俺に何ものにも屈せぬ力と、贖う事を許さぬ罪を与えてくれたのは他ならぬ親父であるが先日、その親父をくびり殺した。
太い、タイヤの様な首であったが片手でやすやすとねじ切ってしまった。
切っ掛けは些細な事だった。
些細すぎて何が原因だったか覚えちゃいないが、別に親父が憎かったわけじゃあない。
だが、別に後悔はしちゃいないし、反省もしちゃいない。
ただ金庫を壊さなければ開けられない事が面倒なだけであった。
「あん? 立派な金庫の割に中身はしけてんな……」
親父は確かに無職であったが俺は金に困った覚えは無いし、飢えた覚えもない。
弱者から奪い続けていたから。
「まあ、確かに奪ったもんは直ぐに食い物になってたから仕方ない話か。
……それにしても呆気ない、もう少し抵抗するとは思ったが」
何にしても、この街にはもう居られないか……
別段準備する必要なんてない。
何しろ部屋の中にはベッドぐらいしか置いてないからな。
金庫の中から3枚の銀貨を取り出す。
「こいつは餞別に貰っていくぜ?」
死体に語りかけるがやはり何も応えはしないのであった。
最終更新:2008年05月14日 23:55