調理実習カイジ

161 名前:調理実習カイジ「説明」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 01:30:35 ID:???
利根川「この料理における『成功』とは何か……、についてお話します」
ざわ… ざわざわ… ざわ…
利根川(フフ……)
利根川「この料理、途中経過は一切問いません、途中……吹きこぼれや身崩れ等の状態に落ち込もうとかまわない」
利根川「とにかくどうあれ最終的に…、わたくしが笑顔で旨いといえば、成功……!」
利根川「単純にして明瞭、簡潔です」
ざわ…
利根川「その際…、満たすべき条件はただ一つ…、この90分という枠の中で今 皆様のテーブルの上にある様々な食材を全部使い切るということだけです」
利根川「料理が出来たから、もう人参はいらない、うさぎ小屋へ……というわけにはいきません」
利根川「おわかりかな…?」
カイジ(……)
利根川「逆の言い方をするなら、この料理による『失敗』は、三つ」
利根川「一つはいくら料理が旨かろうと…時間内に食材を使いきれなかった場合、二つめは食材を使いきったもののわたくしが旨いと言わなかった場合、そして最後……」
利根川「食材は全て使い切った、味も上々だが……、テーブルに班のみんなが笑顔で着席していない場合、この三つです」
利根川「まぁ…、言うなら今回の料理…、食材はチャンス……、笑顔は最高の調味料、こう考えていただければ大筋間違いではございません」


162 名前:調理実習カイジ「質問」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 02:11:49 ID:???
利根川「では……、これで私の説明の全てを終わらせていただきます」
利根川「皆様の健闘」 ざわ…
利根川「心からお祈りいたしております」 ざわ… ざわ…
カイジ「ちょ…ちょっと……!調理方法は……?調理方法がわからないっ……!」
利根川「…どうぞご自由に」
カイジ「はぁ…?」
利根川「食材を使い切り、私が笑顔で旨いと言えば成功、調理方法等につきましては各自ご自由に判断し行なってください」
カイジ「自由って言ったってさあ…」
ヒロシ「メニューは何を…!?先生が好きなメニューについて詳しく聞きたい…!教えてくれ……!」
カイジ(あ…、それオレも聞きたい……)
ヒロシ「オレは定食屋の息子だ、大抵の料理ならつくれる……!」
利根川「…………残念ながら、質問には一切お答えできません」
カイジ(う……) ざわ…
ヒロシ「なっ…」 ざわ… ざわ…
ヒロシ「何を言うんだっ…!バカにする気か!先生っ」
ヒロシ「失敗した時の採点は!?オレ達の成績がかかっている…!話して当然…!オレ達生徒には知る権利がある……!」
クラス一同「そうだっ…!そうだっ……!!そうだっ………!!!」
利根川「Fuck You」
カイジ「え…?」
利根川「ぶち殺すぞ…… ゴミめら……!」
カイジ「う…」   ざわ…
ヒロシ「うう……」  ざわ…
クラス一同「この男…」 ざわ…


165 名前:調理実習カイジ「甘党」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 02:48:09 ID:???
利根川「おまえたちは皆…、大きく見誤っている…、教育の実体が見えていない」
利根川「まるで3歳か4歳の幼児のように、この世を自分中心…求めれば…、周りが右往左往して世話を焼いてくれる、そんなふうに…」
利根川「まだ考えてやがるんだ、臆面もなく……!」
クラス一同(う……)
利根川「甘えを捨てろ、おまえらの甘え…、その最たるは今 口々にがなりたてた、その質問だ」
利根川「質問すれば答えが返ってくるのが当たり前か…?なぜそんなふうに考える…?バカがっ!」
ざわ… ざわ…
利根川「おまえらの質問に答えること、それ自体は容易い、簡単だ」
ざわ… ざわ… ざわ…
利根川「私の好きな食物は甘口のカレー、甘く煮た黒豆、キャベツとじゃがいものほくほくスープ、チョコクレープ…」
クラス一同(こ…答えた…!答えたぞ……?)
利根川「だが…、その真偽はどうする……?」
クラス一同(…嘘でキャベツとじゃがいものほくほくスープは出ないだろ)
利根川「真偽などどうでもいいから聞きたいと言うのか…?」
クラス一同(ほくほくスープって何だよ、コンソメ味か…?)
利根川「ククク……」
カイジ(調理方法っ…!オレの質問には触れもしねぇ…!)
利根川「オレが何を語ろうと、結局ただそれを盲目的に信じるしか道はない、つまり…」
ヒロシ(…甘口のカレーと甘く煮た黒豆、そしてチョコクレープから察するに先生はっ)
利根川「オレが実は辛口のカレー好きだとしても、おまえらにはわからない、違うか…?」
ざわ… ざわ… ざわ…
クラス一同(甘党だ……!)
クラス一同(甘党だ甘党だ……、甘党だ…!)
ヒロシ(つまり結局…、辛い料理は食べられないってわけか…)
ざわ…   ざわ…
カイジ(……オレの、オレの質問っ……)


