた。どんな状況か、どう言えば…いや、言いたくも無い。
 そんなあまりの惨状を思いがけず突然見てしまった斬子は、ついその場にへたり込んでしまう。
「…はぁ、ビックリした…。いきなり言われて、半ば冗談だと思ってた…あーあ、冗談だったらよかったのになぁ~…」

 本当に殺し合わなければならないのか…自分も…もしかしたら、殺されるかも…そしたら、もう『あいつ等』とも…あーっ、もう!

 頭の中で、様々な思いが交錯するが、考えてる途中でイライラしてきたのか、突然頭をブンブン横に振っては、すくっと立ち上がる。
「こんな所で思い詰めてても埒明かねぇ。何かやらねーと!…とは言っても、どうするよ?」

 斬子は、部屋のドアを開けて外の様子を伺う。
「さっきの放送どおり、ホントに学校みてーだな。目の前には廊下、で、ここは…」
 斬子は、教室名が書かれている標示プレートへと目をやった。それには『校長室』と記されている。
「…オレ、校長室のソファで寝てたのか。ま、いいや。現状に比べりゃそんな事。さて、どーすっかな…ちと危ないかもしれねーが、出てみるか」
 校長室を出た斬子は、なるべく足音を出さないように、1階の廊下を歩き始めた。



「殺し合い…か」
 職員室の窓辺からグラウンドでの殺し合いを眺めていた天津美羽は、ぽつりと呟いた。
「さっきの放送は本当みたいだし…あたしも、生き残る為には他のポケモンを殺すしか…ないのね」

 ドアを開けて、少し身を乗り出して外の様子を伺ってみる。
「今の所、近くには誰も居ないみたいね…」
 もう少しここで様子を伺ってみようかと思い、頭を引っ込めようとしたその時だった。

「ひっ!?」
 一瞬、ドキッとした。さっきまで誰も居なかったが、ここから2部屋ほど離れた所の教室から、誰かが出てきた。
「…はぁ。やっぱりこういうのって、ビックリするものね…ん?」
 ふと、目を疑う。あのポケモン…誰かに似てないか?背丈に加え、あの頭といい、鋭い爪の生えた手。おそらくマニューラだが、何処か懐かしい面影がある…つい最近まで、会ったことがある気がする…まさかッ!?

「斬子…?」

 此処を出て、今すぐそのマニューラの元へ急ごうとした時だった。
「ッ!」
 何時の間にか、一匹のエレブーが美羽に襲い掛かろうと、かみなりパンチを繰り出してきた。が、間一髪で美羽はそれを避ける。
「い、何時の間に…」
「悪いが、死んでもらうぜ…おらァッ!!」
 再び、かみなりパンチを繰り出すエレブーだが、それもまた美羽にかわされてしまう。
「どうやら、本当に殺らなきゃならないみたいね…」

 職員室で、美羽にとって最初の死闘が繰り広げられようとしていた。

「とりあえず、助けてくれてありがとう。ワタシはミライ。・・・アナタは?」
表面上の微笑を浮かべ、ミライは目の前のシャワーズに話しかけた。
「・・・・これから殺すかもしれない相手に名前を教えるの?・・・・まぁいいや、ボクは白雪水於。」
「そう、ミオっていうの。」
ミライは相変わらず表面上の微笑みを浮かべている。

「・・・じゃあね、精々生き残れるようにがんばれば。」
そういい捨てると、ミオは背を向けずに立ち去ろうとした。

「・・・待って。」
「・・・・何?」
「ワタシと・・・手を組まない?」
「・・・・は?」

ミオは、「何を言っているんだ」と言わんばかりの目でミライを見た。

「どうせそんな事言って裏切るつもりだろ。ボクが油断した隙にあんたが殺さない保障はあるの?」

「保障ね・・・・それはないわ。」
「じゃあ無理だね。ボクは殺されるつもりはないから。」
ミライは少し考えた。

「じゃあ、信じてくれなくてもいいわ。ただ、一緒に戦ってほしいの。」
「ふざけるな!なんでっ・・・・・。」
「アナタは水タイプでしょう?もしさっきみたいに電気タイプが出てきたり、草タイプが出てきたら困るでしょう?ワタシだったら効果抜群とは行かなくても、それなりのダメージは与えられるわ。」