166 名前:調理実習カイジ「開始」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 03:44:40 ID:???
【五年三組担任の利根川はカイジの質問には一切答えず、教室の隅の椅子に腰を下ろす】
【ほぼ同時に行動を開始する生徒達】
ヒロシ(甘口っ…!甘口のルーを確保しなくては…!)
カイジ(1班っ…1班の真面目君チームなら家庭科の教科書を持ってきているはずっ)
【ただ一人1班のテーブルへと進むカイジ、調理は始められたのだ……】
カイジ(ガラガラ…、めちゃくちゃガラガラ、めちゃガラ)
【カイジ、誰もいない1班のテーブルから家庭科の教科書を難なく奪い服の下…、ズボンに挟むっ…!】
カイジ(な…なんだ…)
【カイジ、ここでクラスの異変に気付く、あまりに遅い閃き】
カイジ(そうだ…36人、6人ずつで6班、配られたカレー粉が全て甘口だとは限らないっ…)
カイジ(中辛なら他の調味料での巻き返しも出来るが…、辛口を手にしたらそれで終わり)

イトウ「1班は中辛っ…!」
【4班のテーブル…、窓際、2班と6班の間、その4班のテーブルに全ての班長と女子たちが群がっている…、異様……】
イトウ「この中辛のルーと、その2班の甘口のルーを交換してもらいたい…」
ざわ… ざわざわ…
ハラダ「交換したとして2班に利益があるか?……断るっ」
ざわ… ざわ… ざわ…
カイジ(う………、何考えてんだよこいつら…)
カイジ(とても小学校の調理実習って顔じゃねぇ……)
   ざわ…   ざわ…


168 名前:調理実習カイジ「船井」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 14:59:53 ID:???
船井「ククク……、カイジくんの思ってることわかるで」
カイジ「え……?」
船井「これが小学校の調理実習である以上…、楽しくワイワイやるもんや…、のうカイジくん」
カイジ「おまえ…、なんでオレなんかに…」
船井「…カイジくんの転校初日の挨拶、印象深かったんや、この人はできる人や思ったよ、カイジくんかてオレの名前覚えとるんとちゃう…?」
カイジ「…………船井…くん………」
船井「ひょお~~~!うれしいで!覚えとってくれたんか……!」
船井「こういうのを通じ合うって言うんやろな、いやぁ…最高最高……!」
【船井、カイジの手を握る】
カイジ「よせよっバカっ…!(こいつは…)」
【船井の手を振り払うカイジ】
カイジ「なれなれしいぞてめえ…!(大阪弁教室に通う変人っ)」
船井「ククク…、そう言わんとカイジくん、友達になろうやんか、オレとあんた」
カイジ「友達……?」
船井「そうや、今後の学校生活を楽しむ為には友達が必要なんよ、きちんとした友達さえ見つかれば…」
船井「中学、いや、高校まで……、100%楽しめる……!」
カイジ「100%……?」
船井「もうゲームボーイを二つ買って自分一人でポケモンをプレイする必要もあらへん」
カイジ「バカにするなっ…!そんなことするわけ…」
船井「カイジくん、この調理実習『成功』には何が必要やった……?」
カイジ「………食材を全部使って…、先生に旨いといわせ……、笑顔で着席」
船井「それや……!今のままでカイジくん、笑顔で着席出来るんか?」
カイジ(…………!)


170 名前:調理実習カイジ「判明」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 15:49:08 ID:???
船井「まぁ、それはええ、ここからが本題や」
船井「この調理実習…、成功なら…、先生からアイスキャンディーが貰える……」

【調理実習『成功』でアイスキャンディー…】

カイジ「ふ…船井くん……、なんでそんなことを……?なぜ……」
船井「フフ…、オレの兄貴な、利根川先生の元教え子なんよ」
カイジ「元教え子……?」
船井「ああ…、オレ以外にもチラホラおるで、兄姉が利根川先生の元教え子な連中……」
船井「……成功なら、アイスキャンディーや」
カイジ「……バカなっ…!アイスキャンディーだと?なら失敗した班はどうなるっ?不公平じゃねぇか……!そんなの………!」
船井「まぁまぁ、気持ちはわかるが…、今はそのことに腹を立ててる場合とちゃう、時は金なりや」
船井「今は黙ってオレらの班の食材を確保せな、カイジくん……!」
【アイスキャンディー…、普段のカイジたちなら特別に食べたいものではなく、ただ家の冷凍庫に放り込まれているだけの存在】
【それがこの学校という閉鎖空間の中……、魅力…!恐ろしいほど魅力的……!】
カイジ(アイスキャンディー…!アイスキャンディー…!)

古畑「あっ!あっあっあ~~~~~……」

カイジ・船井(古畑の悲鳴!!!)