「・・・・。」
反論できず、黙るミオ。
「お互いの弱点を補えば、生き残る確立も高くなると思わない?」

「うっ・・・・。」

「・・・どう?ワタシと手を組まない?」
今度は表面上ではなく、純粋に笑いかけるミライ。ミオは、反論できずに尚黙っている。

「仕方ないなぁ・・・・。その代わり、裏切らないでよ!」

「ええ、裏切らないわ。」

こうして、4階のランチルーム前でサーナイトとシャワーズが手を組んだ。

何が正しいのか分からない。
きっと、正しいことなんてどこにもないんだ。
どうすればいいか分からない。
彷徨うだけで救われれば、どんなに幸せだろう。
それでも闇から抜け出したい。
例え、自分自身が「闇」であっても――

   *   *   *

「殺してはいません……です。命は……平等です……から」
それは相手のルカリオ――波楼に言っているより、自分自身に言い聞かせているように見えた。
そして心なしか、震えているように見えた。
ココはゆっくり波楼の方へ顔を向け、一瞬、目を見開いた。
「……兄上……?」
それは、とても小さな声だった。


「助けてくれてありがとう。俺は波楼。時闇 波楼っていうんだ」
「ココ……です。ココ=ルーンと申します……です。兎に角、……すぐに移動しましょう……です」
簡単な自己紹介を終えてから、ココはすぐ移動するよう促した。
あくまで「気絶させただけ」なのだ。いつ起きてまた襲ってくるか分からない。
「トドメを刺しては駄目……です」
そう言って、波楼の手を引き足早にその場を去っていった。
「お前……どうして……」
「どうして……とは?」
暫く行った所で、波楼の問い掛けにココは足を止めた。
「どうして見ず知らずの奴を助けたんだ? もしかしたら、この殺し合いに乗ってるかもしれないぞ?」
「そんなことを言うあなたは……きっと殺し合いには乗っていない……です」
見透かされている。この時だけは波楼は、ココが自分より大人びて見えたという。
自分より、ずっと小さいというのに。
「それに……そう、ですね。あえて言うなら……」
ココは波楼の手を引いたまま、一つの部屋に入る。
妙に立派なソファ、そしてテーブル……そう、校長室のようだった。

「手が、暖かかったから」

その時のココの笑顔は、酷く不器用で幼く、脆かったという。
「ここで……作戦を立てましょう……です。今後の……方針を……」
次の表情は、既に感情を押し殺した無表情へと戻っていた。

うう、臭い。
臭いったらありゃしない。アゥ。
「こんな臭いとこに居れるか、アゥぅうう!!」
――ガコン!!
思いっきりゴミ箱を投げ飛ばしてみた。
だけど、何も起こらない。
「・・・一応空飛んでみよう・・・アゥ」



ばさっ・・・ばさっ・・・
 ばさっ・・・ばさっ・・・




…どれだけ飛んだのだろう。
なのに、全然届かない。

 …諦めよう。


再び降りてみると、下駄箱の所に着いた。
西昇降口、と言うだろうか。
でも・・・何故か、人の気配がした。
 気味が悪い。

そのまま歩き出してみた。
校長室―…そこに、人影がふたつ、映っていた。

敵かもしれない。
そしたら、もう逃げられないかもしれない。
      • 其の覚悟で、私は…―
「喰らえェエぇええ、
  ドラゴンダァアアアアアイブ!!!!!!」
火炎放射の準備をしながら、扉に向かってドラゴンダイブを咬ました。
ガッッシャァアアァン!!!
「「!!??」」