171 名前:調理実習カイジ「友達」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 18:02:50 ID:???
船井「どうしたんや…!古畑くんっ…!」
古畑「あ…安藤くんが…、安藤くんがっ…」
古畑「じゃんけんで6班に負けて…、オレたち3班はこの教室にたった一つの辛口のルーを背負い込むことに……」
ざわ… ざわ… ざわ…
船井「なんやて……!おいっ…!安藤おのれ何さらしとんねん」
安藤「すいません……、勘弁…勘弁してください……、なんとか…、なんとかチョコクリームを手に入れようと思って…」
古畑「だからってなんの相談もなしに甘口のルーを賭けるなんて…」
船井「あほんだらっ……!くそ……!このゴミ虫がっ……!」
安藤「……そんな……」
カイジ「やめろ……見苦しい………」
古畑「えっ……」
カイジ「船井くん、さっき言ってたよな…、友達にならないかと…」
船井「あ…あぁ…」
カイジ「今からオレたち3班は友達っ……!料理をつくり笑顔で着席する為の…!友達っ…!」
安藤「カイジくん…」

【……かろうじて分裂回避、グループ維持……!】

【開始から7分……】
【生徒のほとんどが食材のトレード、水洗い、皮剥きに没頭している中、1班のヒロシにカイジの目が向いた】
カイジ(…炒めてやがる…、弱火で…、何を……?)
【カイジの頭の中を幾度となくみのもんたの顔が交差する】
カイジ(利根川先生は甘党…)
【その無限の交差の中、アメ色に染まり始めたある思考】
カイジ(甘み…、甘味…)
【引き籠もりがちで昼の奥様番組をよく見ていたカイジ、定食屋の息子ヒロシならではの発想】
カイジ(そうだ…、あれだ…、あれしかない…)
【勝つ道あり……!】
カイジ「石田くんっ…、タマネギを弱火で炒めてっ…、早く…!」
【光明……!勝ちへのオニオンペースト……!】


175 名前:調理実習カイジ「指示」[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 19:48:49 ID:???
カイジ「古畑くんと安藤くんはタマネギを集めてきてくれ…、出来る限りたくさん」
古畑「で…でもカイジくん、食材は使いきらなきゃいけないんだよ…」
カイジ「その点は心配ない、とにかく集めてきてくれればいい」
カイジ(そうだ…、このクラスのほとんどの連中はタマネギの凄さを知らない…)
カイジ(炒めるほどに小さく甘くなることを…!)
カイジ「石田くん、タマネギは火が通りやすいようにみじん切りに」
石田「あぁ…、わかったよ」
カイジ「船井くんは人参とじゃがいもを一口サイズに切ってくれ」
船井「よっしゃ」
ナカムラ「ホットケーキは?ホットケーキはどうするの?粉はあるけど…」
カイジ「今はそれどころじゃないっ…、ナカムラくんも古畑くんと一緒にタマネギを…!」

カイジ(間に合うか…?間に合うのか……)


176 名前:調理実習カイジ「変化」[sage] 投稿日:2008/04/08(火) 20:53:06 ID:???
古畑「カイジくん…!2班から二つ、4班5班から一つずつ貰えたよ」
カイジ「あぁ、そこに置いてくれ、すぐにみじん切りに…!」

【あのカイジの発想から2分、カイジらは望みのものを手に入れた】
【カイジらが命運を預けた最終戦略、その実弾、タマネギ4玉……!】
【今現在、炒めている分とあわせて6玉…、もう後には戻れない量】

カイジ「……船井くん……古畑くん………安藤くん………石田くん……、あと…えっと……、ナカムラくん…?…」
ナカムラ(カイジくん…)
カイジ「やり直そうな……、もし首尾よく成功してアイスキャンディーを手にしたら、オレもおめえらもやり直そう……」
カイジ「もう今までのような澱んだくぐもった…、そんなハッキリしない毎日から抜け出して…、今までとまるで違う人生を漕ぎ出そう…!」
カイジ「……今度こそ……!」
古畑「……………カイジくん……………」
安藤(くっ………!)
船井(……………)
石田「……がんばろう…」
ナカムラ「……オレも……」

カイジ(この調理実習が機……、やり直そう……!全てをやり直そう……!)


【開始から20分…、1班、ヒロシの心に微妙な変化…】
ヒロシ(このままタマネギを炒めていていいのか……?)
ヒロシ(確かにこの作業は非常に繊細だ…、だが他の作業を温室育ちのお坊ちゃん・お嬢ちゃんに任せてしまっていいのか…)
【ヒロシ、揺れる……!】
ミカ「あ…、いったぁ~い」
ユミ「ミカちょっと大丈夫ぅ~」
ヒロシ(くっ…、じゃがいもの皮すらまともに向けないのか…、何をやっている…)
ヒロシ(イトウの糞もハラダなんかに負けやがって…)
イトウ「オレ、何かすることない~?」
ヒロシ(お前に…、奪われたチョコクリーム以上の働きが出来るのか……?畜生…)
ヒロシ(くそっ…、くそっ…、くそっ…)

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最終更新:2008年06月15日 14:22
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