扉はそのまま勢い良くぶっ飛び、一匹のポケモンに直撃した。

「い゙でぇ・・・!!」
...間抜け面(ひでぇ)の声がした。
「え・・・」

「と………巴巳?」
そこには何と、ココが居たのだった。

「・・・よし!これで完成だ!多少時間が掛かってしまったが・・・まあ問題ないだろう」
一見普通のポケギアに見えるための偽装加工と、トリックなどの技の影響を受けないための電磁フィールドの安定に時間を取られたものの、パソコンルームでのレーダー製作が一通り完了した刻皇は、現在時間を確認した後、教室内のパソコンに、全て五十桁のパスワード製のロックを掛け使用不可能にし、レーダーを左腕に付け早速行動を開始する事にした。
このゲームが開始されてから、パソコンルームに近づく他の参加者が一匹もいなかったのは、幸運と言わざるを得ないだろう。
一番の理由は、最初の放送が流れてから暫く経った後に響いた狂気の笑い声のおかげで、四階にいる参加者達の数が少なかったのが原因だと思われる。
一応侵入者撃退用の為、パソコンルームの出入り口にトラップを仕掛けておいたのだが、結局無駄になったようだ。まあ殺し合いが始まっているこの状況で、念には念を入れるのは当たり前なのだが。

トラップを解除しパソコンルームを出た後、レーダーを確認しながら次に行く場所を考えた。

(まずは早急に使える駒が二・三人は欲しいな、固まって行動しているグループに接触するか。しかし、仮に誰かに攻撃された後で、警戒している状態だと厄介だ。学園内でのテレポートが正常に使えるかどうか解らない状態で離脱するには、逃げ道の確保をしておく必要もあるからな)

そう考えながら三階へ降りた後、廊下を移動している時、自分の背後に反応が一つ現れた。
しかもその反応は自分と同じスピードで移動している事から、後を付けているのは明らかだ。

(声を掛けて来ない上に気配も消していると言う事は、明らかにこのゲームに乗ったゴミか。・・・・・・フンッ!まあ良い、軽い準備運動には丁度良いだろう)

取り敢えず気付かないフリをしながら歩いて、そのまま角を曲がり、後ろにいる追跡者も獲物を逃がさないよう急いで角を曲がろうとしたその時―――――

ヒュンッ!!

―――――それは一瞬だった。
追跡者のストライクが自分に何が起きているのか理解出来たのは、自分に後を付けられていたフーディンが待ち伏せしており、手に持っていたスプーンで自分の喉笛を掻っ切られた事だけだった。
そのまま喉から血を流し即死したストライクを見下ろし、刻皇は余裕の笑みを浮かべていた。
実は彼の持つスプーンは普通のスプーンではなかったのだ。なんとメスに匹敵するくらい鋭利な刃物になっており、しかも戦闘技術の方も超能力を用いた戦闘は当然ながら、スプーンを用いた多少の肉弾戦も得意としていたのだ。
再びレーダーに視線を移動させようとしたその時、背後から小さい悲鳴が聞こえた。

「・・・・・・ひっ!!」

声のした方を振り向くと、いつの間にか目の前に十歳前後のケーシィの少女が怯えながらこっちを見ていた。
(チッ!見られたか!!だが気配は全く感じなかったぞ、どういうことだ?)
内心舌打ちをしながらも目の前のケーシィの少女に、これは正当防衛だと主張しようと近づこうとした時―――――

「いやああああああああああああ来ないで、こっち来ないでええええええ!!!」
刻皇が一歩踏み出したのが引き金となったのか、そのケーシィの少女はまるで狂ったように悲鳴を上げ姿が消えた。・・・・・・いやエスパータイプである刻皇には、テレポートを用いた戦闘離脱だということにすぐに気付いた。
すかさずレーダーに目をやり出現位置を探し始めた。レーダーではポケモンの特定は出来ないが、テレポートを使った参加者なら、何も無い場所から突然反応が出てくるので、校舎内ならすぐに見つけることが出来る。
しかし出てきた場所は、自分の今いる場所と目と鼻の先にある高三の教室からだった。
(どういう事だ?この学園内では、テレポートの効果が制限でもされているのか?それとも、パニックで遠くに移動出来なかったのか?・・・兎に角、捕まえて吐かせるか)

一方教室の教卓の中では、先程逃げ出したケーシィの少女が涙目で震えながら隠れていた。

「グスッ、助けて・・・ママ、助けて・・・パパ・・・・・・死にたくない、私死にたくないよう」

たしか昨日の夜は、明日家族三人で山にピクニックに行く事になって、それで興奮してよく眠れなかったのは覚えている。
しかし目が覚めたら訳の解らない場所にいて、いきなり殺し合いをしろと言われた。テレポートを使って脱出しようにも、どういう訳かこの敷地内から出ることができず、ひたすら他の参加者達の攻撃からテレポートを使い戦闘離脱して行くと、その先で血を流したストライクの死体と恐らく犯人であろうフーディンを見てしまった。思わず吐き気が来てしまったがなんとか抑えながらも、もう十回以上使ったのだろうかテレポートで目の前にあった教室に入り込み、現在この場所に隠れているのである。
ふと廊下の方へ耳を傾けると、先程ストライクを殺した殺人鬼のフーディンらしき足音が、遠くの方へ移動するのが聞こえた。
「良かった・・・行ってくれた~」
ケーシィの少女はホッと胸を撫で下ろし、教卓の中から出て今いる場所を見た。他のポケモン達の死体がいくつか見つけたがあまり見ないようにしていると、机や椅子がいっぱいある部屋だった。
人間の住処は良く解らないが、どうもこの場所は死角が少なく隠れるには向いていない場所のようだ。まずは隠れるのに適した場所を探そうと教室から出た時―――――

が し っ

「っ!?」
不意に背後から口と体を押さえられ、ケーシィの少女の心臓が大きく跳ね上がった。
訳もわからずそのまま先程隠れていた教室の中へ引き戻され、口を押さえていないもう片方の手でドアが閉められてしまった。
ケーシィの少女が口を押さえられながらも何とか相手の顔を見たその瞬間、サーと全身の血の気が引いた。

そこにいたのは遠くへ移動していったはずのさっきの殺人鬼のフーディンだったのだ。

実はケーシィの少女の居場所を知っていた刻皇は、遠くへ移動するフリをしてその場にいながら足音だけを少しずつ小さくしていただけだったのだ。
さらに教室の中にケーシィの少女以外の参加者がいない事をレーダーで確認し、安心して出てきた所を声を出さないよう取り押さえ、教室へ流れるように入り込んでいった。
そして今この場所では殺人鬼の刻皇と、非力なケーシィの少女が二人きりになっていた。

「ンッー!ンッー!」
ケーシィの少女は必死に相手の腕を振りほどこうとするが力の差は歴然である上に、テレポートで逃げようにも、さっき逃げる時にPP切れになってしまい使う事ができず。出来る事といえば非力な悪あがきをする事しか出来ない状況だった。
その時首元にヒヤリとした何かと「大人しくしていろ」と脅しを掛けた言葉により思わず動きが止まってしまった。
(わ、私・・・殺されるの?)
あまりの恐怖にビクビクしながらも言われたとおり大人しくしていると、突然相手の方から何か言ってきた。

「おまえ、さっきのテレポートは何度か使ったのか?」

(???)
突然な上に意味がわからない質問の内容に考えていると―――
「質問に答えろ!」
と、今度は語尾を荒くしながら言ってきたので、ケーシィの少女は慌てながらも質問の内容を理解した後、首を縦に振った。

「なら次は、おまえがこの敷地内の移動でテレポートを使い続けて、体に何か異常は起きたか?」

これは当然NOだ。この敷地から出られないのを除けば、テレポートはPP切れになるまで使っても、敷地内だけなら特に自分の身に何も起きてはいないし、当然使えば出てくる疲労以外の異常なんて無い。
この質問の答えには首を横に振って否定の意思表示をすると、また次の質問を言ってきた。

「それじゃあ、おまえのテレポートは敷地内限定なら普段どおり正確な場所へ移動できたか?」

さっきから質問をしてくる以外相手が何もしてこないからか、頭の中が冷静になってきたおかげでこの質問には即答で首を縦に振って答える事ができた。
しかしどうしても解らない事がある。なぜこの殺人鬼のフーディンはテレポートについてこんなにも聞いてくるのか?
そんなに気になるなら自分で確かめれば良いのでは?
それともこの殺人鬼のフーディンはテレポートを使えないのだろうか?
いろんな事が頭の中を駆け巡り混乱しているといつの間にか口を押さえられていた手や首元に当てられたヒヤリとした物が離れていった。
「えっ!?あの!?」
何故開放してくれたのか解らなかったが、とにかく一瞬大声を出して助けを呼ぼうと思った。しかし相手の手に持っている物を見たとたんそんな気が起きなくなった。
よく見たら相手の手に持っていたのは、ナイフのような物では無くスプーンだったのだ。
考えてみれば、フーディンはいつもスプーンを持ち歩いているポケモンだと知っていたのに、さっき自分は非常にパニックに陥っていた為か、首元にヒヤリとした物でナイフだと勘違いしてしまったのだろう。
という事はこのフーディンの殺人鬼・・・じゃなかった。フーディンのお兄さんは、最初から私を殺す気なんて無かったということだ。
それじゃあ、さっきのストライクの死体は?
もしかしたら、フーディンのお兄さんが見つけて近づいただけで、殺していないのでは?
もしそうだとしたら、自分はとんでもない勘違いをしてしまったのではないのか?
だったら、自分のやるべき事は一つ!

相手が何か言いかけようとしていたが、ケーシィの少女はわれ先に―――――
「御免なさい!!」
すかさず頭を下げて謝った。

相手のフーディンのお兄さんは、キョトンとしている様だが、そんなことはお構い無しに頭を下げながら言葉を続けた。
「お兄さんの事、殺人鬼だと勘違いしちゃって、思わず悲鳴を上げてしまってすみませんでした!!」
フーディンのお兄さんは暫く何か考えているようだったが、ようやく口を開いた。
「いや、良いんだ、兎に角頭を上げてくれ。おれがテレポートは正常に使えるかどうか、どうしても知りたかった為だけに、こんな可愛い女の子を恐がらせるような事をしてしまったんだから。寧ろ謝るのはおれの方だ」
「かっ、可愛いなんてそんな・・・私全然可愛くなんて無いですよ!」
「そんなこと無いって。おれから見れば十分可愛い女の子だ」
「そっ、そうですか?」
「そうだとも。少しは自分に自信を持てよ」
ケーシィの少女から見たフーディンのお兄さんは、何だか眩しく輝いているように見えた。
(はわわわわ、なんだか私胸がドキドキする。もしかしてこれが物語に出てくる『恋』ってヤツかしら?)
などと乙女チックな事を考えていると。
「なあ、聞いてるか?」
突然フーディンのお兄さんが顔を近づけてきた為、思わず―――――
「わひゃあっ!」
変なリアクションを取ってしまった。
「『わひゃあ』?どこの言葉だ?」
「あっ・・・いえ、ちょ・・・ちょっと驚いただけです!(あうう~どうしよ~、あのお兄さんドン引きしてる。絶対変なヤツって思われてるよ~)」
などと内心涙目で考えていると、フーディンのお兄さんから質問が飛んできた。
「ところでおまえの名前は?」
「はい?」
「いや、だから名前。これから一緒に行動するのに、相手が名無しじゃ変だろ?」
「あっ、そうですね・・・って一緒にいてくれるんですか!?」
流石にこれは思いも寄らなかった。てっきり自分は足手纏いになるから、ここで別行動にされるのかと思っていたら、向こうから誘って来たのだ。
「当たり前だろう。どの道、女の子一人では生存確率なんて0に近い程なんだから、おれが一緒にいてあげるのは当然だ」
「あっ、有り難うございます!」
また頭を下げてしまったが、今度は感謝の意味だった。

「おれは刻皇、冥羅刻皇だ」
「わたしは佳奈、青木佳奈です」
一通り自己紹介が終わった後、これからの行動を決める事にした。
「取り敢えず、この先戦うにせよ、身を守るにせよ、お互いの技は理解しておいた方が良いからな。と言う訳で佳奈、おまえは今何の技が使える?」
「テレポート!」
何故か選手宣誓の様に、自信満々に答えた。特に意味は無いが。
「それと?」
「それだけです!」
「・・・それだけ?」
「はい!あっ、でももうテレポートのPP使い切っちゃったから、今使える技は悪あがきだけでしたね・・・」
フーディンのお兄さんは何か思い出した表情をした後。
「・・・もしかして、さっきおれに捕まった時に使った、全く痛くない攻撃は・・・」
「えへへへ、すみません。私ってあまり筋力は無い方ですから」
フーディンのお兄さんは暫く考えた後、いきなり肩を掴んで顔を近づけて来た。
「あへ!?」
思わずまた変なリアクションを取ってしまったが、そんな事を気にするよりも今この状況の方が頭でいっぱいだった。

(ちょ!!・・・これってまさか!?・・・・・・わー!!タンマ!タンマ!私まだ心の準備が出来てないんですけど!)
などと頭の中が混乱しながらも、内心ちょっと期待していたのだが。
しかしその期待は別の意味で裏切られる事になった。

「じゃあ、消えろ」
「えっ、何g・・・」
『何がですか?』と言い掛けようとしたのだが、何故かその先が全く喋れなかった。
その代わり近くでヒューヒューと隙間風のような音がしており、その音が自分の喉元から流れている事に気付くのに、対して時間は掛からなかった。
そして佳奈はすぐに理解した。自分の喉が切られている事に、そしてその切った相手が目の前にいる、佳奈にとっての初恋の男性である事に。

(なんで?・・・なんで?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで)

佳奈は叫びたかった、何故こんな事をするのか?しかし発しようとした言葉が、まるで切られた呼吸気管から空気と一緒に漏れるように何処かへと流れて行ってしまい、全く伝える事ができなかった。
その時自分は泣いている事に気付いた。これは喉を切られた痛みなのか、それとも初恋の男性に、自分の気持ちを伝えられなかった事への悲しみなのか、その答えは出てくる事も無くそのまま佳奈は息絶えてしまった。
佳奈の死体を見下ろした刻皇は、死亡を確認してから言い放った。
「全く、何かの役に立つかと思っていたが、まさかテレポートだけしか使えないゴミだったとは・・・」
最初は佳奈の事を、それなりに使える駒だろうと考えていた。
そしてそのまま自分の駒として有効利用するために、引き込もうと思っていたのだが、どうも佳奈はテレポートだけしか使えない上に、その技はすでにPP切れ、おまけに悪あがきの攻撃も雀の涙と来ていた。
結果、佳奈の事は、自分の嫌いな使えない駒と結論付け処分するに至った。
まあ佳奈は自分に好意を持っていたようだが、そんな瑣末な事はどうでも良い。

それよりも新しく出てきた疑問は、一体主催者は何を基準にこのゲームの参加者を選んだのか。まさか目に付いたヤツらを片っ端から、適当に拉致してきたとでも言うのだろうか?
自分だったらこのゲームの参加者には、常にハイレベルな戦いを観戦するために、それなりに実力のある奴らを選ぶ。その方が素人の戦いよりも百倍面白いのは明らかだ。
何はともあれ、佳奈の証言から、学園内限定だがテレポートの使用に問題は無い事が確認できた。そう考えれば、先程の手間を差し引いても十分お釣りは来るだろう。

兎に角、疑問の方は先送りにすることにして刻皇は再度レーダーに目を向けた。
するとこちらの方へ少数のグループが近づいている事に気が付いた。
(さて接触するにしても、まずは会話をしなければならないからな。より警戒されず、かつ自然に入り込むには・・・)
ふと刻皇の足元に倒れている佳奈の死体と、廊下にいる先程殺したストライクの死体の血の付いたカマを見た瞬間、刻皇はニヤリと笑みを浮かべた。
この時、刻皇の頭の中には、物凄いスピードでこれからやろうとする悪魔のような計画が完成されていたのだ。
そして思いついた瞬間にはすでに行動を開始していた。

まず廊下に誰もいないのを確認した後、ストライクの死体を素早く教室の中に引きずり込み、そのストライクの腕のカマを佳奈の喉元に当て、自分が切りつけた傷跡の上に当ててから首の半分くらいまでカマを沈め、あたかもストライクのカマに切りつけられたような傷跡に偽装した後、ストライクの死体を教室の中にある他の死体の下に隠し、佳奈の死体をおんぶで抱え、先程のグループの元へ走った。

一方グループの方は、突然前方から誰かが走ってきた事に気付き、すかさず戦闘体勢を取ったが、良く見ると首元から血を流してぐったりしているケーシィの女の子を抱え、息を切らせながら慌てて走っているフーディンだった。
一同は只事ではないと思い話しかけようとしたが、走ってきたフーディンの方が先に口を開いた。

「たっ、助けてください!!いきなり背後からストライクに襲われ、佳奈が・・・義妹が切りつけられたんです!」

刻皇の本性を知っている者なら思わず『誰テメエ!?』とツッコミしたくなるくらい気弱そうな喋り方だが、彼は決して二重人格の類とかではない、実は優秀なのは頭脳や戦闘技術だけでなく猫を被った演技力もずば抜けていた。

ちなみに佳奈と会話する時に演技をしなかったのは、質問の時、すでに素を出していた為である。まあそれでも刻皇を警戒していなかったので、本人にとっては大した問題では無かったのだが。

何はともあれ刻皇は、他人の命だろうが感情だろうが、使える物は全て利用し自己の目的だけを達成させる程、卑怯で残忍で狡猾な男である。

(こいつの死で皆からの同情を誘い、仲間として誘ってもらうと同時に、ショックで戦えないフリをしてこちらの体力を温存させる、クククク完璧だ。まあ使える技を聞かれてもサイコキネシスとだけ答えればいいだろう。ミラクルアイとトリック、そしてこのゲームで生き抜くのに最も重要なテレポートは、なるべく知られないようにしないとな。仮に使わざるを得なくなっても、『途中で覚えた』とでも言えば済む話しだ。問題はこいつらが使える駒なのかどうかだが、これから判別していけばいいだろう)

怯えている表情に似合わず、悪魔のような計画を立てていることに気付く者はこの場には誰もいなかった。

アトロポスに連れられ3階に降りたアルティカとミミアンは、向こうから走ってくるフーディンに助けを求められた。

「はぁッ・・・・・はあッ・・・・・いきなりスイマセン。ぼくは冥羅 刻皇、コクオウと呼んでください。」
いきなり自己紹介をするフーディン、コクオウに、3人は警戒を解かない。少しの間黙っていたが、アルティカが口を開いた。

「ストライクは・・・捲いたか?」
「はい。なんとか・・・・。」
「その子に息はあるか?」
「・・・・ありません。」
「どこを切られた?」
「・・・首です。」
コクオウは、佳奈を床に寝かせると、首の傷を指さした。

「ひっ・・・・。」
その傷の痛々しさに、思わずミミアンは顔を歪めた。
「・・・・」
アトロポスは相変わらず黙ったままだ。

「・・・・良い機会だ。実験をしておこう。」
アルティカはそう呟くと、黒い袋を取り出した。
「それ、何?」
「見ての通り何の変哲もない袋だ。さっき図工室から拝借してきた。」
ミミアンの問いに、アルティカは手を動かしながら答える。
袋から、ラップに包まれた透明な液入りのビーカーを取りだし、その内の一つのラップを剥がした。そして、ビーカーを佳奈の首の上に持っていき、慎重に傾けた。


ジュワッ!

液が佳奈の傷に数滴落ちた瞬間、熱そうな音を立てて、傷は綺麗に塞がった。
目を丸くして驚く3人。アトロポスは分からないが。

「ククク、驚いたかい?これは傷を塞ぐ薬だ。でも、そんなことはどうでも良い。重要なのは、使い方だ。」
アルティカは佳奈の頭をつかんで、高く持ち上げた。

「おい、ミミアン。もしこの『人形』がいきなり目の前に出てきたら、どう思う?」

「えと・・・ビックリしちゃいます~。」

「だろう?これを利用して、相手の隙を作り、殺す。そうすれば、ボクの薬で外傷を消し、『人形』は幾らでも作れる。強そうな『人形』を出せば、相手の動揺を大きく出来るからな。それに、大量に作って教室に並べておけば、あたかもたくさんのポケモンが集まっているように見えるだろう。とまぁ、このように利用方法は幾らでもあるのさ。これが天才科学者アルティカ・リクロアスの実力だ!」

長々とした説明を終え、満悦した表情のアルティカ。この説明を理解できたのは、恐らくコクオウだけ。もしくは、コクオウとアトロポスだけだろう。ミミアンは、未だに首を傾げている。

「なるほど。相手の心を乱すところが素晴らしいですね、アルティカさん。」
「クハハハ!そうだろう!」
笑顔で言うコクオウに、ますます得意気になるアルティカ。その笑顔が演技とも知らずに、安心したミミアンがコクオウに自己紹介した。
「わたしはミミアンだよ~。よろしくね!あと、こっちがアトロポスちゃん!」

「そうか、宜しくね。ミミアンちゃん、アトロポスさん。」
表面上の笑みでミミアンの頭を撫でるコクオウが何を思ったか、それは、コクオウにしか分からなかった。

「・・・・・・いつまで歩かせるつもりだ」
先ほどからずっと先頭にいるアトロポスに、痺れを切らしたアルティカが聞いた。
もちろん返事は無い。

      • はずだったのだが、意外な事にアトロポスは振り向いてアルティカに顔を向けた。
「ようやく喋る気になtt・・・」
言い終わる前にアトロポスは葉っぱカッターを放ち、それはアルティカの頬をかすって飛んで行った。
じわり、と頬から血が流れていく。
「・・・ッ!テメェ!一体何・・・」

   ―――――バタッ

その音はアルティカの背後から聞こえた。
「きゃああああああああっっ!?」
廊下中にミミアンの叫び声が響く。 そこにあったのは、動脈を葉っぱカッターで切り裂かれた1人のゴーリキーの死体だった。
「・・・・・・・・・・・・そいつ1人を倒しただけで油断しないでください。  囲まれてます・・・」
コクオウの言うとおり、気配だけはあらゆる方向から感じ取る事ができる。だが姿を確認する事はできない。
そんな中、突然アトロポスが走り出した。 こちらに顔を向けながら。
ミミアン・コクオウ・アルティカの3人はアトロポスが自分達に何を伝えようとしたのか、この時ばかりはすぐに分かった。
”こっちだ。急いで”
3人はアトロポスに連れられて走り出した。

 斬子は校長室を出た後、1階を回って2階へ、更に2階を回って3階へと上がっていった。
「さて、3階にはどういう教室があるのやら…」
 そんな事を言いながら、廊下を歩いて行く。その時、足元からピチャッという音がした。水でも零れていたのかと、斬子は足元を見てみる。

「こ、これ…血だ」

 ふと前のほうを見ると、血溜りが出来ている。そこには、ゴーリキーの死体が転がっていた。動脈を刃物か何かで切りつけられた様な跡がある。
「ま、まさか、こんな所に…んっ?」
 いきなり死体を直視して気が動転していた斬子であったが、何者かの気配を感じ取り、後ろを振り向く。
「後ろに誰か…いや、後ろだけじゃ無ぇみてーだな」
 どうやら斬子は、前からも気配を感じ取ったらしい。
「挟み撃ちされたかねぇ。オレとした事が…まぁここは、アレだな」

 斬子は、そう言うと前かがみになる。何かをする体勢なのだろう。
「行くぜ…!」
 そう言うと、斬子は前方へと飛び出した。

 シュタタタタッ……!

 逃げるが勝ち、と言わんばかりに、斬子は廊下を駆け抜けるのであった。
「よしっ。何とか前に居たヤツもやり過ごせたな。もうそろそろ止まっても…ふげっ!」

 時折後ろを見ながら走っていた斬子は、ふと前を見た瞬間、何かとぶつかった。そりゃあ、廊下をとてつもない速さで走っていれば何かにぶつかるもの当然だが。
「あいててて……いってー…な…?」
 文句を言おうと前を見るなり、斬子は絶句した。そこに居たのは、ポケモンだったからである。しかも、向こうも相当ご立腹のようだ。

「…ヤバ」
 そう呟く斬子であったが、それは到底声にならなかった。